記憶の彼方に見えるモノ   作:シュリンプ1012

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門出の時『後』

 

 

 

 

 昼下がりの12時35分。ライブハウス『CIRCLE』のカフェエリアにて、ある2組のバンドグループがテーブルを囲んで昼食を介して話し合っていた。

 

 一つの組は皆様ご存知Roselia。あの後、彼女達はあと一曲という約束だったが、あまりにも熱が入り込んでしまっ為になんと30分強も延長してしまった。

 30分も延長すると当然腹も益々空いてしまう。それでなのか、クッキー4枚食した筈の紗夜が、

 

 

『ポ、ポテェ……グフッ…』

 

 

 などと目を虚にしながら壁にへたり込む始末に。

 

 

 これが世に言う『ポテト欠乏症』である。

 

 

 流石のRoselia一同も、空腹とメンバーの禁断症状が現れた所で練習を一旦中止にしてカフェテリアに向かったのだ。

 

 

「……湊さん、流石にやり過ぎだと思います」

 

「……反省してるわ」

 

 

 そこでばったり遭遇したのがもう一つのバンド、『Afterglow』である。

 Afterglow……ba.上原 ひまりをリーダーとした幼馴染5人組で結成されたバンド。ここで注意してほしいのは、gt.vo.である美竹 蘭がリーダーと思われている者がいるが、リーダーは上原 ひまりである。リーダーは上原 ひまりである(二回目)。

 5人がいつまでも集まれる場所として結成されたバンド。それ故に他のバンドよりもメンバー内の絆の深さはそこを知れない。なので、例えメンバー内で喧嘩が起きたとしても、決して解散することは無かった。

 

 

「紗夜、大丈夫…?」

 

「えぇ、もうすっかり」

 

 

 少し汚れてしまった口元をお手拭きで拭いながら受け答えする紗夜。彼女の目の前には、それはもう綺麗としか言いようのない真っ白で縦長の皿が置かれていた。

 彼女曰く、『数日間ポテトを食べないと禁断症状が発症する』らしい。それを治すにはその原因であるポテトを手早く食すこと。

 

 もうお分かりだろう。彼女は『ポテトメガ盛りサイズ×2』を数分で食べ終えたのだ。しかもお上品に。

 

 

「紗夜さん、あんまり無茶しちゃいけませんよ?」

 

「……羽沢さん」

 

 

 口元を拭い終わった矢先、紗夜の隣に座っていた少女–––羽沢 つぐみが心配した顔で彼女を見つめる。

 

 

「そうですね、私も今日は無茶をしすぎました……あら?」

 

「?どうかしたんですか、紗夜さん?」

 

 

 ふと、視線を逸らした先に紗夜はある人物を目にした。

 キョロキョロと辺りを見渡しながら白いシルクハットを抑える男。見た目は先の通り白いシルクハットを被り黒髪を隠していて、黒のコートを羽織っていた。

 

 そんな男と、紗夜は偶然にも目があってしまった。そしてそれを機にして、男が此方へとコツッコツッ……と靴を鳴らして歩いてきた。

 

 その瞬間、ひまり、あこ、モカ、つぐみ以外の6人はその男を鋭い目付きで睨んで警戒し始めた。女の本能なのだろうか、彼女達は何故かあの男を敵視しなければならないと感じていた。

 

 

「えっ?み、みんなどうしたんで……」

 

「羽沢さん、少し下がっていて下さい」

 

「……えっ?えっ?えぇ?」

 

 

 警戒を強める彼女達に、つぐみは動揺を隠しきれない。あこはあこで、何故お姉ちゃんが前に立っているのか疑問に思っていた。

 

 

「あの人……ちょっとイケメン…?」

 

「あー、ひーちゃんがあの人にメロメロになってまーす」

 

 

 リーダーのひまりは紅く染まるを頰を両手で隠しながら、ハートマークを浮かべる両眼で男を見つめる。そんな彼女を、モカは朝に買い足したパンを食しながら弄り始めた。

 

