運命が変わる瞬間に立ち会ってください。
魔法少女だって人間
見滝原病院 屋上
病院の屋上には花壇が彩られていた。
その花壇の中心に二つの影があった。
花壇の中心にオブジェに腰かけているのはキュゥベエとその向かいにいるのは美樹さやかだった。
「本当にどんな願いでもかなうんだね・・・・・・」
さやかはキュゥべえにそう尋ねた。
「大丈夫、君の祈りは間違いなく遂げられる」
キュゥべえはさやかの問いに肯定した。
「じゃあいいんだね?」
「うん、やって」
キュゥベえは逆にさやかにそう尋ねると、さやかは契約の了承をキュゥべえに告げた。
キュゥべえは猫とウサギの耳が合わさっている方の中でウサギの耳が、腕を広げるかのような動きをした。
すると、キュゥベえはさやかの胸に耳が腕の代わりをするように触れた。いや、『何か』を取り出した。
「・・・・・・ッ!」
さやかは苦痛に歪んだ、それでもキュゥべえはやめなかった。
「ああっ!」
さやかは苦痛に声を上げた直後、胸から青い光が出ていた。
その光は卵状の形へと変えていった。
「さあ受け取るといい、それが君の運命だ」
キュゥべえはさやかに青い光のを帯びた宝石、「ソウルジェム」を掴むように促した。
さやかはその言葉に従って、ソウルジェムを掴んだ。
***
見滝原中学校 教室
「ふぁぁ・・・・・・」
志筑仁美は朝から欠伸が出ていた。
「どうしたのよ仁美? 寝不足?」
さやかは仁美を心配して尋ねた。
「ええ、ゆうべは病院やら警察やらで夜遅くまで・・・・・・」
「え~? 何かあったの?」
「なんだか私、夢遊病っていうのか・・・・・・それも同じような症状の人が大勢いて、気がついたらみんなで同じ場所に倒れていたんですの」
「はぁ? 何それ?」
「お医者様には集団幻覚だとか何とか・・・・・・今日も放課後に精密検査に行かなくてはなりませんの、ああ、面倒臭いわ・・・・・・」
仁美は昨日あったことをさやかに話した後にぼやいた。
「そんなことなら学校休んじゃえばいいのに」
さやかはそう、仁美に話すがーー
「駄目ですわ、それではまるで本当に病気みたいで家の者がますます心配してしまいますもの」
仁美の優等生としての誇りがそれを許さなかった。
「さっすが優等生、偉いわぁ」
さやかは仁美の優等生っぷりに笑っていた。
しかしまどかとほむらは知っていた。
昨日仁美を含む人々が集団幻覚にかかったのではなく、魔女による
魔法少女になったさやかが集団自殺を阻止したことにーー
親友であるまどかと、まどかを気に掛けるほむらは、明るくふるまうさやかを複雑な心境で見ていた。
***
通学路の土手、後ろには大量の風力発電機が見えていた。
「んーっ、久々に気分いいわぁ、爽快爽快ッ!」
そう言ってさやかは土手に寝転がった。
「・・・・・・・・・・・・」
土手に腰を掛けたまどかは、さやかの方を見ていた。
「さやかちゃんはさ・・・・・・怖くはないの?」
まどかはさやかに尋ねた。
「ん? そりゃッちょっとは怖いけど、まぁ昨日のヤツにはあっさり勝てたし、もしかしたらまどかと仁美、友達二人を同時になくしてたかもしれないって、そっちの方がよっぽど怖いよね」
「・・・・・・・・・・・・」
さやかの言葉にまどかは静かに聞いた。
「だーかーらっ、何つうかな、自信? 安心感? ちょっと自分を褒めちゃいたい気分つうかね、まー舞い上がっちゃってますねーあたし、これからも見滝原市の平和は、この魔法少女さやかちゃんがガンガン護りまくっちゃいますからねー、なんてね・・・・・・マミさんと一緒に魔女退治するから無茶はしないよ、まどか」
さやかは最後に少し声を落とした。
