家に帰った夜、私は本棚の上に乗せたお菓子の缶を手に取った。脚立を使わないと届かない場所に置くものなんてたかが知れているだろう。そう思って私は其所にそれを隠した。
缶の蓋を開いた。ビー玉や昔好きだったマンガの付録、缶バッチがざらざらと出てきた。そういうものたちに埋もれてあの箱は眠っていた。
病室の時と同じように、私は丁寧にその箱を手に取った。今度は震えないように覚悟した。
そして、それを、ゆっくりと、ゆっくりと、本当は開きたくなかった、だけどそれをゆっくりと、開いた。
中には、乾いた短く細い棒が一本だけ、入っていた。
私にはそれが何かわかった。わかってしまった。
老婆の話と、あのアニメの映像を観ていたから、私にはわかってしまった。
それはオマジナイだった。
オマジナイの残骸だった。
小さな箱に誰かは入れた。大事な指を切って、その中に隠し入れた。
そして願い事をした。
願い事は叶っただろうか。
私は見つけてしまった。私たちは見つけてしまった。この箱を。この小さな箱に入れられ続けた大事なモノを。
私はおまじないをするだろう。
この指を切った誰かのように、何かを願うのだろう。
その願い事は私の大事な大事なあの子を守るためのもの。
だからお願いです。私の隠したものを見つけないでください。
どうか私の願い事を叶えてください。お願いです。お願いです。見つけないでください。
私を、私たちを見つけないでください。
私は眠った。
机の上には閉じられた小さな箱が、月明かりに照らされて浮かび上がっていた。
誰かのおまじないは終わったのだろうか。
次の日から私は必死に調べモノをした。 どうやって何を調べたかは聞かないで。
毎日毎日必死に動いた。大学はやめた。バイトもやめた。両親からは勘当されそうになった。でもされなかった。
私が泣きながらあの子のことを訴えたからだ。もし私が正しく彼女を守れなかったらどうなる。私はただの犯罪人となるだろう。それでもあの子だけは守ってあげたかった。
あの子は私にとって特別な宝物だった。外の世界にいるお姫様だった。ずっと笑っていてほしかった。ずっと笑って、幸せになって、将来の夢を叶えて、生きていってほしかった。
それの何が悪いの?
私が手にできない未来をあの子に託して何が悪いの?
あの子は私にとって特別な女の子なの。守ってあげなきゃいけない女の子なの。
私は両親に訴えた。
私がもし間違えた時、両親はきっと正しい方法であの子を守ってくれるだろう。だって私の信じたお父さんとお母さんなんだから。
両親は何も言わない代わりに頷いた。
ごめんなさい、お父さんお母さん。
私はやっちゃいけないオマジナイに手を出します。どうか見つけないでください。どうかどうかこのオマジナイを見つけないでください。