天体観測してたら原始の女神に捕捉されたショタの話。   作:いしゅキチ

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原始の女神の“欲望”

“原始宇宙”においても、神は無数に存在した。

地球が歩んできた歴史のように、多くの神、多くの神話――多くの“人類の生存圏”が在ったのである。

しかし、それら全てを圧倒し、そのなにもかもを蹂躙し、いつしか銀河全てを手中に収めていたのが――イシュタル・アシュタレト。

 

 

“原始宇宙”そのもの。銀河そのものである、不変且つ拡がり続ける最強の女神。

 

 

それがイシュタル・アシュタレト。

人類によって排斥されるまで、銀河に君臨し続けた――――

 

 

「うっ……ぐずっ、ひどい。なんて……なんて愚かなの!?この、私が……このイシュタル・アシュタレトがわざわざ謁見を赦してやったっていうのに……!」

 

 

……たとえ、原始宇宙においては石ころ程度でしかない別銀河の辺境惑星の原生生命体に、泣かされたとしても。

 

――その真実は何も変わらないのである。

 

 

 

 

 

時を遡る必要のない事実がそこにある。

 

アシュタレトは、辺境惑星の少年に不審者扱いされて、泣かされていた。

そもそも拒否られるとすら思っていなかったのだ。

彼女は女神である=出会った瞬間、万歳三唱絶対服従。そういうのが世界の法則であるであるべき、と。彼女は本気で信じていた。そう、信じさせる力がある分、その思い込みが強かったのである。

そもそも彼女は、己が()()()()()()()()事も失念していた。

 

言ってしまえば。

舞い上がっていた。原初の女神ともあろうものが。

 

 

「……まあ、いいでしょう。虚弱貧弱無知無能の人類の、それも取るに足らない辺境惑星の幼生なのだから、この私の偉大さを理解出来ないのはしょうがない事。……そう、しょうがない事なのよ。…………私、女神なのに」

 

 

己に言い聞かせても、押し寄せる感情の奔流に耐えているアシュタレト。

ブツブツブツブツ、と自己肯定と自己否定を繰り返す思春期の多感な少女をしていると――

 

 

――視線を感じた。

 

 

 

「――ッッッッ!!!??!」

 

 

視線を重ねると――彼が、心配そうな顔を浮かべてアシュタレトを見ていた。

そうして何を思ったのか、ひらひらと手を振り始めたのだ。まるで遠く離れた友人に手を振るような気安さで。

 

 

「…………」

 

貴方私をなんだと女神なのよ?別銀河であっても銀河を統べるイシュタル・アシュタレトなのよ?全宇宙全銀河に拡がり続けるはずの原始宇宙の――

アシュタレトは、小さく手を振った。彼が嬉しそうな笑顔を浮かべて、さらに嬉しそうに振り返してくれた。

 

――()()()()()と。

 

彼女は、そう思った。

 

 

 

 

 

――これはもう、次行ったら不審者扱いされないのでは?

 

アシュタレトは確信に近いものを覚えていた。

最初は誰だって怯えるもの。どんなにおいしい匂いをしているものでも、獣は最初は警戒するだろう。彼女にとって人類は獣のようなものなので、それに当て嵌まる……はず。

 

 

――という事で。アシュタレトは、また地球の衛星軌道上に神殿ごとやってきていた。

 

 

地球の空は、彼女の銀河の色に染まり始める。

またやってきた侵略者に“星の意思(ガイア)”は警告も退去勧告も諦めていた。絶対聞いてくれないからだ。それは正しかった。

故に、直ぐに抑止力を召集。

今回は、彼女そのものを攻撃する事を諦めていた。そもそも巨大な川を石ころで埋め立てしようとするような無謀な事していたと認識していた。それも正しかった。

故に、それ以外――彼女が此処にやってくる原因の排除を企んだ。それが無くなれば彼女は消えるだろう、と。

 

その原因は、露骨に見ていたので直ぐに分かった。抑止力の中でも、一番使い勝手の良い掃除屋(エミヤ)を遣わせた。

 

そうすれば侵略者は興味を失って消えるだろう、と。――それは正しくは無かった。

 

