もし、【鬼滅の刃】の世界に『転スラ』キャラが転移したら《リメイク版》 作:とあるスライム好き
夜空を見上げた善逸が見つけた黒点は、頭部だけとなり果てた、鹿だった。
だったら、その黒点と共に善逸が聞いた音はいったい何だったのか?それの正体はすぐに分かった。
「なんか、来るぞッ!」
珍しく緊張感の籠った伊之助の声に続いて空気に響いたのは、激しい金属音。伊之助の日輪刀と「それ」の体がぶつかり合ったのだ。そうして生じた火花がチリチリと地面に散っていく。
その時、ようやく「それ」の正体が見える。「それ」は一言で言えば、青い鮫だった。しかし、その顔にあるのは巨大な一つ目と口のみだ。そして、伊之助の日輪刀とぶつかり合う事で金属音をたてたであろうその体躯が纏うのは青き鱗。これが、その化け物を「青い鮫」と例えた理由だ。
そして、その化け物の名は「カリュブディス」。先程、ヴェルドラが意図せず生み出してしまった厄災だ。
一瞬の膠着の後に伊之助の体が競り合いに負け弾き飛ばされる。が、そこは流石は伊之助だ。まるで流れるように体制を瞬時に立て直す。
「グワハハハハ‼面白れぇ!俺が弾き飛ばされるなんてそんじょそこらの【鬼】じゃできねえからな!いいぜ!この伊之助様がお前の頚を落としてやらあ!」
猪の被り物のせいで顔は見えないが、その声は非常に楽しそうだ。しかし、彼らは人型カリュブディスを鬼と勘違いしているようだ。しかしそれもしょうがない。この世界には「魔物」などというモノは存在しないのだから。
そして、再び伊之助がその化け物へと走りだそうとするが、それを制止させたのは炭治郎だ。
「待つんだ、伊之助!この鬼今までの鬼とは、匂いが違う!一人じゃ危険だ。俺も行くから!」
「うるせえ!お前は紋逸の面倒でも見てろ!」
こちらを振り向くこともせず、伊之助は突っ込んでいく。正に猪突猛進の心意気だ。
そして、そのまま青い鮫の様な鬼に向けて攻撃を開始する。
「獣の呼吸、肆の牙【切細裂き】!」
複数の斬撃が
「チッ!堅てえ・・・」
そんな時、
「のろまが!そんなに遅い攻撃がこの俺様に届くと思ってんのかッ⁉」
その腕をひらりと躱し、逆にその伸びてきた腕に対し、陸の牙【乱杭咬み】を食らわせる。それの効果はあったのか、鱗の一部が砕けていた。
遅いと言え、普通の人間には回避困難な速度だ。それを危なげなく回避できるのだから流石と言えよう。
だが、それは凹凸のある鋼鉄に鋸を思い切りこすりつけたのと同じ結果を生む。すなわち今までの金属音以上に嫌な音が出たという事だ。
人間にとって金属音というのは一般的にそう好まれるような音ではない。寧ろ、嫌悪の対象とする人の方がはるかに多いだろう。
そして彼らの中には、その
「ギイィィイイヤァァアアアア!!!!!!」
まるで発狂したかのような声を発したのは無論、善逸である。耳の良い彼にとってさっきの音はまさに拷問に等しい行為だったのだろう。その証拠に善逸は白目をむいて気絶してしまっている。
・・・だが、それは彼にとっては不幸でも、炭治郎達にとっては僥倖だったかもしれない。なぜなら―――
「・・・雷の呼吸、壱の型【霹靂一閃】!」
―――彼は、我妻善逸は眠ることで強くなるのだから・・・!
光の残像が、地上に起こる。気がつけば、人型カリュブディスを通した対角線上に善逸はいた。
それに気づいた頃に、人型カリュブディスの顔に一つ輝く眼球から、血しぶきが辺りに飛び散る。
「伊之助!むやみに体に切り付けてもダメだ!この鬼は堅い!そんな、戦い方じゃ刀の方が持たない!先ずは眼球とか、関節部に攻撃を当てて体力をけづっていくんだ!」
眠りながら善逸が適切な指示を伊之助に出していく。起きている時とは、正に人が変わった様な豹変ぶりだ。
と、それはそうと話を戻すと、善逸の言っていることはまさにその通りだ。
伊之助のように向こう見ずな戦い方では武器の方が持たない。それに、大したダメージにもなってない。であるならば、無理に堅い部分を狙う事などせずに眼球や関節部など、生物的に柔らかい部位を狙うべきなのだ。
しかし・・・人型カリュブディスの眼は見る見るうちに再生していき、その数秒後には何事もなかったかのような姿でそこに立っていた。
そんな様子を見て炭治郎が日輪刀を
「流石は鬼・・・。一筋縄じゃいかないぞ」