シンフォギア異伝 防人れ! 風鳴一族!   作:とりなんこつ

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第4話 光のオーロラ身に纏い

 

 

 

永遠の刹那を生きる巫女フィーネ。

その存在と名は人の歴史と共にあり、時の権力者の間でまことしやかに申し伝えられている。

彼女ほど歴史に伝承を残した個人は存在しない。

同時に、彼女に関わった人々はすべからく同じ命題を抱く。

 

―――彼女(フィーネ)は人類にとっての味方なのか? 敵なのか?

 

フィーネ個人としては、そのどちらでもない、と回答するしかない。

彼女の目的を達成するためには人類の発展と協力は不可欠。

その為ならば多くの人を導き救うことに躊躇はない。

同時に目的を邪魔する存在であれば、誰であろうと容赦せず殲滅してきた。

 

フィーネにとっての人類は、言うなれば道具であり手駒だ。

仮に道具(にんげん)をアップグレードして素晴らしい恩恵を受けたと喜ばれても、それは副産物のようなもの。

彼女の目的の一助になるかどうか。それだけが唯一の判断基準だ。

 

しかし、歴史的側面、または人類史を角度を変えて鑑みれば、フィーネは紛れもない英雄でもある。

 

もっともそう称されとて、フィーネは一笑に付しただろう。

 

もはや私は人間の領域に存在しない。

かつての神代の巫女―――只人であった頃の精神など、疾うに超越している。

 

ゆえに、人が幾ら死のうと心を動かされることはない。

ノイズを使役することにもなんら罪悪感もなかった。

 

この達観した心情こそ、恋焦がれた神の隣に達する(きざはし)だと、彼女は頑なに信じている。

 

 

 

翻って今の憑代たる櫻井了子の個性は、そのほとんどが了子のオリジナルである。

一口に融合といっても、純然と混ざり合うのには時間がかかるのだ。

なので人格を切り替えることでフィーネと了子を演じ分ける格好を選択していたが、なかなかどうしてお互いにフィードバックしあったり共有する部分も多い。

特にフィーネの感じる喜怒哀楽などは、了子経由で増幅して受けとっていた。

了子のこの妙な性格とテンションの高さには、神たらんとするフィーネをして辟易するしかない。

 

―――こやつが稀代の天才科学者であることは間違いないのだが。(なにがし)と天才は紙一重というヤツか?

 

 

 

しかし今。

そんな事情を抜きにして、フィーネは興奮していた。

この昂ぶりは櫻井了子も同調(シンクロ)している。二つの人格を通して見つめるモニターの先に、その原因が表示されていた。

 

『融合症例第一号 立花響』

 

聖遺物と人体の融合。

それはフィーネですら実現不可能な技術。いや、発想になかったというべきか。

そんな偶然の産物がすぐ目の前に存在し、自分はそれを精査出来る立場にある。

フィーネの興味も加味されて、櫻井了子が発奮したのも無理なからぬ話だ。

 

「うーん、普通だったら拒絶反応が起きるはずなのにね~」

 

コーヒーの入ったマグカップ片手に、了子は独りごちる。

そもそもの聖遺物は道具(アイテム)でしかない。フォニックゲインで励起し、かつ使い手があってこそ、その真価を発揮する。

その理論を基に了子が開発したのがシンフォギア・システムだ。

 

(基底状態にある聖遺物が有機物と結びつくなんて、端から可能性として除外していたのだけれど…)

 

「どうだ、了子くん? 響くんの希望は叶えられそうか?」

 

すぐ隣に風鳴弦十郎が立っていた。

ずば抜けた巨体の持ち主であるにも関わらず全く気配を感じさせない。

不快さにフィーネは眉を顰めたが、今の主人格である櫻井了子はいつものことと朗らかに笑う。

 

「うーん、安全に除去するとなると、ちょっち難しいわねえ。どちらにしろ胃の一部は切らなきゃ駄目だろうし…」

 

「では、このまま除去しなかった場合に想定される弊害は?」

 

「それも未知数。だって世界初の症例だもの」

 

ふうむ、と弦十郎は太い腕を組んで考え込んでいる。

この巨漢は秘密組織の総司令という割には誠実なところがあり、正義とかいうものの存在を頑なに信じ、体現しようとしている。

人という種の愚劣極まりない暗部を身を持って知り尽くしたフィーネとしては、青臭く嘲笑の対象でしかない。

だが、今の主人格はあくまで櫻井了子だ。

 