 

 

 

 

アシュタレトは、びっくりして見上げる彼の姿に満足していた。そうして直ぐに笑顔で手を振ってくれる姿に大いに満足していた。

 

 

――これはイケる。

 

 

最早、感覚は異性の一挙手一挙動に「こいつ、自分の事好きなんじゃね?」と過剰反応する思春期そのものだった。

だが、アシュタレトはできる女神(オンナ)。ここでがっついては前の二の舞だと理解していた。だからこそ、彼をじっと見て時期を待つ事にした。

彼の生活を見守りながら、最適なタイミングを図るのである。銀河級のストーカーは、超新星爆発の熱量を遥かに凌ぐ熱視線で、彼をずっと見ていた。

 

――チャンスはすぐに訪れた。

 

彼は、己を見ていたレンズを持って家を出た。向かう先は広場で、そこでレンズを設置しようとしていたのだ。

何故か周囲には誰もおらず、静かなものだった。

 

 

「……チャンスね」

 

 

アシュタレトは、己の似姿を近くに降ろした。

狙うは偶然。驚かせないように話しかけるのだ。それに外なのだから不審者も何もないはず。

そうして、彼の近くに接近した頃――

 

 

「少年。ここでなにをしている?」

「えっ…?えっと、天体かんそく……です!」

 

 

――邪魔が入った。

アシュタレトはそっと隠れた。

彼に話しかけたのは、赤の外套を身に纏った長躯の男。浅黒い肌に白い髪。――興味も湧かない人間だった。

 

 

「にしては、手間どってるようだな」

「……スタンドがうまく開かなくて……」

「見せてみろ。……ああ、このツマミを緩めればいいだけだ。そらっ、できたぞ」

「わぁ……!ありがとう、おにいさん!」

 

 

――あいつ、塵に帰すか。

彼に笑顔を向けられるだけで、アシュタレトは癇に障った。それに彼の目には、尊敬の色も乗っていた。それも癇に障った。

 

それを向けられているのは己だけだ。そういう目を向けられていいのも己だけだ。

 

うずまく感情は直ぐにでも男に向くところだったが――その話をぼんやりと聞いて止めた。

 

 

「――それで何を見るんだ?」

「えっと、ね。新しい星を見つけるんだ!おにいちゃんを取り戻すために!」

「そうか――意図的にかの女神を見つけたというわけではないのだね?」

「……?えっと?」

「君は何の因果か恐ろしい者を呼び込んだ。数字を愚弄するほど果ての無い確率に当て嵌まってしまった。だから君はここでおわり――さよならだな、少年」

「……?うん。さようなら、おにいさん」

「ああ――せめて、苦痛は無いようにしよう」

 

 

「――止めろ」

 

 

アシュタレトは、彼が背を向けた途端――視線で、双剣を構えた男の双肩ごと螺子切った。

 

溢れ出たのは血ではなく、薄い青の霊子。

奴はサーヴァント。話を推測しなくても分かる――この星の意思が遣わせた掃除屋だ。

 

 

「……ッッ!?」

「――お前。この私の物になる予定の人間に手を出してただで済むと思うな……!」

「くそっ……!だから私は殺すのは悪手だと忠言してやったというのに……!」

「原始の塵にすらさせん。存在ごと時空の彼方に消し飛ばしてやる……!!」

 

 

――神殿を起動。

直ぐに一斉掃射での殲滅を――

 

 

「あっ」

 

 

小さく、彼が呟いた。

視線を向けると、愛らしい顔をして己を見ていた。

大丈夫。安心して。直ぐに助けてあげる。助ける姿を見せれば、直ぐに懐いて私を崇め奉ってくれるは――

 

 

「不審者の人だ」

 

 

………………………………ふぇ。

 

 

 

――地球の危機は去った。

 

なにげない一言がアシュタレトを傷つけた。神殿は金星辺りに撤退。こうして平和は守られたのである。

 

彼女は泣いた。最後に見た彼の『あっ、ひどいこと言っちゃったかな』って感じの顔をせめてもの慰めにしながら。

……呆れながら「……君はこのままでいてくれ」と彼に告げたやつの記憶を銀河の外に追いやった。このままでいいわけないだろ、しね浅黒。

 

