もし、【鬼滅の刃】の世界に『転スラ』キャラが転移したら《リメイク版》 作:とあるスライム好き
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森の木々のざわめきと混じって風が運んでくる、誰かの話し声。
聞いていると如何やら人数は三人のようだ、ということが分かる。
そのうち二人は声色も弾んでおり、喜色の面が伺える。だが、その一方で残りの一人は声も沈んでおり、酷く疲れた様子である。
そんな彼らを月明りが照らす事で姿がうかがえた。
*
「やったのよさ、師匠!リムルから逃げる事が出来たんだよ!これで思う存分、
小さな顔を満面の笑みで飾ったラミリスが彼女にとっての師匠、ヴェルドラへ話し掛ける。
「うむ!してやったりと言うところであるな!クアーハッハッハ!」
ヴェルドラはそんなラミリスの言葉に深々と頷き、この現状に対し満足している事を表すように大笑いをする。
この旅において彼らの望みはたった一つ。自分達のやりたい事をする事。しかし、リムルがいてはその目的は達成されない。もし、リムルが本気でヴェルドラ達の監視をしようとしたのなら、それがたとえヴェルドラであってもその監視からのがれることは出来ない。それほどまでにリムルは隔絶した存在なのだ。
そこでヴェルドラとラミリスが考えたのはリムルとの間に次元の壁を築くこと。
つまりは異世界に転移する段階で
そして、それは見事に成功したのだ。しかし、
一人巻き込んでしまったからだ。
「ヴェルドラ様!ラミリス様!これは明らかな問題行動!出発前にリムル様から問題行動を起こすな、と言われたのをお忘れですか⁉リムル様からお仕置きが下されますぞ!」
「へっへーんだ!アタシ達は今、リムルの弱みを握ってんのよ!そんなのどうとでもできるわ!フッフッフ!散々強請ってやろうじゃないのよさ!」
巻き込まれた人物、ハクロウが訴えるもラミリスは全く動じない。それどころか、さらに強請ってやろうなどと考える始末。こんなのが女王なのだから精霊達は大変である。
このハクロウも巻き込んでしまった事がヴェルドラ達の失敗だろうが、それは大したことではない。
ハクロウにはヴェルドラを制御できる程の力はないからだ。
そもそも、リムルがハクロウを呼んだのはあくまで『監視役』。つまり、ハクロウに望まれていたのはヴェルドラ達が問題行動を起こした際に、リムルへと報告する事。求めていたのは力ではなく情報を正しく報告できる能力だったのだ。
それ故にハクロウ一人が残っても大してヴェルドラ達への影響はないのである。
「そんなことよりもハクロウよ、取り敢えず一休みできる場所を探してきてくれ。転移したはいいがこんな夜だとは思わなかったからな」
転移したも良くはない、と心の中でツッコむハクロウだったが口には出さない。
「・・・分かりました。ヴェルドラ様とラミリス様にはここで大人しく待っていて下さりますようお願いしますじゃ」
実はヴェルドラは
それだけ言い残し、森の木々が生み出した陰の中へとハクロウは消えていった。
・・・しかし、その言葉は守られる事はない。この二人がそんな事あるはずがないのだ。
*
「フッフッフやっと邪魔者が全員消えたのよさ!ね!師匠」
「その通りだ、ハクロウも行ったようだし我等はこれで完全に自由ぞ!クアーハッハッハ」
先程ハクロウがいても大して影響は無いと言ったが、それはあくまで
「じゃあさっさと転移でどっか大きい街にでも行こうよ!こんな森の中じゃなくてさ!」
ラミリスが笑顔でヴェルドラへと転移をするよう促すがヴェルドラは魔法を発動させようとしない。
「どしたの、師匠?」
「うむ・・・それがな、ここら一帯は魔素が希薄らしくてな、上手く転移を発動できんのだ。ついでに言うと飛行もうまく制御できん」
ヴェルドラが後ろ髪を撫でながらしまった!と言ったような顔でラミリスに告げる。
そしてそれは彼らにとって二度目の出来事である。
「ええー⁉また~⁉前回ミッシェル達の世界に行った時もそうだったじゃん!」
前回の転移直後の事を思い出すラミリス。
ラミリスが呆れるがそんな事ヴェルドラに言ってもどうしようもない。魔素が希薄なのは誰のせいでもないのだから。
「いやいや待て待て、魔素が希薄なのは我のせいではないぞ!それに話は最後まで聞くのだ。何も魔法が全て使えぬ訳ではない。
