プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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27 護衛の道中

「死神、どうだ!?」

「そこの茂みに2体、高速で近づいて来るのが3体いる。どっちも小型だ」

「よし、我らに任せろ! やるぞ、狩人!」

「りょ、了解した」

 

 俺の《気配感知》に引っ掛かったモンスターの情報を教えると、カタストロフとハンターが遠距離攻撃の準備に入った。

 馬上から放たれる闇の魔法と矢が、道中のモンスターに突き刺さる。

 それだけで、俺が見つけた5体のモンスターは消滅した。

 だが、すぐにおかわりが来る。

 

「今度は後ろからだ。反応は1体。多分、そこそこ強い」

「我が筋肉に任せるがいい!」

 

 今度はマックスが馬から下りて背後から迫ってきたモンスター、大型の狼キラーウルフの相手をした。

 キラーウルフの突撃を真っ向から受け止め、そのまま彼方へと投げ飛ばす。

 

「どっせい!」

 

 そんな掛け声と共にキラーウルフが宙を舞い、どこかへと消えた。

 それを見届ける事なく、マックスはダッシュで馬車に追い付き、馬に飛び乗る。

 筋肉の塊に勢いよく乗られた馬が、苦しそうな呻き声を上げた気がしたが、おそらく気のせいだろう。

 

 それよりも次だ。

 

「正面に待ち伏せが1体。デカイな。これは俺がやる」

「うむ! 任せたぞ!」

 

 言うと同時に俺は馬から飛び降り、馬車の数倍の速度で駆けた。

 そのまま正面に立ち塞がるモンスター、巨大な二足歩行の豚、オークに対して攻撃を仕掛ける。

 オークの股下を潜るようにスライディングし、そのまま大鎌の刃で股間を斬り裂く。

 そして背後に回り、男の象徴を潰されたオークの首筋目掛けて、容赦なくトドメの一撃を放った。

 

「《斬首》」

 

 アーツによって強化された斬撃がオークの首を飛ばし、HPを削りきられたオークが光の粒子となって消滅する。

 そのタイミングでちょうど追い付いてきた馬車に合流し、馬の上へ。

 次の襲撃はない。

 どうやら小休憩の時間のようだ。

 俺は軽く息を吐いた。

 

「ふぅ」

「ほう。さすがの死神もお疲れのようだな」

「……当たり前だろう。これだけ連続で戦い続ければ、誰だって疲労する」

 

 悪徳貴族護衛クエストを受けた俺達は今、ひっきりなしに襲来して来るモンスターの対処に追われていた。

 一度モンスターが現れると、十分はモンスターハウス状態が続き、小休憩を挟んでは、またモンスターが大量に現れる。

 それが、このクエストの仕様なのだろうが、もう少しマシな道を選べと言いたくなる。

 俺のような、事故れば終わりの極振り型にとって、この状況はなかなかにキツイ。

 正直、苦手なパターンの一つだ。

 極振りは、ハマれば強い代わりに苦手な事が多い。

 

「ん?」

 

 と、その時、《気配感知》に新たな反応があった。

 

「どうした、死神? 次のモンスターか?」

「……いや、違う。だが、()には違いないかもな」

「た、たしかに」

 

 俺の言葉にハンターが同意を示した。

 ハンターは、遠くの景色を見る《千里眼》というスキルを持っている。

 おそらく、それで俺が感知したものと同じ光景を見たのだろう。

 

 そして、馬車は進み、俺とハンターが感知した通りの者が俺達の前に立ち塞がった。

 

「止まれ!」

 

 そんな声を上げたのは、馬車の進行方向に仁王立ちする、鎧を着こんだ中年の男。

 その後ろには、同じ鎧姿をした男が十人程整列している。

 格好からして騎士だろう。

 王道騎士団ではなく、おそらく、このクエストに関係するNPCと見た。

 

 俺達は、全員馬から降りて戦いに備える。

 

「その馬車! 悪名高いアクロイド家の者だな! 貴様らの行ってきた所業は許しがたし!

 貴様らが今日この道を通り、次なる悪事の場へと赴こうとしている事はわかっている!」

 

 先頭の中年騎士が声を張り上げ、後ろの騎士達もそれに同調した。

 さしずめ、悪徳貴族を成敗しに来た正義の騎士団と言ったところか?

 ならば、俺達にとっては敵だな。

 

「か、カタストロフ殿! 奴らはワシの命を狙っておる! 助けてくだされ!」

 

 馬車の中から、悪徳貴族の悲鳴に似た懇願の声が聞こえてきた。

 敵確定だな。

 俺達は、まさに悪の役回り。

 実に闇ギルドらしい。

 

「今ここに天誅を下さん! かかれぇ!」

『おおおお!』

 

 騎士達が剣を抜いて襲いかかってきた。

 NPC特有の、どこか人間になりきれていない、機械的な動きだ。

 

 俺は背中の大鎌を抜いて飛び出し、カタストロフは杖を掲げ、マックスはマッスルポーズをとって馬車の前に立ち、ハンターは茂みの中に消える。

 俺達は、それぞれの戦い方で、騎士達を迎え撃った。

 

「今までとは毛色の違う敵! おそらく最終関門か、その一歩手前であろう!

