桜ヶ原小学校同窓会へようこそ   作:犬屋小鳥本部

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出席番号13番「Hello my dear.」⑤

死者を愚弄することまかりならん。

 

死んでしまった人を、生きている人がバカにすることはしてはいけない。それはなぜか。死んでしまいこの世にいない人は、いくらバカにされても反論できる口を持たないから。死者はいくら悪く言われても、言った生者に届く声を持たない。

それ故に、死者はこの世では愚弄されやすいのだ。まだ生きて、この世を謳歌できる人に言いたい放題勝手なことを言われるのだ。何故なら、真実を知る本人は既に墓の中なのだから。

 

 

 

さて、それは一欠片の理由なのだろう。

 

 

 

生と死の境界に限りなく近い『桜ヶ原』という町がある。

そこでは、七不思議を始めとした様々な怪奇現象に出会うことが日常となる。

 

 

 

 

 

ねえ、そうでしょ?みんな。

 

 

 

隣の家の、亡くなったお爺さんに気に入られていた君。最期に素直になったお爺さんは死んだ後も君の横にいて、護ってくれてたね。

危険な危険な桜の根が眠る場所でコンビニを経営した後輩たちを持つ君たち。選んだ選択は満足できるものだったよね。

こびとが住む置き傘を持つ男の子に恋をした君。失恋したけど、今じゃ素敵なこいびと持ちね。

時間を越えてアイディアをやり取りした君。二人分の想いが込められた作品を完成させた作者は、もう立派な物書きね。

友人と廃病院へ肝試しに行った君。その後、ストーカーさんからはラブレターが届いたのかな? なんてね。

遠い遠い町での赤く染まった思い出を持つ君。思い出は、赤くて冷たくて悲しいものばかりじゃなかったはずだよね。

河童と酒盛りをする君。胡瓜とお酒を手にして彼らに会いに行く次の子どもは、きっと絶えることはないよね。

可愛い可愛いにゃんこの君。一緒の教室で学んでくれて、ありがとね。

 

桜ヶ原の七不思議。すべては七つ目「同窓会」が開かれる為の通過儀礼。

 

 

 

今年、同窓会の案内が私に届いた。

ちゃんと届いたよ、みんな。桜の木の下で同窓会が開かれるの、本当に楽しみにしてたんだ。

いつかくる、同窓会のこと。私はなんにも隠さないで大切な二人に話したの。

 

 

 

私は十三番。

出席番号十三番。

 

人よりちょっとだけ、死んだ人が見えやすい、桜ヶ原小学校の卒業生。

 

 

 

死んだ人をバカにしちゃいけない理由はね。

死んだ人より何倍も何倍も、生きてる人がバカだから。生きた時間を終えて死んだこともない人に、死者を愚弄するなんてもってのほか。死んだらなんにもできないなんて、誰が言ったの? いる世界が違うから、死者から声が届かないんだよ。遠すぎて聞こえないの。

だからね。

すぐ近くにいる死者をバカにしちゃいけないよ。ちゃぁんと、聞こえてるからね。そして、生きてる人なんかよりこわぁい報復を仕掛けるんだ。

だって彼ら、「死ぬほどこわい」のその上。「死んでもこわい」を知ってるんだもん。

 

死んだ人からこわい報復を受けない為に、死者を愚弄しちゃいけないの。

 

 

 

ああ、こわいこわい。

 

ねえ、そうでしょ?

十花ちゃん。

 

 

 

 

荒らされた十花ちゃんの部屋に私は言葉を失った。

『よくもやってくれたな、あの女』

ショックを受けてる十夜さんに、私の部屋のベッドで今夜は寝てと言った。私は、十花ちゃんの部屋をきれいにしてからここで寝ると言った。十花ちゃんと一緒に寝ると言った。幸いにも、次の日の日曜日は私も彼も休日だった。

『昨日も今日も一緒に寝れるなんて、ちょっとラッキーかも』

十夜さんを私の部屋に送って、まずは十花ちゃんと話をした。

 

「ほんと最低、あのキモババア」

「信じらんない。こんなことするなんて」

「あいつ、女の気配がする物に八つ当たりしてったの」

「八つ当たりって?」

「勝手な嫉妬」

「十夜さんとあいつは赤の他人でしょ」

「向こうが妄想しちゃって、自分が彼女って設定みたい」

「マジで?」

「大マジ。合鍵作って入ってきて、あたしの部屋見たとたん叫び出した」

「管理人さんは?」

「出掛けてたから、多分その時間狙ったんだと思う」

「何か持ってかれた?」

「お兄ちゃんのは大丈夫。でも、五花お姉ちゃんがくれたのと私のは全部ダメ」

「全部?」

「全部だよ。昔のは残ってない」

 

手を動かしながら話を聞いた。ある程度片付けが終わったところで、隣の十夜さんの部屋から予備のシーツを借りてきた。あの女の匂いがするベッドで寝るなんて絶対に嫌。十花ちゃんのベッドにシーツを広げて、そこに横になった。

ああ、十夜さんの匂いだ。

そこへ、十花ちゃんが潜り込んできた。私たちは、笑いあって目を閉じた。

ああ、十花ちゃんの香りだ。十花ちゃんの遺影に飾られていた献花の香りだ。

 

私は眠った。

 

今日は、キクの香りだった。きっと白いキクなんだろう。

腕の中から十花ちゃんの声が聞こえた。

「おやすみ、いい夢を」

十夜さんからスマホに一通のメールが届いた。

『おやすみ、いい夢を』

 

 

 

私は、眠った。

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