もし、【鬼滅の刃】の世界に『転スラ』キャラが転移したら《リメイク版》   作:とあるスライム好き

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書籍版、最新刊の発売予定日まで今日を除き、あと一日!(3月27日)
楽しみです。


恐怖とは消える失せる物

 自身の入ってきた窓に振り返ったラミリスの瞳が映したのは、人間と似て非なる存在であった。

 それはラミリス達の世界で、最も近い存在なのは『吸血鬼』、この世界であれば『鬼』と呼称されるそんな存在である。

 しかし、あちらの世界(ラミリス達の世界)の高貴な吸血鬼とは比べ物にならないほど醜悪な姿だ。

 

 「俺の食料貯蔵庫になんか光るモンが入っていくように見えたから帰ってきたが、なんだあ?こいつあ?蜻蛉みてえな羽根が生えてる小人?にしても動かねえ、つまらねえなぁ・・・。喰うか」

 

 ラミリスの感じたのは、純然たる「恐怖」。

 今まで自身の身が危険になったことなど殆どない。最弱の魔王であるがゆえに誰からも「敵」として認識されてこなかったからだ。

 そしてラミリスは、ここまで凄惨な光景をこんなに近くで見たことはなかった。精霊の住処にいた時もあくまで、いたずらとしていたから、実際に殺した事などなかった。

 何千年か前に起こったミリムとの一戦では上空で戦闘をしたというのと、そもそも攻撃が当たった人間など肉体の一片も残さず消え去ってしまうということがあったからだ。

 だが、今目の前には臓物の抉り出された人間の形をした肉塊が転がっている。今の子供の姿のラミリスでは思考が停止してしまっても仕方ないのだ。

 

 そんな、動きの固まってしまったラミリスを鬼はヒョイと摘み上げる。

 そして、そこでようやくラミリスのストップしていた脳も活動を再開する。

 

 「ひッ!は、離してよ!」

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

 本能が、心が!恐怖を叫んでいる。

 

 「お!いいねえ、生きてたか!物珍しいし、生きてんなら喰わないで飼う方がいいか」

 

 ラミリスを握ったまま鬼は、この小屋の中をラミリスを入れて置ける物を探すように動き出す。

 しかしそんな中、ラミリスも当然束縛から逃れようと抵抗する。

 

 「離せって言ってるでしょ!」

 

 その言葉と共に、飛び散る鮮血。ラミリスを掴んでいた鬼の片腕を、風の刃が切り落としたのだ。ラミリスの発動させた精霊魔法の結果である。最弱とは言え、これでも八星魔王(オクタグラム)の端くれ。この程度の事は出来ないこともないのだ。

 

 「う、ウギャァアア!俺の腕がァアア!」

 

 絶叫する鬼を見て少しだけ余裕ができたのだろう。腕を切り飛ばせた事を威勢よく自慢する。

 

 「ど、どーよ!アタシを甘く見るからそんな事になるのよ!そのままいけばアンタは失血死よ!あ、アタシを食おうとした罰よ!」

 

 ・・・しかし、悲しいかな。例えこの鬼の腕を切り落とせたとて、彼女は所詮、最弱の魔王(・・・・・)。そう都合よくはいかない・・・。

 

 「・・・なあ~んてな」

 

 今までの絶叫が噓のように消えて、代わりに酷く冷淡な声が小屋の中に届く。

 

 「お前みたいな、小人がどうやって俺の腕を切り落としたのはちょっとだけ驚いたが・・・残念だったな。俺達【鬼】は、こんなんじゃ死なねえよ。それに俺は鬼の中でも上位。【十二鬼月】にこそ選ばれちゃいねえがお前みたいなのに殺されるなんてありえねえんだよ」

 

 いやらしく下卑た笑いを、その顔に浮かべながら鬼はラミリスへと話し掛ける。

 その言葉と同時に、今まで床にこぼれ落ちていた血液の流れが突如としてとまる。更に、鬼の変化はそれだけにとどまらない。切り落とした腕の断面から血管、筋肉、骨格が再びその形を成す。

 そして、数秒後には切り落とした腕と何ら変わらぬ腕が鬼の体には生えていた。自己再生を軽く上回る回復速度だ。

 

 「うそ・・・」

 

 思わずラミリスがこぼした言葉。そして、再びラミリスは鬼の腕に囚われる。

 その言葉に鬼は更に顔を歪にゆがませて笑う。

 

 「ハハハハハ!いい顔だあ!今まで俺に食われてきた奴らと同じ顔!食われる直前に弱者共が見せてきた顔だ!お前は殺さずにペットにしとこうかと思ったがやっぱりやめだ。そんな顔したんだったら、お前は俺の食料にな―――「おい。貴様。今、何と言った?」

 

 小屋の戸口から聞こえてきた、鬼の言葉を遮った男の声。ラミリスが驚きその方を見ればそこには褐色肌と金髪が特徴的な一人の男が立っていた。しかし、並の存在にはその姿を窺うことなど叶いはしないだろう。それ以前に死んでしてしまうだろうから・・・。それほどまでに強烈な『殺気』が、その男からは放たれていたのだ。

 もし、この殺気がラミリスに向けたものであれば彼女は瞬きするうちに天国にいただろう。しかし、その怒りは彼女に向けたものではなかった。だから彼女は今もこの世に残っていれたのだ。

 しかし、それ(殺気)を向けられた者はラミリスのようにはいかない。

 その体には全身に鳥肌がたち、それと同様に汗が滝の如く流れ出ている。鬼からすればその男はまるで死神の様に幻視出来たことであろう。

 そして、皮肉かな。今度はその鬼の方が恐怖で体が動かなくなる。

 気づくとラミリスは鬼の腕からその金髪の男の肩へと移動させられていた。ラミリスが自身の力で行ったのではない。その男が当人も気づかぬスピードで移動させたのだ。

 

 「こ奴は、ペットでもましてや貴様ごときの食料でもない。こ奴は、ラミリスは・・・我が、弟子ぞ!」

 

 果してその言葉は鬼にとどいたのか・・・?

 その言葉の後その場に残ったのは、魂を破壊された鬼の抜け殻だけであった。

 そんな場所でラミリスが口を開く。

  

 「助けに来てくれてありがとーーー!!!師匠!!!」

 

 危機的状況から一転した安堵からかラミリスは大泣きだ。

 そんな弟子(ラミリス)に向け、師匠も言葉を返す。

 

 「礼には及ばぬぞ!弟子を守るのは師匠の務めだからな!ラミリス。貴様は、この我、ヴェルドラ=テンペストの弟子なのだから!」

 

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