シンフォギア異伝 防人れ! 風鳴一族!   作:とりなんこつ

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第8話 輝きは君の中に

 

 

『…私自身、フィーネがしてきたことの正邪曲直についてを評する言葉は持たない。

 けれど、彼女がその生涯を通じて目指してきた計画に対しては、並々ならぬ興味を抱いたことを明確に断言できる。

 人類の創造主たるアヌンナキとの再邂逅。

 仮初にも聖遺物の研究者たる身としては、まさにその根源に至る行為であり、究極的な目標といって良い。

 それを果たすために、幾つもの魂の器を渡り歩いたフィーネの執念。有史以前からこの星の時間に刻まれた彼女の行動を思えば、気が遠くなるような思いだ。

 長い時を経てなお目的を見失わない強靭さ。何者の犠牲をも―――己自身さえ―――厭わぬ執念。

 自分の立場を弁え、その権謀術数は国家を相手にしても引けをとらなかったほどである。

 これを妄執と断定してしまえるほど、彼女が冷静さを失っていたとも思えない。

 しかし、ここで、相対的に大きな矛盾が生じている。

 

 確かにこの時代に、彼女の願望を叶えるための舞台は整ったといえる。

 だが、それを叶えるために、なぜこの瞬間を選んだのだろう?

 

 彼女の閲してきた時間を思えば、ほんの十数年など誤差に等しいのではないか。

 にも関わらず、これ以上ないほどの不確定要素を孕んだ状況において、彼女は最終計画を始動させてしまった。

 

 フィーネが性急とも思える行動に踏み切った総合的な原因に関しては後述する。

 しかし、おそらくその切っ掛けは…。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

――――――――――――――――― 

 

 

特機部二の発令所の巨大モニターの中で、獅子奮迅の活躍をする立花響がいる。

 

「前回の戦闘データに比べ、立花さんの適合係数が飛躍的に増大しています!」

 

藤尭のその報告を耳にしながら、総司令である風鳴弦十郎は呻いた。

 

「これは、三日会わざれば、というやつか…?」

 

確かに適合係数が高ければ高いほどシンフォギアの戦闘力は増す。

だとしても、響の動きの切れの良さは尋常ではなかった。

 

「色々と吹っ切れたみたいだな。素質はあるとは思ったけれど、こうまでイケるヤツだとは思わなかったぜ」

 

弦十郎の巨漢の隣で、あの天羽奏すら舌を巻いている。

 

「これは、翼ちゃんもクリスちゃんもウカウカしてられないわね」

 

櫻井了子をしても手放し賞賛の様子。

そんな研究部主任に対し、弦十郎は軽く目配せ。

こくりと頷く了子のディスプレイに表示されているバイタルデータ。

響の胃袋には第三聖遺物『ガングニール』が侵食している。それを了子は個別でモニターしているわけだが、顔を上げた彼女はにっこりと笑った。

 

「こちらも大丈夫みたいね」

 

侵食の進行はないみたい―――との無言の続きに、弦十郎は「そうか」とホッと胸を撫でおろしている。

 

つまり、響は非常に安定していると言えた。

それは対ノイズ戦に限らず、新生トライウイングとしての活動にも反映されている。

デビュー当時はあからさまに強張っていた力みも取れた自然体。

加えて、ただひたすらに真っすぐ明るい笑顔は、オーディエンスにとって見ているだけで元気になれてお腹まで空いてくるというオマケ付きである。

結果として、響の人気は急上昇。関連グッズの売り上げも上々。ライブ会場の飲食物の販売量も増加している。

風鳴翼のファンは女性層が多く、雪音クリスは男性層が多い。

ちょうど半々のファン層を誇る響は、それはそれで興味深く、こと新生トライウイングにおいてバランスの取れた存在なのかも知れなかった。

 

では、響が急速に輝きを増している理由は―――。

 