転移に限らず空間魔法というのは座標を先ず定めなくては使えない。しかし、そんな事は一定の壁を超えた上位者達にとっては問題にならぬことだ。
一定の壁とは、エクストラスキル『魔力感知』のことである。これさえあれば、その能力の範囲内であれば座標を一瞬のうちに設定できるのだ、が!今回はそれができないのである。
魔力感知とは、言うなれば大気中に漂う魔素を基に空間内のあらゆる情報を感知する能力なのである。
その性質上、大気中に魔素がなければ転移に必要な情報がわからないのだ。
「ええええ⁉魔力感知が使えないってことは街のある場所とかもわかんないわけ?それに、飛べないんじゃどうやって街を探すのよ!師匠の立派な翼は何のためにあるのよさ!」
「うう、そうなるな・・・。だが、安心するのだラミリスよ!我が権能にてこの世界を解析しておる。遅くて4,5日早ければ2日程で解析も終了するであろうて。そうなれば魔力感知も飛行も問題なくできる」
ヴェルドラの本来の姿がもっている巨大な双翼。しかしながら、実はあれは形だけで飛ぶことは出来ないのだ。ヴェルドラ達が飛べているのは魔法のおかげなのである。そもそも、あれほどの図体がいくら巨大といっても体の倍の大きさもない翼で飛行することは出来ない。
それをラミリスはあっさりと言葉の矢としてヴェルドラへと放つ。それが本人に悪気がない分余計にヴェルドラの心に刺さるのだ。
そんな気持ちをごまかすかのように安心しろとヴェルドラは言うがそれはラミリスには届かない。
「何言ってんのよさ!そんなに時間がかかってたらリムルが来ちゃうかもよ!それにそんなにまってられないよ!」
「むう・・・確かにそうよな。リムルが何時、何処に転移したのかまでは、わからぬが、早く行動した方がいいのは変わりないか・・・。仕方ない、この世界の住民に街の場所を聞くことにしようではないか。こんな森の中でも探せば一人ぐらいはいるであろうからな」
魔力感知も飛行も使えない今、街の場所を探すには人に聞くしかないのだ。
「でもさ、師匠。そもそもの話なんだけどこの世界って人間とかっているのかな?」
そんな、ラミリスがふとつぶやいた言葉で二人の脳裏に不安がよぎる。
もし、人間かもしくはそれに類似する生物が存在しない世界なのであれば、彼らはリムルが迎えに来るまでただただ、景色を見るだけになってしまうのだ。それでも、好きな者にとっては楽しめるだろうが、この二人が景色なんて代わり映えのしない物を長時間見ていられるはずがない。
そして今回は、と言うよりも今回もゲートを開けないのだ。魔素が希薄なために。
「・・・まあ、いるであろう。あれだけ汚染された世界にも人間は逞しく生活しておったのだ。ここまで緑があふれているのなら当然、もっと繁栄しているはずだ」
ミッシェル達のいた汚染されつくした世界を思い出す。
暗雲が立ち込め、空気は汚染物質にまみれ、資源も殆どが尽きた、そんな絶望を体現したかのような世界。そんな世界であっても、人間達はその知能を発揮し生き延びていた。
それであるならばこんな緑にあふれた世界ならば人間がいない方が逆におかしいと、ヴェルドラも頭ではわかっているのだが、ラミリスに直接言われると不安になるものがあるのだろう。そんな事が顔からわかるのだから・・・。
「ここでそんな事を考えていても仕方があるまい。先ずは行動を起こさねばな!我はここより右側を探してみる故、ラミリス。お主は左側を人間がいないか探してみるのだ。そして、見つけたら我に精霊魔法でも発動して場所を報告してくれ。お主をいきなり見たら驚くかもしれぬからな」
ここで何故、精霊魔法を発動させたら場所が分かるのか?と、思った方もいるだろうから説明しておこう。さっき言ったようにこの世界は魔素が希薄。そして、そんなこの世界は例えるならば真っ白な紙面なのである。
そこで精霊魔法、つまりは魔法を発動させたらその魔素のない世界に一点だけ魔素が出てくる事となる。それはこの世界であれば逆に魔力がはっきりと分かるのだ。
まるで白紙に一点だけ黒点を打つかの如く。
「はあ・・・まあいいよ。師匠の頼みならしょうがないから聞いてあげるよ。じゃあ人間を見つけたら精霊魔法じゃなくとも魔素を放出すればいいんだよね?だけど、ハクロウがもう人間を見つけてたらなんか皮肉な話だね」
そんなラミリスの言葉にヴェルドラが頷いて、ヴェルドラとラミリスは互いに森の木々へと飲み込まれていった・・・。