プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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34 混戦

 剣士を殺し、槍使いを殺し、格闘家を殺し、盾使いを殺し、魔法使いを殺し、弓使いを殺す。

 そうして進軍を続ける俺達を、敵は無視できない。

 俺達を止めようと、より多くの敵が群がって来ては、デスサイズの錆びとなって死んでいく。

 敵の数は多いが、王道騎士団と戦いながらでは、ろくな連携は取れない。

 連携のない烏合の集など、突出した個人戦闘力を持つ俺達からすれば、さほど脅威ではない。

 

 標的である破壊王に、どんどん近づいて行く。

 だが、さすがに、そう簡単にはいかないらしい。

 

「《鎌鼬(かまいたち)》!」

 

 突然、スキルによる巨大な斬撃が俺達を襲った。

 これは、俺と同じ大鎌のスキル。

 俺は、咄嗟の判断でマックスを突き飛ばし、ギルドメンバー全員の盾にして耐える。

 マックスもまた、持ち前の防御力と回復力で耐えきってくれた。

 

 そして俺は、この一撃を放った襲撃者の姿を見る。

 

 予想通り、俺と同じく大鎌を構えたプレイヤー。

 だが、そいつは俺と違い、体つきが2メートルを超える巨体で、筋骨隆々。

 大鎌という巨大な重量武器も、こいつが持つと少し小さく見える。

 筋肉を強調するかのように、ピッチリと肌に張り付いた服。

 その上から装着された、胸と腰を守る部分鎧。

 そして……

 

「あら~! 死神ちゃんとこんな所で会えるなんて、アタシ、ついてるじゃな~い!」

 

 野太い声で女言葉を話す、オカマだった。

 なるほど。

 変態か。

 

「はじめまして~。アタシはカマー。見ての通り、オカマの大鎌使いよ。

 さあ、アタシの宿命のライバル、死神ちゃん!

 どちらが真のオカマ……じゃなくて大鎌使いなのか、ここで決めようじゃな~い!」

「断る」

 

 俺は戦いが好きだ。

 特に強いプレイヤーとのバトルが好きだ。

 たが、そんな思いを超越して、あれには関わりたくないと俺の本能が叫んでいる。

 俺にも、苦手な相手くらいいるという事だ。

 

「あら、いけず~」

「ハッハッハ! だったら、俺が相手をしてやろう!

 その素晴らしい筋肉! 我が筋肉の相手に取って不足なし!」

 

 俺が変態に引いていたら、ウチの変態が前に進み出てくれた。

 おお、マックス。

 よく言ってくれた。

 

「ここは俺に任せて、先に行けぇ!」

 

 ああ、今だけはマックスの筋肉が輝いて見える。

 頼もしい。

 

「行こう」

「うむ! 任せたぞ、剛力!」

「しっかりやりなさい」

「な、なんだ、この無駄に濃い戦いは……」

 

 ハンターの呟きがやけに耳に残ったが、それを無視して俺達は駆ける。

 マックスの頑張りを無駄にしない為にも。

 

「さあ! では、闘ろうか! 同志よ!」

「誰が同志ですって? アタシは、リアルじゃただの乙女よ!」

 

 背後から、変態同士による戦いの音が聞こえてきたが、意識して聞かないようにする。

 あれは、立ち入ってはいけない世界だ。

 

 そうして、オカマとマックスから意識を外した瞬間、俺の眼前に刃が突き出された。

 

「ッ!?」

「チッ」

 

 それを咄嗟に避け、大鎌を振るって反撃。

 襲撃者は、それを見て即座に距離を取った。

 ……俺の《危険感知》が発動しないという事は、相当高レベルの《隠密》を持っているのだろう。

 

 今度の襲撃者は、全身を忍者のような黒装束で包み、手に小太刀を持ったプレイヤーだった。

 顔まで隠れているが、ボディラインから女だとわかる。

 女のキャラクターを使っているだけのオカマ(この場合はネカマというのだったか?)かもしれないが、それはどうでもいい。

 さっきの奴みたいに、それをオープンにして精神攻撃の域に昇華させていない限りは。

 

「……レオンの所へは行かせない」

 

 女忍者はボソリとそう呟いて、乱戦の中に消える。

 おそらく、退いた訳ではなく、他のプレイヤーに紛れて奇襲を狙っているのだろう。

 俺も似たような事をやるから、よくわかる。

 

「面倒だな」

「なら、ここは私に任せなさい」

 

 そうして、今度はサクラが飛ひ出した。

 何を……と思ったら、サクラは乱戦の中、ピンポイントで女忍者を発見し、斬りかかっていた。

 

「なんで!?」

「あなたからは嫌な匂いがするのよ。私の大嫌いなリア充の匂いが!」

 

 ……恐るべし、サクラの怨念。

 スキルすらも上回る超直感とでも言ったところか?

 本当に恐ろしい。

 

「……ここは任せてよさそうだな」

「う、うむ。先を急ぐぞ!」

 

 サクラが離脱し、これで俺達は残り3人。

 それでも、烏合の集を相手にするなら十分だ。

 前衛1人に、後衛2人。

 そこまで、バランスも悪くない。

 

 そして、破壊王まであと一歩というところで、今度は闇の魔法が俺達目掛けて飛来してきた。

 

「《ダークランサー》!」

 

 それをカタストロフが、同じく闇魔法で迎撃し、術者を睨み付ける。

 術者は、破壊王の側に控えていた奴。

 黒い神官服のような装備を身に付けた魔法使いだ。

 何人かの前衛を引き連れている。

 

「ふむ。ここは私に任せてもらおう。同じ闇魔法使いとして、格の差を見せてつけてくれる!」

「え、援護する。お、お前1人で前衛の相手まではキツイ筈だ」

「助かるぞ、狩人!

 死神! 破壊王は任せた!」

 

 カタストロフとハンターは、邪神官の一味と遠距離での撃ち合いを始めた。

 ギルドマスターの指示には従う。

 言われた通り、俺は破壊王の相手だ。

 

 俺は、単身、戦場をひた走る。

 1人になった事により、これまで他のメンバーに合わせていたせいで出せなかった全速力で、駆ける。

 速度に極振りした俺の足は極めて速く、追い縋る敵を置き去りにして、あるいは斬り殺して、

 

 そして遂に、━━破壊王の元にまで到達した。

 

 破壊王は、他のメンバーを肉壁のように使いながら、剣聖のパーティーと互角に近い戦いを繰り広げている。

 そこに乱入。

 まずは先制で《鎌鼬》を叩き込み、それに驚いた隙に、大鎌を振りかぶって斬りかかった。

 

「ッ!? 来たか、死神! 待ってたぜ!」

 

 そして、俺の大鎌と、破壊王の大剣が激突した。


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