まどかのためにも無茶は出来なかった、さやか自身の自戒だった。
「後悔とか全然ないの?」
まどかはさやかにそう尋ねた。
「そうね・・・・・・後悔っていえば・・・・・・迷っていたことが後悔かな」
さやかはまどかにそう告白した。
「どうせだったらもうちょっと早く心を決めるべきだったなって、あのときの魔女、坂田先生と転校生のおかげで何とかなったけど・・・・・・あたしと二人がかりで戦ってたらマミさん、あんな目に合わずに済んだかもしれない」
さやかはそうまどかに告げた。
その後にさやかは思い出したかのように気になっていたことをまどかに聞いた。
「そういえば、マミさんの様子はどうだったの?」
さやかは自分で話していたマミの様子が気になっていた。
「マミさんだけど、元気そうだったよ・・・・・・それとーー」
まどかはマミの様子、そして、銀八の話をした。
***
「そっか、マミさんも先生に・・・・・・」
さやかは自分と同じくマミが銀八の話を考えていなかったことで命を落としかかったことに落ち込んだことに、自分とまどかを魔法少女の戦いに巻き込んでしまったことに責任を感じていたことを把握した。
まどかも銀八がさやかのもとに訪れたことに驚いていた。
まどかがマミの過去を話さなかったのは、まどか自身軽々しく話すべきでなかったし、重すぎた。
「私・・・・・・」
まどかはマミの顔を思い出していた、マンションで契約の経緯を聞いた時に、銀八が言っていた『背負う苦しみと背負われる苦しみ』と自分が居ない世界について考えていた。
しかし、自分の頭の中に堂々巡りの渦を抱え込んでいた。
「・・・・・・」
まどかは渦が堂々巡りの思考の渦に落ちていたとき、頬をつつく感触を感じていた。
「さては、何か変なことを考えてるな?」
「・・・・・・私・・・・・・私だって・・・・・・」
「なっちゃった後だから言えるのこーゆーことは、『どうせなら』っていうのがミソなのよ」
さやかはまどかの顔を見て励ますように言った。
「あたしはさ、先生の話で『自分のいない世界』はどんなだろうって考えたの、恭介はもちろんまどかや家族、学校の友達がいきなり私が居なくなったら、『私が居なくなった』って事実がほかの皆に刻まれてしまうって・・・・・・」
さやかはつぶやくような声で、まどかに話した。
「さやかちゃん・・・・・・」
まどかも何か話しかけようとするも、言葉が出なかった。
「願い事、見つけたんだもの命がけで戦う羽目になったって構わないって・・・・・・そう思えるだけの理由があったの、そう気づくのが遅すぎたっていうのがちょっと悔しいだけでさ・・・・・・だから引け目なんて感じなくていいんだよ、まどかは魔法少女にならずにすんだっていうただそれだけのことなんだから」
「・・・・・・」
さやかの言葉にまどかは聞くしかなかった。
さやかは「それに」と付け加えてーー
「まどかだって、家族がいるでしょ? その家族がまどかが突然いなくなったり、事故とかが原因で死んじゃったら、家族の笑顔はなくなっちゃうんじゃない? あたしも、出来るだけ無茶はしないからさ・・・・・・」
まどかは、これ以上さやかにかける言葉が見つからなかった。
***
見滝原病院 病室
「そっか、退院はまだなんだ・・・・・・」
「足のリハビリはまだ済んでないしね、ちゃんと歩けるようになってからでないと、手の方もどうして急に治ったのか理由が分からないんだってさ、だからもうしばらく精密検査がいるんだって」
病室で恭介から聞いたさやかは納得していた。
さやかは恭介自身の様子を聞いた。
「恭介自身はどうなの? どこか身体におかしいところある?」
