スーパーロボット大戦 Access Universe 作:名無しのピエロ
――東京――
人の喧騒、車の排気音、そして慌ただしい電子音が鳴り響く街を5人の若者が歩いていた。
タクヤ「…しっかしよぉ、この街の技術は凄いよなぁ、バナージ。」
バナージ「ぇ?あぁ……そうだね。」
ミコット「バナージ…やっぱりまだ苦しいの?」
バナージ「いや…大丈夫。多分。」
ジュドー「………気分転換と後学の為に地球に降りたけどさぁ。やっぱりバナージ…宇宙…オードリーの側にいた方が良かったんじゃないか?」
カミーユ「無理を言うな、ジュドー。バナージもバナージなりに乗り越えようとしてる。今は気を紛らわして楽しませてやりたい」
ファ「バナージだけじゃないわ、オードリー達もよ」
バナージという少年を気にかける少女の名はミコット、その横で辺りを見渡して感心しているのがタクヤだ。
そして、彼等の後ろで話をしているのは、この宇宙西暦史に残る戦争―グリプス戦役、第一次ネオ・ジオン戦争でガンダムを駆り戦ったパイロット、カミーユ・ビダンとジュドー・アーシタ、ファ・ユィリィ、ルー・ルカだ。
バナージもまた、ガンダムを駆り死線を潜り抜けた戦士である。この世界で数月前に繰り広げられた、ラプラス騒乱の功労者だ。
ラプラスの箱と呼ばれる物を巡る、連邦軍とネオ・ジオンの部隊との戦いは熾烈を極め…地球、宇宙共に多大な被害を出しながらも終結し、ラプラスの箱の開示、そして新たな指導者の登場により世界は再び平和を取り戻しつつあった。
成り行きで戦う事になってしまったバナージをカミーユ達は同じガンダムのパイロットとして支えてはいたが、やはり精神的な負担は多く抱え込んでいた様だ。
バナージはその戦いで、人の体にはあまりにも大き過ぎる負担が掛かった為にしばらく安静に療養していたのだが……
タクヤ「なぁ、バナージ。折角オットー艦長やブライト大佐が地球に降りる許可をくれたんだぜ、もう少し楽しまないか?」
バナージ「ごめん」
ミコット「もう、タクヤ!バナージがどれだけ辛いかあなた…」
タクヤ「わ、分かってるって…!悪かったよ…」
ルー「はいはいはい駄目よ皆、誰かを責めるような事言わないの」
カミーユ「…そうだ皆、たい焼きでも食べないか?俺が出すよ」
カミーユが指差す方向には横断歩道の先の角には笑顔で振る舞う店員のいるたい焼き屋があり…タクヤとジュドーはそれを見て顔を輝かせる。
タクヤ「おぉっ!たい焼き!いいですね、カミーユさん!」
ジュドー「やりぃ!カミーユさんのオゴリだ!」
ミコット「いいんですか?」
カミーユ「構わないさ、俺も軍人の端くれだからな。」
ルー「ふぅ…カミーユの後輩達に甘いクセ、どこかで直さないと…」
バナージ「………ぁ、あれ。」
ファ「バナージ?……ああ、なるほどね。」
そうして横断歩道を渡ろうとすると、バナージ達の反対側から来る老婆とそれを側で補助している女性に気付いた面々が声を掛ける。
バナージとファが駆け寄ったのは単純に老婆達の歩みが遅くて不安だ、というだけではなく、横断歩道を通ろうとする車の進行の妨げにもなっていたからだ。
「おい、アラト!」
「あの子、人間じゃないですよ!」
「分かってるー!」
………バナージ達が老婆達に寄るとほぼ同じく、一人の少年が駆け寄ってくる。
アラト「あっ…手伝います!」
バナージ「ぁ…どうも…」
ファ「すみません、ちょっと失礼しますね?」
女性?「ありがとうございます」
3人の手伝いもあって彼女達は無事渡る事が出来た。バナージ達は老婆と女性に会釈をすれば反対側で再び横断歩道の信号が変わるのを待つ。
