二年間剣の世界で生き延びた剣士はまたVRにのめりこむようです 作:ウィングゼロ
「さてと、今日は…ふあぁ…」
「お疲れみたいだけど…今日は何をするつもりかしら?」
イズの工房で装備のメンテをしてもらっている中。俺は今持っている情報を元に今日の予定を頭の中で組んでいた。
「もちろんレベリング。…第一回のイベントに向けて頑張らないといけないしな」
「そうなの?それにしては…関係ないスキルを調べてるみたいだけど?」
「……実は昨日シノンと約束したんだ。レベリングを手伝ってほしいって」
”ねえ、サイトくん。お願いがあるんだけど…明日の晩…付き合ってくれない?”
”…はい?”
”ああ、少し言葉が足りないわね。レベリングに付き合ってほしいの…NWOもう少しプレイしてみたいから”
そう言われて俺は気軽に了承し、もうすぐシノンとの待ち合わせ時間だ
「そうだったの…サイトくんもしっかりリードするのよ」
「その言葉はこのゲームの先輩として助言しろという意味で受け取ります」
そういうと、あら残念と少し残念そうな顔をしているのは放っておくとして…すると
「あら、いらっしゃいクロム。どうしたの?まだ盾のメンテには早いはずだけど?」
「ああ、ちょっと大盾装備の新入りを見つけてな…衝動的に連れてきた」
店に入ってきたのはクロムで、後ろに誰かいるが横からぴょこっと顔を出すと誰なのか直ぐに分かった。
「え!?メイプル!?」
「あれ?サイトくん!?会うなんて偶然だね」
クロムの後ろから出てきたメイプルは、知った顔である俺が居たことで笑みを浮かべ近づいてくる。
「あら、可愛い子ね……クロム、衝動的にこの子を連れて来たの?通報した方がいいかしら?」
「……見損なったよクロム。お前はクラインのような人間ではないと思っていたのに」
せめてもの情け……俺達は運営に通報しようとメニューを開くと慌ててクロムが止めに入る。
「ち、ちょっと待てよ!それは、何ていうか言葉の綾だって!」
「ふふっ…分かってるわよ。冗談冗談」
「はー…心臓に悪いから止めてくれ」
「メイプルも知らない人に付いていかない。下手をすればとんでもないことになってるかもしれないぞ」
「あぅ……分かりました」
本当色々とメイプルは見ておかないと何をするかわからない。
そしてメイプルが一緒に来た理由はカッコイイ装備を一式揃えたいらしく、偶々通りかかったクロムに話しかけ、イズの工房まで連れられて来たということだ。
と言っても今のメイプルに一式揃えるぐらいのお金もあるはずもなく……金額を聞いて立ちくらみを起こしていた。
「……おしゃれは後回しかな」
「あ~なんだ、お金なんて気付いたら集まってるもんだ。そうだ、此処からそんなに遠くないが毒竜の洞窟っていうダンジョンがある。そこなら素材や宝箱から良いものも取れるからお金も集まるだろう」
「ダンジョン!はい、行ってみます!」
「毒竜の洞窟は毒沼とか一杯だから気をつけてね……何処かの誰かさんは誤って落ちて貴重な素材取りそびれたことがあったから」
「???」
「イズ……」
イズの忠告を受けたメイプルはイズの工房を後にし、クロムもまた何処かへと出ていき、暫くするとシノンが工房に入ってくる。
「お待たせ、待たせちゃったかしら?」
「いいや、それほど……さてと……取り合えずシノンは弓使いだから弓使いに見合うスキル取得とレベリングだな」
「ええ、それで…何処に行くの?」
目的地を尋ねてくるシノンに、イズの店に飾られているこの世界の地図を眺め口を開けた。
「此処から南…断崖絶壁が生立、渓谷地帯だ」
町から南へ離れた渓谷地帯。高差が激しく誤って落ちれば確実に死に至らしめる断崖絶壁を見下ろしながら、次に空を見上げた。
空には大量の小型の蜥蜴に羽が生えたモンスターが群れを成して飛んでいるのが分かる。
「マルチショット!!」
そう言って叫ぶシノンが放った矢が枝分かれするように分裂し、空を飛ぶモンスターを次々と射止めていく。
マルチショット
STR20以上DEX50以上で弓でモンスターを倒すと修得できるスキル。
DEXに応じて枝分かれする数が増え複数狙える強みがある。
これにより、渓谷の空に飛ぶモンスターは完全にシノンの格好の的となり、次々とポリゴンへと変わっていく。
「これで12レベル…ここにきて1時間ぐらいだけどものすごく上がるのが速いわ」
「…まあ、元々10そこらじゃ来れない場所だしな。その分レベルも上がるのが速いんだろう…それでスキルポイント溜まってるんだろ?どうするつもりだ?」
「とりあえず。DEXは上げていくつもり…ねえ色々スキルが覚えたんだけれど」
「うん?どれどれ?」
シノン
Lv12
HP 45
MP 10
【STR 25〈+5〉=25】
【VIT 15】
【AGI 20】
【DEX 70】
【INT 0】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手【初心者の弓】
左手【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
【暗視】【弓の心得Ⅲ】【遠見】【マルチショット】【パワーショット】【アンカーショット】【必中】【狙撃手】
横からシノンのステータスを見て色々とスキルを修得していた。
「必中は弓で攻撃は全てクリティカルの判定になるみたい。取得条件は一度も弓の攻撃を外さずに50体撃破すること。それと狙撃手は50メートル以上離れた相手に攻撃した場合STRが2倍ねえ…取得条件は50メートル離れた敵を20体倒す」
「どっちもやばいスキルじゃないか」
聞くだけでそのスキルのやばさが身に染みて分かった。ようは50メートル以上離れていた場合シノンの攻撃はSTR2倍その上クリティカル確定とやばすぎる威力を誇っていた。
「そうね、これは期待の新人ね。これなら上手く立ち回れば次のイベントいい線まで行けるかもしれないわね」
「あ、ありがとうございます」
「ところでイズ。そもそもなんで突然俺達に同行するって言ったんだ?」
そう言って後ろから着いてきているイズをジト目で見つめると、苦笑いしながらイズはあれと指をさす。
「あれはサイトくんは知ってるわよね?」
「あの方角…そういうことか。…来たついでに行きたいってわけね…まあいいけど」
「あっちにはなにかあるの?」
俺はイズの目的を理解することができたが、シノンは何のことかさっぱりで首を傾げる中。俺は直ぐにそこに何があるのか答えた。
あっちには渓谷だというのに聳え立つ1本の巨木…
「あっちの渓谷には一際目立つ巨木があるんだ」