トゥルルル……
受話器から呼び出し音が聞こえてくる。
電話ボックスについて聞く話は、大体受話器から聞こえた話。自分はこんな話を聞いたよ、っていうね。
どれも、コイバナ。
だから、ボックスを使って受話器を耳に当てて話を聞く人たちは、みんなルールを守っているはずなんだ。じゃないと、こんな風に広まっていたりするわけない。いや、単に失敗例だけ語られていないだけかもしれない。
あくまで俺たちの耳に入ってくるのは恋の話だけ。中にはちょっと暗くなるのもあるよ。でも、それだって恋の話なんだ。
コイバナ。
コイバナシ。
恋話。
恋の、話。
何でハコの中に入っているのが恋の話だけなんだろう。
じゃあ逆に、恋の話以外何の話を入れるんだろう。
人を好きになるのが恋。
好きになって、その想いを伝えて、相手に応えてもらう。
想いを実らせたり、想いを砕かれたり、想いを枯らせる。
もしかしたら伝えずに秘めたままかもしれない。気づきもしないで消えていってしまうかもしれない。
それが、恋というものなんだろう。
本当にそうなんだろうか。
恋というものは、どれも綺麗で美しいものなんだろうか。可愛らしくて、鮮やかで、そう。花のように可憐なものなんだろうか。
未成年っていう時間はすごく未熟だ。曖昧で繊細で、ゆらゆら揺れて流される。
でも氷みたいに固まっていない。水みたいに形が定まらないから、アイスになったりシャーベットになったり。色を変えてみたり、沸騰したり冷めて温くなったり。いろんな状態になれる。
そんな特別な時期。
そんな特別な時期にいる未成年の、それも特に敏感な高校生の、俺たちが経験する『恋』。
きっと、大人になってから経験する恋とは違う何かがある。純粋で、本能的で、欲望に忠実で。うまく言えないんだけど、それこそ『恋』っていう感情に支配されたものが、この時期の恋話にはあるんじゃないかな。
トゥルルル……
トゥルルル……
何かを呼び出す音が聞こえている。
繋がる先の向こうからは、きっと呼び出される音が聞こえているはず。
箱を通して、俺は誰かを呼び出している。
何かを、呼び出している。
まあ、まずは四つ、話を聴いてみてよ。
『間違い探し相談所』
「もしもーし。
誰か聞いてますかーぁ。
聞いてませんねー。聞いてませんよねー。
よーし、喋っちゃうぞー。
あたしのコ・イ・バ・ナ。
あたしには親友がいてね。ううん、違うなぁ。
誰もいない電話だから言うんだけど、恋人がいるの。可愛い女の子でね、とってもモテる!
今電話をかけてるこの×××? っていうの? ここに住んでて、高校に上がって一年生の時にクラスがおんなじになったんだ。
告白したのはあたしの方。自己紹介の時に一目惚れしてね、その日の内に告白しちゃった!
あ!
あたしもその子も女の子だよ!
でもそんなのどうでもいいでしょ?
運命の人がその子だった。その相手が自分とおんなじ性別だった。
ただ、それだけのことでしょ?」
「もしもーし。
いちいちこれやるの?
ふふっ、よくみんなこんな面倒なのやるねぇ。
あたしの恋人ちゃん。押しに押して、告白して一ヶ月で落とした可愛い彼女ちゃん。
一ヶ月って長いって思う? そんなことないよ。全く知らない他人からの告白に返事するまでそれくらい必要だって。何にも考えないで断ったり、とりあえずって言うなら一瞬だろうけど。
彼女ちゃんはね。そんなくだらないそこらにいる奴等とは違うんだよ。
あたしの好きに応えようと、彼女なりの答えを返すためにちゃんと考えてくれた。
あたしは女の子だから彼女を選んだんじゃないの。女の子って理由であたしを彼女にしようとした男たちとは違うの。ちゃんとその子を見て、この子だ! ってビビッときたから告白したの。
そこら辺のダメ男と一緒にしないで欲しいな」
「もしもーし。
続々続き更新中?