カミーユ「……なぁ、君達」
遼「あぁ…はい」
ジュドー「あいつの知り合い、というか…学校の友達ってとこ?あ、俺はジュドーって言うんだ」
ケンゴ「ええ、そうですよ。僕は村主(すぐり)ケンゴです。………何か用ですか?」
カミーユに声を掛けられて返事をしたのは海内遼、その隣にいる眼鏡の少年は村主ケンゴと名乗った。
カミーユ「さっき、お婆さん…もしくは彼女を手伝っていた女性がが人間じゃないと言っていたが……」
遼「あんた達、もしかしてスペースノイドか?」
ケンゴ「スペースノイドだったら仕方ないですね、宇宙ではまだ…」
タクヤ「hIEですよね!!」
ケンゴ「うわぁっ!?」
突然脇から大きな声を上げるタクヤに思わず声を上げるケンゴ。
ジュドー「hIE………ええと、聞いた事あるような…」
カミーユ「ヒューマン・インターフェース・エレメンツ…の略称だった筈だ。確か非常に人間に近い高性能AIを搭載した人間型のロボット、だったか?」
hIEとは、この街とその周辺都市で研究開発が進められ、現在特定地域での使用がされている、サーバー上にあるコンピューターにより制御されている人型ロボットの事だ。
一見すると人間と遜色無い為に親しみやすさがあり、人間のこなす仕事も難なく出来るために警備、広報、商業、果てには政治やモデルなど、様々な仕事用のhIEも開発されている。
遼「まあ、おおよそ合ってるが…厳密にはAIを搭載してる訳じゃない。あれはどデカい超高度AIによって制御されてるんだ」
ケンゴ「えぇ、これがまた完璧なまでに人間に近付けてますからね………厄介な機械ですよ」
hIEの事を解説する遼、少々批判的な意見を述べるケンゴ。
ルー「この街ではそのhIEの技術が使われているじゃない。私達はその見学に来たのよ」
ミコット「私達、こういう者なんです」
ミコットが見せたのはアナハイム・エレクトロニクス工業専門学校の学生証だ。それを見せると遼達は少々興味が湧いたようで。
遼「なるほど、だからわざわざこんな所に来てるのか。…アナハイムといえば、電子部品や家庭用電気用品から軍事産業まで担っている大手中の大手だからな…hIEの技術は吸収しておきたいのか。」
ジュドー「いやいや、そう言うんじゃないって、俺らは…」
ケンゴ「時期的にはそちらも学校がある筈では…?」
訝しげな表情でカミーユ達を見る遼とケンゴに対して、カミーユが前に出て説明する。そもそもカミーユやジュドーはアナハイム工専の生徒ではないのだが。
カミーユ「いや、俺達は少し事情があるんだ。すまないがその辺りはあまり話せない。」
カミーユ「……まあハッキリ言って観光みたいなものさ、正式にhIEの生産工場を見るとか、技術者と話をするなんてする訳じゃあない。」
遼「そうか……」
ケンゴ「でも物好きですね、hIEなんかの見学に来るなんて」
ミコット「そうですか…?」
特にバツが悪そうにhIEの名を口にするケンゴに首を傾げるミコット達の後方からバナージ達が合流する。
バナージ「すみません、カミーユさん。何だか放っておけなくて…」
カミーユ「気にするな、お前は信じる道を行けばいいんだから。」
遼「アラト、わざわざhIEの手助けなんてする必要はないんだぞ。」
ケンゴ「そうですよ、アレは、ああいう事をするためにプログラムされてるんですから。安全も保証されてますし。」
アラト「うん…それは分かってるんだけど、なんだかね。」
如何にもお人好しですといった風貌をしている少年の名は遠藤アラト、バナージ達も含めてお互い自己紹介をすれば…
