Life Will Change -Let butterflies spread until the dawn-   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・各シリーズの圧倒的なネタバレ注意。最低でも5のネタバレを把握していないと意味不明になる。次鋒で2罪罰と初代。
・ペルソナオールスターズ。メインは5系列<無印、R、(S)>、設定上の贔屓は初代&2罪罰、書き手の好みはP3P。年代考察はふわっふわのざっくばらん。
・ざっくばらんなダイジェスト形式。
・オリキャラも登場する。設定上、メアリー・スーを連想させるような立ち位置にあるため注意。
 名前:空元(そらもと) (いたる)⇒ピアスの双子の兄。武器はライフル、物理攻撃は銃身での殴打。詳しくは中で。
 名前:霧海(むかい) (りん)(旧姓)⇒影時間終了後の巌戸台で出会った少女。現在の本名や詳細については中で。
・歴代キャラクターの救済および魔改造あり。オリキャラ同然になっている人物もいるので注意してほしい。
・一部のキャラクターの扱いが可哀想なことになっている。特に、『普遍的無意識の権化』一同や『悪神』の扱いがどん底なので注意されたし。
・アンチやヘイトの趣旨はないものの、人によってはそれを彷彿とさせる表現になる可能性あり。他にも、胸糞悪い表現があるので注意してほしい。
・ハーメルンに掲載している『Life Will Change』をR・S・グノーシス主義要素を足してリメイクした作品。あちらを読んでいなくとも問題はないが、基本的な流れは『ほぼ同一』である。
・ジョーカーのみ先天性TS。名前は有栖川(ありすがわ)(れい)
・徹頭徹尾明智×黎。
・歴代主人公の名前と設定は以下の通り。達哉以外全員が親戚関係。
 ピアス:空元(そらもと) (わたる)⇒有栖川家とは親戚関係にある。南条コンツェルンにあるペルソナ研究部門の主任。
 罪:周防 達哉⇒珠閒瑠所の刑事。克哉とコンビを組んで活動中。ペルソナ、悪魔、シャドウ関連の事件の調査と処理を行う。舞耶の夫。
 罰:周防 舞耶⇒10代後半~20代後半の若者向け雑誌社に勤める雑誌記者。本業の傍ら、ペルソナ、悪魔、シャドウ関連の事件を追うことも。旧姓:天野舞耶。
 キタロー:香月(こうづき) (さとし)⇒妻・岳場ゆかりが所属する個人事務所の社長であり、シャドウワーカーの非常任職員。気付いたらマルチタレントになっていた。
 ハム子:荒垣(あらがき) (みこと)⇒月光館学園高校の理事長であり、シャドウワーカーの非常任職員。旧姓:香月(こうづき)(みこと)で、旦那は同校の寮母。
 番長:出雲(いずも) 真実(まさざね)⇒現役大学生で特別調査隊リーダー。恋人は八十稲羽のお天気お姉さんで、ポエムが痛々しいと評判。

・一部の登場人物の年齢が、クロスオーバーによる設定のすり合わせによって変動している。


仕込みは上々

 

 

『私が【改心】させて欲しい相手は、ウチの高校で発生している詐欺や恐喝事件の犯人』

 

『奴自身は図に乗ってマフィアの『ボス』を名乗ってるけど、実際はフィッシング詐欺の元締めらしいの。しかも、子どもばかりを狙っているわ』

 

『……貴女達の【改心】に使えるような情報は、何一つとして持っていないのだけど……』

 

 

 【怪盗団】に条件――【改心】してほしい相手の情報を提示した新島さんは、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 新島さんを【メメントス】に連れて行った際、【改心】に必要な情報は開示済み。一連の工程を実際に見て貰っている。それ故に、新島さんは己の情報不足を申し訳なく思っているのかもしれない。彼女が掴んだ唯一の情報は、“自称マフィアの『ボス』は、渋谷を根城にして活動している”――【パレス】がありそうな場所の、大まかな予想位置ぐらいだ。

 幾ら新島さんが優秀とはいえ、彼女は一介の高校生。出来ることなんてたかが知れている。しかし、それを加味した上で、新島さんは“碌な支援なしの状況で、自称マフィア達の根城を渋谷まで絞り込んだ”。普通に考えても、新島さんが優秀であることは明らかだった。秀尽学園高校の校長が彼女を『駒』として抱えて居たいと思う理由は、そこにあるのかもしれない。

 

 

『私の場合、頼れる大人に値するサポーターがいないからね。全部自分で調べてきたの』

 

『生徒会長とか抜きにしてもスゲェって思うわ……』

 

『鴨志田や校長が、セクハラ体罰教師の問題に新島先輩を近寄らせないようにしてた理由が分かった気がする』

 

 

 僅かな期間で『ボス』の根城を割り出した新島さんの手腕に、竜司は素直に感嘆の息を吐いた。杏は何を想像したのか、遠い目をして身を震わせる。

 大方、“もしも4月の時点で新島さんが鴨志田の横暴に気付いていたら”という『たられば』の想像を膨らませていたのであろう。

 ……恐らく、ブチ切れた新島さんによる“鴨志田事件”真相解明RTAが行われていたはずだ。案件が案件のため、新島さんは容赦しなかったと思われる。

 

 ネックがあるとするなら“校長と鴨志田が敵に回る”ことだろうが、新島さんには冴さんという司法関係者がいた。

 

 新島さんのご機嫌取りに失敗すれば最後、圧政を強いた張本人の鴨志田や、事件を隠蔽しようとした校長の罪は明らかにされ、早い段階で2人の首が飛んでいたのではないだろうか――なんて予感がした。

 ……そりゃあ、セクハラ体罰事件から新島さんを遠ざけようと考える訳だ。身内に司法関係者がいるというのは、敵対者にとって厄介なことこの上ない存在となる。隠蔽工作に奔走するのは当然であろう。

 

 

『……でも、貴女達――特に明智くんには、きちんとバックアップしてくれる人や情報に詳しそうな伝手がある』

 

『同じような被害にあった高校の関係者だね』

 

『他にも、警察関係者や司法関係者、もしくは編集者や記者なんかも、横の繋がりや伝手を持っている可能性があるわ。そういう人はいる?』

 

『記者なら舞耶ねえやゆきのさんがいるね。2人は若者向けの雑誌を扱ってる部署にいるけど、同じ出版社には政治部もあったよ!』

 

 

 新島さんは、一般的な意味で“頭が切れる”才女だった。警察官を志望するだけあって、情報戦の制し方や縦横の繋がりの重要さを心得ている。

 

 僕もそれなりに精通しているつもりだけれど、尊敬する至さんの背中を見てきたこともあって、マイナーな邪道一辺倒――対『神』に特化しすぎてしまった。事件の裏側に『神』がいるか否かの気配は察知しやすいけれど、『神』が与えた試練には振り回されがちである。

 明智吾郎が邪道一点特化型だとすれば、新島さんは正道を知り尽くした人間だ。集まった情報を多角的に分析し、その見識から的確な戦い方を導き出すことを得意としている。こういう人物がブレーンに配置されたなら、その力を存分に発揮し、所属団体を勝利に導いていくのだろう。

 新島さんが僕の関係者に関する分析結果を伝えてくれなかったら、今頃、僕達は無駄に時間を浪費していたかもしれない。……そう考えると、やっぱり、新島さんを敵に回すような事態に陥らなくて本当によかったと思うのだ。

 

 舞耶さんやゆきのさんからの連絡を待つ間、伝手のある僕は頼れる大人達――聖エルミン学園高校、七姉妹学園高校、月光館学園高校、八十神高校のOBOGや現地在住の面々に連絡して話を聞くことにした。

 以前新島さんと顔を合わせた際、至さんから『この学校の生徒達を標的にして発生した事件も、東京のヤクザが関わっている』と聞いたためだ。

 

 

『秀尽学園高校でも、月光館学園高校(ウチ)と同じような事件が起こってるのね……。しかも、学校がある場所は“元締めがいると思しき東京”か……』

 

『警察から何か、元締めが分かりそうな情報とか入ってない?』

 

『支部の連中はトカゲのしっぽ扱いだったみたいで、元締めが東京のヤクザってことしか分かってなかったみたい。そいつ、支部の連中には“ミズチ”って名乗ってたらしいけど、『恐らく偽名だろう』って』

 

 

 月光館学園高校の若き理事長である荒垣命さんは、僕の問いに対し、悔しさを滲ませた様子で答えてくれた。ついでに、その支部長を薙刀一本で鎮圧したのも命さんなのだという。校内では箝口令が敷かれているが、まことしやかな噂として囁かれているそうだ。恐らく巌戸台および月光館学園高校は今後も安泰であろう。

 

 本題が片付いた後、僕は命さんに問いかける。僕の脳裏に浮かんだのは、特別刑務と言う物騒なお題目で黎と一緒にお出かけしていた双子の看守――カロリーヌとジュスティーヌだ。

 透き通った白磁の肌、美しい白銀の髪、宵闇を照らす月のような金色の瞳、鮮やかな青い服という特徴を有する【力司る者】とほぼ同じ造詣を持った少女達。

 彼女達は【力司る者】の意味を知らない様子だったけれど、2人の姿や『ワイルドのサポート役(要約)』という発言からして、歴代の面子――あの3姉弟と関わり合っている可能性が高いからだ。

 

 

『そういえば、命さんはテオドアのきょうだいに関する話とか聞いてない? 青い服を着て、金色の瞳と銀髪が特徴的な双子の女の子で、名前はカロリーヌとジュスティーヌっていうんだ』

 