最近困ったことがあってぇ。
あたしの彼女ちゃんが可愛くて可愛くて、もうデレッでれ。
と言ってもね、あたしは別に周りに言うことでもないって思ってるから、周りにはすごく仲のいい親友って見えるようにしてるんだ。距離が近い? スキンシップが過激? 女の子同士の親友ならアリでしょ?
ただね。変に思われたくないんだ。
あたしはいいの。でも、彼女ちゃんがあたしの手を握ったせいで、周りからの視線を悪いものに変えられるのがイヤ。彼女が傷つくのがイヤ。
なんで女の子同士がダメなのかなぁ。あたしの友人には男の子同士のカップルだっているよ? 何が変なの?
コロコロ相手を変える人の方が変じゃん。好きだったんじゃないの? 大切な人だったんじゃないの? 運命の人だったんじゃないの?
お試しの恋ってなに。お遊びの恋ってなに。
恋をゲームと勘違いしてる奴。あたし、だいっきらい。
本気になりなよ。うまくいかなくたっていいんだよ。
あたしたちみたいにさぁ」
「もしもし。
マジ最悪。
ちょっと聞いてよ。って言っても、誰も聞いてないよね。
今日、部活の先輩から恋愛相談されちゃった。もともとあたし、人気があるんだよね。友人として付き合いやすいんだって。さっぱりしてて。
あたしとしてはお前のことどうでもいいしー、っていう方のサッパリだと思うんだけど。
だから、中学生の頃から親しい友人を斡旋して欲しいっていう相談とか多かったの。うん。すっごく面倒。そういう人に限って自分で何もしない。
可愛い子がいるって目をつけたら、その近くにいるどうでもいい子に声をかけて、こんな人いるよ。こんなイケメンいるよ。ってその目当ての子に聞かせるように言うんだって。
要は、何もしないで好みの子の中の自分の株を上げようとする。ほんと、意味わかんない」
「もしもし。
愚痴になっちゃうけど、勘弁してね。
部活の先輩が、あたしの彼女に自分を紹介して欲しいって言い出したの。もちろん断ったよ。
向こうは知らないだろうけど、あたしたちは恋人なの。親友に見せてるけどね。恋人を他の男に紹介する?
それも、彼女ちゃんとは何にも接点なんてない他人をだよ?
あり得ない!
だから断りましたー。
でもそんなんじゃ先輩は納得しない。
あたしは考えた! どうすれば先輩の目を彼女ちゃんから逸らせるか。
そこで思い出したんだよね。同じクラスでその先輩のこと気になってる子がいたの。
じゃあ、その子と先輩くっつけちゃおう! ってね」
「もしもーし。
結果報告。うまくいっちゃった。
前に彼女ちゃんを紹介しろって言ってきた先輩と、同じクラスの子。ししっ。くっつけちゃった。
悪く思わないでね、先輩♪
同じクラスの美人系の子。いい子だと思うよ。性格も顔もいいし。ただね、ちょっと嫉妬深いかな? もう浮気なんてできないよ。させてくれないよ。
精々本気の恋を知るといいんだ。
年下の束縛系彼氏に夢中になりなよ。先輩♪」
「もしもーし。
まぁた相談されちゃったよ。
彼女ちゃん、モテすぎ。自慢の彼女ちゃんだから鼻が高いんだけどさ。でも心配になっちゃうよ。あたしだけの彼女ちゃんが、他の誰かのものになっちゃわないかって。
隣のクラスのワンコ系女子。彼女ちゃんが好きなタイプだよ。
その子が彼女ちゃんと話したいらしくて、間を取り持って欲しいって言ってきたの。あたしってそんなに声かけやすい?
