桜ヶ原小学校同窓会へようこそ   作:犬屋小鳥本部

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ねえ、知ってる?
あのビョーキ。


あのビョーキ『お小言病』

『お小言病』

 

 

 

ねえ、知ってる? あのビョーキ。

ブツブツ呟く、言葉にしたくて堪らなくなる、あのビョーキ。

「小言」っていうのは、本来の意味だと「文句を言うこと」。でもね。このビョーキの「小言」はそのままの意味。「小さな声で言う」ってこと。

 

何を言っているのかって?

大したことじゃないよ。今日も疲れたな、とか。暑いな、とか。ありがとうとかの挨拶だってある。

とにかく何でもいいんだよ。

そう、何でもいいんだよ。

 

何でもいいから、小さな声でひたすら呟く。それが、そのビョーキの特徴なんだ。

なんで何かを言い続けるのか。

それは、自分がまだ生きているって自覚したいからだよ。意思を持って、表現して、誰かに伝えたい。

聞いてもらいたい。

単なる音としてじゃなくてね。ちゃんとした「人間」だって認められるように「言葉」を聞いてもらいたいんだ。

 

じゃあ、なんで小さな声で言うのか。

それは自分が気づかれたくない「何か」がいるから。

そのビョーキにかかったことがないから上手く言えないんだけど、なんでも後ろにピッタリと何かが憑き纏う気配がするんだって。

そいつは、自分が声を発さなくなると連れて逝っちゃうんだって。何処へ?

決まってるじゃないか。

あ・の・世。

そいつに自分の場所を気づかれないように声は小さくなる。でも、自分は生きてるって他の人に伝えたい。

だからひたすらブツブツぶつぶつ小言を言うようになるんだってさ。

 

だから、そのビョーキの人がいなくなるのは大抵真夜中。それか睡眠不足で倒れた時。

だって、眠っている時は喋れないからね。

予防法とか薬なんてあるわけないよ。

いくら後ろを振り返ったとしても、そこには誰もいない。誰かいるように感じるのはただの気のせいさ。

だから。それは思い込みなんだよ。

お・も・い・こ・み。

いるはずないじゃん。だぁれもさ。

 

そのビョーキにかかる人は、自分の死期がすぐそこに来てるって自覚しちゃった人なんだよね。

自分はもうすぐ死ぬ。

でも死にたくない。しにたくない。シニタクナイ。死にたくなんてない!

 

例えばもういらない老人、例えば治らないって言われちゃった不治の病、あとそうだな。

「殺される」って自分で思っちゃうようなことをしちゃった人。

そんな人たちがこのビョーキにかかりやすい。

死にたくないよね。死にたくないよ。

だから、少しでも自分は生きてますって声に出すんだ。

生きてますよ。いきてる。イキテルイキテル。だから、連れていかないで。

 

こんな風に言葉に出さないとやっていけない状態は、かなりの重度だよ。大丈夫大丈夫、まだ大丈夫だよ。

まだ死ねない。まだ生きていけるよ。

ほら、大丈夫だろ。

薬も何にもないんだから生きることにしがみついていなきゃすぐにアイツがやって来ちゃうんだ。

だからもうちょっと話を聞いてよ。

話を聞いていてよ。お願いお願い話を終わらせないで

まだ死にたくないしにたくないんだシナセナイデお願いお願いまってアイツがアイツがすぐ後ろに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『言い残したことはないか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでもいいから話をしていたくなる。

話が止まらなくなる。

話を聞いていてもらいたくなる。

それは、自分の命がまだそこにあると自分が安心していたいから起こす行動なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みいつけた』

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