アラト「そうだ…!良かったら、僕達が案内するよ。」
遼「おい、アラト。」
ケンゴ「これから約束があるの忘れてるんですか?」
アラト「あ…」
約束、と聞くとアラトは渋々と肩をすくめて
ルー「いいのいいの、気にしないで。こっちはこっちでこの街を楽しませてもらうから。」
タクヤ「そうそう!また機会があれば頼むよ!」
アラト「う、うん!」
その会話をする脇で、カミーユとバナージはたい焼き屋の店員を見ていた。
カミーユ「…彼女もhIEなんだろうな。」
バナージ「えっ?分かるんですか?」
店番をしている女性をhIEだと判断するカミーユを見てバナージは目を丸くする。それもそうだ、端から見れば彼女は笑顔がトレードマークの看板娘程度にしか思わないだろう。
だが、この街は違う。そうした仕事の何割かをhIEに委ねている。
カミーユ「店の目の前で若者がたむろしてくっちゃべってたら、大なり小なり嫌がるだろうさ。でも彼女はそんな反応はしないどころか、ずっと笑顔を保って、呼び込みをしている。」
バナージ「…たい焼きを売る事、それをプログラミングされているからですか?」
カミーユ「ああ、仮に彼女が一般人を怒鳴りつけたりでもしたら…店どころかhIEの信頼も落ちるだろう。…そもそもhIE自体に賛否両論な所がある様だしな。」
バナージ「……」
決められた行動をするのはAIを搭載したロボットならば当然の事だ。だがバナージは彼女の姿を見て複雑な感情を抱いていた。
バナージ「…彼等に感情はあるんでしょうか。」
カミーユ「俺もhIEに詳しい訳じゃないが……どうも中には特別なhIEがいるらしい。」
バナージ「特別?」
ジュドー「カ〜ミ〜〜ユ〜さん!」
どうやらアラト達との別れを済ませたらしいジュドー達がたい焼き屋の前に改めて集まる。
カミーユ「と…そうだったな。皆にたい焼きをご馳走しないと。バナージ、宇宙でも言ったが…お前は今は心を大事にしろ。壊れてしまわない様に…な。」
バナージ「――はい。」
そのやり取りの後、少々深刻そうな表情をしたルーが現れて。
ルー「……カミーユ、ちょっと良いかしら。」
カミーユ「どうした?」
ルー「どうやらこの付近に…モビルスーツやASを所有するテロ組織が潜伏してるらしいわ。」
ルー「それに…どうやら今日、その部隊を動かすかもしれないって…」
それを聞いたバナージは先程までの会話を思い出し。
バナージ「もしかして、hIEを快く思っていない人達が…」
カミーユ「ああ、もしくは純粋に闘争を求める者たちか…だ。」
ルー「ブライト艦長が至急リ・ガズィとメタスを降下させると言っているけれど…」
カミーユ「いや、俺達の出る幕は無いと思う。」
カミーユ達も連邦軍の端くれ、連邦軍に連絡を取り対処してもらう事は可能だろうがこの近辺の連邦軍の基地は少々離れた所にある。
それに、わざわざロンド・ベルに通達が来る事を考えるとこれはあまり軍に口外しない方が良いのだろうとカミーユは結論づけ…
タクヤ「いやいやいや…カミーユさん!折角モビルスーツを降ろしてもらえるんだから戦いましょうよ!この街を放っておくんですか!?」
カミーユ「いや、そうじゃない。どの道今から降ろしても間に合わないだろう、それに…」
カミーユがまるで知っているかの様に説明しようとすれば、途端に街から悲鳴が聞こえ…
『キャアアアアアアアア…!!!』
ジュドー「!カミーユさん、これって…!」
カミーユ「…始まったか…!」
バナージ「う…!?あれって…!」
カミーユ達が見る方向では、何も無い所から突然姿を現すASとMSの姿が…