 

「も、モカ?そそそ、そんな事ない…」

 

「やぁ、そこの可愛らしいお嬢さん方」

 

「はぁい!なんでしょう!!」

 

 

 モカの発言を否定しようとしたひまりであったが、謎の男の呼びかけによって様々身体を急旋回させてそちらに向き直った。

 

 恋する乙女。本能は素直である。

 

 

「何のようですか、あたし達に」

 

 

 ジリジリと男の方に寄るひまりを抑えて、警戒心剥き出しのままで蘭は問い出した。彼女の睨む目が益々深まる。

 男も男で、周囲の女子数人の目付きが異様に鋭いの感じたのか、ハァ…と一つ溜息をつく。

 

 

「まったく……何故私はこうも女性から敵視されるのだ……む?」

 

「……へっ?」

 

 

 呆れた様子で天を仰ぐ男であったが、ふと視界に映ったつぐみに興味を示した。

 男は被っていたシルクハットを胸元まで運んで、彼女の下に近寄って何故か膝立ちの状態に。

 益々困惑するつぐみ。まじまじと見つめる男。そんな男に惚れ込むひまり。黙々とパンを食すモカ。何故か怒りに燃える少女達。

 

 

 ライブハウスのカフェテリアでは、謎の構図が生まれていた。

 

 

 

 

「……ふむ、私がこんなにも見つめているのにただ困り果てるだけとは」

 

「え?それってどういう……」

 

「いや失敬。何だか珍しく思えたものだから。…そうだ、お詫びにこれを…」

 

 

 そう言って男が取り出したのは一枚の紙切れ。その紙を彼はつぐみの手を取りそっとその上に添えた。つぐみは渡された紙切れを広げて、そこに書かれた文字を読み取る。

 

 

「『喫茶店 MICA』……?」

 

「近々この街で店を開こうと思ってね。良かったら来てくれ。君とは馬が合いそうだ」

 

 

 つぐみが顔を上げてみると、男は既に立ち上がっていてニッコリと微笑みを溢していた。

 

 

「……っと、本来の目的を忘れる所だった。君達、『まりな』という女性を知っているかね?」

 

『まりなさん?』

 

 

 突然に出された名前に一同は一斉に声を上げた。

 まりなといえばここ、《CIRCLE》で働く従業員の名前だ。彼女達も幾度となく彼女にお世話になっている。なんなら、彼女達はまりな以外の従業員を未だに見ていないし、この10人の中でまりながカウンターでグッタリと倒れ伏していたという目撃情報も出されている。

 そんな過労死寸前のまりなに、謎の男は何をしようとするのか。

 

 

「……まりなさんに何をする気ですか…!?」

 

「お、おいおい。人聞きの悪いことを言わないでくれ。私は別に取って食おう…と……は……?」

 

 

 何やら良からぬ妄想を作り出した紗夜は、男の胸ぐらを掴んで問いただした。それを両手で静止しようとする男だったが、突如紗夜の顔を見た瞬間に顔が真剣な眼差しへと変貌した。

 

 

「な、なんですか…!?」

 

 

 急に男のスイッチが入ったのを感じ取った紗夜は、焦ってしまい胸ぐらを掴む力を弱めてしまった。

 その隙をついたように、男は優しく彼女の両手に片手を添えて、そのまま下へと下ろしていった。

 険しい目線を彼女に向けたままに。

 

 

「……きみ…は」

 

「……?」

 

 

 険しく見つめる男であったが、ハッと何かに気付いたかのように直ぐ様手を引っ込めた。それからまた一つ、小さく溜息をつく。

 

 

いかんな…昔のことを思い出してしまうとは…

 

「?今何か…」

 

「ああいや、君には関係のないことだ……む?」

 

 

 すると男は、顔を横にずらして紗夜の後方にいた人物に目線を向けた。紗夜達も何事かと思い視線をそちらに向けてみると、そこには大きめの箱を数段に重ねて運ぶ女性の姿があった。