発令所の視線が、モニター前で手を握り締める少女へと注がれる。

小日向未来。

立花響のルームメイトにして、彼女にとっての大親友。

響がトライウイングとしてデビューして間もなく、装者であることも未来にバレている。

結果として、それが功を奏していた。

何も親友に隠し事がなくなった響は、非常に伸び伸びとその自由の翼を羽ばたかせている。

まさに『もう何も怖くない!』状態なのだろう。

逆説的に、普段からどれだけストレスを受けていたんやねん! という中々に怖い考察も成立するわけだが…。

 

そんな未来であるが、特機部二に特別外部協力者としてに出入りを許可されるや否や、率先して響のマネージメントを務めるようになっていた。

放課後、響のダンスや歌のレッスンなどにも、もれなく付随している。

どこで調達してきたのか緒川と同じスーツに眼鏡姿でトライウイングに付いて回る未来は、響が喜んでいるので黙認されていた。

 

「…だが、発令所内への出入りまでは認めたつもりはないんだがなあ…」

 

弦十郎はぼやく。

響がシンフォギアを纏って出撃するのにまでは、さすがに一緒にはいけない。

ならば、響の戦っている姿を見守りたい!

そんな少女の強い思いは、いつの間にか発令所のモニター前の片隅に陣取る形で結実している。

本来なら機密中の機密で、外部協力者でも立ち入り禁止の発令所。

にも関わらず、未来が自分のポジションを確保していることに、弦十郎は疑問と戦慄を禁じ得ない。

こと響に関して、未来は成り振り構わなくなる。

その謎の突破力は、弦十郎を始めとした特機部二内部の大人たちでも太刀打ち出来そうもなかった。

 

(ひょっとしたら未来くんはあの『微笑みの爆弾』に匹敵するスペックの持ち主やも…?)

 

未来を追い出すことを諦め、あらぬ方向へ思考を飛ばす弦十郎がいる。

 

「最後のノイズの一体の殲滅を完了しましたッ!」

 

「お、おう! 装者たちの帰投を急がせてくれ。調査員は残留し、引き続き周辺の警戒に当たるとともに、情報検索を実施しろ!」

 

了解です! と返事をしてくる友里に、弦十郎は、いかんいかん集中しろと己を戒める。

そんな彼は、もう一人の直属の部下が神妙な表情を浮かべていることに気づいた。

 

「どうした、藤尭?」

 

「…いえ。断言できたものでないんですが」

 

渋い声と表情をする藤尭だったが、弦十郎は笑って促す。

 

「構わんぞ。おまえの頭脳を俺は何より信頼している。おまえが違和感を抱いたとすれば、それは俺の違和感だ」

 

言われて、少しだけ顔を嬉しそうに綻ばせ藤尭は報告。

 

「今回のノイズの発生と動きに、何か作為的なものを感じたんです」

 

「作為的、とな?」

 

弦十郎は太い眉を顰める。

有史以来、自然発生してきたとされるノイズ。

しかし、二年前のライブ会場の惨劇や、こと近年の首都圏内のノイズ発生率を鑑みれば、誰かが人為的に召喚しているであろうことは予測されていた。

それを承知して藤尭は続ける。

 

「まるで、ノイズに何かしらの目的意識を持たせようとしているような…」

 

「つまりは“敵”は、ノイズを操る方法を確立したということか?」

 

ノイズは、現れた周辺の人間を無差別に襲う。

超古代の対人兵器と目されるノイズの行動原理と機能はそう解析されていた。

だが、もし仮に、ノイズを戦術的に運用することが可能であれば…?

 

「それは、確かなのか、藤尭?」

 

「すみませんが、オレが感じた違和感からそう推論されるだけで、断言までには」

 

多少自信なさげに項垂れる藤尭だったが、彼の頭脳には過去のノイズの出現パターン、時刻、自壊数、殺害数、種類などといった全てのデータが理路整然と詰め込まれていると聞く。

 

「むう…」

 

難しい顔で腕を組む弦十郎を、自席の櫻井了子は少なからぬ戦慄を持って眺めていた。

藤尭の推測通り、今日のノイズの出現は聖遺物【ソロモンの杖】の実戦を意図したもの。

極力不自然さを排しての戦術行動のようなものを取らせたつもりだったが、その僅かな綻びからたちまち真意を推測されてしまった。

 

