きもだめしの夜がすぐ後ろまで迫ってきていた。病院の真っ白な壁が汚れた木造の校舎になる。まだ太陽が眠りにつく時間じゃないはずなのに部屋の中は影が這いずり回る。
ふと映写機の回る音を聴いた気がした。カラカラ回る乾いた音を。
そして目の前にあのアニメが映し出された。どこかおかしいあのアニメを。
二人の主人公。まるで今の私たちみたいに仲がいい。二人は隠した。何を。何を。何を、何処に。
『オマジナイヲシヨウ!』
甲高い女の子の声が頭を叩いた。
不思議と思い出したのは、おまじないを私たちに語った老婆だった。ほんのわずかな時間しか同じ場所にいなかったはずなのに、何故かその瞬間、ぱっと鮮明に顔が浮かんだ。その老婆は私に言う。
『大事にしなね』
ほんのまばたきをする間のことだった。
私は閉じた箱の蓋をもう一度開いた。中には古い小さな箱。
私は知っている。だって、同じ物を私の部屋の何処かに隠したのはこの私自身なんだから。
心臓がうるさいくらい動揺していた。私はそれを見つけたくなかったのかもしれない。
教えてもらったおまじないなんて必要とする時が来るはずないと、ずっと思っていたのかもしれない。
でも私はそれを見つけてしまった。見つけたのは、二回目だった。
あのきもだめしの夜と、今この場所で。
私は崩れそうなくらい古いそれを丁寧に持ち上げた。
私の手は、震えていた。
箱から乾いた音がした。あの時気にもしなかった中身が、今大事なものだと感じている。誰かの隠した大事なものなんだと。
これは、私たちが持っていていいものなのか。
ゆっくり振り返ってあの子を見た。何も感じない顔で私を見ていた。
何かがおかしかった。何かが変だった。
彼女が見せようとしたのはこの箱なのか。
彼女が何を考えているのかわからなかった。何を言おうとしているのかわからなかった。彼女は何も言ってくれない。
でも絶対何かあるんだ。ないなら私にあんな手紙なんて書くはずない。
彼女は私に何か伝えようとしている。でも言えないんだ。それとも、言いたくないの?
それは私が見つけなきゃいけないことだった。
彼女は何も言わなかった。
私は部屋から立ち去った。彼女にまた来ると約束して。
あの小さな箱は、もとあった場所に戻した。家に帰れば同じ物がある。私が持ち帰った物が。
誰かのおまじないは終わったはずだった。願い事は叶っただろうか。
病室から出た所で一人の看護師さんに声をかけられた。女性だった。
「××さんのお友達?」
「お見舞い、誰も来られないのよ」
「あんなことがあったんじゃ仕方ないと思うけどね」
「今が一番辛いのよ」
「立ち直ってくれるといいんだけど、難しいわね」
その人は私が知らないことを教えてくれた。あの子が言えないことを。
それを聞いて、あの子に訊かなくてよかったと心から思った。私だったら言えない。言いたくない。それだけ現実は酷いものだった。