 

 

「あ、まりなさん」

 

「ほう、あの人がまりな…」

 

 

 目当ての人物を見つけたので、男は颯爽とまりなの下へと歩いていった。去り間際、彼女たちに優しげな微笑みを残して。

 

 

「……なんか、いけ好かない人でしたね」

 

「奇遇ね、私もそう思っていたわ」

 

「うーん、何だろ…こう、女性の闘争心を滾らせるような感じ?」

 

 

 

「あぁ、行っちゃった……」

 

「ひーちゃん、ドンマ〜イ」

 

 

 

「ねぇねぇお姉ちゃん、りんりん。なんであこを庇ってたの?」

 

「燐子先輩、危ない所でしたね…」

 

「はい……あこちゃんには…見せないように……」

 

「……ねぇねぇ、あこの事お子様扱いにしてる!?お姉ちゃん!りんりん!!」

 

 

 

「『MICA』……か。空いた時間に行ってみようかな…?」

 

 

 

「あの人、昔の事って……?」

 

 

 

 

 

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 えー、ただ今のお時間は12時50分でございます。あれから数十分経っているのですがね。えぇ今どのくらい進んだかと言いますとですね…

 

 

「……迷った」

 

 

 はい、迷いました!なんかね、また別の公園の近くに着いたよ!ハハッ、これはもう笑えてくるぜ!!

 ……全くさぁ、地図ちゃんと仕事してくれないかな?なんで俺、今北海道にいる事になってんの!?ルート検索とかなんも出来んやん。サマーウ○ーズの世界か、ここは?ハッキングでもされてんのか!?

 

 

「ったく、ただでさえ俺地図読めないのによ…」

 

 

 こうなりゃあれだ、現地の人に聞いてみるしかねぇ。幸い地図機能は生きてるから、ゴール地点まで案内してくれるでしょ。……しかしながら、荷物重いし多いしで肩死ぬんですけど。『左肩』が崩れ落ちそうなんですけど?

 ……っと、そんな事はどうでもいいよ。なんか手頃な人はいないかなぁ……?

 

 

「……おっ?あれは……いやなんだあれ」

 

 

 辺りを見渡してみると、公園の敷地内にて何やら警官のコスプレをした女子5人を見つけ……。

 いや待て。1人だけ人じゃないんだが?ピンクの体毛生やした熊がいるんだが?熊が二足歩行で子供たちにバルーン配ってるんだが!?

 いや分かるよ?着ぐるみってやつなんだろ?そんな事は分かってる。……でもさ、なんで女子の中に混じってんの!?ああいう着ぐるみって男の人がやるもんだろ!?おいおい、着ぐるみの中の人興奮しっぱなしじゃねぇの?大丈夫なのあれ?

 

 

「はーい、みんな大好きミッシェルだよ〜?」

 

「……あっ、女の子っぽいなあれ」

 

 

 あの着ぐるみの中絶対に女の子だね。もう声で分かったもん。声がくぐもってた感じだからあの熊が喋ってる。男って疑い誠に失礼致しました。これは切腹案件です。

 ……ってかあの熊ミッシェルっていうのか。可愛い名前してんねぇ?

 

 

「ん?なんか足んなくね?」

 

 俺、ミッシェルに気を取られてたんだけど、あの輪の中にいたオレンジ髪の子が消えてるんだが?どこいった?