 

 

 

 

 

 

 

――もう、無理やり迫っちゃえばいいと思う。

 

それは彼女の銀河の総意だった。つまり、彼女の意思そのものだった。

短絡的で最低に近い結論だったが、いっそのこと無理やり魅了でも洗脳でもなんでもしてしまえば丸っと事態は収まるのでは?と末期の思考がアシュタレトの銀河を埋め尽くしていた。

――ヤッてしまえば絆されるだろう、という性犯罪者に近しいアトモスフィアがそこにあった。女神とはいったい……うごごご……。

 

そうと決まれば話は早い。

彼女の神殿は、地球の衛星軌道上にまた出現した。

地球の空も適応したのか、元々そうであったかのように彼女の銀河に染まった。

 

地球の意思は半ば諦めていた。

掃除屋の報告を鑑みて、放置を選択したのである。

とはいえ、人類の生存を脅かしたり、星そのもの滅ぼしたりなどの敵対行動を起こした際の対策として――女神のご執心の彼を、即座に宇宙空間に放り出す用意はしていたが、後は野になれ山になれだった。

敗北を認めたと言ってもいいし、毎日のように土砂崩れが畑を襲うのを達観して見るしかない農家のよう、と言ってもいい。

 

 

ともかく。

彼女は、その似姿を彼の部屋に降ろした。

まだ彼は居ないようだった。彼の香りに包まれる部屋は簡素だったが、住み良い環境だった。窓には己を見る為のレンズとその周りには星に関する本媒体が数冊散らばっていた。

ちら、と見れば、さほど文明は進んでいないようだった。

 

 

「だから、私の高貴さを理解出来なかったのね……納得だわ」

 

 

違う、と言ってくれる誰かは不幸にも存在しなかった。

 

とっとっと、と駆ける音が部屋の外から聞こえた。

香りが濃くなった。彼が来たんだろう。

 

狙いは一瞬――入ってきた彼が、口を開く前に。

 

 

「っ!おかあさっ――!!」

「――はい、ストップ。落ちつきなさい」

 

 

似姿で優しく抱き寄せ、口を押さえる。

むーっむーっ!と無駄な足掻きをする彼が愛おしかった。

とはいえ、愛でるのは後。まずは魅了(せっとく)で己が無害な存在であるとアピールせねば、とアシュタレトは力を込めた。

 

――漏れ出したのは、甘い香り。

彼女が神から貶められた際に手に入れた力。女神としての慈愛を女の惑わす色香と侮蔑され、成り果てたもの。

 

――デビルズ・シュガー。

後にそう記録される力が、彼を包みこんだ。

 

 

「……ふぁ……」

「心に刻みなさい。私の名前はイシュタル・アシュタレト。貴方は私が庇護するに足り得る人類に選ばれました。貴方はこれより私と共に生きるのです。感涙してかまいません。しなさい。しろ」

「……ともに?ともだちになりたい?」

「むっ。友人になりたいという訳では――」

 

「ともだち……そっか、友達になりたかったんだねっ!」

 

 

魅了(せっとく)は成功した。少し方向性が違った気がするが――彼女にとっては、満足する道行きだった。

 

 

「ぼくの名前は藤丸翔太!えっと、きみの名前はいしゅたる・あしゅ……」

「イシュタル・アシュタレトよ。ショウ」

「アシュレタト?」

「――アシュタレト」

「……アシュリーちゃんでいい?」

「…………まあ、いいでしょう。せめて、様を付けなさい」

 

「うん!アシュリーさま!!」

 

 

――純粋な好意。無垢な感情。

向けられるのは畏怖でも、崇拝でも無かったけれど。

 

笑顔を浮かべる彼の瞳に、己が映っている――()()()()()()()()

それにひどく満足している己に、彼女は驚いた。

 

それを振り払うように、彼に話しかけた。

 

 

