プレイヤーキラー伝説! ~死神プレイの最強PK~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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4 プレイヤーキル

 最初の標的はこの辺りでは強めのモンスター、『ビックボア』という大きめの猪を倒してはしゃいでいる三人組。

 隙だらけだ。

 戦闘エリアに出たのなら、常に襲撃を警戒しておくべきだろう。

 このゲームの敵はモンスターだけではないのだから。

 

 俺は大鎌の刃で一人目の首をはね飛ばした。

 

「え?」

 

 状況が呑み込めていないのか、首だけとなったプレイヤーが間抜けな声を上げる。

 その首の断面はダメージを受けた証として赤く光っていた。

 このゲームでも首をはねられれば当然即死。

 首を切られたプレイヤーはモンスターと同じように、光の粒子となって消滅した。

 死に戻りだ。

 そうなるとデスペナルティーを食らい、所持金の半分と、ランダムにいくつかのアイテムをロストする。

 今みたいに他のプレイヤーにキルされた場合、そのロストした分の金とアイテムをキルした側が獲得できるというシステムになっている。

 

「「は?」」 

 

 突然目の前でパーティーメンバーの首が飛ぶという衝撃の光景に動揺していた残りの二人も、同じように大鎌の錆にした。

 大鎌をバトンのように操って斬殺する。

 二人目は胴体を真っ二つにされて。

 三人目はさっきのコボルトと同じように、頭から縦に切り裂かれて。

 それぞれ一撃でHPを全損し、死に戻った。

 

《レベルアップ! LV5からLV6になりました》

《ステータスポイントを入手しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

《レベルアップ! LV6からLV7になりました》

《ステータスポイントを入手しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 一気に二つレベルアップ。

 やはりプレイヤーはここらの雑魚モンスターよりも遥かに獲得経験値が高い。

 それも当然の事。

 経験値というものは強い敵を倒した時ほど多く手に入る。

 モンスターよりも、それを倒してレベルを上げたプレイヤーの方が強く、獲得経験値が多いのは道理だ。

 

 そして、俺はそんな美味しい獲物であるプレイヤー達に次々と襲いかかった。

 

 入手したポイントを使う時間すら惜しみ、次の獲物を狙う。

 次の標的は、そこそこ立派な装備をした四人組。

 剣士の男が一人、弓使いと魔法使いの女が一人ずつ、そして大盾を持った男が一人。

 前衛二人、後衛二人のバランスのとれたパーティーだ。

 おそらく俺と同じβテスターだろう。

 戦い慣れている感じがする。

 

 その証拠に、彼らはすでに迎撃態勢を整えていた。

 俺が他のプレイヤーを殺したのを見ていたのだろう。

 対応が早い。

 

 大盾使いが他のメンバーを守るように、突撃する俺の正面に陣取った。

 

「まさか初日から『死神』に襲われるなんてな……! ついてないにも程がある!」

「そう言うなって! ポジティブに考えよう! 死神を討ち取れば一躍有名人だ!」

「撃ち抜いてやるわ! 《速射》!!」

「ア、《アイスボール》!!」

 

 盾使いの斜め後ろから、弓使いと魔法使いが矢と魔法を撃ち込んで来る。

 それを前傾姿勢になって避け、サイドステップでかわし、時には大鎌を盾にして防ぐ。

 敵の遠距離攻撃を最小限の動きで無力化し、走るスピードを欠片も緩めずに突撃した。

 

「さすがは死神……! 化け物じみてるなッ!!」

 

 大盾使いに向けて真上から大鎌を振り下ろす。

 大盾使いは盾を傘のように構えてそれを受け止めようとしたが、俺は直前で大鎌の軌道を変える。

 弧を描くように振り下ろしから薙ぎ払いへと変化した大鎌の一撃が、大盾使いの脇腹に深く突き刺さった。

 

「マジか……!?」

 

 だが、浅い。

 大盾使いはちゃんとした鎧を装備していた。

 それに、パーティーの壁役ならば防御力に多くのステータスを振っている筈。

 いくら俺の極振り攻撃力を持ってしても、弱点でもない場所を斬った程度じゃ殺せないか。

 

「やああああ!!!」

 