「とりあえず融合して二年間は健康に問題はなかったみたいだから、このままなら害はない筈よ」

 

軽い口調に反し、内容自体は厳しい指摘。

 

「このままなら、か…」

 

弦十郎は重々しく呟く。

ガングニールの欠片を励起してシンフォギアを纏う。この行為が、より融合を進行させてしまう可能性は高かった。

だからといってシンフォギア装者は宝石より貴重である。戦力的にも、研究対象としても、立花響を野放しには出来ない。

 

「今のところ命に関わるわけではないし…。しばらくは様子を見たいってのが研究者としての本音かな」

 

「…分かった。本人にも出来るだけ安全に除去する手段を探すと約束したしな。その方面でも進めてくれ」

 

「うん、りょーかい」

 

真剣な眼差しをモニターに注いでいた了子だったか、そこで一転してお茶らけた表情になる。

 

「ところで翼ちゃんは? 今日は久しぶりにオフじゃなかったっけ?」

 

「うむ。奏たちの様子を見に行きながら、クリスとデートだそうだ」

 

「へ~、女の子同士、相変わらず仲のよろしいことで♪」

 

「まあ、少しばかり仲が良すぎる気もするがな」

 

「…ちなみに弦十郎クンは、クリスちゃんが彼氏を連れてきたら、どうする?」

 

苦笑を浮かべていた弦十郎の顔が一瞬で引き攣った。

 

「は、はははッ、まだアイツは16歳だぞ? それがいきなり彼氏など…」

 

「世間一般でいったらJKの二年生にもなったら合コンはなくてもグループ交際くらいするんじゃない?」

 

フィーネの影響なのか、了子の言い回しも微妙に古臭い。

 

「ク、クリスが合コンにグループ交際など…ッ!?」

 

「女子高の方がそういうのはお盛んっても聞くし」

 

「そ、そうなのかッ!? いや、うちのクリスに限ってそんなことは…!」

 

弦十郎をからかって遊ぶのは、了子に許された特権であり趣味である。

鋼鉄超人と渾名される巨漢が狼狽えまくる姿はなかなかの見物だったが、あまり長く続けば暑苦しい。

 

「少しは落ち着きなさいな。クリスちゃんたち装者の動向はモニターしているでしょ? それに護衛の人たちからも何も報告は上がってきてないじゃない」

 

実際、シンフォギアとその装者は国家機密である。情報漏洩の観点からも、周囲の警備体制は半端なものではない。

それらの監視の目を掻い潜って不純異性交遊などまず不可能だ。考えてみれば当たり前の話である。

ようやくからかわれたことに気づいた弦十郎。

だが、先ほどまでの醜態は存在しなかったかのような振る舞いで、顎に指をあてて考え込んでいる。

 

「仮にクリスが彼氏を連れてきたとすれば…」

 

「すれば?」

 

これはこれで面白そうな展開なので、付き合ってやる情けが了子にも存在した。

果たして弦十郎は真剣な眼差しで言ってくる。

 

「まず、身元調査だな。当人のプロフィールももちろんだが、三親等まで遡って、過去の犯罪歴や思想傾向などを徹底的に検証する。むろん各種資産や住所の確認も必要だな。

それから周囲の評判や交友関係をあたり、普段の言動を精査した上で、どれだけクリスのことを想っているかしっかりと本人の口から語ってもらうつもりだ。そしてもし、単なる遊びなどと抜かしたら…」

 

「ごめんなさい、促した私がバカだったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…むッ、ここか?」

 

翼が足を止めた。

並んで歩いていたクリスも、一緒に門を見上げる。

ここは都内の閑静な住宅街にある屋敷の前。

立派な門構えと左右に広がる塀の長さから、敷地は相当広そうだ。

古色泰然とした上土門に見えて、最新のセキュリティカメラも巧妙に仕込まれている。

表札に『風鳴』の書体も勇ましいが、特異災害機動部二課で買い上げた施設で間違いなかった。

 

「へえ。大きなお屋敷なんだね」

 

クリスが呟けば、翼は破顔。

 

「ここなら、私とクリス、叔父様も一緒に暮らしても十分なほど広いなッ!」

 