『テオのきょうだいに関する話は聞いたことあるけど、双子ではなかったよ。名前も全然違ってたし。……ああでも、『イゴールさんや妹と連絡が取れない』って心配してたなぁ』

 

『イゴールって老人なら、時折黎と接触してるみたいなんだけど……』

 

『なら、テオが『行方不明』って言う訳ないよね。所在ははっきりしてるのに……どうなってるんだろう?』

 

 

 受話器越しから命さんが首を傾げる気配を感じ取る。僕も同じように首を傾げながら類推するが、結局は打ち止めになってしまった。

 

 『後で理にも連絡して、ベスから聞き出してもらうよう頼んでおく』と命さんは言った。テオドアは命さんに心酔しており、今でも命さんの家を出入りしている。

 しかし、エリザベスと命さんの仲は“可もなく不可もなく”といったところだ。テオドアや理さんを介さなければ、特に深い付き合いがあるわけでもなかったりする。

 

 

『ところで、テオドアのきょうだいの名前について、何か言ってなかった?』

 

『ラヴェンツァって言ってた。吾郎くんの言ってたカロリーヌとジュスティーヌにはかすりもしない名前だね。後から増えたのかな?』

 

 

 行方不明となっているベルベットルームの主・イゴールと【力司る者】・ラヴェンツァ、テオドアが把握していない双子・カロリーヌとジュスティーヌの存在――不穏な要素はちらほらあるが、現時点の僕達にはどうしようもない情報だ。それに、僕等が優先すべきことは東京のヤクザに関する情報である。他の情報はおいおい考えることにした。閑話休題。

 

 

『ああ、七姉妹学園高校(セブンス)の事件なら有名になってるぜ? ウチの常連客にも七姉妹学園高校(セブンス)の奴がいるんだが、学生たちが集まって『脅されて困ってる』って相談し合ってる姿を何度か見かけたな。他にも、支部の連中らしき奴らが団体でやって来ては、『“セラ”のノルマが厳しい』って零してた』

 

『“セラ”っていうのは、東京にいると思しき元締めの名前?』

 

『ああ、多分な。けど、達哉の話じゃ『詐欺グループ元締めは、下位グループには決して本名を教えない』って言うらしいぜ? 残念だが“セラ”も偽名だろう』

 

 

 七姉妹学園高校(セブンス)卒の三科雅(旧姓:華小路雅)さんを妻に持つ三科栄吉さんは、渋い顔をして教えてくれた。因みに、春日山高校(カス高)も似たような被害を受けたらしいが、七姉妹学園高校(セブンス)よりは全然マシだったらしい。むしろ、七姉妹学園高校(セブンス)の生徒が春日山高校(カス高)の生徒にバイトを紹介したことが原因による“巻き込まれた二次被害”的なものが多かったようだ。

 元春日山高校(カス高)番長(ヘッド)として、後輩たちが泣かされたことが許せなかったのだろう。栄吉さんは寿司屋営業の傍ら、珠閒瑠市の企業でOLをしているリサさんや刑事である周防兄弟と共同戦線で詐欺グループを撲滅したそうだ。仕事が終わると同時に駅のトイレへ駆け込み、死神番長メイクを施してからの出陣だったという。勿論、彼がぶちのめした相手――詐欺グループ支部長のパンツは脱がされたそうだ。流石は誉れ高きパンツ番長である。……最も、警察が来る前にきちんと穿かせ直したらしいが。

 

 

『そういや、淳の奴、『暫くの間記憶が曖昧になってた』って言ってたけど、何かあったのか? 『生徒からガザニアの絵を貰ったが、絵を譲り渡される理由に心当たりがない』って首を傾げてたな』

 

『……何かのイレギュラーで、滅びの夢の淳さんが肉体に宿ってたみたいなんだ。彼は僕等の手助けをした後、元の世界に帰っていったよ』

 

『――そうか。アイツ、達哉との約束を守ったんだな。それだけじゃなく、後輩達のこともきちんと導くとは……』

 

 

 僕の話を聞いた栄吉さんは、どこか静かな口調で、感慨深そうに呟いた。それ以上を言葉にすることは出来なかったらしく、暫し沈黙してしまったが。

 

 珠閒瑠市の事件が解決した後、栄吉さんは向こう側に帰った達哉さんに対して“淳を守る”と誓いを立てている。それから9年の時間が経過したけれど、彼はその誓いを今でも守り続けていた。

 滅びの夢における栄吉さんと淳さんの関係は幼馴染。こちらの2人の関係は高校の同級生で、同じ事件に巻き込まれた被害者同士。形は変わってしまっても、交流は途絶えず続いている。

 達哉さんへの誓いがある限り、栄吉さんは橿原さんを見守り続けるのであろう。勿論、自分自身の幸せ――妻の雅さんや寿司屋の経営――を守りながら。

 

 

『八十神高校でも同じような手口の事件が発生したって聞きましたが、その後は? 支部長、捕まったんですよね?』

 

『ああ。捕まえたには捕まえたんだが……そいつ、自殺したんだ』

 

『自殺……!?』

 

『『東京にいる元締めの名前はあるが、本名ではない』って言ってた矢先だったってのに……』

 

 

 八十稲羽の刑事である堂島さんが沈痛そうな様子で教えてくれた。素直に取り調べに応じていた支部長は、ある日突然自殺したのだという。御影町、珠閒瑠、巌戸台、八十稲羽の高校が狙われた理由を『“一部の連中なら察しが付く”共通点があるらしい』と仄めかした翌日のことだったそうだ。

 犯人が自殺したという幕切れに、各メディアからは非難轟々の嵐が巻き起こった。取り調べが厳しくて自殺したのではないか、という話題が跋扈した。『東京の弁護士が出てきて謝罪と賠償を請求されて大騒ぎになった』と堂島さんがぼやいていたが、その弁護士の名前は獅童の協力者と同姓同名であった。

 それだけではない。周囲からのバッシングにもめげず、各町の警察官――周防兄弟、明彦さん、堂島さんが手を組んで黒幕を追いかけたのだが、謎の圧力がかかって捜査が打ち切られてしまったのだ。『上層部が黙って首を振るあたり、圧力をかけた連中はかなりの権力者だろうな』とは堂島さんの談である。

 

 本題の話にひと段落付いた後、堂島さんは少し躊躇いがちに問いかけてきた。

 

 

『なあ、明智くん。足立の奴、元気にやってるか?』

 

『足立さんですか? ええ。公安部で頑張ってるみたいです。そっちは変わりありませんか?』

 

『ああ――そうだな……』

 

 

 僕の問いかけに対し、堂島さんはやはり、何かを躊躇うように間を置いた。電話越しに、息をひそめるような音が入る。

 まるで、周囲に何かがいないかどうか確認しているかのようだ。僕がそう思った後、警戒態勢を敷いたままの堂島さんが声を潜めつつ返答して来た。

 

 

『足立の出向が決まった直後、東京の方から新しい署長が赴任してきてな。そいつがやって来て以降、八十稲羽周辺に怪しい車や連中が出入りするようになった』

 

『怪しい連中?』

 

『と言っても、奴らの身分はしっかりしてる。東京に拠点を置く政治家や、その関係者達だな』

 

 

 『態度が悪いってことで、住民と問題を起こすこともある。……まあ、大抵金や権力の力でなあなあにされちまうが』と付け加えて、堂島さんは深々とため息をつく。足立の出向と入れ替わりに、八十稲羽の治安は不穏な気配を漂わせているみたいだ。

 自分達の根城を荒らされたマリーさんとイザナミが黙っている訳ないと思うが、今の彼女達は全盛期の力を振るえない状況にある。彼女達が想定するような撃退方法――霧関係のアレコレ――を使えないでいる可能性があった。あの手段は大分過激だから。

 

 『奴らが問題を起こす度に八十稲羽の天気が荒れる』なんて話をしていた堂島さんだが、再び、何かを躊躇うように間を置いた。警戒態勢は続行されている。

 

 

『……それと、最近赴任して来た署長のことなんだが、俺はどうしても奴のことを好きになれん』

 

 

 “新しい署長が赴任してから、八十稲羽に不穏な気配が漂っている”以外にも、堂島さんが新署長の存在を『きな臭い』と思う理由があるのだろう。

 新所長は気さくで社交的な人物であるが、根回しが上手く、権力者が出てくると即座に媚び諂う一面の持ち主とのこと。そうと悟られないよう立ち回るのが上手いタイプらしい。

 他にも、新署長はやけに堂島さんを気に入っているらしく、よく話しかけてくるそうだ。時折、理由を付けて家に上がり込もうとしたり、堂島一家の団欒に混ざろうとしている節があるとか。

 

 ただ、新署長の優先順位としては、堂島さんよりも菜々子ちゃんと凛さんにウエイトが傾いているようだ。普通に考えれば事案なのだが、新署長という肩書が疚しい気配を相殺しているのだろう。

 ソイツが菜々子ちゃんや凛さんと話をしている光景を、住民達は問題や違和感なく受け止めていた。不穏な気配を感じているのは、堂島さんや旧【特別捜査隊】の面々だけらしい。

 

 

『アイツ、また1人で全部背負い込もうなんて考えてないだろうな……。【八十稲羽連続殺人事件】のときと同じように、俺達の知らない合間に、俺達がアイツの枷になってるんじゃ……』

 

 

 堂島さんは八十稲羽という田舎の刑事であるが、刑事としての勘や能力は、東京にいる有象無象の警察官よりも遥かに優れている。――故に、薄々であるが、“足立の栄転話に裏がある”という予感を抱いている様子だ。

 

 それ以上堂島さんに何かを言わせてしまえば、僕が足立の“調教”を受ける羽目になりかねない。だから僕は咄嗟に『他に変わったことはないですか?』と、無理矢理話題を変えることにした。

