銀時は運命を砕くことができるのか!?
注目の運命の分岐点です。
「人間の魂を甘く見るんじゃねーぞコノヤロー」
銀八は血を拭わず木刀をまっすぐ構え直してそういった時のことだった。
「・・・・・・」
マミは、ボロボロになりながら血を拭わずに立ち続け諦めない男の姿に驚愕しながら、今までのことを思い返していた。
自分の始まりは死にたくないという思いで魔法少女の契約を交わし、孤独の恐怖に怯え、涙を流しながら戦っていた。
そして、
それは孤独から抜け出したかった言い訳でしか無かった。
--自分はいったい何をやっているのだろうか? 魔法少女でもない普通の人間の
--自分は何が出来たのだろうか? 絶望を抱えこんで魔女になってしまった
--少なくともそれは怯えたり、最初から諦めて勝負を放棄することじゃない。
--ましてや自分を含めた魔法少女全員を道連れに死ぬことなどでは決してない。
--心は決まった。
「・・・・・・私も戦うわ」
「!」
ほむらはマミが戦意を取り戻したことに驚いた。
「へっ・・・・・・ようやく重い腰を上げやがったか重鎮さん」
銀時はからかい交じりにマミの復活を喜んだ。
「ごめんなさい・・・・・・それに」
――ようやくわかったのだ、今の私に出来ること・・・・・・自分がすべきことが。
「後輩を助けてあげるのは・・・・・・先輩の役目だもの!」
――今度こそ言える、浮かれた気分から発する言葉ではなく、本当の意味で・・・・・・。
――もう何も怖くない。
マミが復帰ののち前線に加わってからは戦況は大きく変わった。
彼女は得意の
加えて、魔法銃も魔力が続く限りは弾切れすることなく無限に具現化することも可能だ。
魔女の仕掛ける車輪での攻撃をさばくのに、これほど適した存在はほかにいないだろう。
攻撃が防がれる状況を見て魔女は断末魔のような咆哮を上げながら、遠距離の攻撃を完全に無力化されていると悟ったらしく、今度は手にしている巨大な剣で切りかかってきた。
「!」
マミが魔女が振り下ろした剣を回避しようとした時、二つの影が受け止める。
「・・・・・・残念だったな」
「得物を使って俺たちと戦おうなんざ百年早ェぞ」
「二人とも・・・・・・!」
マミに振り下ろされた剣は銀八の木刀と杏子の槍に防がれた。
「やるじゃねーかキンチョール、やればできる子じゃねーか」
「フフ・・・・・・これでも戦いの経験はそこそこあるの、あとキンチョールは止めて」
マミは自分の経験を自慢気に言いながら銀八に突っ込みを入れた。
魔女の戦いが始まってからマミの復活による戦況が変わるまでかなりの時間がたっていた。
だが一向に魔女の様子に変化はない。
「さ、さやかちゃん・・・・・・ケホッ・・・・・・!」
何度も叫んでいたせいでまどかの喉は潰れかけていた、それでもさやかの名前を叫び続ける。
何度も、何度も、魔女になった今でもまどかは親友である美樹さやかのことを心から信頼していた。
必ず自分たちに気が付いてくれるはずだと。
そしてーー。
「聞き分けがないにもほどがあるぜ・・・・・・さやか! アンタ・・・・・・信じてるって言ってたじゃないか! この力で人を幸せにできるって! 自分の選んだ道に後悔なんかしないって!」
「美樹さん! 私たちの声が聞こえないの!?」
「美樹さやか、あなたの願いは何だったのか・・・・・・忘れたわけじゃないでしょう!」
まどかだけではない、今となってはその場にいる全員が声を張り上げて呼びかけている。
それでも・・・・・・魔女の攻撃がやむ気配はない。
(頼むよ神様・・・・・・こんな人生だったんだせめて一度ぐらい幸せな夢を見させてよ・・・・・・)
杏子が心の中で呟いたそれは、過酷な運命と背負った彼女にしてはあまりにもささやかな願いだった。
そんな中だったーー。
「・・・・・・分かってんだよ、テメーがそう簡単に戻って来やしねェことなんざ」
息を切らしつつ、言葉を紡ぐ銀八を全員で見つめる、一体何を言っているのか分からず聞き耳を立てた。
「テメーは前におかしなことを抜かしやがったからな、自分にはもう戻る場所がねェだのなんだのと、だから俺たちがどんだけテメーの名前を叫ぼうが聞く耳も持たねェわけだ・・・・・・」
銀時は笑いながら言葉を紡いだ。
只可笑しかったのだ、単純なことに気が付いて
いなかったさやかのことが。
銀八は魔女に向かって真っ直ぐな目を向けながら、言葉を続けた。
「さやか、テメーが何を勘違いしているかは知らねーが・・・・・・戻る場所があるじゃねーか、笑っちまうほど近くに、手を伸ばせば簡単に届く距離によ・・・・・・」
それが
「今は俺たちがテメーの居場所だ・・・・・・戻ってきやがれ! さやかァァァァァァァ!」
***
さやかは自分の意識や距離感そして体も把握できない暗い場所にいた。
――ここはどこだろう、私は何をやっているんだろう?