親友の意気込みに、クリスは曖昧な微笑で応じる。

『リディアンを卒業したら一緒に住もう!』と翼が常々口にしているのだが、実家に戻ると思っている八紘の心情も考えると、なかなか即答は難しい。

肩を並べて門を潜れば、正面には大きな武家屋敷。

左右には広く庭も取られ、ちょっとした運動場以上のスペースだ。

特機部二としては、エージェントたちの訓練場や合宿所を想定しているので当然かも知れない。

そんな風に眺めながら歩いていると、盛大なエンジン音が近づいてくる。

 

「…?」

 

眼を見張る二人の前に、庭を突っ切って人影が飛び出してくる。空手の道着のようなものを着た立花響だ。

 

「どわわわわわ~ッ!!」

 

悲鳴を上げて逃げ回る彼女の背後を、クリーム色のジープが追いかけてくる。

 

「タチバナーッ! 逃げるなーッ! 逃げるんじゃなーいッ!」

 

運転手は、なぜか笑顔を浮かべた天羽奏。

 

「隊長ォ!」

 

対して全力全開で表情を引き攣らせる響。

 

「逃げるなーッ! こっちへこーいッ!」

 

「無茶いわないで下さいよッ!」

 

横っ跳びでかわした響に、ジープはUターン。立ち上がって逃げる響へと追いすがって横づけで併走。

 

「逃げるなッ! 向かってこいッ!」

 

ハンドルを操りながら、奏はハリセンでビシバシと響を叩いている。

 

 

 

「…あれは、何の訓練なんだ?」

 

目前の光景に翼が首を捻りつつ突っ込めば、

 

「…なんだろうね?」

 

無茶な元ネタを知りつつも、クリスは敢えて知らないフリ。

だけにあまりに響が不憫に思え、クリスは大きく声を張り上げていた。

 

「カナデー! 差し入れだよー!」

 

庭先にジープのフルブレーキ音が響く。

泣きべそをかく響の目前で停車したジープの運転席から、奏は杖を突いて降り立った。

 

「よう、二人とも! 良く来たなあ!」

 

笑顔を浮かべてやってきた奏は、客人たちを屋敷の縁側へと誘う。

 

「叔父様から伺ってはいたが、ずっと籠って訓練していたのか?」

 

縁側に腰を降ろし、翼が言う。

 

「ああ。タチバナ隊員もなかなか見どころがあるからな。こっちもつい熱が入っちまう」

 

隊員…? と首を捻る翼の前に、紅茶の入ったマグカップが差し出される。

クリスの淹れてくれたそれを運んできた響は、泥だらけの道着のままで唇を尖らせる。

 

「見どころがあるって言われてもあんな特訓止めてくださいよ! 死んでしまいますッ!」

 

響の訴えに奏は苦笑で応じた。

 

「おまえに足りないのはハングリーさだ。生きることに貪欲にならなきゃ、誰も護れねーんだよ」

 

中々に含蓄のある言葉に思われたが、直後に響のお腹が盛大な音を立てたので色々と台無しとなる。

 

「…その腹ペコ(ハングリー)じゃないんだけどな」

 

これには翼とクリスも笑ったので、響は赤面。憧れの人たちの前で醜態を晒してしまったのだから、当然だろう。

 

「立花さん、どうぞ」

 

そんな響に、クリスは切り分けたチーズケーキを差し出す。

 

「うわッ! ありがとうございます!」

 

「これは雪音の手作りの逸品さ。あたしの大好物で滅茶苦茶美味いぞー」

 

「うぇ?! クリスちゃんのお手製なの? もったいな美味しいー!」

 

咀嚼と称賛を同時にしてくる器用な響に、クリスは呆気にとられる。

 

「もっと味わって食べなさい」

 

ジロリと翼に睨まれるも、響は全く意に介さず残ったケーキへと視線を注いで、

 

「あの~、お替りを…?」

 

「はい、どうぞ」

 

揉み手をしてくる響に、クリスはにっこりと笑ってもう一切れのケーキを渡していた。

 

「しかし、まあ…、どうにかなりそうなのか?」

 

上品に紅茶を啜りつつ翼が訊ねれば、奏は豪快に一気飲みして答える。

 

「ああ。実戦の投入に関しては、ダンナの了解も取り付けている。櫻井女史にもインカムの調整もお願いしているし」

 

二人の視線は、チーズケーキをパクつく響へと注がれた。

ここに来て発見された四人目のシンフォギア装者にして、新たなガングニールの担い手。

 

「これで、晴れてトライウイングも新生ってことさ」

 

サバサバという奏に、翼は疑問をぶつけていた。かねてから思っていた疑問を。

 

「…奏は、蟠りを覚えたりしないのか?」

 

かつて、奏、翼、クリスの三人でトライウイングだった。

その座をあっさりと後進へ譲り渡すことに、何も感じることはないのか?

