私、貰うとしたら誕生日プレゼントの次にクリスマスプレゼントが楽しみだったの。
ラッピングされたプレゼント。
自分のために用意されたプレゼント。
何が入っているのかな? どきどきワクワクしたよ。
○○ちゃんへ、××より。そう書かれたカードも心を弾ませるひとつだった。あの子が私のためにこれを用意してくれた。私のためにこれを選んでくれた。すごく、すごく嬉しかった。
もちろん、誰かのためにプレゼントを用意するのも楽しいね。
誰か喜んでくれるといいな。そう想いながら交換するためのプレゼントを選んだ時間もすごく素敵。
喜ばれない時だってあるよ。残念だけど、そういうプレゼントだってある。
その時はね、ごめんねって心の中で謝って静かに箱を閉じるの。乱暴にしちゃダメだよ?
それでね。もう一度その箱が開かれる時まで仕舞っておくの。忘れないように、その仕舞った日が年に一度来る度に思い出すんだ。
それだけでいいよ。
いつか渡したいって思った時にそっと出してきて、もう一度ラッピングして、誰かに渡すんだ。あなたのためのプレゼントです。そう言って眠っていたプレゼントを渡すんだ。
今日はクリスマス。
私たちにはあまり関係ないかな?
ケーキを食べて、ツリーを飾って、靴下を吊るして、みんなで大騒ぎ。
夜になったらいい子になって、おやすみなさい。
朝になったらプレゼントを探すの。
いい子になったからプレゼントください。
大人になってもそう言いたいよね。
いい子で頑張ったんだから、プレゼントくださいな。
ちょっとワガママになってもいいんじゃない? だって、今日はクリスマスなんだもん。一年で一回しか来ないクリスマス。
転ばない程度にはしゃぎたい。
そう思う私は、まだまだお子さまかな。
ごめんね、神様。
あなたの誕生日を祝うこともしないで私はワガママになる。
教会も行かないで、讃美歌も歌わない。もちろん献金もしないで礼拝なんて行ったこともない。
そんな私だけど、「クリスマス」というだけで気分が浮わつく。意味も考えないでクリスマスソングを歌う。
もろびとこぞりて
もろびとって誰?
主はきたれり
誰のための主?
きよしこのよる
どうしてこの日は清いの?
ほしはうたい
今夜の星はいつもと違う?
何にもわかってない。
何にも知らない。
ごめんね、神様。
こんな私で。
それでも困った時には神頼みをする。神様なんとかしてよ。神様助けてよ。神様、神様。
ねえ、神様。あなたは神様なんだから何だってできるでしょう?
空に向かってお祈りする。こんな私の祈りなんて神様は聞いてくれないんだろうな。それくらいわかってるよ。
でも、そんなときくらい祈らせて。届かなくてもいいから祈らせて。
誰かへの贈り物に、誰かの幸せを祈らせて。
自分勝手に私は祈る。
知ろうともしない神様にすがって、私は勝手に祈る。
ごめんなさい、神様。
こんな私で。
なんでもないんだよ。うん。なんでもない。
悪いことがあったとか、すごくいいことが今日あったってことじゃないの。
ただね、今年もクリスマスプレゼントの中にひとつだけ誰から贈られたものかわからないプレゼントが入っていたんだ。
毎年混ざっている、一枚のカード。
一枚の、招待状。
『卒業式の日に約束したあの場所、あの時間でお待ちしております。』
そう。
同窓会の招待状。
それにはあの子の想いが込められていた。
「忘れてないよね。きっと来てよ。きっとだよ」
そんな風に毎年言われているようだった。
毎年送られてくる同窓会の招待状のカード。
みんなにだって送られてきてたでしょ? 一年に一回は必ず。私の場合、それがクリスマスだったの。
ルンルン気分で開いてみたら招待状。
忘れるわけないよ。
あんなにしっかり約束したんだもん。誰も忘れるはずない。そうでしょ? そうだよね?
私はその招待状をちゃんと仕舞っておいたの。一年ごとにそれは溜まっていった。そこには毎年同じことが書かれていた。
「あの場所で待っているよ」
ひらり、ひらりとカードは溜まる。
「忘れないでね」
桜色をしたカードは、年を追うごとに増えていく。
ひらり
ひらり
桜の花弁みたいに、その招待状は散っていく。
ひらり
ひらり
散った花弁は地面に積もって、桜色の絨毯となっていく。
ひらり
ひらり
ひらり
一枚目の招待状は、差出人のあの子の想い。たった一人分の待ってるよという想い。
私は感じた。二枚目にはほんの少し、一枚目よりも重い想いが込められている。二枚目にはあの子と、次にいった子の想いが込められている。三枚目、四枚目と想いは増えていく。
「待ってるよ」
「待ってるよ」
私を待ってるよ。
送られてきた招待状は、みんなからの「あなたを待っている」という想いが込められている。
カードが増えて、いってしまった人も増えて、私は思った。
ああ、そろそろ私の番なのかな。
って。
私には来年クリスマスプレゼントが贈られることはないんだと思う。あんなに楽しみにしていたクリスマスプレゼント。そして、それに紛れている桜色の招待状。待っているよというメッセージが込められた一枚の招待状のカード。
カードの数は逝ってしまった同級生の数。
カードの重さは逝ってしまった同級生たちの想い。
桜の木の下で、私を待っているよというメッセージ。
わかっているよ。忘れてなんかいないよ。
ちゃんと、覚えているよ。
今度のクリスマスには最後の招待状が届くだろう。
ちょっとだけ残念だとも思う。楽しいクリスマスが一夜で終わってしまう。そう言って子どもの頃にぐずったように。
でもね。
きっと、特別なプレゼントが私に届く。私と、私と一緒に卒業していったあの同級生たちに、特別なプレゼントが届く。
同窓会への案内状が、今度は届く。
今までで一番の贈り物だよ。そうに決まってる。
ずっと、ずっと、待っていた。
私たちは、その時を待っていた。
待っているよという想いをのせた招待状。それが『案内状』に変わった時。
私たちは迷わずそっちへ足を踏み出すんだろう。
次のクリスマスには、プレゼントの箱じゃなくて花束が私には贈られる。手に取ることができない綺麗な花束たちが、私の墓には贈られる。
ねえ、みんな。
とっておきの話は用意できたかな?
今まで送られてきた招待状の数だけとっておきの話は語られる。
さあ、今度は私の番だ。
何処かに仕舞っておいたはずの招待状たちが、ひらひらと舞って何処かへ消えた。
私たちの心にたった一言のメッセージだけを降り積もらせて、招待状は雪のように消えていった。
忘れてないよ。覚えているよ。
今度は、私の番だ。
約束の時間が迫っている。