 結果、『マリーさんがマーガレットを見かけなくなって心配している』、『八十稲羽の怪異・空飛ぶ青コート喪女の目撃証言がぱったり途絶えた』という話を聞くに至る。閑話休題。

 

 

『秀尽学園高校の事件内容、聞いたよ。アヤセたちの学校……聖エルミン学園高校の手口と一緒だね』

 

『そっちはもう落ち着いたって聞きましたが、どんな情報が流れてますか? 噂レベルでも構わないんですけど』

 

『男子生徒は高額バイトで薬物を運ばされたり、女子生徒は難癖付けられて恐喝されて夜のバイトさせられたりしたっぽい。元締めが東京のヤクザってことしか分からないのは他と一緒だけど、その支部長は個人的に『有栖川家に対する恨みがある』って言ったみたいだよ』

 

 

 『それが、御影町の支部長に任命された理由だって証言したみたい』と、御影町でOLをしている綾瀬さんは付け加えてくれた。因みに、支部長は元締めの名前を“シロガネ”と証言したそうだが、恐らくそれも偽名だろうとのことだ。

 しかも、その支部長も獄中自殺したと言う。思った以上に素直に証言するので、警察が糸口を手にできると期待していた矢先のことだったらしい。今ではもう、その話題を出すことすらタブーになっている様子だ。堂島さんの証言と併せて考えると、やはり圧力がかかったのだろう。

 

 一通りの情報が揃ったので、新島さんへの報告がてら、僕の家で簡易的な報告会を執り行う。

 

 “被害に合った学校のOBOGにペルソナ使いがおり、その面々を率いていたのが有栖川の関係者である”という繋がりや、『素直に自供した犯人が全員自殺している』や『警察の方では捜査が打ち切られた』という話を聞いた面々は、顔を見合わせて渋い顔をする。

 “司法関係者と繋がりがある人間が、そのマフィアを守ろうとしている”――この事実が、ターゲットが如何に狙いにくい相手であるかを示していた。司法関係者が敵に回る/司法関係者から入手できる情報に制限がかかっているとなると、他に情報を入手できそうなルートは記者だろう。

 

 

『そうなると、頼みの綱は同業者の繋がりを持っている記者達になるのね……。やっぱり、頼りになる大人達が手を貸してくれるとなれば、調査も手早く進むってことか』

 

『それだけじゃないよ。新島さんがアタリを付けてくれなかったら、今でも情報を入手する経路で躓いていたかもしれない。本当に助かったよ』

 

 

 黎の言葉を聞いた新島さんは、どこか照れくさそうな素振りを見せつつ紅茶を飲んでいた。丁度そのタイミングで、黎の携帯電話が鳴り響く。

 

 電話の主は舞耶さんで、『同業者に方々掛け合った結果、『条件次第では手を貸してもいい』と名乗り出た記者がいる』とのことらしい。彼女はバー『にゅうカマー』で待っているという。……待ち合わせ場所は、所謂“オカマバー”であった。

 情報収集役として赴いたのは僕、黎、モルガナである。因みに、僕は某メイドの一件で身に纏っていた変装に野暮ったい黒眼鏡を追加して入店した。探偵王子の弟子がオカマバーに入るなんて噂になったら、様々な方面で不利益を被りそうな気がしたためだ。

 

 

「いやー、本当に来るとは思わなかったわー! その勇気に免じて何でも教えてあげるー!」

 

「それじゃあ、舞耶ねえとはどのようなご関係なんですか? 私、舞耶ねえとは親戚で、彼女のことは実の姉みたいに思っているんです」

 

「舞耶とはね、気づいたら腐れ縁になってたのよ。……おかしいわよねー。舞耶たちと会うと、『人間相手に取材をしてたはずなのに、どうしてか悪魔に取材する』羽目になるんだもん。当時は政治部所属だったから、『政治経済の取材してたはずなのに、なんでオカルトの取材やってるんだろ?』って首傾げながら悪魔の写真撮ってたわー……」

 

 

 件の新聞記者――大宅一子さんは遠い目をして天を仰いだ。

 

 ……成程。彼女も舞耶さんとゆきのさんによる『大変不本意極まりませんでした』系の事件に巻き込まれた被害者らしい。勿論、その一件の記事はボツになったようだ。

 悪魔と対峙して無事に返って来ることは――程度によってだが――どんなペルソナ使いでも難しい。何の力も持っていない生身の一般人で、よく生きていたものだ。

 大宅さんは何も語らなかったし、語りたがらなかった。僕たちも聞きたがらなかった。何ごともなかったかのように、黎が口を開く。

 

 

「それじゃあ、本題に入ります。渋谷の街を牛耳る闇について、教えていただけますか?」

 

「……へぇ。どうして知りたいの?」

 

「その元締めに用があるんです」

 

 

 大宅さんは暫し黙った後、「教えてあげてもいいけど」と言って取引を持ち掛けてきた。彼女は現在、【心の怪盗団】――【ザ・ファントム】を追いかけているらしい。元々は【廃人化】や【精神暴走】に関する事件を追いかけていたのだが、情報が全然手に入らなくて暗礁に乗り上げていたという。

 記者が【心の怪盗団】というオカルトじみたものを追うとは、大宅さん自らがオカルト方面に足を突っ込んでいくようにしか思えない。「オカルトは懲りたはずでは?」と僕が問えば、大宅さんは乾いた笑みを浮かべながら酒を煽った。……多分、一番泣きたいのは大宅さん本人なのかもしれない。

 

 大宅さんが黎に取引を持ち掛けたのは、舞耶さんから“黎が秀尽学園高校の生徒である”ことを聞いたためだ。

 【心の怪盗団】事件の発端は鴨志田卓の一件である。そのため、「黎なら【心の怪盗団】に関する裏話を知っているのでは?」と思ったそうだ。

 嗤えないことに、僕は【怪盗団】の人間だし、黎は僕たちを束ねる【怪盗団】のリーダーご本人である。僕たちは思わず顔を見合わせた。

 

 大宅さんは「鴨志田の被害に合っていた生徒を独占取材したい」と言う。誰を紹介するかで、【怪盗団】の存続を揺るがしかねない事態に陥ってしまいそうだ。どうしようか、と、僕と黎が目で合図をしていたときだった。

 

 

「ミシマを紹介すればいいんじゃないか? アイツは【怪盗団】の味方だからな」

 

 

 モルガナの助け舟で、大宅さんに紹介する生徒は三島に決定した。大宅さんは上機嫌になり、僕らの交換条件を受け入れてくれた。

 「ワガハイの機転のおかげだ。感謝しろよ」と主張するモルガナには、後で至さん作のマグロステーキを進呈しておこう。

 

 

「……【廃人化】事件と【怪盗団】、なんかどっかで繋がってるような気がするんだよなぁ。都合のいい嗅覚なのかなぁ……」

 

 

 ……大宅さんの鋭い嗅覚に、僕はひっそり感嘆する。彼女も敵に回したくないタイプだ。できる限り協力関係を保ちたいものである。

 

 内心身構えていた僕たちの様子を知ってか知らずか、大宅さんはグラスの酒を煽った。

 そうして、真顔で僕たちへと向き直る。彼女はゆっくりと、噛みしめるように、マフィアの名前を口にした。

 

 

「金城潤矢。――キミたちが探しているのは、金城だと思う」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 金城にとって、渋谷は“金を手に入れる銀行”という認識らしい。奴の認知は歪んでおり、渋谷を歩き回る人間はすべてATMだと思っているようだ。珠閒瑠の一件で舞耶さんが言っていた「キャッシュディスペンサー=金づる」という言葉が頭によぎった。

 

 歪んでいるのは人間に対する認知だけではなく、渋谷全体にも及んでいるようだ。その証拠に、鴨志田や班目の【パレス】を攻略した際、【パレス】以外の街並みは普通と同じだった。風にあおられた札束が宙を舞う。路肩には倒れたっきり動かないATM人間が転がっていた。マフィアのボスを張るだけあって、【パレス】の規模も桁違いだ。

 早速僕たちは、金城の庭である渋谷を散策する。だが、渋谷全体から金城という男を探すのは骨が折れるどころの話ではなかった。渋谷の街は広い。話を聞けそうなATM人間はショートしている者が大半で、少し話をしただけで倒れてしまう。彼等は一様に『金城は『足がつかない場所』にいる』と言い、それっきりだ。

 その後【パレス】を見つけた僕等は茫然とした。金城の【パレス】は空中に浮かんでいたのである。侵入の手立てがないため、僕達はその日の探索を切り上げて現実世界へ帰還する。強い疲労感に体を引きずりながら、僕達は一端家路についた。但し、僕の場合は例外で、黎をルブランまで送るために四軒茶屋へ寄り道することにしたのだが。

 

 一応、これは獅童智明の指示である。『【怪盗団】関係者に貼り付け』と言われたので、僕はその通りにしているだけだ。

 ここ最近、新島さん関連の出来事で伸ばし伸ばしになっていたデートの代替にしている訳ではない。断じて。だってモルガナ同伴だし。

 

 

「ここまで来たのにお手上げ侍になるとは思わなかったよ。……まさか、入り口が空の上にあるなんて」

 

「……ワガハイ、お手上げ侍が何を意味してるかは分からないけどよ。カネシロの【パレス】は、文字通り“難攻不落の城”って感じだな。規模も発想も桁違いだ」

 

 

 空飛ぶ銀行の有様を思い出した黎が小さく両手を挙げるジェスチャーをし、モルガナは眉間の皴を深くする。……致し方ないか。入り口を探す時点で躓くなんて、今回の【パレス】が初めてのことだ。