「いや・・・・・・なさすぎて恐いっていうか・・・・・・事故に遭ったのさえ悪い夢だったみたいに思えてくる、・・・・・・さやかの言う通り奇跡だよね・・・・・・これ」
恭介は自分自身に起こった
「・・・・・・」
「ん? どうしたの?」
さやかは恭介の様子が気になっていた。
恭介はあることを話した。
「さやかにはひどいこと言っちゃったよね、いくら気が滅入ってたとはいえ・・・・・・」
恭介の口から出たのは謝罪だった。
左腕が動かなくなった時にさやかに八つ当たりしたことへの罪悪感が今になって出てきていた。
しかしーー
「変なこと思い出さなくてもいーの、今の恭介は大喜びしてて当然なんだから、そんな顔してちゃ駄目だよ」
さやか自身そんなことを気にしてはいなかった。
その後に、左腕を顔の方に寄せた。
さやかは腕時計を見ていた。
「うん、そろそろかな」
時間を見計らったように、さやかは恭介に声を掛けた。
「恭介! ちょっと外の空気吸いに行こ」
***
さやかは車椅子に乗った恭介をエレベーターで病院の屋上に向かった。
「・・・・・・屋上なんかに何の用?」
恭介は何故屋上に連れてこられたか分からなかった。
「いいから、いいから」
さやかは微笑みながら恭介に急かさないように言いなだめた。
病院の屋上には花々が生い茂る円形状の庭園、その手前である人物たちが拍手をして恭介を待っていた。
バイオリンの師である恭介の父とその妻である恭介の母、そして恭介の担当病院スタッフの人達だった。
さやかが腕が回復した恭介のために用意した回復祝いのサプライズだった。
「みんなーー」
恭介は待っていた人たちに驚いていた。
「本当のお祝いは退院してからなんだけど・・・・・・足なんかより先に手が治っちゃったしね」
恭介の父から、あるケースが手渡された。
「・・・・・・!」
恭介はケースの中身を見て驚いていた。
ケースの中身はかつて恭介が使っていたヴァイオリンだった。
「それはーー」
恭介は何故捨てたはずのヴァイオリンがあるのか驚いていた。
その理由は恭介の父から説明された。
「お前からは処分しろと言われていたが・・・・・・どうしても捨てられなかったんだ、私は」
父から理由を聞いた恭介は驚きのあまり言葉が出なかった。
「さあ、試してごらん、恐がらなくていい」
父の言葉に促された恭介はヴァイオリンを手にした。
さやかは恭介の両親と病院スタッフのそばに行った。
全員、恭介の演奏を聞く観客、病院の屋上はたった今、恭介の回復祝いの演奏会場だった。
恭介は父の言葉に肯き、ヴァイオリンを弾いた。
恭介のヴァイオリン演奏は怪我をする前と変わらずに演奏されていた。
恭介の両親も静かに見守っていた。
さやかは恭介の様子と演奏を感慨深く聞いて、魔法少女になったことを誇らしげにしながら心の中に呟いた。
(マミさん、ごめん、願い事、恭介に使っちゃった・・・・・・先生、先生の話まだ考えきれてない・・・・・・まどか、あたしの願い叶ったよ、後悔なんてあるわけない・・・・・・あたし、最高に幸せだよ・・・・・・)
さやかは思い更けながら夕暮れの空を見上げた。
***
そのころ、見滝原の展望台からさやかを見定めていた赤毛のポニーテールの少女が居た。
「・・・・・・・・・・・・ふーん」
少女、佐倉杏子が見滝原の魔法少女であるさやかを見ていた。
「あれがこの街の新しい魔法少女ね・・・・・・」
そうつぶやきながら、ウエハースを食べる杏子、ただし展望台には杏子ひとりではなかった。
「本当に彼女と事を構える気かい?」
杏子にそう聞いたのは、キュゥベえだった。
「だってちょろそうじゃん、瞬殺っしょあんなヤツ、それとも何?」