 

 

「ねぇねぇ!どうしたの!?」

 

「ヴェ!?」

 

 

 なんだコイツどっから現れた!?急に目の前に現れたぞ!?……はっ!いかんいかん。こういう時こそ冷静に対処しなけば。焦って選択を誤れば大変な事態に繋がりそうだからな!うん。

 

 

「ンン!……ど、どうしたって何の事かい?」

 

 

 質問を質問で返すのはあまり良いことではないが、致し方ない。この場を切り抜けるためには必要な事だ。割り切ろう。

 

 

「君、ずっとこっちを見てたから!何か困ってるのかなー、って!」

 

「……あー」

 

 

 うん、確かに困ってる。困ってはいるんだかねぇ…何だろう、この子にその事話しても解決しなさそう。

 

 

「はぐみ!どうかしたのかしら?」

 

「あっ、こころん!聞いて聞いて!」

 

 

 むっ、いかん。何やら人が集まってきそうな予感がする……ややこしくなる前に避難しよう、そうしよう。

 

 

「んじゃ、バァイ」

 

「えっ!?」

 

 

 俺は集まり終わる前にその場を駆け早とその場を去る。

 うーん、後ろの方で声が聞こえるけど気にしない気にしない。……はぁ、荷物おっも。早く着いて寝たいよぉ。時差ボケでまだ眠たいよぉ……。

 

 

 

 

「……行っちゃった」

 

「あら、かけっこかしら!なら…」

 

「こころ、一般の方々に迷惑をかけないの」

 

 

「……あれって」

 

「どうしたんだい花音?そんな儚い顔をして」

 

「……ううん、大丈夫。気のせいだったみたい」

 

「そうか……。あぁ!儚い……」

 

 

 

 

 

 

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「……ここまで来れば流石に来ないか」

 

 

 なんとかして撒いた……かな?いやー後ろでかけっこ!なんて聞こえた時には流石に焦ったよ。俺大荷物だから追いつかれるもん。俺鍛えてはいるけど、これじゃ速く走れないから。『右腕』の事もあるし。

 ……で、だ。本当ならあそこで道案内を頼もうとしてた訳だけども、何故か逃走劇が始まりそうだったからなぁ……どうしよ。

 

 

「きゃっ!?」

 

「うおっ!?」

 

 

 これからどうしようか、と俺が考えていると突然前から誰かがぶつかってきた。

 まっさらな白い髪。綺麗に輝く蒼い瞳。高級そうな真新しい制服。見た目からして目の前の子は高校生。しかも新高1と俺は見立てた。

 なんだなんだ?新手の当たり屋か?高校生でそんな事を?そんな悪い奴だったら世も末だとか思っちゃうよ…?

 

 

「ご、ごめんなさい…!つい考え事してて……」

 

 

 自分に負い目を感じたのか、目の前の白髪少女は直ぐに立ち上がって涙目のまま俺に深くお辞儀をした。

 ……あれ?なんか周りの目が怖いような気がする。お前泣かしたんか?って位に鋭い威圧か襲ってきてる!?違う、違うんだ皆!僕は犯人じゃない!僕はキ○じゃない!!どうしてだよリュー○ゥゥ!?

 ……はっ!?いかんいかん、また自分を見失うところだった。本日何回我を忘れようとしてんだ俺。油断してると『アイツ』に意識を……いや、こんなふざけてる時に乗っ取りはしないか。

 

 

「いやいや、俺は大丈夫だけど……そっちこそ大丈夫?怪我とかしてない?」

 

「え?……あ、いやその……」

 

 

 ……?なんだこの子。しどろもどろなんかして。何?俺変な事しちゃったの?

 

 

「……っ!ごめんなさい!!」

 

「へっ?……あぁちょっと!?」

 

 

 ……なんか早々と走り去っちゃったよあの子。

 なんだろうね。何もしてない筈なのにしちゃったっていうのかな。今そんな感じだよ俺の境遇。

 

 

「……あっ、あの子に道案内させて貰ったらよかったじゃん」

 

 

 まっ、逃げちゃったから無理な話なんだけどね!……ハァ、また迷子になるのか……。

 

 

 

 

 

 

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 午後1時10分。ある街道にて、4人の少女が歩いていた。

 

 

「あーあ、折角5人集まれると思ったのになー」

 

「仕方ないよ日菜ちゃん。麻弥ちゃん急な仕事が入っちゃったんだし」

 

 