もう、断る理由なんてないからうんって言っちゃったよ。
ああいう子に弱いんだよねー、あたし。
あー、もー、どーしよー」
「もしもし。
セーフだった。ワンコ系は狼じゃなくて純粋子犬ちゃんだった。
昨日もあたしと彼女ちゃんと一緒にショッピングに行った。
なにあれ可愛い。彼女ちゃんもメロメロ。
あ、恋人とは違う意味でだよ! ほら、小動物的な。
それに、あの子も好きな人がいるみたいでね。あたしと彼女ちゃんで応援しちゃおう! って話よ!
やっぱり女の子はコイバナ好きなんだよなー。しーかーもー。その相手っていうのが幼馴染みのお姉さま!
なにそのシチュエーション!? なに長年の恋心募らせてんの!?
なにそれ! なにそれ!!
応援するよ! スッゴクしちゃう!
頑張れ、子犬ちゃん!
恋の先輩のあたしたちが応援してる!
きっとその恋は叶うよ!」
「もしもーし。
ここも久しぶりだな。
えっとー。ラブラブはっぴぃ恋人生活を送ってるあたしたちに新たな仲間が加わった? って話だっけ?
あ、違う違う。
あー、テスト勉強で頭パンクしそうだー。
テスト終わったら絶対三人で映画観に行く。絶対行く。あと、パフェとクレープ巡りもはずせない。
ぐぅ… そのためには赤点回避しなければ…
あー、うー、今だけ休憩。ちょっとだけ。
結局、前に言ってた子犬ちゃんは無事!
お姉さまとお付き合いが決定したの。でもなー。あたしとしてはあの人、あんまり好きじゃないかな。美人なんだけど、子犬ちゃんのこと替えがきくペットにしか見てないように見えるんだよね。
子犬ちゃんの好きは本物だよ。本気の本物。あたしたちが保証する!
彼女ちゃんも子犬ちゃんのことは気にしてて、よく三人で遊びに行くようになったんだ。
あとね、秘密なんだけど。あたしたちの間だけで恋愛相談なんかしてたりするの。
女の子同士のカップルなんて滅多にいないじゃない? だから、不安とかすぐに溜まっちゃうの。
もちろん、あたしだってね」
「もしもし!
今日も元気いっぱい、あたし様が通るぞー!
最近すっごく調子いいんだー。
ほら、恋愛相談できる相手もできて、遊ぶ仲間もできて、なにより彼女ちゃんが可愛い!
それだけで元気満タンなんですよー。
あーあ、こんなのずっと続けばいいのになー。
進路も決めないといけないのめんどい」
「もしもし。
信じらんない。子犬ちゃんが、フラれた。別れたって、泣きながらあたしたちに報告しに来た。
相手の人、もうただの他人だよ、その人が彼氏作ったんだって。
子犬ちゃんとのことは全部、全部、始めから全部! 遊びだったんだって。ただの興味で付き合ってあげてただけなんだって。子犬ちゃん泣いてたよ。
いっそ嫌いって言ってくれればよかったって。
子犬ちゃんはね。その人と初めて会ったときから恋をしてたの。心の中はその人でいっぱい。甘くて優しくて、クリームが山盛りになったケーキみたいに胸が焼けるくらいどろどろに甘ったるく膨らんだもの。
その人しか見えてなかったの。その人しかいらなかったの。
そんな子を裏切るなんて。
あの人、恋する資格ないよ。誰かを好きになる資格ない。
好きになってくれた人を引っ掻き回して、傷つけてっただけじゃない」
「…もしもし?
誰か、聞いてるの?
あたしのコイバナ、誰か聞いてる?
この電話を聞きに×××に来たなら、コイバナを聞きたいんでしょ?
恋を、聞きたいんでしょ?
