もし、【鬼滅の刃】の世界に『転スラ』キャラが転移したら《リメイク版》   作:とあるスライム好き

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無知故の希望

 再び衝突せし、黄と青。そして、そこに合わさりし、赤。

 三つの色(三人)が交差し、飛び散ったのは赤き血だ。そして、その血は誰のものだったのか?それが分からない程彼らは傷ついていた。いや、そんな中でも青鮫鬼(人型カリュブディス)だけは違った。今の攻撃でできた頚の傷ももう消えかけている。

 

 「まだ、浅いか・・・」

 

 「ああ。交差の一瞬だけじゃ・・・頸を切れる程の威力に・・・持っていけないんだ」

 

 善逸の呟きに炭治郎が返す。その声は途絶え途絶えで疲労感が伝わってくる。そして、次に相手の姿を見やる。しかし、先程まで青鮫鬼(人型カリュブディス)がいた所に既にその姿はなかった。咄嗟に炭治郎が日輪刀を自身の横に構える。

 ―――次の瞬間に炭治郎の体に衝撃が走る。青鮫鬼(人型カリュブディス)が一瞬の内に移動し攻撃を加えたのだ。鱗がなくなり、攻撃力が低下したと言っても途轍もない速さの物はただそれだけで凶器となり得る。

 それに、軽くなったと言っても元の大きさが大きさなのだ。その攻撃は依然として脅威以外の何物でもない。

 ・・・だがしかし、炭治郎は踏ん張り、逆に青鮫鬼(人型カリュブディス)の巨体を押し戻す。その隙を突き、動きの止まった青鮫鬼(人型カリュブディス)の頚に目掛け善逸が【霹靂一閃】を放つ。しかし、青鮫鬼(人型カリュブディス)が一瞬身をよじったことで奴の頚を切り落とすには至らず、頚に僅かな傷を負わせただけだった。

 しかし、その傷もほんの一瞬で修復されている。

 鱗を落とした青鮫鬼(人型カリュブディス)の速さは善逸と互角。しかし、真に讃頌すべきは炭治郎や善逸だと言える。魔力もスキルもない、純粋な「人間」が、膨大な魔力を持つ「魔物」にこうも果敢に挑めるのだから。

 

 「・・・分かった。俺が何とかアイツの動きを止める。だから、炭治郎。その間に頚を切ってくれよ」

 

 瞼で瞳は見えないが、善逸は炭治郎の眼をしっかり見据えて話し掛ける。

 その言葉からは善逸の揺るぎない覚悟が見えた気がした。

 そんな善逸に対し、炭治郎も同じく善逸の眼を見て無言で頷く。

 

 彼らからすればただそれだけで十分だったのだろう。

 善逸は、そんな炭治郎を見た後直ぐに行動を起こした。

 今までの雷の呼吸の音とは比べ物にならないほどの呼吸音がその空気を震わしていく。その呼吸音はまるでそれ自体が圧力を持っているかのような迫力があった。

 同時に善逸の体に雷が纏われていく。その雷は幻覚である事を忘れさせる美しさと、荒々しさを兼ね備えていた。

 ―――そして、善逸の口が言葉を紡ぐ。

 

 「雷の呼吸、壱の型、【霹靂一閃】『神速』!」

 

 その声が丁度、炭治郎の耳に届いた頃だろう。その時、青鮫鬼(人型カリュブディス)の左足は鮮血を散らしながら宙を舞っていた。

 通常の善逸や青鮫鬼(人型カリュブディス)のスピードなど軽く置きさる速さだ。

 そして、それは一太刀だけでは終わらなかった。

 

 再び、雷の化身(善逸)が地上を駆け抜ける

 それと同時に切り飛ばされる右足。これで完全に青鮫鬼(人型カリュブディス)の機動力を削いだのだ。

 

 (『神速』を二回とも使った・・・しかも、殆ど間を空けずに。これじゃ暫くは動けない・・・。だけど、後は炭治郎が頚を切るだけ・・・)

 

 しかし、その代償として彼は暫くは戦うことはおろか、移動する事も困難になってしまったのだ。

 ・・・これが災いすることとなる。

 炭治郎が、頚を切ろうと型を出そうとした正にその瞬間だった。

 ―――月が雲にかかる。

 丁度その時、大気が一瞬こわばった感覚が辺りを襲う。次の瞬間、青鮫鬼(人型カリュブディス)の眼から赤黒い一条の光が放たれる。

 その光は一直線に善逸へと伸びていく。しかし、そこは流石の善逸だ。咄嗟に善逸が腕で地面を叩き、自身の身を移動させる。そのおかげで直撃こそ免れた善逸だったがその光線の生み出した衝撃波の影響で、森の中へと吹き飛んでいく。

 ・・・しかし、消えゆく意識の中、彼は確かに聞いたのだ。炭治郎の刃が青鮫鬼(人型カリュブディス)頚を切り落とした、その音を!

 

 *

 

 その時間は本当は一瞬だったが俺にとってはとても長く感じられた。俺の日輪刀がゆっくりと、鬼の頚に切り込み、そしてそのまま障害なくその頚を切り落とした。しかし、俺はその嬉しさを消し去る程の不幸も同時に手にしてしまったんだ。

 俺の刃が鬼の頚を切り落とした頃、俺の眼が映していたのはその鬼の頚ではなかった。俺が見ていたのは森の中へと消えていく善逸の姿だったのだ。

 

 「善逸ッ!」

 

 届くわけがないのに思わず手を伸ばしてしまう。無意味な事なのは分かってる。だけどそうせずにはいられなかった。

 走って向かおうとするが、足が思うように動かなくて、転んでしまう。いや、足だけじゃない。体中に激痛が走ってる。だけど、それでも俺は日輪刀を支えに善逸や伊之助の消えていった森へと歩みを進める。

 ―――そんな時だった。ふと、俺の眼が地面に向く。先程雲に隠れた月は既に出ていたのか地上は仄かな明りに照らされていた。しかし、それは問題ではなかった。

 問題はその地面に俺以外の(・・・・)影が映っていた事なのだ。―――そして、その影は先程俺が頚を切り落としたはずの鬼と殆ど同じシルエットをしていた。

 

 この時、丁度地上は再び、影に包まれる・・・・・・

 

 *

 

 始めから、彼らに勝ち目などなかった。

 重ねて言うが、アレは鬼ではなく、異世界の魔物。例え、頚を切り落とそうが、人型カリュブディスのもつ『超速再生』の前では大した意味を持たないのだ。

 人型カリュブディスを倒すにはその身を再生できないほどの攻撃を加えるか、魂を破壊するなどの方法しかない。

 その点、刀による「線」の攻撃では人型カリュブディスを滅ぼすことなどほぼ不可能。

 

 炭治郎達の人型カリュブディスを自分達が倒すための努力はあらゆる面で、無意味だった・・・・・・

 伊之助の攻撃も・・・善逸の奮闘も・・・炭治郎の覚悟さえも・・・全ては無知故に抱けた希望だったのだ・・・・・・




いやあ・・・。書いてて心苦しくなりました。
そして、ガゼル王と近藤達也の戦いが頭に浮かんでくるような話だった気がします。(まさかの無意味・・・)
まあ、次作をお楽しみに!
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