二年間剣の世界で生き延びた剣士はまたVRにのめりこむようです 作:ウィングゼロ
俺が口にした一言で、ワイワイと騒いでいた一同を静まり返らせる。
「ランタンの明かりを消して」
「え!?それじゃあ、なにも見えない「いいから、早く」う、うん」
メイプルは渋々俺の言うことを聞き、ランタンの明かりを消すと完全に暗闇へと戻る。
「…………数は6…いや7か」
意識を聴覚に集中させ、こっちに進んでくる足音の数を数え、こちらに来る数を明確にする。
大方、深夜もプレイしているガチなプレイヤー…
となれば手練れが多い。それに比べるとこっちは殆どレベルが1という初心者が多い。
まず真っ向から挑めば勝ち目もない…そして傷ついているこのモンスターも直ぐに彼らの糧となるだろう。
「……みんな聞いてくれ…外から七人ほどプレイヤーが来てる。恐らく確実にワイバーンを狩りに来るだろう。そしてまともに戦えるのは俺一人……正直、守り切れる自信はない」
「ど、どうにかならないかな?」
「無理言うな……あっちはこんな時間帯までやってる。恐らくベテランプレイヤー………単独で相手取るのはかなり難しい…アキならわかるだろ?」
「うん、ALO経験者としてあまりに無謀だと思う…うまく奇襲が決まれば…そうでもないかもしれないけど」
アキの言葉は正論だ。もし不意を付ければこちらに分があるが、そうやすやすとさせてはくれないだろう。
そんなどうするかの話し合いがする中、着実にプレイヤーは迫りくる。元よりダメもとで挑んでみるかと呟く中、メイプルが口を開ける。
「そうだ、いいこと思いついた。えっと…」
それからどうするかの説明をするメイプル。聞いている俺はとてもじゃないが難しいと思う作戦だが、それなら数の差を覆せるかとメイプルの案に賛同し頷くと、早速やってきたプレイヤーに視線を向けた。
NOSIDE
「さて、奥はどうなってるんだろうな」
そう言って、パーティーのリーダー格の男はこのダンジョンの先にあるものに期待を膨らませて通路を進んでいく。
彼らがこの場所を見つけたのは偶然だった。たまたま通りかかったとき、見慣れない洞穴を見つけ彼らは好奇心から洞穴に入ってきた。
元々、夜間行動だった為に明かりとなるものは揃えており、町に戻ることなくそのまま入ってきた。
「かなり広いな」
パーティーメンバーが通路を抜けて広間の入り口付近である程度周囲が広がり、広域に索敵を開始し始めたとき。
暗闇の中から長細い鋭利なものが飛び出してくる。
「うわぁ!ランタンが!?」
「くそ!何かいるぞ!みんな気を…うわああああああぁぁぁっ!!!!」
ランタンを破壊され明かりを失った周囲は暗闇に飲まれ、全員に警戒を呼び掛ける途中、まず一人悲鳴を上げた。
”まず…ひとーつ”
悲鳴の後どこからか微かに聞こえる謎の声。それに暗闇で一寸先があまり見えない中、彼らは身動きが取れず、じたばたと周囲を警戒する中、再び何かに切り裂かれた音とパーティーメンバーの断末魔がこの空間に響く。
”ふたーつ、まだまだ…足りない”
パーティーメンバーの断末魔の後また謎の声が空間に響く。
「くそ!正体を…っ!!」
”みっつめ…ふふ、次は誰かな?”
遂に3人目もあっけなく倒されたことにより、相手はこの暗闇に軽快に動いているのは確実ならばなぜと彼らは思考すると直ぐに何が原因なのか思い当たる。
(そうか、音で俺達の位置を)
声や足音たったそれだけの情報だけで動いている。ならば、声を出さず、動かず息を殺せばばれることもない。後は機会を見計らうだけだっと生き残りは全員、そう思ったのだが現実は非情だった。
”ねえ、そんなところで口元抑えて縮こまってる。あなた?あなたがよにんめ♪”
その声の直後、何かが振り落とされた音と男の断末魔が響くとリーダー格の男は困惑した。
(な、なんで!?音も完全に殺したはずだ。なのにどうして!?)
予測していたことが外れ、更なる犠牲者が現れたことで恐怖感が増す。そしてついに恐怖に耐えきれなくなったプレイヤーが我武者羅に走り出す。
「うわああああああぁぁぁっ!!!!う、ううわああああぁ!”ねえねえ、逃げちゃだめだよ。5にんめさん♪” !!!?」
悲鳴を上げていた声がぷつりと途切れ、やられたんだと悟ると不意にどこからか詠唱が唱えられる。
「ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!」
一心不乱に先ほど逃げようとした仲間がいた場所に狂乱でファイアーボールを放つ杖使い。火の玉が断続してその場所に放たれるがそれは着弾する前に切り捨てられる。
男はファイアーボールによる明かりではっきりとその暗闇に紛れていた人物を捉える。
黒いフード付きのローブを羽織り、大剣でファイアーボールを切り捨てていく謎の人物の姿を
(モンスター?いいやプレイヤーか!?なんでこんなところに!?)
「ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイアーボール!ファイ…」
断続的に続いていた杖使いの攻撃だが、突如として大剣使いとは別方向の暗闇から放たれた矢が杖使いの頭部に二つ突き刺さり、そのまま紫のポリゴンになって消滅した。
「………!!!」
自分以外全員死んだ…しかも敵がどれだけなのか何者なのかも掴めていない。
しかし彼らもかなりのベテランなのだ。それがこうも術中はまり自分以外、全員やられてしまった。
どうすればいいと心拍数が高まりアミュスフィアの警告が流れる中、男は自身の後ろから伸びる二つの腕に気づく。
「あなたが…さ・い・ご」
その言葉と共にその腕で男の頭をヘッドロックし、そのまま男の首を折り曲げ鈍い音と共に男のHPは0になり体はポリゴンとなって消滅した。
この出来事は、暗闇の切り裂きジャックとNWO内での本当にあった怖い話としてプレイヤー全体に知れ渡ることになる。