じゃあ、聞いて。あたしたちの恋を、否定しないで聞いて。
好きだった人に裏切られた子犬ちゃんは、あたしたちに毎日その人のことを泣きながら話すようになった。幸せだった二人の時間を振り返って、それが嘘だったんだって自分を傷つけてる。騙された自分がバカだったんだって子犬ちゃんは言う。
でも、あたしたちはそうは思わない。あたしたちはいつだって子犬ちゃんの味方だよ。悪いのはあの女。悪いのはあの女の彼氏。
あたし、後で聞いたんだ。
あの女と彼氏は、女の子同士の恋愛に浸ってる子犬ちゃんを見て嗤ってたんだって。
女が女を好きになるはずない。あれは頭がイカれた病人だ。可哀想。あんな変人になつかれた自分が可哀想。
そんなこと話してるのをあたしは聞いた。
近々、あいつらは結婚するらしい。
女のお腹が膨らんでた。
あたしは、そのことを彼女ちゃんと子犬ちゃんには黙っておこうと思う。
毎日毎日泣いて、目元が腫れた二人をこれ以上悲しませたくない。
あたし、解ってるよ。女の子同士の恋愛なんて世間様から見ればおかしいってこと。
知ってるよ。女の子同士のカップルで幸せになれた例なんて耳にしないこと。だって、変に見られるから。頭が狂ってるって言われるから。
だから、みんな黙ってるの」
「もしもし。聞いて。
あたしの、恋。あたしたちの、コイバナ。
聞いてる人。同性同士の恋は間違ってると思う?
あたしはそうは思わない。
あたしが好きになったのは女の子。女の子のあたしを好きになったのも女の子。それだけだよ。
あたしはその人が好き。多分、女の子でも男の子でもそれは変わらない。
あたしの恋は直感的だった。出会って、あ! この人だ! って感じたから告白したの。フラれても、それは運命の出会いだったってあたしは言うよ。
みんながそういう風に言い切れないのはわかってる。でも、あたしにとってその人が運命だったの。
そんな風に思える人、あなたにはいる?
そんな風に、自分との出会いを運命だって言ってくれる人、いる?
あたしはね。その人との繋がりを恋人って形にしたよ。この想いを、恋だって名前をつけた。
あたしたちは真剣なの。バカにしないで。どこか間違ってるってわかってる。他の人と違うってわかってる。
わかってるの。
自分たちが一番わかってるの。だから、バカにするな! 否定するな!
いいじゃない。間違ってたって。
いいじゃない。人と違ったって。
何がダメなの?! どうしてダメなの?!
本気で人を愛したこともないお前たちになんか、あたしたちの恋をとやかく言われたくない!!
あたしは!
あたしは。
あたしは、あの人のことが好きなの。愛してるの。心から。
命をかけてもいいよ」
「もしもし。
もしもし。
誰か、聞いてるの? ここまでの話、聞いてくれてるの?
あたし、ほんとはずっと悩んでた。
自分とおんなじ女の子を好きになって、どっかおかしくなったんじゃないかって。でも違うんだね。
好きになることはおかしくなんてないんだ。それがどんな相手でも。
変なのは、その好きを疑うこと。その好きって気持ちを病気だってひとくくりにして、ゴミ箱に棄てちゃうこと。
可哀想だね、その人。せっかく宝石の原石を見つけたのに、磨きもしないで汚れた穢い石ころだって言って泥沼の中に放り投げちゃう。せっかくのキレイな石なのに、価値がわかんないなんて可哀想。
その人はもう、キレイな石を泥の中から見つけ出すことなんてできないんだよ。
あーあ、かわいそ。
そんな人たちはさ。あたしたちみたいな恋をすることさえできないで一生を終えていくんだよ。
報いを受けろ。
あのクズ女ども」
「もしもし。
子犬ちゃんが登校拒否になった。
あの女が、子犬ちゃんのこと病気持ちの××女だって言いふらしたの。
子犬ちゃんが、彼女が何をしたっていうの?
ただ、恋をしたかっただけでしょ?
裏切ったのも、傷つけたのも、全部あの女が悪いのに。なんでこんなことするの?