 地味目な格好をする彼女達の名前は『Pastel*palettes』。男女問わずして人気を誇るアイドルバンドである。

 努力と経験を積み重ねて成長してきたvo.丸山 彩。子役時代から名を轟かせるba.白鷺 千聖。天災…もとい天才の異名を持つgt.氷川 日菜。フィンランド出身のモデルのkey.若宮 イヴ。そして今この場にはいないが、元スタジオミュージシャンのdr.大和 麻弥。この5人で構成されたバンドだ。

 今では彼女たちは地元では知らない人はいないとまでにその名を轟かせてはいるが、始まりは散々なものであった。機材トラブルによって発覚してしまうエアーバンド。スタッフによる様々な失態。更には個人個人の仕事の多忙さによる休止の危機。

 だがしかし、そんな困難を乗り越えて彼女たちは大人気アイドルバンドリに成長したのだ。結束力も断然高いのである。

 

 

「マヤさんがいないと、やっぱり寂しいです……」

 

 

 今ここにいない麻弥の事を思うイヴは両手を胸の前で重ねてシュンとした表情を浮かべる。それに釣られて日菜と彩もハァ、とため息をついた。

 

 

「そうね……でも、今は4人で集まれたことに感謝しましょう?」

 

 

 そんな中千聖は、寂しさを覚えながらも仕方のないことだとみんなに割り切るように説得する。それでもみんなは、やはりというべきか、1人仲間がいないことに哀愁を漂わせてしまう。

 彼女だっていない事は悲しく思っている。だからといってこのまま悔いていては流石に時間の無駄になるだけだ。なので千聖はこの状況を打破するべく、脳をフル回転させて打開策を考案させていた。

 

 

「……そういえば彩ちゃん。確かさっき、行きたいところがあった…って言わなかったかしら?」

 

「え?……あっ、そうそう!」

 

 

 千聖に言われて何かを思い出したのか、彩は咄嗟にバックからスマホを取り出して何かを検索し始めた。

 実は数十分前、千聖と彩は待ち合わせ場所にて他の2人を待つ際に何気ない会話を交わしていた。そんな会話の中で千聖は彩が話したある喫茶店の話題を思い出し、打開策として話題を彩に振ったのだ。

 

 

「今日みんなで行こうと思っててね!……じゃーん、ここ!」

 

 

 検索できたのだろう、彩はスマホ画面を自慢気に皆の前に差し出した。

 

 

「えーっと…『BAR MICA』?」

 

「わーっ!何ここ!るんっ♪ってくるー!」

 

「でしょ日菜ちゃん!ここお洒落でしょ!?」

 

 

 やや興奮気味に語る彩と相変わらずのるんっ♪語を交えて話す日菜。しかしながら千聖は先程の会話とある矛盾に気付いた。

 

 

「彩ちゃん……さっき喫茶店って言ってたわよね?…なんでBARなの?」

 

「ふふーん、それはね…!」

 

 

 疑問を投げ掛ける千聖に対し、彩は待ってましたと言わんばかりにスマホをスワイプさせる。そしてまた、皆の前に見せびらかせた。

 

 

「実はこのお店、お昼は喫茶店、夜はBARを経営してるんだって!」

 

「「おおーっ!」」

 

「……な、成る程ね」

 

 

 公示された情報に日菜とイヴは心を驚かせる。それに呆気を取られてしまう千聖。無論千聖自身も驚いてはいるが、2人の勢いに負かされてしまって上手く感情を表せないでいた。

 

 がしかし、ここでまたも千聖はある事に気づいた。

 

「場所もこの近くらしいから、早速「待って彩ちゃん」へっ?」

 

 

 

「このお店、明日から開店ですって…」

 

「……えぇっ!?」

 

 

 千聖による重大なカミングアウト。それにより彩は直ぐにスマホを持ち直して記事を最後まで読み直した。

 

 

「『美しく彩る煌びやかな店内。開店は4月11日から。皆様のご来店心待ちにしております』……えぇぇぇ!!?」

 

