いつも通り捏造過多、いつも以上にセリ科ポエム。
細目でご覧下さい。
天津気 刹那。
彼女こそ始源に対抗するために神代人類が生み出した技術の根本の理論を生み出した大天才。彼女が死んだが故に神代は遠くない未来に滅ぶ事を決定づけられた。
しかし、彼女の才能も担っていた責任も一切関係なく。
彼にとっては彼女が死んだ時点でとっくに世界は終わったようなものだったのだ。
常に人類の最先端を征き科学によって新天地すら拓き越えんとする女と人類が星の海の果てに置いてきた故郷から受け継がれた武術を護り続ける男、全く正反対の二人はされど巡り合い惹かれ合いついに夫婦の契りを結ぶに至った。
夢が現となり人に牙を剥く星に箱舟が降り立った時にちょうどこの二人が生まれていたのはきっと運命が与えた最後の希望だったのだろう。二人の持っていた科学と武術は人類の願いを形にし自らを救うための力、そして遥か未来、先祖の祈りを受け継ぎし開拓者達が世界を歩むための力の大元となった。彼女らが生き続けていれば人が星の覇者としてまた君臨できる未来もあったかもしれない。
しかしそんな未来は訪れることはなく実際には小さなボタンの掛け違い、僅かな歯車の狂いが彼女を彼岸へと連れ去った。此岸に遺された彼はそれでも人類諸共いずれそちらへ行き虚無へと溶ける…はずだった。
彼は遺り続けた。刹那の置き土産である空間を反転させる結界で彼女の墓を包み何物であろうとも暴けぬようにし自らも亡霊となっても守り続けた。
幾星霜、幾星霜、人が滅び世界が塗り変わってもなお。
それは一体何のためだったのか。
舟の一室で男と女が向かい合っている。
「嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!」
物騒な内容に反して女の声は明るい。
「うむ、二言はない。この誓い違えたならば直ちに針千本飲んでみせよう。」
いかにも堅物そうな男の声が続く。
男と女の右の小指はそっと絡められている。これは彼女らの先祖がしていた約束の儀式というものらしいと彼は彼女に教わった。
「ふふふ、本当に貴方は真面目ですね。そんな貴方とこの約束が出来て良かった。貴方ならきっと守ってくれるでしょうから。」
そう言う彼女の頬は微かに朱に染まっている。
「だから私とずっと一緒にいてくださいよ?約束ですからね?」
夢を見ていたようだ。
ガシャリと守りを任せていた鎧が壊れる音を聞きながら彼は目を覚ます。見ればそこには結界の綻びをついて入って来たのだろう墓荒らしの不届き者達がいる。
彼がそやつらを滅ぼさんと息を吸いこんだ時、その一人が武者を睨んだ。
それは輝く槍を持った女騎士。
次の瞬間には滅されたその女騎士が刹那の遺した願いを聞き届け二人の同胞と共に遂に男の永遠を終わらせる。
時計の針が進み出した反転した世界で彼は初めて愛する女のため以外に祈る。
彼女の理論、そこから芽生えた技術を身に宿した子供達よ、今はただその果たした成果に言祝ぎを。
言い終えた後動かなくなった彼を現世ではとうの昔に枯れた桜の花びらが撫でていった。