楽しく読んでいただければ幸いです(^^)
ここは死後の世界、地獄の何処かにあるという死神達の住む里
現世と来世を自在に行き来することができる彼らは秘密裏の存在として何らかしらの手違いがあった魂を来世へと招くことを仕事としている
その依頼料は法外でとても一般のヒトが払える額ではない
だからこそ彼らに寄せられてくる依頼は数少ない
そして現世と来世を自由に行き来できるという能力を活用し現世の物資を輸入することで彼らは生活している
「隊長、この荷物はこちらでよろしかったっけ?」
死神の青年、ゼスト・ストライカーは大きな段ボール箱を持ち上げながら隊長と呼ばれる人物に確認を入れる
「おぅ、そこそこ。ついでにコレとコレも運んじゃって」
「了解ッス」
ゼストは優雅に煙草を吸いながら偉そうに座る隊長に文句一つ言うことなく段ボールを移動させる
多少癖のある黒髪に真っ黒な瞳、筋肉はついているが痩せ型の体型を持つゼストは死神第二部隊の最年少者にして最も信頼の厚い人物である
その自由で温厚な人柄のせいで全部で五つに分かれている死神部隊の第二部隊に所属しているがあちこちの部隊から引っ張りだこにされている
そのおかげで彼の顔はあちこちに知られており、困ったら第二部隊のゼストという方程式まで出来上がってしまっている具合である
「隊長、俺そろそろ休みますね。現世で色々したいことあるので」
「......お前はそう言ってこの間何週間現世に留まっていたんだ?」
「三週間ぐらいですかね?」
ゼストは隊長の問いかけに即座に応える
隊長はゼストの言葉に大きくため息を吐く
「あのなぁ、こちらの世界の者が現世に長期滞在するのはどれほどの均衡を乱すかお前は本当にわかっているのか?」
「それはあくまでも集団の場合でしょ、一個人が行ったとしても世界の均衡とやらは大してどうってコトないですよ」
ゼストは何が問題なんです?と言った様子で淡々と説明を始める
隊長はそれでもだな、と言葉を続ける
過去、ゼストは現世に出かけたっきり一年近く帰ってこなかったことだってある
前科があるこそ隊長は頭を悩ませており、他の死神達にも示しがつかない状態となってしまっている
「まぁいい、とにかくあまり現世との干渉は控えろ」
隊長は頭を抑えながら新しい煙草を取り出して点火する
「隊長こそ煙草少し控えましょうよ、運動能力落ちますぜ」
「いいんだよ、今代の閻魔様から仕事が来たことすらないんだ。どうせ俺たちの存在なんか忘れられてるさ」
隊長は愚痴るように煙草をもう一本取り出して同時に吸い始める
そう閻魔大王が五代目になってからというものバッタリと暗殺の依頼が来なくなってしまったのだ
そう、丁度五年前を境辺りに
「ヤマシロは多分知らされてないだけと思いますがね、俺的に」
「そうだとしてもだよ」
ゼストはポケットから飴玉を一つ取り出して口に入れる
ちなみに味はブラックコーヒーである
「お前、それ常に携帯してんのか?」
「最低十個はポケットに入れてますかね。隊長も一つどうですか?」
「いや、いいよ」
隊長の煙草の煙が消えて次の煙草に手を取ろうとした瞬間、コンコンッと扉をノックする音が響いた
「はい、どちらさんですか?」
「失礼するよ」
隊長が確認を入れ許可を出す前に来客はガチャリと扉を静かに開く
暗視ゴーグルを装着し、腹にまで届きそうな長く黒い顎髭、猫背のせいで本来の身長よりもやや低めに見えてしまう一人の男が笑顔でやって来た
「シャークさん」
「いやはや、こいつはこいつは一服入れてるところだったか」
「気にするな、働いてたのはコイツ一人だからな」
隊長は先程取り損ねた煙草を取り出して点火して口に咥える
「で、死神第四部隊隊長さんが一体何の用だ?」
「あまり邪険にしてくれなさるなや、こちらとてあんさんに用があるんじゃなく、ゼスト君に用があるんだからの」
「俺?」
ゼストは自身のことを指で指す
シャークはゆっくりと頷き、手招きをする
「できることならば早めに済ませたい案件でな、若者の力を借りたいのだよ」
「シャーク、それだったら第四部隊にも若い者はいるだろ。コイツは第二部隊で俺の部下だ、何のために隊が分かれていると思ってるんだ?」
「しかし我が部隊にはゼスト君程優秀な人材がいないのだよ、こちらとて部下を信用してない訳ではない。本当に急がなければならないのだよ」
シャークの言葉に隊長は頭を抱える
彼は昔から時間がないと言っておきながら実際は時間がかなりと言っていいほど有り余ってしまうケースが多い、だから隊長はシャークが今回も大袈裟に言っているだけと判断してしまい首を中々縦に振らないということはゼストもある程度理解はできている
「シャークさん、それは一体どのような案件か確認することは可能ですか?」
「ゼスト君、仕事内容を確認するということは承諾したこととみなされることとなりますよ?」
シャークがニヤリと笑みを浮かべる
どうやらゼストがこう尋ねることも計算に入れてこんなに回りくどい言い方をした様だ
あえて仕事内容を言わない、それでいて大袈裟に表現していると見せかけて仕事内容を確認させる
策士シャーク、それが彼の二つ名である
そのため彼の本性は謎に包まれており、彼を信じてしまえば利用されるという認識も一部ではあるほどだ
シャークの腹黒さは第四部隊隊員を時折悩ませることもある
長い付き合いでもある隊長がそのことを即座に判断し、諦めたようにため息を吐き煙草をもう一本追加する
「仕方ないゼスト、こっちのことは他の奴に任せるからお前はシャークにこき使われてこい」
「隊長、少しは自分で働いたらどうなんですか?」
ゼストは呆れたようにため息を吐くがその言葉は届かなかったようでもう既に脳話で部下に連絡を入れてしまっている
「ではゼスト君、よろしくお願いしますよ」
シャークは不気味にニヤリと笑みを浮かべた
その笑みがゼストへの期待を示しているのか、自らの策に慢心したことを示しているのかはゼストには理解することができなかった
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