一方同時刻、バナージ達と別れ、学校からの帰路に着いたアラト達は…
遼「アラト、さっきも言おうとしたが…お前はお人好し過ぎだ。今時あんなにhIEを気遣う物好きはお前ぐらいだぞ」
アラト「いや、でもバナージ達も…」
ケンゴ「彼等はアナハイム工専の学生だそうですよ。というか、外から来てた感じ丸出しだったじゃないですか。」
hIEの手助けをしたアラトの軽率な行動を咎める2人。この街ではhIEは共に生活する仲間、パートナーとして見ている者もいれば、反面hIEを道具としか見ていない者もいる。
むしろ後者の方が印象は強いだろう。所詮はロボットと侮る人間や、人間の仕事を奪っていく恐ろしいロボットとも評されているのだから。
アラト「えっ!?アナハイムって………あの?」
遼「そうだ、月を拠点にしてるあのアナハイムだ。」
アラト「………もしかして彼等ってモビルスーツのパイロットだったり…?」
ケンゴ「遠藤は夢見過ぎですよ…あのカミーユって人はともかく、他の人達はモビルスーツなんて乗る顔じゃないでしょう。」
アラト「な、なんだよ〜。いいじゃないか少しは夢見たって。あのマジンガーZだって、俺達ぐらいの歳の子が操縦してたんだろ?」
遼「兜甲児の事か……お前はヒーローという像が好きだな。」
アラト「遼までそう言うかぁ…」
遼「……………?おい、なんだ、あれ…」
項垂れるアラトの横で、遼は街の異変に気が付く。不自然に一方向へと向かって行く住民達を見て、ケンゴはため息を吐く。
ケンゴ「どうせまたhIEのプロモーションイベントとかじゃないんですか?」
アラト「でもあれ…何かから逃げてるんじゃ…?」
遼「とにかく、ヤバい。急いで離れるぞ!」
そうした会話をする3人に、謎の声が聞こえて来て
『――いいえ、違う。…………繋がるのよ、宇宙が――今日と言う日に。』
その言葉の後、アラト達の視界にも、MS…旧式のハイザックが現れて…アラト達が「うわあああああああああ…!!」と悲鳴を上げたその時―
――眩い粒子の光が通り過ぎ、ハイザックの頭部を破壊した。
頭部を破壊されたハイザックに追撃のビームが2発足に撃ち込まれ、軽い爆発を起こしながら機体が倒れて…
アラト達はその光景を目にし絶句する。まさか自分達がこの様な戦いを見る事になるとは思いもしなかった。遼の指示で駆け出す彼等を見送る2機のモビルスーツはパイロット同士で会話していて…
「まあ悪くない精度だろ?俺も捨てたもんじゃないだろう。」
「ああ、問題無い。行くぞ、掃討する!」
「へいへい、ちったあ褒めてくれると嬉しいんだがねえ!」
街に突如として現れたテロ組織の部隊と交戦を開始する2機のモビルスーツ、片方は青いボディに2基の粒子エンジンを搭載しており、2本の剣をその手に持ち………もう片方は大型のスナイパーライフルを所持した緑のモビルスーツで。
そのどちらも、この世界で「ガンダム」と呼ばれる風貌をしており―
ロックオン「ロックオン・ストラトス!目標を狙い撃つ!」
刹那「刹那・F・セイエイ!ダブルオー!目標を駆逐する!!」
――世界の新たな戦いの火蓋が、この街で切って落とされた。
スーパーロボット大戦AU開幕です。会話から分かる様にZ、ZZ、UCに関しては原作終了後の設定となっております。
「BEATLESSはロボットアニメではないのでは??」というのは重々承知の上で書いております。
序盤は割とスパロボで見慣れた面子を見る事になるかもしれませんがご容赦ください。
また、オリジナルキャラは今のところ味方サイドではあまり考えていません。所謂オリ主的な存在は登場しないかもです。