あたしたちのことも××××だって言ってるみたい。
あたしはダイジョブ。でも、彼女ちゃんが苦しんでる。
自分も傷付いて、子犬ちゃんも助けられないで苦しんでる。
もうイヤだ。こんなの、イヤ。
あたしたちの恋を邪魔して、子犬ちゃんの恋心をズタズタにして。あの女、嗤ってる。自分だけ幸せになろうとしてる。好きな男の隣で笑ってる。
こんなバカなことってあるか」
「もしもーし。
あははっ。やっちゃった♪
あたし、やっちゃった。
カゴメカゴメって童謡知ってる?
都市伝説でさ、あの歌詞の意味で××××に行った××を誰かが階段の上から突き飛ばしたっていうのがあるらしいんだ。××××の×××ぁ×って。
あたし、あの女を階段の上から突き飛ばしたよ。ははっ。あの女、悲鳴あげて転がってった。お腹の子、流れたってさ。
赤ちゃんにはほんとに悪いことをしたと思ってるよ。あたしは人殺しだ。ごめんね。ほんとに、ほんとにごめんなさい。
でもね。あの女は許せない。人の人生を狂わせておいて笑ってる。
恋を嗤う奴に恋を語る資格なんてない。あいつは恋をバカにした。自分に恋をした人をバカにして、恋心っていうものを利用して、全てを踏みにじった。
あたしはあの女がどうしても許せなかった。
彼女ちゃんも、子犬ちゃんも、あたしの大切な人たちだ。あたしの恋人と友だち。二人とも、あたしの大事な人。
だから、傷つけたあの女が憎い。
罪は背負うよ。後悔はしてない」
「もしもし。
あたしのコイバナ、これで最後にする。
最初で最後の、あたしの恋。
ねえ、どうだった? 聞いてる人。
あたしのコイバナはキレイなものじゃなかったでしょ?
恋ってさ、きっとそういうものなんだよ。
いろんな恋があってさ、いろんなことがあってさ。笑って、泣いて、傷付いて、苦しんで。
恋はきっと実って、咲いて、芽を出して、枯れて、散っていくもの。
あたしの恋はどうだったかな。
ああ、どこで間違えちゃったのかなぁ。
あたし、もっと二人で幸せになりたかったはずなんだ。そのためにたくさん悩んだ。
でもね、友だちが苦しんでいるのもやっぱり見ていられなくて。手を出しちゃった。
みんなでハッピーエンドなんて、無理なんだよ。だけど、あたし、頑張ったよ。精一杯考えて、一生懸命恋をした。幸せだって笑えるように頑張った。
だから、これがあたしの答え。彼女ちゃんにも、子犬ちゃんにも相談して、三人で出した答え。
後悔、してない。するはずないよ。
でしょ? だって、これがあたしたちのコイバナなんだから。
じゃあね。外で二人が待ってる。
あたしたち、絶体最期まで手を離さないよ。
あなたも、あなただけの恋を信じて進んでね。
あたしたちみたいに、ならないでね」
しばらくして、受話器の向こうで水飛沫があがる音が遠く響いた。
驚いて受話器を取り落とした誰かは、急いで電話ボックスから出ようとする。しかし、内側からは扉が開かない。
誰かは焦った。
突然周囲が暗くなった。
ごぷん
その箱だけが水の中に沈んだかのように、くぐもった水音と暗闇が辺りを一瞬包み込んだ。
誰かの肌を、ぞくりとしたものが這い回った。
しかしそれも一瞬のことだった。
すぐに景色は明るい日差しの下に戻り、扉も容易く開いた。
誰かは外へ出ようとした。
その時、ぼとりと水気を含んだ何かが背後に落ちたことに気がつく。誰かは振り向いた。
そこには、一冊の手帳が落ちていた。先程までは確かになかった物だ。
乱雑に開かれた手帳の一頁には、顔の判らない少女たちが写った小さな写真のシールたちが幾枚も貼られていた。
どれも、少女たちの笑顔を写した物だった。
彼女たちは幸せだったのだろうか。
彼女たちは今でもどこかで笑っているのだろうか。恋をした相手と一緒に、笑えているのだろうか。