 鴨志田や班目の【パレス】は地上にあったし、本丸に繋がりそうな建造物が近場にあったから、侵入経路は楽に確保できている。しかし、金城の【パレス】にそんなものはない。

 渋谷の建造物を足場にしたとしても届かないことは明白だ。『足がつかない場所』という言葉/認知が、あの【パレス】を作り上げた理由なのであろう。

 

 

「あの認知を変えるには、金城の居場所を掴むか、金城本人から【パレス】に入ることを許される存在として認知される必要がある」

 

「どの道、金城潤矢に直接接触しなきゃいけないってことか。難しい話だね」

 

 

 黎と僕は顔を見合わせる。

 

 幾ら“最終的に悪党を【改心】させる”とはいえ、危険な橋を渡らずに済むならそうしたい。せめて、【廃人化】の黒幕・獅童正義を【改心】する手立てが見つかるまでは生き延びなければ。

 しかし、このまま安全策に拘り続けても、突破口が見当たらないのも事実であった。誰を囮役にするかでも悩みどころである。尚、一般人枠は却下だ。新島さんもいるし、これ以上増やすのはリスクが大きすぎる。

 

 

「現状、ワガハイ達には【パレス】に侵入するための手立てが浮かばないからな。……ニージマみたいな奴が参謀役にいてくれたら、突破口が開けそうな気がするんだが――」

 

 

 モルガナが言い終わる直前、黎のスマホが鳴り響いた。誰かからメッセージが来たらしい。彼女がそれを確認していたとき、僕のスマホも鳴り響いた。メッセージの差出人は警察キャリア――次期参事官と噂される真田明彦さんからだ。

 

 珠閒瑠市からは周防兄弟、巌戸台からは明彦さん、八十稲羽からは堂島さんが、詐欺恐喝グループの元締めを検挙するために合同捜査を行っていた話は耳にしていた。捜査が突如打ち切りになり、以後はタブー扱いにされてしまったことも。

 だが、周防兄弟や明彦さんは諦めなかった。警察志望の千枝さんも加わり、無断で捜査を行っているという。堂島さんは別件に駆り出されているため身動きが取れずにいるようで、東京近隣の大学へ進学した千枝さんは彼の代わりに協力を申し出たという。勿論、周囲からのクレームおよび風当たりは酷いようだ。

 それから、『先日僕が探偵組や司法関係者組一同へ提供した情報であり依頼――金城潤矢に関する調査報告を直接伝えたい』ということで、彼らは今、四軒茶屋のルブランに集っているらしい。……何故だろう。佐倉さんが可哀想なことになっていそうな予感がする。

 

 明彦さんはプロテインジャンキーだし、千枝さんはよく食べる人だ。周防刑事は甘党だし、達哉さんは甘いものが苦手である。

 後者は警戒しなくても良さそうだが、問題は前者だ。真田さんと千枝さんがフルスロットルしていなければいいのだが。

 

 

「吾郎。大宅さんが、『金城には黒いつながりがあるから、調査を止めた方が賢明だ』ってメッセージくれた」

 

「そっか。こっちも明彦さんから連絡入ったんだ。『明彦さんたちは今ルブランにいる』って。金城に関する情報を直接手渡したいってさ」

 

「よし。じゃあ、急いでルブランへ帰ろう」

 

 

 家路を急ごうと足を速めた黎の背中を追った僕は、ふと気づいた。

 周防刑事――つまり周防克哉さんは、猫大好きな猫アレルギーである。

 

 

「モルガナ。ルブランにいる刑事さん、猫アレルギーなんだ」

 

「ああそうか。現実のモルガナは猫だから気をつけないと。周防刑事のアレルギーは、一歩間違うと命に係わる系のレベルだったし……」

 

「……了解した。ワガハイ、適当な場所で時間を潰してくる」

 

 

 猫と言われたモルガナは不機嫌そうに眉をひそめたが、該当者のアレルギーが『命に係わる』レベルだと知って、渋々頷いた。黎の鞄から飛び出すと、彼は一足先にルブラン近辺へと駆け抜けていく。本当に足が速い。

 

 数分遅れでルブランに辿り着いた僕たちが扉を開けると、渋い顔をした佐倉さんが僕たちを迎えてくれた。僕らを見て表情を緩ませながらも、客には迷惑そうに視線を向け直す。

 気持ちは分からなくもない。だって、団体席に座っている客がとんでもないのだ。少女はカレーのお代わり4皿目だし、銀髪の年若い刑事はカレーにプロテインをかけている。

 サングラスをかけた刑事はコーヒーにミルクと角砂糖を投入し続けていた。辛うじて普通の客と言えそうなのは、粛々とコーヒーを飲み進める年若い刑事だけなのだから。

 

 

「あ、おかえり吾郎くん! 待ってたよ!」

 

「……カレー4皿お代わりする程待たせてしまってすみません、千枝さん」

 

「今4皿目食べ終わったんだー。ここのカレー、本当においしくてさー!」

 

 

 里中千枝さんはうっとりとした口調でルブランのカレーを絶賛した。女性から褒められるのは嬉しいらしく、佐倉さんがちょっと得意げに笑った。しかし、彼はカレー鍋に視線を向けると、困ったような顔をする。大方、面々の類稀ない食欲によって鍋の中身が大変なことになったのであろう。

 他にもカレーを食べ進めている人物がいる。次期参事官と目される警察キャリア、真田明彦さんだ。明彦さんも千枝さん並みにお代わりを繰り返しており、おまけに“特性カレーにプロテインをかけて食べる”という暴挙に出ていた。佐倉さんが眉間に皺を寄せるのは当然であった。

 

 荒垣夫婦の結婚式で、料理にプロテインをかけて真次郎さんに叱られていた男だ。未だジャンキーは治っていないらしい。閑話休題。

 

 

「吾郎くん。例の件に関する調査報告だが――」

 

 

 ようやく自分が飲める味になったらしい。周防刑事はコーヒーを啜ると口を開き、ちらりと黎へ視線を向けた。意味が分からない黎は首を傾げる。

 それを見た周防刑事は、何とも言い難い表情で僕を見返した。……おそらく、僕が黎に何も言っていないことに関して思うところがあるのだろう。

 『もう少し待ってほしい』の意を込めて、僕は小さくかぶりを振って周防刑事を見返した。他の面々と顔を合わせた刑事組と志望者は、僕の意志を汲んでくれた。

 

 

「単刀直入に言う。“件の男”には、キミが追いかけてる“黒幕”が関わってた」

 

「……そうですか」

 

「あと、以前の“画家”にも“黒幕”との繋がりを発見した。金銭的な方面で、な」

 

 

 “件の男”は調査を依頼した金城潤矢、僕が追いかけている黒幕は獅童正義。“画家”である班目一流斎にも獅童との繋がりがあった――これでまた、獅童との因縁が増えた。

 

 

(秀尽学園高校の校長が獅童と繋がっていて、鴨志田の暴挙を野放しにしていた。班目と金城は獅童にとって金の出所……。【怪盗団】のターゲットに選ばれた3人は、獅童の関係者ばかりだ)

 

 

 1度や2度なら、偶然と言い張れるだろう。だが、3度目となれば最早“故意”としか言いようがない。

 

 【怪盗団】は“獅童に係わる人間たちをターゲットに()()()()()()()”。自分たちにその気がなくても、何かが意図的に獅童の関係者を狙うよう介入してくる。『奴』は手を変え品を変えて、獅童に至るまでの道筋を作っていた。そんな真似ができるのは人間ではない。『神』と呼ばれる類だ。

 半信半疑だった――そうでなければよいと思っていた予感が的中し、僕は大きく息を吐く。同時に湧き上がってくるのは、実の父に対するささやかな希望(まやかし)だった。“『神』の介入がなければ、獅童は善人のままだったのではないか”なんて、馬鹿なことを夢想する。もしかしたら、僕も認められて愛されるチャンスがあるのではないか、と。

 

 そんなことはない。そんなことはあり得ない。だって、獅童が議員になってから、人を道具のように使い潰すやり方は徹頭徹尾変わっていないのだ。

 政敵も、使えなくなった自分の側近も、気に入らない人間も、僕を身籠った母のことだって容赦なく切り捨ててる。【廃人化】ビジネスが始まる以前から。

 『人が変わったようだった』という噂だって一度も聞いたことがなかった。『故人である五口愛歌と、現在も生きている獅童智明』に対して愛情を示すこと以外、特に違和感はない。

 

 

「……吾郎。そろそろ、覚悟を決めたらどうだ?」

 

「達哉さん……」

 

 

 コーヒーを飲み干した達哉さんが、静かな面持ちで僕を見つめる。

 僕等と一緒に珠閒瑠を駆け回った“彼”ではないのに、“彼”と同じような面持ちだった。

 

 

「そうだな。何も言われないまま……というのは、辛いぞ」

 

 

 カレーを食べ進めていた明彦さんも、沈痛そうな面持ちで頷いた。明彦さんは真次郎さんの一件を言っているのだろう。兄弟同然に育った彼らは、真次郎さんのペルソナ暴走事件から大きくすれ違ってしまっていた。それ故に、真次郎さんの戦線復帰に誰よりも喜んだのは明彦さんである。

 けれど、また一緒に戦えるという喜びから、明彦さんはさんの違和感に気づけなかった。真次郎さんが乾さんに殺されるために帰ってきたことに気づけなかった。その違和感を察知したときにはもう、真次郎さんは覚悟を決めていたし、乾さんも復讐のために動き出していた。