「それにしても、ショウ」

「うん?なあに、アシュリーさま」

「いつも私を見てくれてたのに、不審者不審者とひどいわ。私、とてもかなしかった」

「えっ。…………もしかして、お空の女の人?」

「そう!アレは私の神殿、ベル・マアンナ。あそこから来ていたのに、貴方が驚いて中々お話出来なかった」

「……………」

「……ショウ?」

「――そっか!ごめんね、アシュリーさま。ゆるして?」

 

「っ!ええ!赦しましょう!貴方の神として、この私が赦します。……ふふふ」

 

 

やはり彼は良き人間だ。

過ちを認めるどころか媚びるように謝る――実に、彼女好みの人間だった。

 

 

『しょうー?もうごはんの時間よー?』

「あっ、はーい!」

 

 

話したい事は山ほどあった。

一つ一つ山を崩すようにじっくり話すつもりだったが――もう焦る必要はない。

 

 

「ショウ。これからは窓を開けておくように。……まあ、そうしなくても来れますが」

「……?うん。もう帰っちゃう?」

「明日また会いに行きます。この事は誰にも言ってはなりません。いいですね?」

「――ッ!うん、ぼくたちのヒミツ!」

「ええ、ヒミツです。では、また来ます――私のショウ」

 

「じゃあね!アシュリーさま!」

 

 

 

 

 

 

 

神殿を地球から金星の近くに映す。

離れても、彼女の視線は彼――翔太に注がれていた。

翔太はごはんを食べながら、ニマニマしながら言おうか言いまいかを楽しんでいるみたいで、実に愛らしい。

 

 

「ふっ、ふふふ……」

 

 

漏れた笑いはどういう意味かは彼女には分からなかった。それほどまで自然に漏れた。

ただ、口角が上がるのが止まらなかった。

 

 

「ふふふ、ふふふふふっっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

アシュタレトの似姿は、それから直ぐに翔太の部屋にいた。

 

 

「――寝ているのね」

 

 

時間にすれば、さっきから数時間ほどしか経ってない。

また明日とか言っておきながら、この女神――我慢出来なくて、今日来ていた。

 

小さな身体を包むベッドに腰掛け、翔太の頬を触れる。

 

 

「ふふ」

 

 

それからアシュタレトは、翔太が起きてくるまでずっとそうして過ごしていた。

手中に在る久方振りの人類を愛でるように、ずっと。

 

 

 

 

 

 

『だからぁ!あれこれも全部全てガス漏れのせいなんです!!』

『いや、そんな訳ないで――』

『ガス漏れのせい!』

『いや、ですから――』

『ガス漏れ!』

『……あの――』

『ガスのせい!』

『……そうですね。ガス漏れが原因なのですね』

『はい!』

 

 

「……今日は空が赤くないね」

 

翔太の部屋で、アシュタレトは彼を見ていた。

テレビという遠隔端末から視線を外し、空を見ながら、不思議そうにする翔太を視界いっぱいに映しながら答える。

 

 

「今日は、私だけでこの星に降りたから。ベル・マアンナはこの銀河系の金星に在るわ」

「べる・まあんなって、あの女の人の名前?」

「……そうなるのかしら。アレは私の神殿で、人物って訳ではないのだけれど」

「ふーん」

 

 

そう言うと翔太は何かを書き留め始めた。

尋ねれば「日記!」だという。一生懸命、ペンを走らせる姿は楽しげで――アシュタレトには不満だった。

ようやく気持ちが通じ合ったのに、さっきからテレビやら日記やら……このイシュタル・アシュタレトと対面するなら人生終わってもいいって言った人間がいるのよ私の銀河には!(過去形である)

 

アシュタレトは憤りと共に、翔太を頬を両手で挟みこむと強制的に顔を向けさせた。

むにゅりと潰された彼の顔は実に可愛らしい。

 

「にゃ、にゃにを……」

「――私を見ろ」

「ふぇ……?」

「――日記を書いている暇があるなら、この私を視界に入れなさい」

「えっ、でもこれはにっか……」

「もし書いてるのを止めないならずっとこうしてるわ。朝昼夜、寝てる時もずっとこうよ。それでもいいなら書きなさい」

 

