二年間剣の世界で生き延びた剣士はまたVRにのめりこむようです 作:ウィングゼロ
エギル……俺と同じSAO生還者であのラストバトルを同じく見届けることしか出来なかった……キリトの……数少ない友人。
「何俺の顔を見て辛気くさい顔してるんだよ……そんなところ突っ立ってないでカウンターに腰掛けたらどうだ?」
エギルにそう注意されると俺は戸惑いながらも頷き、こっちと虹架に手招きされてカウンター席に座る。
「さてと、此処なら色々話せるよね」
「確かに……ていうか、店持ってたのかよ……えっと……」
エギルを見て言葉を詰まらせる。そういえばエギルの本名を知らないし此処でエギルというのは御法度だろう。
「そういえば名乗ってなかったな。アンドリュー・ギルバート・ミルズだ。……長い名前だろ?普通にエギルで良いぞ」
「……ああ、そうだな」
「にしても、あったのは半年ぶりか……当時担当だった総務省に聞いてもお前だけ、所在が判らなかったから心配していたんだ」
「……そうだな」
俺の行方が判らなかったことに心配していたエギル。その事を聞いて俺は間を開けながらもそれに言葉を返した。
恐らく判らなかったではなく、知らせなかったのだろう。
SAOクリア当初の俺は現実を受け入れることが出来ず、約1ヶ月間、精神が不安定だった。
両親にすらまともに話せないほど酷く……漸く落ち着き、家族とまともに対面できたのも12月の中頃だった。
もし仮にその期間に誰かと会っていれば不安定な精神が傾き、俺は俺ではなかったのかもしれない。
嘗ての俺の状況を鑑みれば総務省のとった措置は適切だった。
「……それじゃあ、話してくれる?どうして太一くんがこんな昼間に電車に乗ってたの?平日だからまだ授業中だよね?」
隣のカウンター席に座る虹架が心配している顔で俺の顔を覗き込むと、俺も徐に口を開きことの経緯を説明した。
「そっか……そんなことがあったんだね」
「SAOの被害者か……居るだろうとは思ってたがお前が責められる必要はねえだろう」
説明を終え、エギルと虹架は今の俺の現状がとても良いものではないことを聞くと難しい顔つきで俺は関係ないと優しくフォローする。
「……それでも、気にしないわけには行かないんだよ」
だがそんなフォローも俺は簡単には割り切れることはできなかった。
「まあ、落ち着け……ほらアイスコーヒーだ。サービスだお代は良い」
気分を高ぶる俺に落ち着かせようと注いでくれたコーヒーを目の前のカウンターに差し出すと、砂糖とミルクを入れて一口飲んで一息つく。エギルがそう言えばと近場のパソコンを見せるとその映る画面に顰めっ面になった。
どうやら動画のようだが、この映像を見て何なのか俺は直ぐに分かった。
俺の表情を見て、虹架も隣から顔を寄せてパソコンに映る映像を見ると直ぐに俺に顔を向けてくる。
「これって……サイトくんだよね?」
「ああ、NWO第一回イベントの映像だ。だがどうやってこんな映像を……」
「俺は色々と伝手があってな。そのうちの一人から、この映像が送られてきたってわけだ」
そういうと、また視線をパソコンに移す俺。場面は俺とドレットが戦っているところで、隣の虹架は集中して映像を見ていた。
「……太一くん。今もVRMMOやってたんだね」
「まあな。結局あんなことがあったのにやめられなかった……」
虹架の言う通り、二年間もSAOに囚われていた噂では生き残れたプレイヤーの殆どはVRMMOから離れていく人は多い。俺みたいなまたのめりこむ人間が稀というものだろう。
「ううん、別に気にしてないよ。でもどうしてって気になるかな」
「……多分、俺は今もアインクラッドに残した物を追いかけているんだろうと思う」
「アインクラッド?どういうことだ?」
アインクラッドっという言葉にエギルは眉をひそめる。その言葉が出れば生還者にとって黙っていられるわけがない。
「あの日……キリトとヒースクリフの相打ち……俺は見ることしかできなかった」
「何も出来なかった俺がとても情けなくて……その未練がまだあの世界に残っているから……」
「だから、NWOをやってるってか?」
「……似ているあの世界に俺の残したものがあるってわけじゃない……でももしかすれば……」
確証はない、根拠もない……でもあるのかもしれない
そんな雲を掴む可能性で深刻な表情で考えているとエギルが俺の顔を見て話し遮ってくる。
「サイト……ゲームをやってるのは俺にとっても喜ばしいことだがSAOに拘るのはやめろ。俺やキリトたちだってそんなこと望んだりなんてしてねえよ」
「……キリト……か、あいつなら確かにそう言いそうだな。けど俺にはとても簡単に忘れることはできない。俺はいや、俺達は確かにSAOから解放されたのかもしれない。でもそれは生き残ったわけじゃない。生かされたんだアインクラッドで散っていったキリトたちの命と引き換えに」
「お、おい!?」
……気分がとても損ねた俺は、コーヒーを飲み干すと席を立ち店の玄関に手をかける。
「それじゃあ、俺は行くとするよ……また会えて話が出来て嬉しかった」
「待ってって!サイト……実は来月に此処でSAO生還者のパーティーがあるもしよかったらお前も……」
「悪いエギル。その話は俺は遠慮していく。俺にそこに行く資格はない」
そう言い残して俺は扉を開けて外の路地を駅に向かって歩き出した。
NOSIDE
「……サイトくん」
「あれは重症だ」
「…っ!」
「待て!レイン」
サイトが去ったダイシーカフェで扉を見ながらサイトの様子を見て二人の顔に影を落とす。
話せばわかると思っていた。しかし、二人の想像をはるかに超えるほどにサイトは心に深い傷を負っていたことに何もできなった。
呆然としていた虹架も急いで本当の真実を話そうと席から勢いよく立ち上がり、後を追おうとするがエギルに呼び止められる。
「早くしないと、このままじゃ」
「わかってる!だがな、今のあいつに真実を告げるのはやめておいたほうがいい」
「ど、どうして!?それを知ったらサイトくんだって……」
「あいつの精神はSAOのことに関することになれば、かなり不安定だ。下手に刺激してあいつの精神が崩壊でもしてみろ。レインの知るあいつは完全にいなくなる」
「じゃあ、ただ見ていることしかできないの?」
「……今の段階で真実を話すのはダメなだけだ。いつかは話さないと行けなくなる」
「……サイトくん」
悲しげに去っていったサイトを思って下唇をかみしめる虹架。そんな虹架をみて溜息を零すエギルは口を開ける。
「でもまあ、どちみち今の状態で一人にさせるのも危険だな……レイン気晴らしでサイトを追いかけろ。それとこの件は誰にも言わねえ。俺の知る限り下手に教えれば間違いなくサイトのために動き出しそうなお人よしが大勢なんでな」
「エギルさん……ありがとう」
そう言って虹架もサイトの後を追いかけ、客がいなくなったダイシーカフェでエギルはやれやれと言葉を零し、カウンターに置かれている飲み干された二つのカップを洗い始めた。
第二回のイベント。サイトのパーティーは四人が良いか八人良いか迷っています。どうすれば良い?
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4人
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8人