桜ヶ原小学校同窓会へようこそ   作:犬屋小鳥本部

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「くろ」はどこかの方言で「隅(すみ)」という意味。


●「くろいくろ」●

いつだってまっすぐ前を見て生きていきたい。まっすぐ、まっすぐ、迷わず、まっすぐ。

自分に自身を持って歩いていけたらいいな。まっすぐ、まっすぐ、背筋を伸ばして、堂々と。

 

そんな自分になりたいな。

そんな自分になれたらいいな。

 

現実はそんなでもなくて、あっちにうろうろ、こっちにうろうろ。

迷って、惑って、下を向く。上を向く。そっぽを向く。見向きもしない。

それが現実で、当然のことなんだ。

 

涙は見せたくない。下を向け。

笑顔は全面に。もっと前を向け。

もっと先を目指すなら。上を向け。

見たくない。そっぽを向いて目を背ける。

気にならない、その程度。見向きもしない。

気づかない、ただそれだけ。目を閉じてる。

 

前を見て生きていきたい。逃げずに勇気を持って、目を開き続けたい。

それでも、どうしようもなくなってうずくまりたくなる時もある。あるよね。あるんだよ。

そんな時でも目を閉じちゃいけない。泣きながら下を向いたっていい。でも、目を閉じちゃいけないんだ。

この世から逃げちゃいけないんだ。

 

どうしようもなくなって動けなくなったらさ、後ろを見ればいいよ。今まで自分がどういう風に歩いてきたか、きっと残ってるはずだから。そこではね、前を向いていた時よりも広い世界が広がっている。そういう気がする。

後ろに広がっているのは過去の世界。過ぎてしまった、もう選べない世界。あの時こうだったら、あの時こうしていたら。全部、過ぎてしまったから言えること。

後悔するといいよ。あの時できなかった。あの時選べなかった。あの時、間違ってしまった。

そんな風に、後悔するといいよ。

後悔できるのは前に進んだから。いい方へか悪い方へかは関係ない。前に進んだから後ろを向ける。

後悔できるのは生きているからだよ。生きて、頭がまだ働いてるから。考えることができるから。まだ、自分の中に心があるから。

 

でもね、忘れないで。後ろに進むことはできないよ。

どんなに後ろを向いたっていい。でも、いつかは前を向くしかないんだ。

前を向け。

前を向け!

最期の瞬間まで目を開いて、前を向け!

 

 

 

強がりなんかじゃない。

だって、同じ場所を目指す同級生たちがいる。

僕たち、私たちは約束した場所を目指して前を向く。

 

 

 

 

 

 

視界の隅には見えないなにかが潜んでいる。どこかの方言では「隅」は「くろ」とも呼ばれるそうだ。隅はすみ、炭からきたの?

知らないけれど、くろとも呼ばれる。

視界の隅には薄汚れた黒いなにかが、きっと、潜んでいる。

 

前を向いて歩きたい。

前を向いて歩いてきた。

前を向いて歩いていきたい。

前を、前を、前だけを。

 

前だけしか見ていなくて、隅の方にいるなにかを視界から追い出してる。見ていない? 見たくない?

そうじゃなくて、きっとそれは見てはいけないものたち。

だから、前を向く人たちは無意識にそれらを視界の隅に追いやる。見ないように、黒いなにかを隅に追いやる。

それでもどこかで感じてる。すぐそばに、その黒いなにかはいるっていうことを。

今は見えていないくろは真っ黒に蠢いている。

 

 

 

イルヨ

イルヨ

スグソバニ

 

 

 

隅はくろ。だから黒いことが当たり前。

 

 

 

そのくろを、今は見てはいけない。目を合わせちゃいけない。

でも、気づいてる。

 

くろいくろにはなにかが潜んでる。

 

 

 

前を向け。

隅に潜むなにかに怯えながら、それでも前を向いて歩いていけ。

 

 

 

そんな風に、今日も前を見て歩いていく。

歩いていける。




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