プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
剣士を殺し、槍使いを殺し、格闘家を殺し、盾使いを殺し、魔法使いを殺し、弓使いを殺す。
そうして進軍を続ける俺達を、敵は無視できない。
俺達を止めようと、より多くの敵が群がって来ては、デスサイズの錆びとなって死んでいく。
敵の数は多いが、王道騎士団と戦いながらでは、ろくな連携は取れない。
連携のない烏合の集など、突出した個人戦闘力を持つ俺達からすれば、さほど脅威ではない。
標的である破壊王に、どんどん近づいて行く。
だが、さすがに、そう簡単にはいかないらしい。
「《
突然、スキルによる巨大な斬撃が俺達を襲った。
これは、俺と同じ大鎌のスキル。
俺は、咄嗟の判断でマックスを突き飛ばし、ギルドメンバー全員の盾にして耐える。
マックスもまた、持ち前の防御力と回復力で耐えきってくれた。
そして俺は、この一撃を放った襲撃者の姿を見る。
予想通り、俺と同じく大鎌を構えたプレイヤー。
だが、そいつは俺と違い、体つきが2メートルを超える巨体で、筋骨隆々。
大鎌という巨大な重量武器も、こいつが持つと少し小さく見える。
筋肉を強調するかのように、ピッチリと肌に張り付いた服。
その上から装着された、胸と腰を守る部分鎧。
そして……
「あら~! 死神ちゃんとこんな所で会えるなんて、アタシ、ついてるじゃな~い!」
野太い声で女言葉を話す、オカマだった。
なるほど。
変態か。
「はじめまして~。アタシはカマー。見ての通り、オカマの大鎌使いよ。
さあ、アタシの宿命のライバル、死神ちゃん!
どちらが真のオカマ……じゃなくて大鎌使いなのか、ここで決めようじゃな~い!」
「断る」
俺は戦いが好きだ。
特に強いプレイヤーとのバトルが好きだ。
たが、そんな思いを超越して、あれには関わりたくないと俺の本能が叫んでいる。
俺にも、苦手な相手くらいいるという事だ。
「あら、いけず~」
「ハッハッハ! だったら、俺が相手をしてやろう!
その素晴らしい筋肉! 我が筋肉の相手に取って不足なし!」
俺が変態に引いていたら、ウチの変態が前に進み出てくれた。
おお、マックス。
よく言ってくれた。
「ここは俺に任せて、先に行けぇ!」
ああ、今だけはマックスの筋肉が輝いて見える。
頼もしい。
「行こう」
「うむ! 任せたぞ、剛力!」
「しっかりやりなさい」
「な、なんだ、この無駄に濃い戦いは……」
ハンターの呟きがやけに耳に残ったが、それを無視して俺達は駆ける。
マックスの頑張りを無駄にしない為にも。
「さあ! では、闘ろうか! 同志よ!」
「誰が同志ですって? アタシは、リアルじゃただの乙女よ!」
背後から、変態同士による戦いの音が聞こえてきたが、意識して聞かないようにする。
あれは、立ち入ってはいけない世界だ。
そうして、オカマとマックスから意識を外した瞬間、俺の眼前に刃が突き出された。
「ッ!?」
「チッ」
それを咄嗟に避け、大鎌を振るって反撃。
襲撃者は、それを見て即座に距離を取った。
……俺の《危険感知》が発動しないという事は、相当高レベルの《隠密》を持っているのだろう。
今度の襲撃者は、全身を忍者のような黒装束で包み、手に小太刀を持ったプレイヤーだった。
顔まで隠れているが、ボディラインから女だとわかる。
女のキャラクターを使っているだけのオカマ(この場合はネカマというのだったか?)かもしれないが、それはどうでもいい。
さっきの奴みたいに、それをオープンにして精神攻撃の域に昇華させていない限りは。
「……レオンの所へは行かせない」
女忍者はボソリとそう呟いて、乱戦の中に消える。
おそらく、退いた訳ではなく、他のプレイヤーに紛れて奇襲を狙っているのだろう。
俺も似たような事をやるから、よくわかる。
「面倒だな」
「なら、ここは私に任せなさい」
そうして、今度はサクラが飛ひ出した。
何を……と思ったら、サクラは乱戦の中、ピンポイントで女忍者を発見し、斬りかかっていた。
「なんで!?」
「あなたからは嫌な匂いがするのよ。私の大嫌いなリア充の匂いが!」
……恐るべし、サクラの怨念。
スキルすらも上回る超直感とでも言ったところか?
本当に恐ろしい。
「……ここは任せてよさそうだな」
「う、うむ。先を急ぐぞ!」
サクラが離脱し、これで俺達は残り3人。
それでも、烏合の集を相手にするなら十分だ。
前衛1人に、後衛2人。
そこまで、バランスも悪くない。
そして、破壊王まであと一歩というところで、今度は闇の魔法が俺達目掛けて飛来してきた。
「《ダークランサー》!」
それをカタストロフが、同じく闇魔法で迎撃し、術者を睨み付ける。
術者は、破壊王の側に控えていた奴。
黒い神官服のような装備を身に付けた魔法使いだ。
何人かの前衛を引き連れている。
「ふむ。ここは私に任せてもらおう。同じ闇魔法使いとして、格の差を見せてつけてくれる!」
「え、援護する。お、お前1人で前衛の相手まではキツイ筈だ」
「助かるぞ、狩人!
死神! 破壊王は任せた!」
カタストロフとハンターは、邪神官の一味と遠距離での撃ち合いを始めた。
ギルドマスターの指示には従う。
言われた通り、俺は破壊王の相手だ。
俺は、単身、戦場をひた走る。
1人になった事により、これまで他のメンバーに合わせていたせいで出せなかった全速力で、駆ける。
速度に極振りした俺の足は極めて速く、追い縋る敵を置き去りにして、あるいは斬り殺して、
そして遂に、━━破壊王の元にまで到達した。
破壊王は、他のメンバーを肉壁のように使いながら、剣聖のパーティーと互角に近い戦いを繰り広げている。
そこに乱入。
まずは先制で《鎌鼬》を叩き込み、それに驚いた隙に、大鎌を振りかぶって斬りかかった。
「ッ!? 来たか、死神! 待ってたぜ!」
そして、俺の大鎌と、破壊王の大剣が激突した。