 もう一息だ! 気張れよ貴様ら!」

 

 カタストロフの言葉を無視して、騎士達に襲いかかる。

 まずは一番先頭にいた騎士に向かってデスサイズを一閃。

 騎士は咄嗟に剣でガードしようとしたが、攻撃力に差がありすぎたのか、まるで受け止めきれずに剣ごと真っ二つになった。

 今、俺が身に付けている装備は、例の公式イベントの上位入賞特典。

 その性能の凄まじさたるや、チートの領域だ。 

 加えて、武器子による改良によって、デスサイズの性能も向上している。

 もはや、この程度の相手は敵ではない。

 

「《エンチャント・アタック》!」

 

 俺に任せた方が早いと判断したのか、カタストロフが得意の闇魔法ではなく、支援魔法を俺にかける。

 これで、更に戦力差は広がった。

 ここから先は、蹂躙だ。

 

 装備によって上昇した速度と、装備と魔法によって上昇した攻撃力を使い、超高速で駆け回りながらのヒットアンドアウェイ。

 近づき、一人殺しては距離を取る。

 その繰り返しによって、一人ずつ確実に始末していった。

 

 俺を無視して直接馬車を狙う騎士もいたが、それはマックスによって阻まれる。

 まさに肉壁。

 筋肉の壁にぶん殴られ、騎士は消滅した。

 

 更に、絶妙なタイミングで、茂みに隠れたハンターの矢が飛来する。

 アーツによって放たれた矢は、魔法よりも速く飛翔し、騎士達を屠る。

 だが、動き回る俺には決して当たらない。

 あいつの弓の腕はゲーム内屈指だ。

 本人のプレイヤースキルに加え、そうなるようにステータスもスキルも弓術に特化している。

 味方に当てるようなヘマはしない。

 ハンターを信頼し、俺は自分の仕事に専念した。

 

 そうして、一分もしない内に騎士はほぼ全滅した。

 弱い。

 だが、それも当然。

 こういう敵対NPCは、基本的に強いプレイヤーの下位互換だと思っていい。

 なにせ、AIの動きは単調だからな。

 たまに高性能なのがいるが、こいつらは違った。

 俺の慣れ親しんだ人間(プレイヤー)の動きを単調にした感じの動き。

 対人戦特化の俺からすれば、良い鴨だ。

 

 そして、残った騎士はリーダーっぽいあの中年騎士だけ。

 

「お、おのれ! 覚えていろ!」

 

 そんな、三下の悪役のような捨て台詞を残し、中年騎士は俺達に背を向けて撤退した。

 まあ、逃がさんが。

 簡単に狩れる経験値を逃すプレイヤーはいない。

 

 俺は中年騎士の背中を追いかけようとして、━━やめた。

 

 何故なら、《気配感知》に新たな反応があったのだから。

 高速でこちらに接近してくる反応が1体。

 それに追従するような反応が多数。

 

「どうした、死神?」

「敵だ」

 

 戦闘態勢を取り続ける俺を見たカタストロフの疑問に、簡潔に答える。

 

 そして、新たな敵が俺達の前に現れた。

 

 逃げて行った中年騎士の身体が、現れた一人の男の振るった大剣によって、頭から真っ二つに斬り裂かれ、消滅した。

 

「よお。お前が『死神』か。会いたかったぜぇ」

 

 男が、大剣を肩に担ぎながら、好戦的に笑った。

 どことなく人間臭い仕草。

 新しいイベント用NPCかと思ったが、多分違うな。

 こいつは、プレイヤー(・・・・・)だ。

 

 そして、こいつは、モンスターではなくNPCを躊躇なく攻撃した。

 間違いなく、俺達と同じこっち側(・・・・)の人間。

 同業者だろう。

 

「レオンさん、あまり一人で先行しないでほしいですね。あなたはギルドマスター(・・・・・・・)なんですから」

「チッ。小うるせぇなぁ」

 

 続いて、レオンと呼ばれた男に追従して現れた集団。

 人数は、騎士達と同じく十人程。

 だが、纏う雰囲気が違う。

 彼らの雰囲気は、まるで山賊。

 その目ほ、殺戮と略奪の意思に燃えている。

 

 なにより、俺は今レオンに話しかけた男を知っている。

 以前、剣聖とパーティーを組んだ時に遭遇したPK。

 軍服のような装備を纏った、糸目の男。

 

「貴様ら! 何者だ!?」

 

 カタストロフが吠える。

 だが、その声は少し嬉しそうだ。

 どうやら、このシチュエーションを楽しんでいるらしい。

 余裕あるな。

 

「俺達は闇ギルド『ダークマター』。そして、俺がダークマターのギルドマスター、『破壊王』レオンだ。

 覚えとけよ? お前らを潰す男の名だ」

 

 ダークマター。

 以前出会った同業者が、より強い奴を引き連れて再び現れた。

 

「おもしろくなってきたな」

 

 俺は仮面の下で小さく笑い、デスサイズを構えたのだった。


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