プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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マルチ投稿第三弾始めまーす。


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「お兄ちゃ~ん、あ~そ~ぼ~!」

 

 貴重な夏休みのある日。

 俺、切崎恭夜(きりさききょうや)の平穏は、そんな子供っぽい台詞を言いながら部屋に突撃してきた妹の(まい)によって終焉を迎えた。

 妹よ……。

 お前ももう中学三年生だと言うのに、なんでそんなに幼いんだ。

 

「舞、宿題は終わらせたのか?」

「あっはっは! 何言ってんの、お兄ちゃん? 夏休みの宿題っていうのは最終日に終わらせるのが常識だよ?」

「帰れ。今すぐ部屋に戻って勉強しろ」

 

 それだけ告げて舞を部屋からつまみ出す。

 我が家ではこいつが宿題を溜め込むのと、テスト前の一夜漬けに俺が付き合わされるのが恒例行事になりつつある。

 その度に泣きつかれて拒否して娘に甘い両親の援護射撃が炸裂し、俺が手伝わされるまでがお約束だ。

 ここらでそんな負の連鎖は断ち切るべきだろう。

 今度こそ俺は手伝わんぞ。

 

「え!? ちょっと待ってお兄ちゃん! 今日は一緒に遊ぶ約束でしょ! 忘れちゃったの!?」

 

 部屋のドアをドンドンと叩きながら舞が何事かほざいているが無視する。

 今回の俺は泣き落としにも、壁ドンにも、ドアノックにも屈するつもりはない。

 

「お兄ちゃん本気で忘れちゃったの!? 今日はあれだよ! 【アドベンチャーズ・オンライン】の正式サービス開始の日だよ! 一緒にやろうって言ったじゃん! お兄ちゃんだって楽しみにしてたじゃん! お願いだからドアを開けて!」

 

 まだわめくか。

 近所迷惑だからいい加減に…………あ。 

 忘れていた記憶を思い出した俺は舞の発言に正当性を見いだし、籠城をやめて素直にドアを開けた。

 

「……入れ」

 

 短くそれだけ言って舞を部屋に入れる。

 直後、妹がキレた。

 

「ムッキー!! お兄ちゃん! 可愛い妹との大事な約束を忘れた挙げ句部屋からつまみ出すなんて酷いよ! 最低だよ! 罰として私の宿題を代わりに全部やること!」

 

 こいつ……!

 怒ったふりをして凄まじく図々しいお願いをしてきやがった。 

 その理屈が通ると思っているのか!

 

「約束を忘れた事に関しては謝るが調子に乗るな。宿題は自分でやれ。最終日に泣きたくなければコツコツとやれ」

「断る! 今年の夏休みはゲームに捧げるんだ! そこにおもしろいゲームがあるのに宿題なんてやってられないよ!」

 

 それで良いのか受験生。

 いや、駄目だこいつは。

 早くなんとかしないければ。

 

「おい、舞……」

「とにかく! 今日は一緒にゲームだからね! ログイン地点で待ち合わせだよー!」

「ちょっと待て!」

 

 舞はそれだけ言って逃げるように自分の部屋へと戻っていった。

 追いかけてドアを叩くも反応がない。

 しまいには鍵までかかっていた。

 今度はお前が籠城か。

 こうなったらもう出てこないな。

 

 舞の追跡を諦め、自分の部屋へと戻る。

 すると机の近くにVRゲームをやるための機材が置いてあるのが目に入った。

 そういえば昨日自分で用意したんだったな。

 すっかり忘れていたが今日は前評判の高い新作VRゲーム【アドベンチャーズ・オンライン】の正式サービス開始の日だった。

 

 【アドベンチャーズ・オンライン】。

 よくテレビでもCMが流れている注目のタイトルだ。

 従来のVRゲームとは一線を画すリアルな映像と激しい戦闘アクション、自由度の高いプレイスタイルを売りにした作品。

 名前の通りプレイヤーは冒険者となり、剣と魔法の世界で大冒険を繰り広げる。

 それがコンセプトらしい。

 

 俺と舞は、人気が高すぎて入手が難しいこのゲームを手に入れた。

 俺は運で。舞は努力で。

 そして確かに言われてみれば舞と一緒にプレイするという約束をしていたような気がする。

 はしゃぎ回る舞があまりに煩くて適当に生返事を返していたのが裏目に出た。

 

 とはいえ約束は約束だ。

 破る訳にはいかない。

 妹との約束を平気で破る奴は人間じゃない。

 それに俺だってこのゲームの事が嫌いな訳じゃないのだから。

 サラッと忘れる程度には優先順位が低かったが、それでも楽しみにはしていたのだ。

 

 

 事の始まりは数ヶ月前の俺の誕生日。

 娯楽の類いにあまり興味を示さない俺を心配したのか、両親は誕生日プレゼントとして最新型のVRギア(VRゲームをする為の機材)をプレゼントしてくれた。

 そして舞は「たまには息抜きも必要だよ」と言い、誕生日プレゼント代わりに俺のIDを勝手に使って当時βテスターを募集していた【アドベンチャーズ・オンライン】の抽選に応募。

 幸か不幸か俺はかなりの倍率の抽選をくぐり抜けβテスターとなった。

 ……ちなみに、同じく応募していた舞は抽選に外れ、行列に並んで正規版を購入する事を余儀なくされた。

 一時期βテスターとして正規版の優先販売予約券を貰った俺に凄まじい嫉妬の視線を向けてきてとてもうざかったのを覚えている。

 

 そうしてあまりやる気もなかったが、せっかくの誕生日プレゼントを物置の肥やしにするというのも気が引けた俺は、【アドベンチャーズ・オンライン】β版をプレイする事にした。

 だが、さすがは注目作と言うべきか、普通に面白かった。

 ゲーム内での知り合いも出来た

 対戦していて楽しいライバルも出来た。

 正規版を買っても良いと思えるくらいにはハマった。

 両親の試みは、見事大成功に終わった訳だ。

 

 

 過去を振り返っているうちに正式サービス開始時刻である午前12時がやってきた。

 本当なら開始直後ではなく気が向いた時に始めようと思っていたんだがな。

 だが今回は舞もいるし、もう少し真剣にプレイしてみるのも良いかもしれない。

 

 そんな事を思いながら俺はVRギアをセットし、再び【アドベンチャーズ・オンライン】の世界にログインした。


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