桜ヶ原小学校同窓会へようこそ   作:犬屋小鳥本部

37 / 157
出席番号7番「遅刻常習犯」⑳

なんで母さんを落としたんでしょう。俺は誰がとは聞かなかった。俺の中で、母さんを落とした犯人は父さんだって答えが出ていたんだ。

それまでの話じゃ、どうしても人を落とすような狂った鬼には聞けなかった。どうしても彼の言う「先輩」と「父さん」が結び付かなかった。

彼は一呼吸置いてからこう言った。

 

「僕は、君たちみたいに元々ここの住人じゃないから」

 

自分は余所者だから。そう前置きして続けた。

 

彼が俺の両親と出会った時、彼らが学生の時から、母さんたちはよく後ろを気にしていたそうだ。本当によく後ろを振り返って背後を確認するもんだから、彼は尋ねたんだ。

後ろに何かいるのか? それに、両親はこう答えたそうだ。

 

「鬼ごっこでもしている気分だよ」

 

鬼ごっこ。後ろから誰かに追われていたのか? 何に?

少しだけ、背筋にぞくりと寒気が走った。

彼は言った。僕にはよく解らないことなんだ。だけど、同じ場所に生まれた君なら解るのかな。

そう、言った。

余所者には解らないこと。地元民には解ること。ピンときた。怪異だ。

 

俺は鬼ごっこなんて怪異を桜ヶ原で聴いたことがない。聴くのは「鬼事」。ごっこなんかじゃ済まない、鬼の戯れ事。聴くも見るも無惨な、鬼のする怪異。

俺たちはそんな怪異を「鬼事」と呼ぶ。

 

だから、背後を追ってくるような、それこそ子どものする遊びの「鬼ごっこ」のような生易しい「鬼」を地元民は知らない。

もしいるなら、その鬼は桜ヶ原の外にいる鬼だ。

 

 

 

オマエハ鬼子ダ

 

不意に、父さんの言葉が頭に響いた。子どもの俺を、鬼の子だと罵ったあの声を。

その子どもは誰の子だ? 父さんの子だ。

鬼子は鬼の子だ。

 

トウサンハ、オニナノカ?

 

それなら母さんを屋上から落としたりもするだろう。でもいつから?

どうしても目の前の彼の言う「先輩」と「父さん」が同じ人に思えなかった。俺の頭の中では、人の「父さん」と鬼の「父さん」が立っていた。

どちらが本当なのか。どっちが真実か。

 

 

 

「ここを出てから、何かに追われるような気がしてたらしいよ。だからずっと後ろを気にしてた。

地元に戻ればきっと大丈夫だって言ってたけど、その結果があの人の事故なんだろうね」

 

何かに背後を取られて、背中を押された。

母さんの死は、その後の行方不明事件の怪異に繋がっていたんだ。

父さんが犯人の。

父さんが犯してきた罪の。

 

 

 

 

 

 

「君は、父親が亡くなった時のことも詳しく知らないんだろう?」

「え」

 

 

 

 

 

 

父さんはずっと生きてきたはずだ。ずっと、家にいたはずだ。亡くなってなんていない、はずだ。

 

 

 

 

 

 

彼の言う俺の「父さん」って誰のことだ?

 

 

 

 

 

 

そこでやっと何かが違うと気がついた。




????????????
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。