 真次郎さんは明彦さんに対して何も言わなかった。誰にも何も言おうとしなかった。だからこそ、真次郎さんがストレガのタカヤに撃たれるという事件が発生した際、特別活動部の面々は強い衝撃を受けたのだ。それは僕も同じだったし、察していて何もできなかった至さんは殊更辛かっただろう。

 

 僕は黎へ視線を向けた。黎は何も言わないが、僕のことを心配してくれていることが伝わってくる。不安であること以上に、僕を信じて待っていてくれている。

 

 思えば、僕は今まで黎や【怪盗団】の面々に隠し事ばかりしていた。僕が【改心】させたい相手であり黎の冤罪をでっちあげた犯人――獅童正義が僕の父親であることも、奴の後ろに『神』が蠢いていることも、何も言っていない。

 今回の一件で確証は得た。仲間たちに話さねばならぬと思うのだが、口を開くと言葉が喉に閊えて出てこない。そんな自分の弱さが嫌で、この世から消えてしまいたいとさえ思ってしまう。……いや、本当は、今すぐ消えてしまうべきなのだろう。僕は。

 

 

「黎。僕は――」

 

「吾郎、無理しないで。……顔色悪いよ」

 

 

 半ば明彦さんや達哉さんに促されるまま、僕は口を開く。だが、黎によって言葉を塞がれた。

 僕にはそんなつもりはないのだが、周りから心配そうな眼差しを向けられるあたり、相当な顔をしていたのだろう。

 

 

「……ごめん」

 

 

 ――結局僕は、何も言えないままだった。

 

 

 

 

 

 そうして、その日の夜。

 

 

克哉:ルブランからの帰り、黒猫を見かけた。

 

吾郎:アレルギー大丈夫だったんですか!?

 

克哉:不思議なことに、あの黒猫には近づいてもアレルギーが出なくてね。嬉しくてつい2時間ほど戯れてしまったんだ。

 

吾郎:そ、そうですか……。

 

克哉:しかもその猫、喋るんだ! ペルソナも使えるんだ!! アレルギーが出ないで猫と戯れることができるなんて最高だなあ!!

 

達哉:そいつ、黎やお前の名前を連呼してたんだが、知り合いか?

 

 

 降って湧いたようなモルガナの災難に、僕は遠い目をした。

 そういえば僕らは、周防刑事が猫好きだとは伝えていなかったな、と。

 

 

 

 

◇◇◇◆

 

 

 

 煌びやかなカジノは今日も満員御礼。誰も彼もが賭け狂っている。ここが『元になっているのは裁判所』、『検事の心象世界』だと聞いたら、誰もが絶句するであろう。自身が勝利するためにお膳立てされた、歪みに満ちた賭博場。

 認知で作り上げられた人間達は、朝から晩までゲーム盤から離れない。他人のことなどお構いなしに、自分の賭け事に興じるのだ。もし、この認知存在たちが“他人の動向に反応する”としたら、誰かが大金星を挙げたときくらいだ。

 

 ゆらゆら揺蕩う心の海をかき分けて、青年は勝手知ったるの調子でカジノ内を闊歩する。

 

 ダイスゲームも、スロットも、闘技場も、巨大迷路も、ルーレットも、青年にとっては興味を惹かれる対象になり得ない。目的地は只1つ――この賭博場の女支配人/【パレス】の主だ。

 誰かに指摘されることも無く、シャドウや認知存在――果ては【パレス】の主からも咎められることなく、青年は目的地の手前に辿り着く。眼前には、大きく傾いた巨大な天秤。

 

 

「この【パレス】も、ずいぶん大きくなったな。……いずれ来るべきときの為に、まだまだ()()()()()()()()()必要はあるが」

 

 

 本来であれば、この天秤皿を水平にして橋にしなければ、支配人室に入れない。だが、青年は気にせず一歩踏み出す。足を踏み外すことなく空中を闊歩し、青年は支配人室の扉を開けた。

 そこにいたのは、黒いドレスに身を包んだ女支配人。彼女は部屋の一室に体を横たえて眠っていた。黒いアイシャドウに彩られた瞼は閉じられていて、起きる気配は一切ない。

 現実での女検事も、()()()落ち着いた心持ちでいるはずだ。――最も、【パレス】の主となってしまった時点で、彼女の在り方は大分歪みが生じているのだが。

 

 

「――()()の時間だ、新島冴」

 

 

 青年が厳かに告げれば、世界が大きく歪み始める。支配人室に響いたのは、上司や同僚の嘲り声だ。

 

 『休みを取った方がいい』としつこく声をかけてきたくせに、いざ休みを取ろうとすれば『今一番忙しい時に何を考えているんだ』と手のひらを返して嫌味をぶつけた特捜部長。

 ここ最近、頻繁に妹・真の素行不良を報告しては『仕事にかまけているからこうなった』、『新島さんの保護者として、貴女は自覚が足りない』と責める秀尽学園高校の校長。

 新島冴が苦悩する脇から『女が生意気言うからこうなるんだ』、『ガキの面倒も見れない奴が今の地位にいるのはおかしい』だのと嘲笑ってくる無能な同僚ども。

 

 それらの怒りを、たった一点へと収束させる。矛先を向ける相手は――新島冴の妹・真。冴の庇護を受けなければいけない未成年にして学生でありながら、冴の忠告など耳を貸さず、安寧の道を逸れて勝手な行動をするようになった“邪魔者”だ。

 “【精神暴走】や【廃人化】に関する事件で忙しい冴に迷惑をかけるだけの役立たず。妹さえちゃんとしてくれていれば、新島冴が他人から足を引っ張られるようなことはなくなるのに。なんて疎ましいのだろう”、“明智吾郎のような優秀な人間がきょうだいだったら良かった”――そんな風に意識誘導を行った刹那、女支配人が目を覚ました。

 

 

「――ああ。ああ。ああ! なんて疎ましいのかしら! どうしてあの子は昔から、私の邪魔ばかりするの!?」

 

 

 目覚めた女支配人は、父を失ってから検事としてのし上がるまでの人生を回顧しながら、妹のために甘んじて受けてきた理不尽への怒りをぶちまける。妹が自立していさえすれば背負うことのなかった苦労の数々を口に出しては、更に怒りを募らせていった。

 ヒステリックに叫び散らす女支配人の姿を見届けて、青年は踵を返した。新島冴を【精神暴走】させたのは目的通りだが、折角なので()()()()にもちょっかいを出しに行く。所謂“保険”というやつだ。策は張り巡らせるに越したことはない。

 

 ざぷん、と、水の音がした。

 

 煌びやかな賭博場は溶けるように消え去り、広がったのは何処までも続く真っ青な水底。ゆらゆらと揺蕩う心の海の中で、探していた新島真の姿を見つけた。青年は朗らかな笑顔を保ったまま、真に声をかけた。冴のときと同じように力を行使すれば、沢山の声が響き渡った。

 『私はキミを信頼していたから頼んだのに』、『キミの話を聞いたお姉さんが嘆いていたぞ。お姉さんに申し訳ないとは思わないのか?』、『このままでは、キミも私も居場所を失うだろう』と泣き落としをかける秀尽学園高校の校長。

 『貴女なら何とかしてくれると思ったから助けを求めたのに』、『どうして自分ばかりがこんな目に。もう、ヤクザに支払う金なんてない』、『鴨志田事件を見て見ぬふりしていた生徒会長じゃ、僕も切り捨てる対象なのか』と言いたい放題な秀尽学園高校の生徒。そして――

 

 

『今の貴女は、私の足を引っ張る役立たず!』

 

『明智くんみたいに優秀な子の方が良かった』

 

 

 新島冴が言い放った言葉を、集中的に、強く響かせる。

 明智吾郎の名前が出た途端、真は顔を真っ青にして彼の名前を鸚鵡返しにした。

 金色の双瞼に浮かぶのは、明智吾郎への羨望と怒り。

 

 “このままでは、自分は名実ともに“役立たず”になってしまう”、“居場所を失ってしまう”――そんな風に意識を誘導してやると、どこからか、バイクのエンジン音が響き渡った。その音に呼応するかの如く、真の周辺に黒い霧が纏わりつく。エンジン音はどんどん音量を上げていき、終いには明らかな異常音へと変貌していった。

 できればそのまま大破してくれれば万々歳だが、それでは()()()()()だろう。青年はくつくつと笑った。それに、新島真の心は強い。“反逆の徒”としての才能と加護のため、青年が施した『暴走』も簡単に解くことができるはずだ。

 

 まあ、元々彼女に施した『暴走』は一時的なものだった。金城の元へ突っ込んでくれれば、正直な話、後はもう()()()()()()()()()()()()

 

 

「私だって……私だって、出来ることがある……! 役立たずなんかじゃないんだ!!」

 

 

 黒い影を纏った少女は当てもなく駆け出した。

 その背中が見えなくなるのを見送って、青年は目的を果たしたと言わんばかりに歩き出す。

 

 

「意外と使えるね、ニャルラトホテプ」

 

『――調子に乗るなよ。■■■■■■の端末風情が……!』

 

 

 青年の内側から、不快そうに呻く声が聞こえてきた。

 

 

 

◆◇◇◇

 

 

 

 本日、僕の予定は“朝から放課後に相当する時間帯まで、検事局で仕事”である。学校側には既に申請済みだ。更に言えば、今日の予定では、新島さんと一緒に金城の【パレス】の入り口まで行ってみる予定となっていた。

 目的は敵情視察であり、新島さんに開示はしたがモデルケースを示せなかった【パレス】のあれこれを実際に見て貰うためである。……と言っても、新島さんを案内するのは【パレス】の外観を臨める場所までだ。

 

