俺は、
彼に尋ねた。聞いてしまった。
「俺の父親って、誰のことなんですか?」
彼は答えた。
「誰って、×××先輩のことだよ」
俺の。
俺の父親は。
なんでそうなったんだ?
なんでこうなったんだ?
じゃあ、あの「父さん」は、一体、誰なんだ?
何なんだよ?
俺は彼に自分のことを話した。俺がどうやって生きてきたのかを話した。簡単に、な。
俺の父親は「父さん」じゃなかった。父親の後輩である彼が言い続けていた「俺の父親」は彼の先輩である助産師さん。つまり、俺の、
俺の父親は。
本当の父親は。
モウイナイ。
俺は助産師さんに育てられて、父さん、
誰かわからないけど、俺がずっと「父さん」と呼び続けてきた、あいつ。
あいつと暮らしてきた。
「君の両親は僕の先輩たちだ。ちゃんと証明できる。
君が「父さん」と言っているその人を、僕は知らない」
彼は怒っていた。自分の敬愛する先輩のいるべき場所を、どこの誰かわかんない、それこそ得体の知れない奴がかっ拐っていった。
しかも、その子どもの扱いに絶句していた。俺があいつに何て言われながら育ったか、俺があいつに何をされてきたか。それを聞いたときの彼の顔は、何て言ったらいいかわかんねえ。
俺、思ったんだ。ああ、助産師さんは、俺の父親は、こんなに後輩に慕われていたんだな。
俺は「父さん」じゃなくて「助産師さん」の顔を思い出しながら、思った。
やっと解ったんだ。助産師さんがなんであんなに俺に優しくしてくれたのか。
あの人、あの人がさ。
俺の、俺が本当に父さんって呼ばなきゃいけない人だったんだ。
なんでだよ!
なんでこうなっちまったんだよ!
俺、俺、助産師さんのこと、一度も父親だなんて、父さんだなんて、呼んだことなかったさ! 呼べなかった!
何度も呼びたかったよ。あの人が俺の父親だったらって、何度も思ったよ。
でも。
でも!
あいつが言うんだ。
あいつが、俺に、言うんだ。
「オレガオマエノチチオヤダ」
あいつが、俺に言うんだよ!
自分が父親だって。
あいつが俺に!
それまで、疑ったことなんてなかった。どんなに目の前が辛くても、これが現実なんだって思ってた。受け入れてたつもりだった。
それなのに。それなのに!
それなのにさぁ!!
こんなのってないだろ。
ゼェンブ、ウソダッタ
もう母さんも、助産師さんだったとうさんも、いない。会えない。
俺は、一体何を見てきたんだよ?
なにも
みていなかった
悲しかった。
悔しかった。あいつに騙されていたことに。
怒った。あいつに騙されていた俺自身に。
血が出た。唇を噛んで、噛み切って、血の味がした。
頬を水が伝った。
涙が、伝った。
みんな。聞いてくれ。
聞いてくれよ。
俺の父親はさ。優しくって、いっつも困った顔で笑うんだ。俺が失敗しても、俺がどんなに間抜けでも、根気強く待っていてくれる。君だったらできるって、俺のことを信じてくれた。
俺の成長を心から楽しみにしていた。
いつか気づくって、最期にヒントを残して、信頼してた後輩のとこに導いてくれた。
みんな。
俺の。
俺の父親はさ。
俺がずっと、助産師さんって呼んでた、あの人なんだ。あの人なんだよ。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
なんっでこうなんだよおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
俺が父さんって呼んでたあいつは誰なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!???!!!???!!!???!