 

「別にあたしの中のガングニールは失われたわけじゃない。それに…」

 

奏は笑いながら握った拳を差し出す。

 

「魂は、常におまえたちと一緒にある。だったら素敵で無敵だろ?」

 

「…そうだな」

 

同じく握った拳を打ち付け、翼も笑ってみせる。

新たな仲間と入れ替わったところで、かつての三人の歌と戦いの日々は決して色あせることはないのだ。

 

(―――そうか。もしかして一番蟠りを持っていたのは、私自身だったのかも知れないな)

 

自戒しつつ、翼も立花響に関して、認識を改める必要を感じている。

こういってはなんだが、立花響は市井の人間だ。

防人の血筋でもなければ、必要に迫られて武器をとることになったわけではない。

その上で、偶然にも戦える力を手に入れている。

ノイズと戦えるという、希少極まりない力を。

 

だからといって、そんな人間をすぐに戦場へと投入することは出来ない。

偶然に得た力であればこそ、戦う動機が必要になる。

確かな覚悟がなければ、戦場で戦うことはおろか生き延びることさえ不可能。

引いては、それは一緒に戦うものの足枷になる可能性すら存在するのだ。

 

(ならば、先達として導かねばなるまい)

 

かつての自分であれば、足手まといは戦場に出てくるな! と一刀両断にしていたかも知れない。

しかし、共に戦う戦士として、仲間として教導するのも、防人としての立派な務めだと翼は認識も新たにしていた。

もはや自分は幼い頃のままではいられない。ただ剣を振るうだけではなく、父を、叔父を、もっと見習わなければ。

振るう剣の数が増えれば、より多くの無辜なる人たちを護ることが出来るのだから。

 

「―――なあ、立花」

 

さっそく防人の心構えでも説くかと、翼がそう声をかけた時だった。

 

「あーッ! てめえ、一人で半ラウンド以上も喰いやがってッ!」

 

奏の素っ頓狂な声。

 

「えへへ、あんまり美味しかったもんで、つい…」

 

さっぱり悪びれてない声で響が後頭部を掻いている。

いつの間にか消失したケーキにクリスが呆気にとられている前で、奏は響の襟首を掴むと庭先へと放り出す。

 

「腹は満たされただろ?  そんじゃあ、精神的に腹ペコ(ハングリー)になってもらおうか」

 

地面にへたり込む響に向かって、すごい笑顔で言っている。

 

「えーっと、頭の方ももうお腹いっぱいかなーって…?」

 

「休憩終わり! 特訓再開ッ!」

 

言うなり、奏はジープへと乗り込む。

盛大にエンジンを轟かせ、「ひーん!」と泣き叫ぶ響を追ってジープは庭の奥へと消えていく。

その姿を見送り、翼はやや茫然と呟いた。

 

「…私の教導は、また今度でいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特異災害機動部二課のトレーニングルームの中心に、立花響がいた。

 

『それじゃあ、響ちゃん。シンフォギアを装着してみて』

 

スピーカー越しの隣室からの指示に、響は大きく頷く。

 

「了解です!」

 

意識を集中すると胸の内から歌のフレーズが浮かんでくる。

それを口にした途端、お腹の奥から熱と光が溢れた。

光が収まれば、黄色と黒のツートンカラーのシンフォギアが身体を鎧っていた。これが彼女のガングニール。

目前に出現した仮想ノイズに響は拳を振るう。

綺麗な型どおりではないが、腰の入ったなかなか良い突きだ。

たちまち数体を拳で粉砕し、背後から迫るノイズへとトラースキックを決めている。

 

「ふむ。なかなか様になっているじゃないか」

 

隣室のモニタールームで、弦十郎は響の戦闘をそう評した。

 

「だろ? 運動神経は悪くないから、結構仕込み甲斐があったぜ。まあ、後々はダンナからも矯正してやってもらうけどさ」

 

嬉しそうに奏は答えたものの、響はどういうわけかアームドギアの生成が出来ずにいる。

素手での戦闘に於いて、弦十郎に比肩する存在は特機部二はいない。

取りあえずのケンカ殺法は伝授したものの、奏が後の教導を弦十郎に頼む所以である。

 