 金城の【パレス】に侵入する方法は、現状、まだ決定していない。方法は2つ――“金城の居場所を見つけ出す”、“金城に、僕達が【パレス】を出入りする資格を持っていると認知させる”――あるが、奴は渋谷全土を根城と認知しているヤクザ。現時点の【怪盗団】は、奴の喉元に迫る方法はおろか、奴が根城にしている場所すらつかめていない。

 他にも、【パレス】内部に足を踏み入れれば、【メメントス】よりも強い個体のシャドウがわらわら出現する。場合によっては、【パレス】の主たる金城のシャドウと一戦交える可能性も想定できた。今回はアイギスが同行できない――【メメントス】攻略時のデータ解析作業が行われる日と被ってしまった――ため、非戦闘員を連れた状態での攻略は厳しい。

 新島さんは良くも悪くも“物わかりのいい”タイプ。故に、ここまで説明すれば『後は【怪盗団】の領分である』と理解してくれるはずだ。どんな反応をするかは未知数だけれど、きっと、『後は吉報を待つのみ』であることを悟り、最良の行動を取ってくれるであろう。

 

 そんなことを思案していた僕は、勝手知ったるの調子で冴さんの部屋へ足を踏み入れる。いの一番に飛び込んできたのは、この世の終わりを見たような顔をして手を組む冴さんの姿だった。

 

 

「さ、冴さん……? 朝から一体どうしたんです……?」

 

「……ああ、明智くん。おはよう」

 

 

 挨拶の言葉が引っ込んでしまった僕とは対照的に、冴さんは絞り出すような調子で挨拶をしてきた。僕もおずおずとそれに返す。……なんだかとても元気がない。

 いつもの調子は完全になりを潜めており、生気の大半が失われている。反射的に後ずさりしてしまった程に、今の冴さんの姿は異様であった。

 

 

「何かあったんですか?」

 

「大したことじゃないのよ。……ただ、結構きつく当たってしまったなって思って、自己嫌悪してるだけ」

 

「“きつく当たった”って、誰に?」

 

「……昨日、真――妹に八つ当たりしてしまったの。今思えば、あのときの私、本当に()()()()()()()のね……」

 

 

 「あんなことがあったのに、お弁当を用意してくれた真は本当に最高の妹ね」と惚気つつ、冴さんは、ぽつぽつと何があったかを聞かせてくれた。

 

 足立や僕からの声掛けもあり、冴さんは新島さんとのコミュニケーションを図る時間を作ろうと思い至った。休暇の申請を出すため特捜部長に声をかけたところ、休暇申請が通った代わりに痛烈な嫌味を浴びせられたという。近くを通りかかった男の同僚からも、すれ違いざまに嘲笑われたそうだ。

 悪いことは更に続くようで、特捜部長に嫌味をぶつけられた直後、今度は秀尽学園高校の校長からクレームの電話が来た。前回同様、『新島さんが懲りずに素行不良を続けている』という内容で、仕事に支障をきたす程の長電話だったという。そこで冴さんは校長から保護者としての自覚や役目について苦言を呈されたそうだ。

 ささくれ立っていた冴さんの心は、自宅に帰って新島さんの姿を見た瞬間、唐突に爆発した。大切な妹である新島さんのことを“自分の足を引っ張る役立たず”と認識し、その疎ましさや鬱憤に突き動かされるような形で、酷い言葉をぶつけてしまったのだという。

 

 “言葉を発している最中は『当然のことを言ったまで』と思っていたが、時間経過によって頭が冷えたことで、後悔と自己嫌悪の感情に苛まれている”――冴さんはそう締めくくり、ため息をつく。

 休暇を取ったところまでは良かったが、その後が最悪なコンボを決めている。赤の他人である僕ですら、感嘆の言葉がぽろりと零れるのだ。肉親の新島さんにとっては、非常に辛かろう。

 

 

「真と明智くんを比較対象にした挙句、明智くんの方に軍配を上げてしまうなんて……。やっぱり私、()()()()()()()んだわ」

 

「冴さん。その発言、大分失礼なのでは?」

 

「明智くん。私のこれを貴方に当てはめるなら、“有栖川さんとそこら辺の有象無象の女を比較して、後者に軍配を上げる”ような状態よ。有栖川さん以外の女性を選ぶ貴方自身を目の当たりにしたら、貴方は最初に何を思うかしら?」

 

「――ああ成程。よく分かりました」

 

 

 冴さんのたとえ話を聞いて、僕は身の毛がよだつような気分に駆られた。そんな自分自身の姿を見かけたり、自分がそんなことをしてしまったのなら、確かに()()()()()()()と思うだろう。戦慄する僕の様子を見た冴さんは、納得したように頷き返した。

 姉妹水入らずで過ごすはずだった休暇の予定は大幅に狂い、まずは妹に謝罪するところから始めなければいけない。自分が作ってしまったハードルの高さに頭を掻き毟っていた冴さんであったが、「今は仕事を片付けるのが先決」と自己暗示をかけて、やっと普段通りに動き始めた。

 

 それを見届けた後、仕事の傍ら、僕はスマホをいじって黎にメッセージを送っておく。

 

 僕と黎はルブランで新島さんと話した際、彼女が限界を迎えそうになっていることを知っていた。その後は足立の奔走や僕の意見もあり、先日までの時点ではまだ落ち着いていたように思う。

 しかし、冴さんの話を聞く限り、新島さんは“冴さんからかなりキツい言葉をぶつけられている”。あの時点で限界間近だとしたら、それが爆発してしまう危険性は充分にあり得た。

 程なくして、黎から『【怪盗団】のみんなにも情報共有しておいた』というメッセージが届いた。対策は全く練れそうにないけれど、把握しているか否かもまた、作戦成功への重要な要素に成り得る。

 

 どうか平穏に終わりますようにと祈りながら、仕事に精を出す。仕事がひと段落した後、僕は待ち合わせ場所――パレスの入り口・渋谷の連絡通路へ直行した。

 

 

◇◇◇

 

 

 

「……金城の居場所を掴む方法も、奴から“パレスの内部に出入りしても許される人間”と認知される方法も、とっておきのがあるわ。――私が金城の“客”になればいいのよ」

 

 

 金城の【パレス】を確認した新島さんは、連絡通路に戻ってきて早々、不敵な笑みを浮かべて言い放った。目が完全に据わっている。

 『新島さんの様子に注意してほしい』と根回ししていたのが吉と出たようで、全員が嫌な予感を察してくれたらしい。

 

 

「お、おい、会長サン! 流石にそれはヤバイって!」

 

「相手は本物のヤクザだよ!? いくらお姉さんが検事だからって、どうにでもなるようなことじゃないよ!」

 

「大丈夫よ。金城の居場所を掴めるし、貴女達も【パレス】に出入りできるようになるもの。むしろ、【怪盗団】にはメリットしかないんじゃなくて?」

 

 

 竜司と杏が新島さんを止めようとするが、新島さんは不気味な笑みを浮かべながら1人でうんうん頷いている。まるで何かに取り憑かれてしまったかのようだ。

 僕等では計り知れない所で、新島さんは色々なものを背負っていたようだ。それが、冴さんから八つ当たりされたことで、悪い方向へと爆発してしまったのであろう。

 理知的な生徒会長の面影はどこへやら。今の彼女は憎悪や執念にも似た負の感情をまき散らす暴走特急のようだ。止めなければ大変なことになる。

 

 青黒い炎が渦巻いているようなオーラを背負った新島さんは、無言のまま黎のスマホを操作した。お互いのスマホを予め通話状態にしておくことで、新島さんが誰かと話している内容が黎に筒抜けになるようにしたらしい。

 

 

「これで下準備は完璧ね」

 

「……まさか、金城の関係者に“客”だとアピールして、居場所を聞き出すつもり?」

 

「ばかな! 危険すぎる、考え直せ!」

 

 

 黎の推測に、祐介が慌てて新島さんを説得しようと試みる。だが、新島さんはずんずんと足を進めて行ってしまう。彼女の横顔は非常に鬼気迫っており、“何かを成そう”と足掻いているように感じた。

 祐介だけでなく、杏や竜司も新島さんの行く手を阻もうとした。新島さんはそれらを跳ね除ける勢いで足を進めた。新島さんは「貴女達だって、【パレス】を攻略したいんでしょう?」と頑なになっている。

 

 

「新島さん」

 

 

 僕が声をかけた瞬間、新島さんが足を止めてこちらに振り返った。鳶色の瞳は、明らかに、僕に対する敵意で満ちていた。

 

 

「邪魔しないでよ明智くん。私は絶対、貴方なんかに負けない」

 

「……に、新島さん?」

 

「どうして貴方なの? お姉ちゃんに褒められて、認められて、必要とされて……! どうして私じゃないの!?」

 

 

 明らかに様子がおかしくなった新島さんに、慌てて杏が割り込んだ。「に、新島先輩、落ち着いて!!」――彼女の主張は、新島さんに届かない。

 新島さんは僕に対して敵意を剥き出しにする。『冴さんに必要とされているお前が羨ましい』と言わんばかりに、新島さんは僕を睨みつけてきた。

 理性の大部分を削ぎ落したかのように、彼女の双瞼は血走っている。獣のような凶暴な表情に、僕は思わず身を固めた。

 

 脳裏に浮かぶのは、獅童に愛される智明の姿。同じ獅童の息子なのに、全く別の人生を歩む者。

 智明は獅童に望まれて生まれ、僕は獅童から望まれなかった。ただそれだけの違いで、人生は劇的に切り替わる。

 

 

「私は役立たずなんかじゃない! ちゃんと役に立てるんだッ!」

 

 