(彼奴らめ、侮れぬな…)

 

忌々し気に呟くフィーネに反し、櫻井了子の胸に沸きあがる仲間意識と誇らしさ。

毎度の矛盾する感情を噛み殺し、フィーネは今後の考察を続ける。

 

(米国の要請を突っぱねて久しい。が、さすがにソロモンの杖を渡したことまであの国は言うまい)

 

最終計画の準備がほぼ完了した今、フィーネとしては世界最大の軍事国家とつるんでいる意味も旨味も存在しない。

いい加減に斬り捨てを図っているが、おそらく向うも何かしら感づいているはずだ。

もちろん、その為の対策と準備も怠りないが…。

 

「…君はどう思う、了子くん?」

 

「!? え、えーとなんだっけ?」

 

不覚とばかりにフィーネは臍を噛む。このような不意の問い掛けは、人格のスイッチの切り替えがスムーズにいかず困難なのだ。

狼狽してしまう了子の前を、小柄な影が横切ったのは幸運だったかも知れない。

 

「響が帰ってくる! お迎えにいかなきゃ!」

 

小日向未来が発令所を飛び出していく。

元陸上部仕込みの軽快な走りに、扉もあいたおかげで発令所内の空気も大きくかき回された。

おかげで了子も態勢を整え直すことが出来ている。

彼女は眼鏡を指で押上げながら笑ってみせた。

 

「そうね。響ちゃんたちも帰投してきたみたいだし、その話はみんなで温かいものでも飲んでからにしましょう。ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「響、おかえりッ!」

 

「未来、ただいまッ!」

 

たたたッ、とお互いに駆け寄った二人は、そのまま両手を絡め合っている。

 

「ったく、二人ともお熱いこって」

 

頭の後ろに腕を組みながら奏がぼやいたのも無理もない。

元々帰投した直後を出迎えたくせに、響たちが一旦シャワーを浴びるため別れてからの再会でもこのテンションの高さなのである。

 

「…翼も、最初の頃は出撃して戻ってくるたびにこんなテンションだったよ?」

 

クスクスと笑うクリスがいる。

 

「そうだったか…?」

 

翼はなんだか微妙な表情。

ともあれ、出撃後のお疲れ様会よろしく、装者たち一堂は、本部内の談話コーナーに結集していた。

全員に自販機で購入した飲み物が回され、唯一の非装者である未来はさっそくテーブルの上に置いた箱を開けている。

 

「ちょっとレモンタルトを作ってきたんですけど…」

 

「うわー、美味しそうー!」

 

全力ではしゃぐ響であったが、食欲魔人である彼女は、クリスがそっと持っていたバスケットをテーブル下に隠したのを見逃さない。 

 

「あ、ひょっとしてクリスちゃんも何か持ってきてくれたのッ!?」

 

「え? あの、これは…!」

 

慌てるクリスだったが、

 

「お? 雪音のチーズケーキだろ? 久しぶりだなッ」

 

奏も意外と食い意地が張っていたことを思い出す。

 

「…良かったら」

 

テーブルの上におずおずと手製のチーズケーキを並べるクリス。

 

「クリスちゃんのチーズケーキも、めちゃくちゃ美味しいんだよ~」

 

またまたはしゃぐ響に、未来はにっこりと笑いかける。

 

「どちらが美味しいか、しっかりと味わって食べてね?」

 

優しい声音に、ひっそりと氷の針が含まれていたように感じたのクリスだけだろうか。

思わず助けを求めるように隣の翼を見れば、彼女は二つのケーキを前に葛藤中。

 

「むう。二つも食べればカロリーオーバー。ならば、半々? いやいやさっき戦闘をしてきたばかりだから、多少多く栄養を取っても…!!」

 

「………」

 

肝腎な時に頼りにならない親友から視線を戻し、クリスは自分の前に置かれたレモンタルトを見下ろす。

 

「さあ、雪音さん。どうぞ」

 