「なーんだ、彩ちゃんの早とちりかー」

 

「明日からでしたか…それは残念です…」

 

 

 丸山 彩、ここに来てドジっ子能力を発動させたのである。千聖はいつも通りの彩ちゃんだと苦笑いして割り切るが、日菜は頬を膨らませ、イヴはまたもしょんぼりとしてしまった。

 

 

「……なら彩ちゃん、今日は羽沢さんのお店に「あ、あのー……」……!」

 

 

 行き慣れたお店に向かおうと提案する千聖であったが、突然声をかけられてしまい、動かしていた口を閉じる。

 被っていた帽子を深くかぶり直していざ振り返ると、そこには自分より少し背の高いぐらいの男の子が立っていた。

 肩にかかる程のポニーテールの黄土色の髪に、明るく輝く黄金の片目。そして何より特徴的なのは、左目にかかった黒い眼帯だ。

 

 まさかファンに気づかれたのか……と警戒する千聖に、彼は一つ彼女に向かって一言放す。

 

 

 

「突然悪いんですけど……この位置って何処か分かります…?」

 

 

 

 全く持って平凡な、道案内のお願いを。

 

 

 

 

 

 

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 ……どのくらい時間経ったのか。もうね、俺ね、クタクタになったよ?ホント。

 道行く人に聞いてみたけど、さっきの女の子が走って行くのを目撃した人ばっかで誰も道教えてくんないの。ふざけんなよ!?俺は清い一般人だからなぁ!?……いや、そこまで一般人やってないわ。ってそんな事どうでもいいんだよ!!

 それで途方もなく歩いてたわけなんだよ。大荷物背負ってここどこぉ……?なんて思いながら歩いてたんだよ。もうね、足痛いの。助けて欲しかったよホント。

 だからもう最後の頼みで!みたいな感じで俺より小さい女の人に道案内してみたの。したらね?めっちゃ怪訝そうな顔で見られた。はぁ、先生の体質が俺にも移ったのかなぁ?

 

 まっ、結局は教えてもらったんだけどね。なんでも同行してたピンク髪の女子が今からその場所に行こうとしてたらしいんだよね。……でかでかと記事に明日開店って書いてあるのに。もうね、悪いとは思うけどあのピンクの人絶対に馬鹿だね。道案内してくれた人の目線がこの子馬鹿なのって目線で教えてた。あれは絶対にそうだった()

 

 

「……っと!とうちゃーく」

 

 

 とまぁなんだかんだで目的地に到着!いやぁ、なんだかんだ愚痴りながら歩いてたけど、ちゃんと向かってたぽかったね。いやぁ、安心安心。

 

 

「ふぅ、疲れたー」

 

 

 肩にのしかかった荷物を一気に下げて大きく身体を伸ばしていく。

 

 

「……にしても先生、そこそこ広い物件見つけてきたなぁ」

 

 

 横幅そこそこデカいよこれ?建物も新しく改装されてて綺麗だし、3かい建てだし。うーん、いい物件。

 

 

 閑話休題(それはそれとして)

 

 

 

「……明日から働き詰めになるのかぁ」

 

 

 ちょいと愚痴っぽくなってるけど、内心ではちょっとだけワクワクしてる。……なんでって?うーんそりゃあ…

 

 ……面白くなりそうだから?……ってなんで俺疑問系なんだよ。

 

 

「さて、と……明日の準備もしなきゃな!」

 

 

 そんな可笑しな理想を胸に俺……光野 蓮司は、店の中へと通じる扉に手を掛けた––––。

 

 

 

 

 

「あれ?開かない?」

 

 

 嘘、鍵掛かってんの?えっ、もしかして鍵この荷物の中に入ってる系?……真逆、これから探すの?はぁ!?メンドクサァァァッ!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 今回は鋼錬要素が少ない感じするけど大丈夫!
 これから増えてくから、ね?
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