 叫ぶように言い放った新島さんは杏を乱暴に突き飛ばし、今度こそ振り返らずに駆け出した。僕らは慌てて追いかけたが、渋谷の人混みによって見失ってしまう。

 再び新島さんの姿を見つけたとき、彼女は金城の部下たちによって車に連れ込まれたところだった。黎と新島さんのスマホは通話中で、奴らの会話はきちんと聞こえている。

 

 車のナンバーは祐介が描き止めていた。あの一瞬の間に、彼はナンバープレートを模写したらしい。

 

 

「伊達にクロッキーやっていた訳じゃない!」

 

「そこのタクシー、止まれ! 止まれって言ってんだろ!!」

 

 

 鬼気迫った様子で頷く祐介の横で、竜司がタクシーを留めていた。1台目のタクシーに無視されたため、やや乱暴な方法――タクシーの進路を遮るように飛び出した――である。車のナンバーと新島さんとの通話から聞こえてくる男たちの声を頼りに、僕たちは金城の居場所へ向かった。金城の元を目指す間にも、新島さんを取り巻く話し合いはどんどん悪い方向に転がっていく。

 

 新島さんは自分の境遇を『姉の過干渉が酷くてまともに生活できない。高校卒業後に即独り立ち出来るほどの資金を稼ぐため、手っ取り早い手段を探している』と言った。彼女の言葉や立ち振る舞いは、一般ヤクザ達が“カモとして相応しい”と思う程度の信憑性を得られたようで、新島さんはそのままヤクザに連れられて行った。

 そこで金城と顔を合わせた新島さんは、早速1枚の写真を撮られたようだ。一目見てヤクザだと分かる格好をした男に囲まれた上で、金城から渡されたグラスに口を付ける写真。グラスの中身はノンアルコールカクテルであるが、写真を見ただけではアルコールと判断がつかないような見た目と色合いのものを選んだらしい。

 新島さんの姉・冴さんは司法関係者である。司法関係者にとって、身内が犯罪を起こしたというネタは特大のスキャンダルだ。犯罪に足を踏み入れた理由が『家庭環境が劣悪だったから』というのも、火に油を注ぎかねない。金城は新島さんの写真を使って、新島さんや冴さんを脅して金を脅し取ろうと画策しているようだった。

 

 脅しの材料――写真を撮られたことで、新島さんはやっと“自分が立案した作戦の危険度”に気づいたのだろう。まるで夢から覚めたみたいに、先程までの強気な態度は消えてしまった。

 狼狽を取り繕えなくなってきた新島さんの心境など知ってか知らずか、金城とヤクザ共は早速新島さんに“接待”――勿論、夜の女的な意味で――を命令する。

 

 乗り気でない新島さんに痺れを切らしたのか、ヤクザの1人が無理矢理新島さんを押さえつけ――

 

 

『ちょっと! 女の子相手に寄ってたかって何やってるのよ!?』

 

『あァ!? なんだテメエ!』

 

「ち、千枝さん!?」

 

「急ごう!」

 

 

 ――丁度そのタイミングで、新島さんとヤクザの会話に割り込んできた人物がいた。僕と黎にとっては聞き覚えのある女性のものだ。刹那、何かを弾き飛ばす音が響き渡る。『ぐぇっ』とヤクザの悲鳴が紛れて消えた。僕はひっそりヤクザへ黙祷する。里中千絵さんは八十稲羽メンバー中、根っからの武闘派のためだ。

 千枝さんは新島さんを救出したが、ヤクザはこれ幸いに“暴力を振るった”と言いがかりをつけて千枝さんを脅そうとする。千枝さんは新島さんを庇いながら怯むことなく反論した。女傑と謳われた巴御前(トモエ)――現在はハラエドノオオカミ――をペルソナとして所持していることは伊達ではない。

 

 だが、金城含んだヤクザどもはグルになり、『千枝さんが暴力を振るった』と証言し、彼女も“客”として金蔓にするつもりだった。証人は奴らがいる高級クラブの客と従業員全員――数で畳みかけるつもりらしい。

 

 

『……成程。脅迫と傷害未遂、もしくは強姦未遂の現行犯だな。いいタイミングだ』

 

『なんだ貴様!? どこから入って来やがった!?』

 

『周防達哉。珠閒瑠の刑事だ』

 

『同じく周防克哉、警察だ』

 

『同じく真田明彦、警察だ。貴様らを現行犯で逮捕する!』

 

「あ! この前の刑事!!」

 

 

 電話の向こうから響いたのは、聞き覚えのある男性の声だった。モルガナは周防刑事に2時間戯れられたことを思い出したのだろう。露骨に嫌そうな顔をした。

 警察官の出現に、僕と黎以外の【怪盗団】メンバーが反射的に足を止めた。このまま突っ込めば、自分たちの関係を訊かれ、正体がばれてしまうと思ったのだろう。

 だが、足を止めずに走り続ける僕と黎の姿を見て、「仕方がない」ということで覚悟を決めたらしい。僕達と一緒に部屋の中へと飛び込んだ。

 

 そこでは周防刑事達が金城と睨み合っているところだった。千枝さんは新島さんを庇いながらヤクザを見下している。足元には泡を吹いたヤクザやチンピラが転がっていた。

 屍累々の光景に、金城は若干身を縮ませていた。だが、警察よりも金城の方が優位に立っているという確信を持っているのだろう。強気に笑いながら警察官達を挑発する。

 

 

「もう既に事件は解決扱い。捜査は打ち切られ、御影・珠閒瑠・巌戸台・八十稲羽の合同チームは解散してる……! 『二度と触れるな』って指示だって出たはずだ! テメエらのやってることは完全な命令違反! 上層部がどう判断するか、見ものだな!!」

 

「安心しろ。元々俺たちは、腐りきった上層部との折り合いはよろしくない。左遷やクビが怖くて正義が貫けるか」

 

「まったくだ。でなければ、わざわざ我々だけで捜査を続けたりなどしない」

 

 

 達哉さんは堂々と胸を張って宣言した。隣で頷く周防刑事に至っては、珠閒瑠の事件――当時の大臣・須藤竜蔵の手足として動いていた上司によって捜査妨害を受けた経験がある。その後、件の上司は周防刑事たちの前に立ちはだかり、彼らの手によって倒された。

 

 警察官一同の話を聞いた竜司が「ってことは、この刑事たち、後がヤバイんじゃ……」と漏らす。組織の中にいるはみ出し者が辿る末路は、僕たち【怪盗団】自身が知っているからだ。子どもより大人の方が風当たりが強いことも予想がつく。

 『ヤクザの元締めに関する捜査が打ち切られた』と言う話を思い出した杏と祐介も、険しい顔で刑事たちを見つめた。だが、嘗て“反逆の徒”として神に挑んだその眼差しは、誰1人として朽ちていない。尊敬した大人達のままだ。

 

 刑事という地位と警察官という組織から脅しをかけてきた金城の目論見は見事に外れた。「だから何だ」と言わんばかりに金城を見下ろす警察官の眼差しは厳しい。

 本人たちが折れないのなら、警察組織の方面へ圧力をかけることにしたのだろう。金城は部下に命じて、どこかに電話させていた。獅童の息がかかっている協力者だろうか。

 金城が不敵に笑うあたり、電話の向こう側にいる人物は司法関係者であることに予測がつく。でなければ、刑事たちの捜査を強制的に打ち切らせる真似などできない。

 

 僕がそんなことを考えていたときだった。金城は新島さんや僕たち――特に黎へ視線を向けると、下卑た笑みを浮かべた。

 

 

「お前、御影町の旧家出身なんだろ? そんで、この刑事や生徒会長たちと“オトモダチ”なんだってな?」

 

「そうだけど」

 

「お前が金を用意してくれるんなら、全部手打ちにしてやってもいい。ここにいる刑事たちの処分が軽くなるよう根回しするし、この美人生徒会長への請求も300万の半分――150万にして、期限も3か月後にする。どうだ、いい条件だとは思わないか?」

 

「ちょ、ちょっと! 有栖川さんは関係ないでしょう!?」

 

「……分かった。いくら用意すればいい?」

 

 

 黎はちらりと僕らにアイコンタクトしてきた。彼女は最初(ハナ)からこの取引に応じるつもりがない。金城を『改心』させることで踏み倒す気でいるのだ。そのためにはまず、新島さんや周防刑事たちを無事に脱出させることを選択した。

 神妙な顔つきで提案を飲んだ黎に対し、金城は1000万円を要求してきた。支払期限は3週間後である。払えない場合は金城の指定した風俗店で1000万円と利子分を稼ぐことになるそうだ。普通に考えると到底無理な話だが、黎は踏み倒す気満々なので気にもしていない。

 

 最初は明彦さんや周防刑事兄弟がぎょっとした顔で黎を見たが、淡々とした黎の様子に「何らかの手段を講じて踏み倒すつもりだ」と察した様子だった。若干表情を引きつらせながらも、神妙な顔を保っていてくれた。

 

 「前払いだからな」とほざいた金城は、大人しく周防刑事と明彦さんの拘束を受け入れていた。奴らは最寄りの警察署に連行されるが、獅童の圧力によって即座に釈放されることだろう。金城はそれから3週間、黎の支払いを待ち続けるのだ。その間は警察組も動きを封じられてしまうだろうし、千枝さんも似たような目に合うかもしれない。

 正直胸糞悪い話だが、【改心】さえさせればこちらのモノである。そう言い聞かせていないと、僕が耐えられない。金を稼ぐために黎が体を売る? 獅童のような連中に、黎が滅茶苦茶にされる? ――そんなこと、絶対に嫌だった。これが原因で獅童に目を付けられてしまうと分かっていても、そのために黎を見捨てるなんて真似、できるはずがなかった。