未来ににっこり微笑まれては、さすがに遠慮するわけにもいかない。

おそるおそる口へと運べば、蜂蜜とレモンの爽やかな甘みが口いっぱいに広がる。

 

「…美味しい」

 

思わず呟けば、

 

「良かった~」

 

ぱちぱちと手を打ち鳴らして喜ぶ未来。

その無邪気な様は、クリスはさっき感じたのは錯覚かな? と思ってしまうほど。

 

「えーと、小日向さん。良かったらレシピを…」

 

「ごめんなさい。私のレシピは全部響専用だから」

 

未来がにっこりと拒絶。

 

「え?」

 

思わず凍り付くクリス。周囲を見回すも、他の仲間のそれぞれは二つのケーキと格闘中で聞こえていない様子。

 

「はい、響、ケーキお替りどうぞ」

 

「ありがと、未来~!」

 

まるで先ほどのやりとりがなかったかのように喜色満面で響の給仕をする未来がいる。

…さっきのは空耳? ううん、空耳じゃなかったよね?

 

何が何やらまるで訳が分からない。

分からないままにクリスはこう呟くしかなかった。

 

「…こわいよう」

 

 

 

 

 

なお、現時点において

 

 

立花響

 

→風鳴翼  「かっこいい憧れです!」

 

→雪音クリス「可愛い! 大好きです!」

 

 

 

  

風鳴翼

 

→雪音クリス「今日も可愛いぞ!」

 

→立花響  「なかなか見どころのあるヤツだなッ!」

 

 

 

 

雪音クリス

 

→立花響  「うん、頑張っていると思うよ?」

 

→小日向未来「なんか怖い…」

 

 

 

 

小日向未来

 

→風鳴翼  「(部分的に)勝った!」

 

→雪音クリス「ま、負けた…。で、でも響は渡さないもん!」

 

 

 

 

天羽奏

 

「レモンタルトうめー!」

 

「チーズケーキうめー!」

 

 

 

 

 

一部微妙な空気を醸し出すガールズばかりのお茶会は続けられている。

そんな中、レモンタルトとチーズケーキを二切れずつ平らげた天羽奏が顔を上げた。

 

「あ、隊長ッ!」

 

彼女の視線の先。廊下を歩く巨大な姿は風鳴訃堂だった。

 

「む?」

 

足を止めた訃堂の前に、率先して天羽奏が駆け寄る。

 

「隊長が本部にいるのは珍しいじゃん!」

 

続いた翼がペコリと頭を下げた。

 

「お祖父さま、ご無沙汰しております」

 

その横で同じように頭を下げるクリス。彼女にとって訃堂は義理の父に当たるが、響の前でそう口にすればまたややこしいことになるのは目に見えている。

 

そして次にやってきてのはその響であって、彼女も翼に倣って頭を下げていた。

 

「こんにちは、()()()!」

 

奏を隊長と仰ぐ響にとって、奏が師と仰ぐ訃堂をそう呼び分けているらしい。

 

「あの…こちらの方は?」

 

最後の未来がおそるおそる訊ねれば、

 

「ああ、特機部二の前司令だよ、隊長は」

 

「そして私の祖父でもある」

 

「わたしの命の恩人だよ~」

 

三者三用の返答だったが、どれが未来にとって一番有益な情報だったかは記すまでもない。

 

「そうでしたかッ! その節は、うちの響が大変お世話に…」

 

やけに所帯じみた物言いで、それでも深々と頭を下げてくる少女に、さすがの怪物訃堂もリアクションの選択に困っている気配。

そんな未来は、親友を助けてもらった恩義を力に変えて、ここでも謎の突破力を発揮する。

 

「いま、ちょうどみんなでお茶しているんです! 良かったらご一緒しませんかッ!?」

 

 

 

 

 

 

談話コーナーの長椅子の真ん中に訃堂が座す。

その左右に奏と翼。更にその左右に響とクリス。

対面には、甲斐甲斐しく新たなケーキを切り出して、訃堂の前に差し出す未来。

 