キュゥベえの問いに答えながら振り向いた杏子、魔力付加した双眼鏡を戻して、ソウルジェムを掴んだ。
「文句あるっての? アンタ」
挑発的に笑いながらキュゥべえに問いかける杏子、しかし、キュゥベえは至って冷静にあることを伝えた。
「すべて君の思い通りにいくとは限らないよ、確かに君は美樹さやかよりは経験も豊富だし、実力では上回ってるよ、でも、この街にはもう一人魔法少女が居るからね」
キュゥべえの意味深な話に杏子は反応した。
「へぇ? 美樹さやかとマミ以外にいるのか? 何者なのそいつ」
杏子はキュゥべえに問いかけるが、でてきた言葉がーー
「僕にもよくわからない」
だった。
「ハァ? どういうことさ、そいつだってアンタと契約して魔法少女になったんでしょ?」
杏子はキュゥベえに再度質問した。
「そうとも言えるし・・・・・・そうとも言えないといえるね、あの子は極めつけのイレギュラーだ、どういう行動に出るか僕にも予想できない」
「ハン・・・・・・上等じゃないの、退屈すぎてもなんだしさ、ちったぁ面白みもないとねぇ」
残りのウエハースを食べ終えながらそう話を区切ろうとした杏子だったがーー
「そしてもう一人・・・・・・君にとっての障害がこの街にいるよ」
呼び止められるかのような形で杏子はキュゥべえの言葉に反応した。
「ハァ? まだいるのかよ? 誰よそいつ・・・・・・?」
杏子はキュゥベえに問いかけた。
「坂田銀八と言う人間の男さ」
「誰だよそれ、 男? どういうことさ?」
杏子は訳も分からなかった、人間の男が何故邪魔になるのか、皆目見当がつかなかった。
「彼については僕もまるで分からない、普通の人間のはずなのに僕が見えるなんて訳が分からないよ・・・・・・」
その言葉で杏子は驚いていた。
「キュゥべえが見える!? どういうことさ、あんたが見えるって言ったら、あんたと契約してるあたしら魔法少女と魔法少女の素養がある女しかいないはずだろ?」
杏子はキュゥベエに問いただしたがーー
「分からないのはそれだけじゃない、彼は巴マミが魔女に殺されそうになった時、彼は巴マミを救出しただけでなく、魔女に戦いを挑んだんだ」
キュゥベえのに聞かされた話の内容に杏子はまた驚いた。
「なんだよそれ!? 魔法少女を助けたのはおろか、魔法少女じゃないどころか普通の人間が魔女に戦いを挑むって、イカれてんのかそいつ!?」
「僕にも訳が分からないよ・・・・・・詳しいことはその時が来なければわからない、ただ、本当にこの街を君の思うようにしたいのなら、その二人の存在は邪魔になるだろうね」
キュゥベえの話の内容に驚きっぱなしの杏子は叫んだ分、少し冷静になった。
「はーん、つまり・・・・・・邪魔者は全員消しちゃえばいいんだろ?」
冷静さを取り戻した杏子はキュゥベえにそう聞いた。
「君にとってはそれが最善の策かもしれないね」
杏子は展望台の階段に向かっていった。
すべては、見滝原市を自分の縄張りにするために、魔法少女を倒すためにーー
そんな杏子はまだ知る由もなかった。
戦いに挑もうとしたイレギュラーな男『坂田銀八』に出会った時、彼女の運命が変わることを・・・・・・
かつて自分が犯した罪と向き合うことにーー
かつて失った物をもう一度背負うことにーー
そして、かつての師との和解と友と呼べる存在、そしてもう一人の師と呼んでも差し支えのない存在に巡り合うことに彼女はまだ知る由もなかった。
今回、些細なハプニングが起こったので投稿が遅れました。
ようやくさやか&杏子編に突入です。
括目してください。
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