新サクラ大戦~蒼星と共に~   作:宣伝部長

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現実は残酷に

『ももたろう』公演初日。

 

 

蒼馬と誠十郎はもぎりの仕事の為に一階ロビーに立っていた。

しかし、初日にもかかわらず2人の手で数え切れる程の人数しか来場されていなかった。

 

 

 

「お客様が全然来られないみたいだけど、いつもこうなのかい?」

 

「今回はボクが出ていないから・・・かな?まぁ、昔なんかと比べてしまうと天と地の差だよ」

 

「それでもこれは酷すぎるだろう」

 

「そう思うなら舞台を観てくればいい。神山隊長はもうこのボクらの隊長さんなんだから現実を把握する義務がある・・・だろう?」

 

「そうだな・・・蒼馬くん、この場を任せてもいいかい?」

 

「どうぞ、楽しんで来てください」

 

 

 

と言って送り出したものの蒼馬は大きな溜息を漏らす。

10年前の全盛期を知ってる為に現状を思うと申し訳なさに心が苦しく思うのだろう。

自分も素人ではあったが、すみれに基礎からすべてを学んだのですべてに対して完璧と言っていいレベルにまで仕上げてもらえたのだ。

だが、その技術を人に指導すると言うのは慣れていないのである。

そんな自分の無力さに未だに悩んでいるが、現実は非情である。

 

 

 

「ボクに・・・もっと力があれば・・・・・」

 

「ま~た暗い顔になってんでぇ~?蒼ちゃん!」

 

「・・・こまっちゃん」

 

「アンタは何でも自分だけでどうにかしようと考え過ぎなんや、うちやカオルさんもおるんやで?あの時に誓ったやろ?せやないとまた体調崩して支配人に怒鳴られてまうで」

 

「そうだったね・・・ごめん」

 

「ええんや、ええんや!!」

 

 

 

 

 

こうして、『ももたろう』の公演は一週間続き、終わりを告げる。

いつも以上にお客様の集客はなく過去最低とも噂されていた。

ファンサービスを済ませて帰って来た蒼馬はいつもみんなが集まるサロンに到着する。

 

 

 

「あっ、お疲れ様です!蒼馬さん!!」

 

「みんなもお疲れ様。さて、どうだった?」

 

「どうも何もテンダメだよ・・・・・」

 

「結果は散々でした・・・やっぱり私達だけでは・・・・・」

 

「2人共!!神山隊長も来てくれたんですから・・・こ、これからですよ!!」

 

 

 

3人の雰囲気に腕を組んで考える蒼馬。

しかし、一緒になって考えている誠十郎に気付く。

 

 

 

「神山隊長、なにか思いついた事はあるかい?」

 

「やはり素人しかいない現状個人の上達は難しいと思うんだ。だから演技の専門家を雇ってみてもらえばこの現状を脱却出来ると思うんだ」

 

「それはいいけどよ!その演技の先生を雇うお金なんてこの帝劇にあるのかよ」

 

「それは・・・・・」

 

「提案して頂けるのはいいですが、しっかりと現状を考えて答えてください、隊長」

 

「・・・・・わかった」

 

「蒼馬・・・さん?」

 

「ボクが演技の指導を担当するよ」

 

 

 

蒼馬の言葉に全員の視線が蒼馬に集まる。

 

 

 

「い、いいんですか、蒼馬さん?」

 

「今まで教え方が解らなくて幾度も思い悩んでいたんだけど、神山隊長が来てくれたからボクも少しは変わって行こうと思う。いいかな?神山隊長」

 

「それは助かるよ、蒼馬くん!」

 

「へへっ・・・蒼馬に教わるんならなんとかやれそうだな!」

 

「ですが、金銭面ではまだ何も解決策が見言い出せていないです」

 

「その件はもう一度カオルちゃんと話し合ってみる。あの時よりかは変化はあったはずだから」

 

「お願いします!!蒼馬さん」

 

「それじゃあ、みんなは今後の事もあるから現段階で何が足りないかをお客様から感想のついでに聞いて来てくれないかな?」

 

「「了解っ!!」」

 

 

 

蒼馬の想いに答える為か動き出す花組メンバー。

そんなみんなの姿にどうにかしようと蒼馬は、経理室の扉をノックするのであった。

中からは返事があったので、蒼馬は部屋の中に入っていく。

 

 

 

「蒼馬さん、どうかなされたんですか?」

 

「ちょっとした作戦会議だよ」

 

「作戦ならいくつか用意していますよ」

 

「さすがカオルちゃん!!」

 

 

 

するとカオルはいくつかの資料を持ち出してきたのである。

用意周到な対応にさすがと感心しながらも蒼馬は資料に目をやる。

しかし、内容は蒼馬をメインとしたモノが多い事に首を傾げていた。

 

 

 

「現状、この帝劇の収入源は蒼馬さんの力が半分程度占めています」

 

「まぁ、役に立っていて嬉しい限りだよ」

 

「・・・なので、蒼馬さん主体の催し物をいくつか考えていたんです」

 

「ボクのワンマンショー・・・か、需要とかあるのかな?」

 

「何を言っているんですか!?現在では、蒼馬ファンクラブと言うのも開設されており、現在では約100名程の会員がいる程なんですよ!?」

 

「カ、カオルちゃん・・・落ち着いて」

 

「はっ!?わ、私としたことが申し訳ありません・・・・・」

 

 

 

初めてみたカオルの姿にちょっと驚きを隠せない蒼馬。

いつも仕事熱心な人物だとは気付いていたが、自分の事でここまで熱弁されたのは初めてだった。

しかし、収入源として考えてくれた案でもあるから無下にするわけにもいかない。

 

 

 

「それじゃあこの話進めておいてくれますか?」

 