「それは承諾したが、なぜにアームドギアの生成が出来ないのだろうか…」

 

「響ちゃんの心理上の問題ね」

 

弦十郎の疑問に、了子が応じる。

 

「アームドギアは装者本人の心の持ち用を形にするのよ。響ちゃんは武器なんて扱ったことのない普通の子なんだから、当然じゃないかしら?」

 

「むう…」

 

武器があった方が戦闘の応用範囲は広がる。だからといって付け焼刃で身に着けさせたところで、どこまで効果的なものか。

 

「それより、当座の重要な問題が一つあるわ」

 

了子の指がコンソールの上で踊り、一つの映像が表示される。

それは、響の身体が発光しシンフォギアを纏う瞬間の映像だった。

 

「これが…どうしたというのだ?」

 

首を捻る弦十郎。

 

「結構眩しいよな、これって」

 

奏の言に、了子は大きく頷く。

 

「そう。奏ちゃんの言うとおり、直視すれば失明しかねないほどの強烈な閃光なの。それの意味するところは…」

 

モニター上の映像が切り替わる。

今度は、奏、翼、クリス、それぞれがシンフォギアを纏う映像だった。

 

「弦十郎クン、この三人と響ちゃんの違いが分かる?」

 

「三人とも…何か光の球に包まれているように見えるが」

 

「そう。これがバリア・フィールド。シンフォギアの着装時に装者を護るために展開される守護領域なの」

 

了子の答えを聴き、弦十郎の顔色が変わった。

 

「すると、響くんはッ!」

 

「彼女はあくまで融合症例だわ。いくらシンフォギアの欠片を励起しているとはいえ、シンフォギア・システムの恩恵まであずかれていないのよ」

 

つまり、櫻井了子の作成した完全なシンフォギアであれば、着装時にバリア・フィールドは生成される。

しかし、シンフォギアの欠片を宿し、融合症例として起動する立花響には、バリア・フィールドが生成されない。

 

「本当はこの全身から発散される光の方が本来的なもので、私がそれをバリアの形に落とし込んでいるんだけどね…」

 

「なんてことだ…ッ」

 

弦十郎は唸る。

シンフォギアを起動し、着装するまで1秒にも満たない短時間だ。

だがそれは、ごく短時間ながらも無防備な状態を作ってしまうことも意味する。

 

「変身出来ないよう邪魔されちまうってことか? それって邪道だろ?」

 

「といってもノイズにお約束が存在しない以上、そういうことだろうな」 

 

奏と弦十郎が良く分からない会話を交わしている横で、了子はトレーニングルームへと指示を飛ばす。

 

「ちょっと響ちゃん、ギアを解除して貰える?」

 

『あ、はい。了解ですッ!』

 

発光し、響の格好はリディアンの制服姿に戻っている。

 

「ありがと。んじゃ、そこで、さっき私が渡した携帯端末、今も持っている?」

 

『はい、ありますよー』

 

「それじゃ、それをお腹の上あたりに乗せて、横のボタンを押してちょうだい」

 

『こうですか…?』

 

トレーニングルームで、響がバックルのように腰前に長方形の携帯端末を持ってくる。

ボタンを押した途端、その端末からベルトが飛び出し、細い腰へと巻き付く。

 

「おおおッ!?」

 

これには弦十郎と奏が揃って目を剥いた。

 

「OK。じゃあ、もっかいギアを纏ってみて」

 

『わっかりました』

 

響の口から澄んだ歌声が流れ、彼女の腹部から光が溢れ出す。

周囲の目を眩ますように飛散するかと思われた光は、腰のベルトの内側へと吸収。

続いて、彼女を中心に円形の光が展開された。見紛うことなきバリア・フィールドだ。

 

「どう? システムが組み込めないなら、後付のデバイスでエネルギーを調整してバリア・フィールドを生成できるようにしてみたんだけど」

 

天才の面目躍如とばかりに豊かな胸を張る了子だったが、血相を変えた弦十郎と奏が詰め寄ってきて面喰らう。

 

「りょ、了子くん! あれを一つ、どうか俺にも作ってくれまいかッ!!」

 

「櫻井女史! あたしもあたしもーッ!」

 

「…何いってるのよ、二人とも? オモチャじゃないのよ?」

 

弦十郎・奏「(´・ω・`)」

 

 

 

 

 

 

 




レオの特訓動画はまとめてネットにアップされているけど、平成ウルトラマン世代には地獄の光景だゾ(ミカボイス



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