 

 

 

***

 

 

 

 周防刑事、明彦さんは金城とヤクザ一同を伴い最寄りの警察署へ向かった。

 千枝さんは明日大学で行われる講義に出席するために分かれた後。

 

 

「――本当に、本当にごめんなさい!」

 

 

 「私がバカだった」と、新島さんは頭を下げてきた。「何故あそこまでおかしくなってしまったのか、自分でも分からない」とも。

 

 役に立ちたいと、僕――明智吾郎に負けたくないという気持ちが暴発した結果が、“新島さんの強行”という形で顕現したのだろう。“必用とされるには役に立たねばならない”という意見の帰結は当然のことだし、僕自身にも似たような経験があるから気持ちはよく分かる。

 新島さんの場合は、冴さんから僕と比較された挙句『貴女は役立たず。私の人生の足を引っ張っている』と理不尽に当たり散らされたらしいのだ。いくら理知的で冷静な新島さんでも、積み重なった痛みに飲み込まれ、耐え切れずに悲鳴を上げてしまうのは当然のことだった。

 ひたすら謝り倒す新島さんだったが、彼女は姉のことを思い出して深々とため息をつく。「これじゃあ、お姉ちゃんにもっと迷惑かけちゃう」――ああそうか。姉を想うからこそ、彼女は“いい子”でいようとしたのだ。姉の人生を守るために、姉の邪魔をしないために。

 

 

「私は子どもだから、負担しかかけなくて……いつも迷惑かけっぱなしで……だから、誰かの役に立ちたかったの」

 

「よく分かんねーけど……子どもだから役に立たないとか、ちょっとおかしいと思うぜ? そーゆーの」

 

 

 「会長サンの言葉が正しければ、俺はどうなるんだよ」と、竜司はバツが悪そうに呟いた。嘗て、彼は義憤に駆られて鴨志田を殴ったことがある。それが暴力事件として取り沙汰され、唯一の肉親である母親に多大な迷惑をかけていた。その経験を思い出し、自身を顧みていたのだろう。

 それでも新島さんは、自分が子どもであることにコンプレックスを抱いていた。“役に立たない子と言われることに対して、強い恐怖と悲しみを抱いていたのだ”と吐露する。その姿は秀尽学園高校の優秀な生徒会長ではなく、どこにでもいる普通の女子高生と変わらない。

 

 

「高巻さんも、さっきは突き飛ばしてしまってごめんなさい。怪我はない?」

 

「あ、アタシは平気。怪我してないから気にしなくていいよ」

 

「有栖川さんも、本当に申し訳ないことをしてしまったわ。貴女まで金城の“客”にされてしまうだなんて……」

 

「でも、新島さんの予想が正しければ、これで金城の【パレス】に乗り込むことができる。やれるだけのことはやったんだ」

 

 

 新島さんは、杏と黎に対して深々と頭を下げた。まさか頭を下げられるとは思わなかったようで、杏があたふたしながら新島さんをフォローする。黎は穏やかに微笑み、新島さんの肩を叩いた。そうして、彼女は僕へと向き直った。

 

 

「明智くんもごめんなさい! 貴方に八つ当たりしただけじゃなく、有栖川さんを――貴方の大切な人を、2回も危険に晒してしまって……!」

 

「……そりゃあ、色々言いたいことはある。あるけど、何も言えないよ。『どうして自分じゃないんだろう?』って気持ちは僕にも分かるし」

 

「え?」

 

「僕の母親は、“僕を身籠った”という理由で悪い男に捨てられてね。つい最近の話なんだけど、母が亡くなって初めて、僕は実父と会ったんだ」

 

 

 “つい最近、実父と再開した”――初めて聞く僕の話に、黎が目を丸くする。【怪盗団】の面々も驚いた様子で耳を傾けた。

 あの日のことを思い出すだけで、胸が抉られるような痛みを感じる。鴨志田を【改心】させた後のビュッフェ。

 

 獅童智明。獅童正義に愛された五口愛歌(おんな)の息子で、獅童に愛される子ども。俺とは違い、望まれて生まれてきた獅童の子どもだ。

 何もかもが正反対。俺が欲しいと願ったものを、奴はすべて持っていた。実父からの愛を、承認を、賞賛を、奴は惜しみなく与えられて生きていた。

 もしも、空元兄弟という保護者や今まで出会った信頼できる大人たち、そうして俺に寄り添ってくれる黎の存在がなかったら、俺は奴を見て何を思ったのだろう。

 

 

「……奴には息子がいたよ。奴に望まれ、奴に愛された子ども。俺と同じ年で、俺と同じ学校に編入して、俺とは違って奴のことを『父さん』って呼んでた。呼ぶことが許されてた」

 

「ゴローと同じ年の子ども!? ってことは、ソイツ、はなから“ゴローの母親を弄ぶため”に近づいたってことか!?」

 

「らしいね。僕は親戚から『母は奴と結婚したくて僕を産んだのではないか』という噂を聞いたけど、仮にそうだったとしたら、その可能性は最初から存在しなかったってことになる」

 

「なんて最低な奴だ……!」

 

「反吐が出るな」

 

「オンナを何だと思ってるのよ、そいつ!」

 

 

 俺の話を聞いて、モルガナと竜司が憤慨した。祐介は険しい顔で眉間の眉を深め、杏も怒りをあらわにした。黎は心配そうに俺を見つめていた。俺は肩をすくめる。

 

 

「それ見たとき、思ったんだ。『どうして自分じゃないんだろう?』、『アイツと俺の何が違うんだろう?』って。……好きで“望まれない子ども”として生まれたわけじゃねえのに」

 

「吾郎……」

 

「今は平気。立派な保護者がいるし、尊敬する大人がいるし、お前らがいるし、黎もいてくれるから。……みんなをアイツに取られる方が、ずっと嫌だ」

 

 

 そう言った途端、何とも言い難い照れ臭さを感じたのは何故だろう。口元を抑えて咳払いすると、優しく微笑む黎と目が合った。うん、だめだやっぱり照れる。恥ずかしい。本当にどうしよう。

 周りからの生温かい視線が刺さって来る。「ごちそうさまです」だの「また惚気かあ」だの「これで結婚してないんだぜ? 式はまだか?」だのと、疲れ切った声で呟いたのは一体誰だったのだろう。

 そのうちに「惚気の中にさらっと俺らも組み込まれてないか?」「マジ!? え、これ、喜んだ方がいいの!?」等と騒ぐ彼らにツッコミを入れる余裕はなかったし、何も言わないでおくことにした。

 

 さて、次は金城の【パレス】を攻略しなければなるまい。新島さんの推論が正しければ、金城は黎と新島さんのことを“客”だと認識したはずだ。【パレス】の方にも変化が起きた頃だろう。

 早速【パレス】へとんぼ返りした僕達は、再び【パレス】――渋谷の上空に浮かぶ銀行の真下へやって来た。新島さんと黎を認識すると、相手側の方から近づいてきた。

 

 ゲートを開き、客である2人を誘うように道を作り出す。――計算通りの光景だ。

 

 

「ありがとう、新島先輩! おかげで金城のパレスを攻略することができる」

 

「有栖川さん……」

 

「新島先輩がいなかったら、金城によって苦しんでいる人たちを助けられなかった。弱い立場の人たちを勇気づけることだってできなかったかもしれない。……だから、新島先輩は“役立たず”じゃない。大手柄だよ」

 

「それなら……それならよかった。私の方こそありがとう、有栖川さん――いいえ、ジョーカー……!」

 

 

 誰かに褒められたのが嬉しかったようで、新島さんは感極まったように声を震わせた。

 それを少し離れた場所で見守っていた僕らも、2人の元へ駆け寄る。新島さんの大手柄を褒めながら、僕たちは早速金城の銀行へと乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――いくよヨハンナ! フルスロットル!!」

 

 

 青白い核熱の光を纏ったバイク――ペルソナに跨り、新島さんはシャドウを蹴散らしていく。僕らは唖然とその姿を見つめていた。

 

 文字通り、新島さんの大手柄である。

 ……ここまで手柄を立てるとは予測してはいなかったが。

 

 






「運転……キャンピングカー……『私は風になる』……ウッ、頭が!!」

「マクスウェルだって人のこと言えないよ? 煽り運転にキレ散らかしてドリフト走行キメてたじゃない」

「それはそれ、これはこれだから!! 現に、あの一件以来やってないでしょ?」

「……でも、マクスウェルにその“ケ”があるってことは……」


「――何だよ、人をじっと見つめて。何か用?」


「「“お客様”って煽り耐性低そうだなって思って」」

「………………上等だ。目に物見せてやるよォ!!」

「ウワーッ! “コイツ”、煽り耐性滅茶苦茶低いぞ!!」


―――

金城パレス編、攻略開始準備段階~真のペルソナ覚醒まで。リメイク前とは違い、登場人物同士の関りや設定の変化によって、あちこちに加筆されました。結果、何やら変なフラグが点灯中。
リメイク前以上に、ペルソナオールスターズのわちゃわちゃ感が出せていたらいいなと思っています。書いてて楽しかった追加場面は【力司る者】に関する話題ですね。
何かを知っている方は「あっ(察し)」となるネタです。尚、この世界線は『ペルソナQ』シリーズを経由していない&元々、今後も“しない”世界線となっている模様。

シン・ウルトラマンは未視聴ですが、<M八七>が拙作の魔改造明智&“誰か”にドンピシャだったので聞いています。
特に2番。一番最初はまんま班目パレス編で追加登場となった彼だし、中盤はリメイク前における悪神との最終決戦――及びその直後のアレだし、本当に親和性が高くて驚きました。
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