「かしこまりました。では、時期はいつ頃にしましょうか?」

 

「カオルちゃんに任せる・・・ボクはまだやる事があるからお願いするね」

 

「えぇ・・・お任せ下さい!!」

 

 

 

強い意志の籠った瞳を目の当たりにした蒼馬はこの件をすべてカオルに任せた。

部屋を後にすると今度は、売店へと足を運ぶ。

 

 

 

「こまっちゃん!お疲れ様」

 

「蒼ちゃんこそお疲れ様やんか!それで、こんな時間にどないしたんや?」

 

「作戦会議だよ、カオルちゃんとも色々と話して来た所だよ」

 

「売店の売れ行きを上げようと思うんやったらやっぱ新商品になるなぁ~」

 

「新商品か・・・・・」

 

 

 

と考えていた2人だが、ふと蒼馬は販売中のとある商品に目がいった。

 

 

 

「こまっちゃん・・・このゲキゾウくんの人形って簡単に作れるの?」

 

「んっ?そうやなぁ~・・・多少時間は掛かったけど、案外と出来はええやろ!」

 

「・・・・・これの劇団員バージョンって作れたりしない?」

 

「作れない訳はないけど・・・そう言う着眼点もありやな・・・・・」

 

「そっ、これなら全種類出せば揃えようとしてくれる方も現れて売れると思うんだ」

 

「なんや面白そうやな!!よっしゃー!こう言うのは善は急げって言うさかいにいっちょ交渉してくるわぁ~!!」

 

 

 

指をパチンッと鳴らしたこまちは、楽しげに『ジャリンジャリン儲けたるでぇ~!!』と叫びながら経理室へと消えていった。

一人残されてしまった蒼馬は部屋に戻ろうとした所でスマァトロンが鳴った。

内容は、サロンに至急集合と誠十郎からの連絡なので向かう事にした。

 

 

辿り着いた時には全員が集まっており、そこにすみれがやって来た。

 

 

 

「みんな揃っているわね?今から重大な事を伝えるわね・・・この度、実績を出さないと帝国華撃団を解散する事になってしまうわ」

 

「か、解散!?どうして解散なんですかっ!!」

 

「決まってるじゃねーか!お前らが弱いからだろう」

 

「なっ!いきなりなんだ君達はっ!?」

 

「上海華撃団の2人だよ。神山隊長は聞いてないのかい?」

 

「確か、蒼馬くんと協同して帝都を防衛している華撃団とは聞いている」

 

 

 

いきなり現れた男女にすごい剣幕になる誠十郎。

蒼馬はそんな彼の前に立つようにして落ち着かせるように訊ねる。

割って入ってきた蒼馬のおかげか一呼吸つけた誠十郎は知っている事を口にする。

 

 

 

「解散・・・帝国華撃団が解散に・・・・・」

 

「さくらも落ち着けよ」

 

「まだ決まった訳じゃない・・・実績を残せばいいんだ。華撃団大戦で優勝してみたりとかね?」

 

「そ、そんなの無理ですよ!?」

 

「そいつの言うとおりだ!蒼馬!お前の力は評価するがここに居るヤツらと一緒じゃ優勝なんて到底無理だ」

 

「驕るなよ・・・シャオロン。これ以上この帝国華撃団を侮辱するのなら・・・・・」

 

 

 

蒼馬の一言に場の空気が凍り付いたのが手に取るようにわかった。

あのすみれさえも固唾を呑んで見守る中で誠十郎は大声でこう叫んだ。

 

 

 

「俺達は、必ず優勝してみせます!!!!」

 

 

 

喜ぶ者、歓心する者、呆れる者と色々だが、蒼馬はそんな誠十郎の腹の辺りに拳を突きつける。

 

 

 

「神山隊長・・・今の言葉、真か?」

 

「あぁ・・・信じてくれ」

 

「・・・・・支配人、彼はこう言っているぞ」

 

「決まりね・・・シャオロン隊長、ご足労いただいた事、感謝いたしますわ。でも、花組の運命は花組で決める」

 

「・・・せいぜい頑張ってください」

 

 

 

上海華撃団の2人は一度花組の全員に鋭い視線を送ったのちすみれの案内の元帰っていった。

そして、一息つく為に蒼馬はいつものようにお茶会をする為に食堂に向かいいつもの大きな籠を持って戻ろうとした。

しかし、階段を登ろうとしていた所でさくらとすれ違うのであった。

不思議に思っていたが、去り際に見えた涙に大きな籠を置くと後を追うように走り出した。

 

 

 

「なにか言われたのか?」

 

「そ、蒼馬さん!?い、いや・・・何か言われたと言う訳じゃ・・・・・」

 

「・・・・・いきなりあんな事を言われたら普通の人なら諦めちゃうな」

 

「でも、蒼馬さんっ!!」

 

「・・・わかってるよ。ボクが一番ね」

 

 

 

悲しげな蒼馬の横顔を見たさくらは何も言えずにいたが、蒼馬は大きく深呼吸した後に話始める。

 

 

 

「ボクは死ぬまで足掻くつもりだ。さくらさんは・・・どうかな?」

 

「私も諦めたりしませんっ!!神宮寺さくらさんの為にもっ!!」

 

「神宮寺さんの為か・・・いい心がけだね」

 

「はいっ!!」

 

「・・・少し元気が戻ったみたいだ、ボクは先に失礼するよ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

 

 

さくらの目尻に残っていた涙を指で拭ってあげた蒼馬は優しく微笑みかけるとその場を後にする。

そんな彼女の後姿にさくらは、お礼の言葉とお辞儀で見送った。

そして、1人になった蒼馬はゆっくりと目を瞑った。

 

 

 

「帝国華撃団は・・・護ってみせます」

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