ドクター 主人公
アーミヤ ロドスのリーダー
フロストリーフ クールな元少年兵。音楽好きな少女
フロストリーフ。それはみんなの癒し。一人で居る彼女をそっと影から眺めてみるといい。かすかに鼻歌が聞こえてくる。
「またフロストリーフさんが歌ってます・・・かわいい」
アーミヤがこっそりフロストリーフウォッチングと洒落込んでいると、ドクターも後ろからフロストリーフを眺め始めた。
「フロストリーフってクールなキャラなのになんで癒し枠みたいになってるんだろう」
「声もどっちかと言うと可愛い感じなので・・・。まあ本人に知られたらめちゃめちゃ怒られそうなので暗黙の了解みたいな」
「なるほど」
音楽に飽きたのか、フロストリーフがヘッドホンを外すのが見えた。ウォッチング終了のお知らせである。
「そういえばどんな音楽を聞いてるんだろう」
「聞いたら教えてくれるんじゃないですか?」
アーミヤが半ばジョークとして提案する。フロストリーフは少々無愛想なことで知られており、物静かで近寄り難い。そのため、用がなければそっとしておいてあげるというのが同僚達共通の認識だった。しかし、ドクターはオペレーターとは少々違うイデオロギーを持っている事をアーミヤは失念していた。
「やあ、フロストリーフ」
(わあああああ)
アーミヤが止める間もなくドクターがフロストリーフに挨拶する。フロストリーフの無感情な目がドクターを捉えた。
「ああ、ドクター。なにか用か」
「どんな音楽を聴いてるのか知りたいなと思って」
「聞いてみるか?」
フロストリーフが鞄からヘッドホンを出した。予備らしい。固唾を飲んでいたアーミヤが拍子抜けする。
「いいの? ありがとう」
ドクターがヘッドホンを着ける。
「けっこう静かめな曲を聴いてるんだね」
「今はな。あまりジャンルなどにこだわったりはしない。ただ、歌が入っていないものを聞く事が多いな。ドクターは普段音楽などは聞くのか?」
フロストリーフが自分から話題を振った・・・! とアーミヤは驚く。意外と話せるのかもしれない。もしかしたら、自分達は勝手にフロストリーフと距離を取りすぎていたのだろうか。ドクターがうーん、と首を傾げた。
「正直、記憶が無くなってからどんな音楽があったかが分からなくてね。環境音ばかり聞いてる」
「環境音?」
「風の音とか、雨の音とか。そういうの」
ほう、とフロストリーフが頷いた。
「それはそれで面白そうだ。どうしても天災のイメージがあるせいで、自然とは本来そういう心安らぐ物であるという認識を失っていた」
「確かに。あ、そうだ。あと耳かきの音とかけっこういいよ」
「???」
「???」
アーミヤとフロストリーフの頭の上に疑問符が飛び交った。耳かきの音だって?
「それは・・・音だけって事だよな」
「そうそう。落ち着くんだよね」
「・・・聞いてみるか」
えっ、聞くのかとアーミヤがさらに困惑する。
「おぉ・・・ぞわぞわする」
「フロストリーフのヘッドホン良いやつだから羨ましいよ。よく聞こえるだろうなあ」
「聞いてみるか?」
何やら二人でふるふるしている。アーミヤはなんだか妙に羨ましくなってきた。今度フロストリーフが暇そうにしていたら話しかけてみよう。そうアーミヤは心に誓った。
数日後、フロストリーフが一人で暇そうにしていたので、アーミヤはさりげなく話しかけようと試みた。が、フロストリーフはアーミヤを見るなり立ち上がる。
(えっ、なに!?)
思わず足を止めてしまったアーミヤに、あろう事かフロストリーフが近付いてきた。取り敢えず会釈する彼女に、フロストリーフが先に口を開いた。
「やあ、アーミヤ。その、いま時間あるだろうか」
「えっ、はい。暇ですよ?」
フロストリーフが言いにくそうにもじもじする。およそ彼女らしくない仕草にアーミヤは首を傾げた。
「どうかしましたか」
「その、耳掃除を・・・頼みたくて・・・」
「えっ?????」
「・・・聞かなかったことにしてくれ!」
逃げようとしたフロストリーフの手を反射的にアーミヤは掴んでいた。
「逃がしませんよ」
アーミヤがこわい。
※
「しかし、唐突にどうしたのですか? 耳掃除して欲しいだなんて」
フロストリーフの頭を膝に乗せながらアーミヤは尋ねる。心なしか顔がほくほくしている。どうやらフロストリーフと仲良くなりたかったようだ。
「いや、この間ドクターが耳かきの音を勧めてきてな・・・聞いてしまったのが運の尽きだった」
「ほう」
そのシーンは見ていたから知っているが、アーミヤは初耳を装う。
「それを聞いてから、めちゃくちゃ耳の中がむずむずするんだ・・・! 自分でしてみようと思ったが上手くいかないし、音楽にも集中できない。そして気が付くとまた耳かきの音を聞いてるんだ・・・あれは恐ろしいものだ」
わりと深刻だった。アーミヤは半ば同情しつつ耳かきをフロストリーフの耳に挿し込む。
「ふあ・・・っ!?」
「えっ」
「・・・・・・」
「今の声、フロストリーフさんですよね?」
「・・・・・・気のせいだろう」
「ふー」
「きゃああああ」
跳ね起きたフロストリーフが耳を押さえてうずくまる。
「耳、真っ赤ですよ・・・」
フロストリーフの手がアーミヤのうさぎのような耳をガシッと掴む。
「頭、冷やすか?」
「すみませんでした」
なんだかんだ言いつつもフロストリーフはアーミヤの耳掃除を30分は堪能して帰って行った。その後も、時折人目を忍びながらフロストリーフは耳掃除をお願いするようになった。
結論、フロストリーフは耳が弱い。