両手に花どころではないこの稀有なシチュエーションと光景に、遠目に目撃した特機部二の職員はもれなく卒倒し、施設内モニターで観察した職員の殆どが医務室で神経洗浄を受けたという。

 

そして年ごろの女の子たちに囲まれた訃堂はというと―――苦い表情をしつつ、内心は満更でもなかった。

証拠に、

 

「どうしました、お祖父さま?」

 

「いや、儂ではない儂がどこかで喝采を上げたような気がしてな」

 

「?」

 

声音はいつになく柔らかい。

女子供は、彼にとっての庇護対象である。

極限まで鍛え上げたと仮定して、女性が筋力で男性に勝ることはない。

ゆえに戦いの矢面に立つのは男の仕事であると自認していた。

もっとも完全な男尊女卑思想の持主ではないことは、特撮戦隊シリーズの愛好者であることより明らかであろう。

 

「…おぬしたちには苦労を掛けるな」

 

珍しいことこの上ない労いにも、万感の思いが籠る。

シンフォギアは女性にしか纏うことが出来ない。

生物的に完全体である女性云々との説明も受けていたが、忸怩たるものは拭えない。

せめて弦十郎が、それでなくても儂自身が纏えれば、ノイズなど一顧だにしないのだが。

 

「構わねーよ、隊長。そいつは役割分担ってやつだぜ?」

 

奏が笑う。

 

「シンフォギアを纏えるからこそ、防人として出来ることの幅が増えていると思っています!」

 

意気込む翼に、隣で静かに頷くクリス。

 

「え、えーと、良く分からないけれど、これからも精一杯人助けを頑張りますッ!」

 

ある意味ブレない響の言に、訃堂は深く頷いた。

人を厄災より助け守り抜く人間こそ、防人と呼ばれる存在なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、空前絶後のお茶会より数日後。

クリスは一人、発令所へと呼び出されていた。

 

「“フィーネ”の件だ」

 

開口一番の弦十郎のその言に、クリスは息を飲む。

同時に、発令所には直近の職員しかいないことに気づいている。

 

フィーネ。

 

それは超古代文明の落とし子。

人類史に幾度もパラダイムシフトを齎した英雄。同時に虐殺者。

永遠の刹那を生きる魔女―――。

 

国家間で実しやかに申し送られる超極秘事項。

ノイズの発生との関連性と周辺諸外国の情勢を鑑みるに、現代の舞台裏にもフィーネが暗躍していると弦十郎ら特機部二は推測。

奏、翼、クリスら三人の装者たちにもその情報は共有されていた。

 

「米国からのリークでな。日本国内に、彼女のアジトが存在するらしい」

 

それは、ライブ会場の惨劇はもとより、最近の国内の異常なノイズ発生率の裏付けにもなる。

つまりは、フィーネはノイズを操り、日本国内で何かしらを目論んでいるということだ。

 

今から弦十郎は二課の職員を率いてアジトへ踏み込む予定だという。

突撃に際しノイズの突然の出現も予想される。

その備えに、シンフォギア装者であるクリスへの同道の命令だった。

 

本日、翼はトライウイング再結成前にしていたソロ活動の関連で、イギリスのプロモーターと顔合わせ。

まだフィーネ関連の情報を伝えてない響は本部へ予備待機させれば、残る人選的にクリスしかいない。

 

「わかりました」

 

快諾するクリスに、弦十郎が「では行くか」と司令席から腰を上げその時。

ひたすら明るくおちゃらけた声が響く。

 

「あ、私も一緒に行くわよん♪」

 

櫻井了子が勢いよく手を上げていた。

この申し出に面食らう弦十郎に、

 

「だってフィーネのアジトでしょ? 古代知識や聖遺物関連がいっぱいじゃない」

 

「い、いや、了子くんはまずは安全が確保されてからで…」

 

「それ関連の罠が仕掛けてあるなら、解除するのは専門知識がある人間じゃなきゃ、駄目じゃない?」

 

もっともな物言いに思えて、何かしらの違和感が酷かった。

なにせ、言い出しっぺの櫻井了子が驚いている。

なにより。

 

彼女の中のフィーネが一番驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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