桜ヶ原小学校同窓会へようこそ   作:犬屋小鳥本部

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ねえ、知ってる?
あのビョーキ。


あのビョーキ『伝染性吐血症』

『伝染性吐血症』

 

 

 

ねえ、知ってる? あのビョーキ。

風邪みたいな症状が出る、あの町で流行ったあのビョーキ。

 

ごほ

 

今はもうない、生存者ゼロっていう噂のあの町発症のあのビョーキ。

 

そのビョーキは夏によく発症するんだって。

外に出たら水でいいからガブガブ飲みたくなる、あのあつーい夏。

夏風邪じゃないの? 始めはそう言われてたよ。

 

その年は別に寒くもない普通の年。電気の使いすぎはよくないってことで、町をあげて節電した。つまり、クーラーのコンセントは大抵抜かれて、扇風機様がどの家でも大活躍。

むしろ熱中症が大発生しそうな条件だった。

 

ごほ

 

いつもと違ったのは、乾燥していたことくらい。町の住人たちの喉はかわいて、いつもより水を欲しがった。

だから、ごくごくゴクゴク飲んだ。

蛇口から流れ出る水を。公園の水飲み場から吹き上がる水を。

住人たちは何の不安も持たずに飲んだ。

 

それと、春からずっと風邪が流行っていた。

住民は毎日咳をしていた。中には微熱を発する人もいるようだった。

 

ごほっ

 

その日は何かの撮影で何処かのテレビ局のカメラが公園に来ていた。インタビューで自分より少し年上の子どもが三人、ふざけながら並んで撮されていた。

 

自分は体が弱くて、ちょっとの風邪でもすぐに動けなくなる。だから両親に、その町に一緒に住んでいた家族に、家を追い出された。大きな病院のある街に住む医者夫婦の親戚の家に、その夏休みはお世話になれと追い出されていた。

親戚の家のリビングにあるソファーに座って、自分はその中継を見ていた。

生放送の中継だった。

 

それは突然だった。

子どもの一人が酷い咳をし始めて、

 

ゴホッ

 

血を吐いた。

 

ごほっ

ゴホッ

ごほっ

 

咳と血は止まらなくて、やがてその子は倒れて動かなくなった。

呆然と見ていたもう一人も血を吐き始めて、そこでやっとリポーターが悲鳴をあげた。

 

ゴホゴホ

 

カメラマンが子どもに駆け寄った。吐いた血がカメラマンの肌に、顔にかかった。その子どもも倒れて動かなくなった。

最後の一人も同じだった。

 

 

 

カメラはその様子を全部生中継してしまった。

 

 

 

ごほ

 

 

 

画面からは悲鳴と咳の音が溢れていた。

ただの咳をしていた住民も、一人二人と赤いものを吐き出し始めた。

その中に、余所者であるはずのカメラマンとリポーターが加わった。

 

 

 

ゴホッ

 

 

 

全部、カメラとテレビを通して発信されてしまった。

 

 

 

自分はそのニュースを知った親戚の夫婦に隔離処置された。

窓もドアもしっかり閉じて、鍵をかけた。カーテンを閉めて、薄暗い部屋に持ってきた荷物と一緒に閉じ込められた。

 

ごっほ

 

一日に数回、食事と飲み物がドアの隙間から渡された。

部屋にはラジオが置いてあった。そこから、町がどうなったのかを自分は知った。

 

 

 

原因不明の伝染病により、町は壊滅。生存者はなし。

一定期間封鎖し、その後消毒する。

 

 

 

町には両親も兄妹もいた。

友人もいた。

誰も、助からなかった。

 

 

 

ゴホッ

 

 

 

もう、誰も生きていなかった。

 

 

 

これが、『伝染性吐血症』。

突然、血を吐き出して、その血に触れた人も感染するビョーキ。

 

原因が何処にあるのかは…

 

わからない。

 

死亡率百パーセントの伝染するビョーキ。

かかればみんななくしてしまう。

家族も。友人たちも。

帰る場所さえも。

 

 

 

 

 

 

ゴホッゴホッゴホッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ピンポーン)

 

『すいません、◯◯さんはいますか?』

 

『ああ、お待ちしておりました。まだなんとか持ちこたえているようです』

 

『わかりました。では、いただいていきますね』

 

『はい。これであの子も帰れるでしょう』

 

 

 

誰かがやって来たようだ。

ドアをノックする音がぼんやりと聞こえる。

 

 

 

ゴホゴホ

ゴホッ

ごほっ

ごぼ

 

 

 

もしもそのビョーキにワクチンがあるなら。

そのワクチンは、かかった人の血から作られるそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての真実は、水の中。

 

 

 

 

 

 

ごぼっ

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