「――おっ、おーぼーだ!どくさいはいくない!」

「何を言ってるのかしら。銀河を統べるこの私に、辺境惑星の生命体が逆らうなんて100億光年早いわ」

「光年は距離だから、年は関係ないって本にあったよ!」

「あら、賢い。ご褒美にもっと力を込めてあげましょう」

「あぶぶぶぶぶぶ」

 

 

我儘に抗う翔太の瞳。

そこには――満面の笑みを浮かべるアシュタレトが映されていた。

 

 

それからの日々は、アシュタレトにとっては瞬きのように直ぐに過ぎ去ったような出来事だったが、彼女の銀河が煌々と輝くほどに――良き日々だった。

 

 

「何を見ているの?」

「あっ、アシュリーさま。こんにちは」

「はい、こんにちは。それで?」

「えっとね。ドラえもん!……なんて言えばいいのかな。色んな事件をすごい道具で解決するお話?」

「ふーん……あら、空間転移装置なんてあるのね、地球(ここ)

「……どこでもドアのことだよね」

「時空移動車両……事象書換装置……意外に文明発達してたのね」

「いや、これお話だから、アシュリーさま!」

 

 

「アシュリーさま。ゲームやる?」

「ゲーム。それも作り物?」

「うん!勇者がお姫さまを助けるためにたたかうゲーム!」

「王道的ね、私は好きよ」

「今はね。仲間の神官のいもうとを助けに行ってるんだ」

「神官。神官って?」

「うーん、神様の……なんか!」

「そう、神のなにかね」

「………」

「………」

「……ごめんね。あんまりよくわかんなくて」

「いいえ。これでも楽しんでるのよ私。金星を粉砕しないように慎重に発散してるんだから」

「……?」

 

 

「アシュリーさま。その本気に入った?」

「ええ。文明にしては、星々について詳しい事が書かれてるわ。呼び方も面白い。でも、この星を出るにはまだまだかかりそうね」

「それね。おにいちゃんが好きなの。だからぼくも大好きなんだ!」

「そう。素敵ね」

「………」

「………」

「……よいっしょっと」

「………」

「………」

「――日記を書くなって言わなかったかしら、私」

「ひゅい!」

「それにこのわがままってなにかしら?この、私の、何処が、我儘、なの、かしら」

「あぶぶぶぶぶぶぶ」

 

 

 

――ふと、反芻が終わる。

金星の近く、神殿でアシュタレトは己の銀河を眺めていた。

 

翔太は良き人間だ。

己を視て、己を愛し、己の側に侍るに足る――人類。

 

最早、彼が何故、別銀河の奥地に居た己を見つける事が出来たかなんて些事はどうでもよくなっていた。

 

アシュタレトの銀河は残滓だ。

それでも――その銀河は、人類の生存圏足り得るほどの宇宙である。

 

 

「逃さないわ――絶対に」

 

 

銀河の中。

翔太の銀河では、地球に当て嵌まる蒼い星を握り固める。

そうすると似姿の手に収まる程度の綺麗な石ころに変わった。

 

これは“原始宇宙”の惑星である。

即ち――翔太の銀河とは、別の法則に則って存在している星である。

 

故に、これを彼に贈れば。

 

 

――翔太は“原始宇宙”の所有物になる。護るべき人類に――

 

 

「貴方は私のものよ。ショウ。もう――()()()()()()()()()()

 

手の平にある、いずれ彼が住む星を眺めながら。アシュタレトは笑う。

 

 

ずっと、こうした日々が続きますように。

いつかの時――神として人類の側にあった、あの時のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――因みに。

 

 

翔太の国には――“和魂”“荒魂”という、神の側面への思想がある。

 

 

“和魂”とは神の優しい、慈悲深い側面。“荒魂”とは神の荒々しく、恐ろしい側面。

 

 

これは一柱の神が持ちうる個性であり、時として別の神と思えるほどの乖離を見せる。

大体、人間が崇めるのは“和魂”、ずっとこうであって欲しいから供物を捧げたり、祭りを行なうなどの儀式を執り行うのである。

 

これが反転し、“荒魂”になるのはそうした事を行わなくなるか。

 

 

――神の機嫌を損ねた時だけである。

 

 

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