『日本語?』
「え?」『えっ!?』
「なんて言った?」『今なんて言いました!?』
椅子から身を乗り出して俺をガン見してくる少女。 ああ、まさかの日本人ですか。
「あー、村長。 ちょっとだけ席外せます?」
「お、おう。 茶ここに置いておくぞ」
そう言って部屋を後にする村長。 あっ、ちくしょう茶菓子がない。
いつの間にか目の前まで近づいてきていた少女を手で制して、まずはお茶を一口啜った。
うん、俺はこの子をどうすればいいんだ?
『さっき日本語って言いました!? もしかして私の言葉通じてますか? こんにちはっ! こんにちは!?』
『ああ、はい。 通じてるよ、こんにちは』
『良かったっー!』
うああ…… 高い声が頭に響く。
『もう、もう私どうしたら良いのか分からなかったんですよ! 目覚が覚めたら森の中だし、人に会っても言葉通じないし…… あ、そういえば最初に私に声をかけてくれたおじいちゃんがお魚一匹くれたんですよ! ただ、これ生で食べれる種類ですかね? 川魚だったとしたら寄生虫とかやっぱりいるんですかね…… あ、それよりどうしてあなたは日本語が分かるんですか!? あっ、それより前に自己紹介しないとですね』
おお、何というマシンガン。 意思疎通が出来る相手が突然出てきて混乱したのかな? 多分頭の中に浮かんだことそのまま口に出してんなコレ。
『私の名前は笹中…… いえ、ルナ。 そう! ルナ=クレセントと呼んで下さい!』
「うわ、スゲえ堂々と偽名名乗るなあ」
『ん? 今なんて言いました?』
『ああ…… 良い名前だねって、クレセントさん』
『ありがとうございます!』
『俺はトーフ・ヒャヤッコだよ。 まあ、よろしくね』
『はい! よろしくお願いします! 豆腐、さん? 変わったお名前ですね!』
テンション高えなおい。
『普通だよ、普通。 で、結局なにが一番聞きたいの?』
『えっ、と。 じゃあ豆腐さんはどうして日本語を? もしかして日本人の方…… ですか?』
俺の髪をチラリと見て、少し判然としないといった様子で聞いてくる。
まあ、こんな白髪の純日本人はいないわな。 染めてるとかなら別だけど。
『あー、元日本人…… だな。 俺生まれ変わったんだわ、そのまんまの意味で』
『えっ! 転生者って奴です?』
『うん。 そうだね、俺は転生者だ』
『良かった! じゃあ一緒に魔王討伐! 頑張りましょうね!』
『え?』『……え?』
表情が笑顔から困惑といった具合に変化した。 多分俺も同じだと思う。
『え、なんか話が飛んでない?』
『て、転生者なんですよね? 豆腐さんも神様から頼まれました…… ん、ですよね? だから一緒に頑張りましょう?』
『え?』『え?』
やべえ益々分からなくなった。
『もしかして、ですけど。 神様に何も言われてないです?』
『そもそも神様になんて会ったことないぞ』
『ええ……』
互いに何も言えなくなってしまう。
持ってきて貰ったお茶がすっかり冷え切る頃、村長が様子を見に来たことによってようやく、この奇妙なお見合いの空間から逃れる事が出来た。
ああ、やっぱり二度寝しておけば良かった。
『ああ、もうダメだ~。 私一人でどうしろってんですか~……』
「ああ、もう嫌だこの子。 凄く面倒くさい」
村長宅から移動し、俺の部屋まで戻ってきたものの。 二度寝の予定はすっかりと狂い、ベッドの上はこのルナとかいうくっそ痛い偽名をほざく少女に独占されていた。
てかベッドの上で暴れるな。
聞くところによると、この子は神様から魔王の討伐を頼まれて日本から転生してきたようで。 俺も同じく神様から頼まれたのだと思ったらしい。
はあ…… なにが、「その子の言葉分かるのお前だけだから、後よろしくな!」だ。 完全に厄介払いに使いやがって。
『ルナさんや』
『あー、PCが恋しい…… 部屋にこもってゲームやりたい~、美少女に囲まれて余生を過ごしたい』
『おーいルナ=クレセント』
『あ、もしかしてコレは夢? ならば私は部屋でミライちゃんに囲まれて眠りについているのでは?』
『おーい』
『えへへ、ミライちゃんダメだよ? 私たち女の子同士じゃない』
女相手だけど殴っていいだろうか。
『おい笹中』
『え? なんですか?』
こっちの名前で反応すんのかい。
『実際問題あんたどうすんの? 魔王なんておとぎ話でしか聞いたことない存在の討伐だなんて』
『そんなの私が聞きたいですよー。 どーすればいいんです?』
『街にでもいって情報収集してくれば?』
『私…… 言葉分からないです…… あっ、豆腐さんが着いてきてくれるんなら』
『やだ』
『ですよねー。 私も同じ立場だったら断りますもん』
たっはー、というため息と共にベッドに突っ伏しやがる。
『そもそも俺は豆腐じゃない、トーフだ笹中さんよ』
『私も笹中じゃありませんー。 ルナですー』
呼んでも反応しなかったじゃねえか。
『トーフさんー、元とはいえ同じ日本人のよしみじゃあ無いですかぁ、助けてくださいよぉ』
『人にモノ頼む姿勢とは思えないんだが』
『あっ、すみません』
そう言うなりベッドの上で土下座を…… ってやめてくれ。
『うつ伏せから一気にランク上げたなぁ、おい』
『お願いします! なんでもしますから助けてください!』
『なんでもとか言うな。 はぁ…… 仕方ない、簡単な日常会話くらいなら教えてやるよ。 覚えちまえば英語とかよか簡単だからさ』
『本当ですか! ありがとうございます!』
『んじゃあこっちの机までこい。 てか何時までも土下座の姿勢やめてくれ、俺が悪いことしてる気分になる』
言いつつ昨日のワインとつまみの残りで占拠された机を片付ける__ 否。
片付けようとした時に扉が開いた。
「トーフ、今日は何が食べたい?」
突然部屋の扉を開くのは母さんの特権だ。
「材料買い込んできたからなんでも作って…… あんた、その子に何してんだい?」
__この時の母さんの目を俺は一生忘れない。
未だベッドの上で座り込んでいるルナこと笹中。 さっきまで暴れていた為、乱れたベッドに彼女の衣服。
換気をしていなかった為、部屋に充満するのは昨日の酒盛りの残り香。 ハイ。
「まって母さん、誤解」
『…… これをネタにすればワンチャン付いてきてもらえる?』
黙れ笹中聞こえてんぞ。
お酒は全てを救うのです! 緑茶割りおいちい。
しかし展開が進まねえなあおい。
ゆったり更新していきまーす。
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