 俺の攻撃によって体勢を崩した大盾使いに代わって、剣士が斬りかかって来た。

 その攻撃を大鎌の柄で防ぎ、滑るような足さばきで剣士に密着する。

 

 直後、剣士の背中に矢と魔法が突き刺さった。

 

「嘘ッ!?」

「す、すみません!!」

 

 剣士の攻撃に合わせて至近距離から狙い撃ちにする作戦。

 悪くはないが、俺には通用しない。

 その手の戦法はβ版で何度も見た。

 

 だが、このゲームにフレンドリーファイアのシステムはない。

 故にパーティーメンバーの放った攻撃に当たったところでダメージは受けない。

 つまり、剣士はまだ健在だ。

 

 俺は腰に差していたナイフを左手で引き抜き、味方の攻撃で体勢の崩れた剣士の首筋を切り裂いた。

 

「なにッ!?」

 

 俺が今着ている装備『傷だらけのローブ』には、腰の部分にアイテムを収納する小さなポケットがある。

 それはこの装備に限った話ではなく、大抵の胴体装備には咄嗟にポーション等を使えるように、そういうポケットやポーチ、あるいはベルトなんかがついている。

 俺はそこに、コボルトからドロップした雑魚アイテム『錆びたナイフ』を入れていただけだ。

 こんな雑魚アイテムでも、俺の攻撃力で首筋という弱点を突けば、一撃でプレイヤーを殺せる凶器になる。

 

 剣士のHPが0になり、光の粒子となって消滅した。

 

「このォ!!」

 

 剣士を殺られて怒った弓使いが、再び矢を放とうとしていた。

 だが、それが放たれる事はない。

 何故なら、矢が放たれるよりも早く、弓使いの喉を『錆びたナイフ』が貫いたからだ。

 

「なん……で……!?」

 

 簡単だ。

 スキル《投擲》。

 マインとのレベル上げで手に入れたスキルポイントを使って取得したこのスキル。

 それを使って左手に持っていた『錆びたナイフ』を投げつけた。

 それだけの事だ。

 命中率に作用するステータスであるDEXが0の俺だと、ゲームによる弾道補正の恩恵を受けられないが、このくらいならプレイヤースキルでどうとでもなる。

 相当練習はしたがな。

 

 急所を穿たれた弓使いもまた、剣士と同じくHPを全損して消滅した。

 残り二人。

 だが油断はしない。

 二人でも前衛を後衛がサポートして戦われたら厄介だ。

 確実に、狩れる奴から狩る。

 

 俺は魔法使いに接近した。

 そして大鎌で肩から腰にかけて切り裂く。

 

「ひうっ……!」

 

 後衛は寄られると弱い。

 特に魔法を使わなければ戦えない魔法使いは尚の事だ。

 魔法やアーツは技名を口に出して言わなければ発動しない。

 ここまで近づかれれば、そんな事をしている暇はないからな。

 

 そして、魔法使いは怖かったのかギュッと目を閉じながら大鎌で真っ二つに切り裂かれて消滅した。

 残りは一人。

 脇腹をごっそりと削られた瀕死の大盾使いだけだ。

 

「たった数秒で全滅かよ……。回復ポーションを使う暇すらないとはな……。マジで強いぜ、あんた」

 

 そう言いながらも、大盾使いは最後まで俺に立ち向かった。

 そして、その僅か数秒後、彼は他のメンバーと同じように死神の鎌の餌食となった。

 

《レベルアップ! LV7からLV8になりました》

《ステータスポイントを入手しました》

《スキルポイントを入手しました》

 

 彼らの死後も、俺は他のプレイヤーを殺し続けた。

 ああ。

 やはり楽しいな。

 PK(プレイヤーキル)は。

 

 いくら高性能AIが搭載されてるとはいえ、決められた行動しかとらないモンスターを倒すのはほとんど作業と変わらない。

 だが、同じ人間、同じプレイヤーを相手にするのは全く違う。

 彼らの動きは複雑で、感情的で、戦っていてとても楽しい。

 やはりゲームは誰かと一緒にやるのが一番楽しいという事だな。

 

 

 そんな事を考えながら、俺は虐殺を続けた。


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