桜ヶ原小学校同窓会へようこそ   作:犬屋小鳥本部

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出席番号7番「遅刻常習犯」⑫

昨日、道にタンポポが咲いていた。

目の前を行く人がそれを踏んでいった。

 

昨日、猫が蛇と戯れていた。大きな猫と、小さな蛇だった。

今日、大きな猫が死んでいた。小さな蛇に噛まれて、死んでいた。

 

 

 

 

 

 

俺は遅刻常習犯。

全部に遅れる遅刻野郎。

 

 

 

俺の知らないとこで起こってた身近な行方不明。頭がこんがらがってきて、同級生の怪奇オタクへ連絡をとった。

 

 

 

「で、どう思う?」

「それはあれだ。穴が開いたんだろ」

 

 

 

オタクは言った。

「砂時計」っていう七不思議の一つが曖昧になったことで、外から怪異が桜ヶ原に紛れ込んだ。これが、池が埋められら十五年前。

もしかしたらそれより前から「行方不明」って怪異はあったのかもしれない。わからないけど、それがはっきりと姿を表したのは十五年前。

 

穴が開く。そこから何かが入り込む。

外から入ってきた異物は餓えを満たそうと獲物を喰らう。

 

 

 

「じゃあ、何で今になって発見されることになったんだよ」

「ああ、お前知らないのか? 今、砂時計を探してるんだ」

 

 

 

俺たちは七不思議を解明するために担当を決めた。こいつなら解明できる。そう思った奴にその役目を託した。

七不思議の三つ目は「砂時計」。未来を夢に視させる、砂時計。

その担当は、いつもうとうとフラフラ夢見がちな通称眠りウサギ。怪奇オタクと仲がよかった子だ。

俺はてっきり当時の七不思議だった「砂時計」が解明されるのかな。そう思ったんだ。

だって、砂時計があるはずの池はもうないんだろ?

でも、怪奇オタクが言ったのは過去の話じゃなかった。「今」、砂時計を探してる。

なんで今?

 

なんで今になって?

 

 

 

「今、探してるのか?」

「今だから探してるんだ」

 

 

 

眠りウサギが病院に担ぎ込まれた。

オタクは俺に言った。

夢から戻ってこない。眠りから覚めない。

 

オタクはそれを七不思議の影響だと言った。

こじつけじゃねえの? 俺は内心思ったさ。悪いけどな。

確かに眠りウサギはその名の通り眠り癖が酷かった。俺の遅刻常習犯と同じように。だから、それが悪化しただけじゃねえの。変な体質持ち同士の感覚で俺はそう思ったんだ。

でも、オタクははっきりと確信を持って言った。

 

「七不思議があいつを引っ張ってる」

 

このままじゃ手遅れになる。

オタクは言った。

 

俺の悪い癖なんだよな。大丈夫、大丈夫、まだ大丈夫、まだ間に合う。遅れるのが当たり前すぎて、遅くなってから後悔する。手遅れになってから後悔して、泣く羽目になる。

いつだって、取り返しのつかないとこまできてこう溢す。

ああ、やっちまったなぁ。

 

 

 

オタクは俺とは違うんだ。後悔したくなくて、今、自分にできることを探して手を伸ばす。

ただ、目の前のことに気を取られ過ぎだぜ? おまえ、お伽噺を知らねえのかよ。有名なお伽噺。

儚く眠る人を目覚めさせるには怪異を解決させるんじゃなくて、まずはくちづけ。これ、定番だろ。

何のことだって? わかんねえならいいよ、この鈍ちんが!

 

 

 

とにかく、丁度同じタイミングで「七不思議・砂時計」の話が進んでいたんだ。

穴が開いたと思ってた七不思議が進展する。これって、穴が塞がれるってことだろ。

あるべき桜ヶ原の状態に戻る。この町は、再び綴じられる。

穴っていう逃げ道がなくなると自由勝手にできていたことができなくなる。好きな時に入って、好きな時に逃げられていたはずの「犯人」は焦る。はず。

だから失敗を犯す。隠していたはずのものを曝し出す。

つまり、今回の大量山積み死体遺棄に繋がる。

こういうことだった。

 

 

 

「じゃあ、これでもう誰もいなくならねえな」

「はあ? 何言ってんだ」

 

 

 

その行方不明の怪異は元々この町になかったはずの怪異だ。俺たちの中で一番怪奇現象に詳しい怪奇オタクが言うんだから間違いない。

その怪異は「外」からやって来たもの。十年以上居座った元凶がそう易々と外へ出て行くものか。

 

 

 

「もう一度、周りをよく見てみろよ。遅刻常習犯だろ?」

 

 

 

遅れて何かに気づくかもしれない。オタクはそう言って笑った。

小学生の時と変わらない、謎解きの問題を俺たちに提示するイヤな顔だ。解いてみろ。解けるだろ。俺たちが解けるとわかってるから問題を出してくる、オタクのお決まりのパターン。

俺に、この怪異が解けるのか。俺が解かないといけないのか。

 

 

 

俺はもう一度警察署へ向かった。

そこには、まだ遺された彼らがいるはずだった。

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