さやかは周りを見渡そうとするがどこまでも辺りが暗い空間だった。
只あるのは、後悔と輝きだけしか思い出せなかった。
そしてかつて思いを寄せた幼馴染対する恋慕、在りし感動を夢見ていた、それ以外何も感じなかった。
――暗い、何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。
自分が今いる空間がさやかの存在を消していた。
そんな時、かすかに自分を呼ぶ声がした。
それは少しずつはっきりと聞こえてきた。
――声が聞こえた気がする、暗闇を照らす明るい光りを秘めた声が。
『さやかちゃん!』
――最初に聞こえたのは・・・・・・親友の声だった。
――でも、名前が思い出せない。
『あなたの願いはなんだったか・・・・・・忘れたわけではないでしょう!』
――次に聞こえたのは・・・・・・転校生?・・・・・・だったかな?
――顔がぼやけて思い出せない。
『美樹さん! 私たちの声が聞こえないの!?』
――今のは・・・・・・私が憧れた先輩の声・・・・・・。
顔と声ははっきりと思い出せた、でも名前が浮かばなかった。
『アンタ・・・・・・信じてるって言ってたじゃないか! この力で人を幸せにできるって! 自分の選んだ道に後悔はしないって!』
――これは・・・・・・最初は私といがみ合ってたあの子だよね。
――顔がハッキリと覚えていた。
さやかは自分を呼ぶ声の主たちを思い出していた。
――・・・・・・そっか、みんな来てくれたんだね、ありがとう。
――でも・・・・・・ごめん、私・・・・・・もう戻れないよ・・・・・・あんなに迷惑かけて・・・・・・自分勝手で・・・・・・もう私に居場所なんて・・・・・・。
さやかは自分の名を呼んでくれる声の主たちに感謝しつつも、後悔と申し訳なさから、暗闇に消えようとした。
――その時だった。
『今は俺たちがテメーの居場所だ』
その声はハッキリと響き渡り、銀色の光が見えたような気がした。
――――っ!
――――今の声は・・・・・・。
『戻ってきやがれ! さやかァァァァァァァァ!!』
――――先生。
声の主は先生と呼ぶ男の声、白髪の天然パーマで死んだ魚の目をしただらしなさが印象深い男の顔を思い出した時だった。
刹那、鈍い銀色の光が現れ、さやかの意識を包み込んだ。
そして、美樹さやかだったころの思い、それが次第に広がって、過ぎ去りし日々が記憶のひもで貫かれていき。
親友と憧れの先輩、転校生と最初にいがみ合ったけど気にかけてくれた少女の顔をはっきりと思い出した。
『せめて、さやかちゃんのそばにいられたらって・・・・・・私・・・・・・何もできないから』
――
『そんなことをしてもあなたの得になることなんて一つもないわ』
―ー転校生の声
『あんたも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる・・・・・・見てられないんだよ、そんなの』
―ー気にかけてくれたあの子。
『その道を歩む途中で・・・・・・決して折れたりしちゃダメよ』
――
『そんなにテメーを卑下するもんじゃねーよ』
――坂田先生の声。
さやかは自分の名を呼んでくれる声の主の顔を思い出した時悟った。
――どうして今まで気が付かなかったんだろう、今までの私は・・・・・・みんなからずっと守られていたことに。
そして、さやかを包み込んだ闇の空間から銀色の光が包み込み、意識と体の輪郭を取り戻した。
***
ふと、あれだけ激しかった魔女の攻撃が止まった。
突然のことに全員があっけにとられる。
「何だアイツ・・・・・・腹でも壊しやがったのか? ん?」
銀八は見当違いの見解をした時だった。
『撃って・・・・・・!』
銀八達の頭に声が響いた、それは聞き覚えのある少女の声だった。
「さやかちゃん!」
『これ以上みんなを傷つけるなんて私にはできない、だから・・・・・・!』
魔法少女たちは驚愕した。
キュゥべえが干渉していない純然たる奇跡が今まさに起こったのだ。
その声を聴いたとき杏子の口からは喜びの声でなくーー。
「ふざけんな! そんなことしたらアンタがどうなるか分かってんのかよ!」
危険性の指摘と焦りの声だった。
ただでさえ、魔女がさやかの意識を取り戻したこと自体があり得ない状況、それだけでも奇跡としか呼びようのないことだった。
しかし、杏子の言った通り、万に一つの可能性で魔女を元の魔法少女に戻せるのか判らない上、最悪さやかの意識は消滅してしまう上に魔女として死んでしまうかもしれない。
一か八かの最終手段だった。
杏子自身諦めきれないで挑んださやかを元に戻すこと手前で緊張が走った。
それでもーー。
『危険なのは分かってる・・・・・・でも、最期はみんなに賭けてみたいの』
意識を取り戻したさやかは覚悟を固めた上に確かめたかったのだ。
――本当に私はただの魔女になってしまったのか・・・・・・その答えを知るために。
『散々迷惑をかけちゃったけど、あと一度だけ・・・・・・私のわがままを聞いてくれないかな?』
「・・・・・・」
さやかのテレパシーを受けて銀八は少し思案した後、銀八はさやかにあることを聞いた。
「一つだけ確認するぜ、明日学校休みやがったら今学期の評定は全部二だからな」
『・・・・・・約束する・・・・・・必ず・・・・・・学校行くから!』
これでどうなるかは想像できなくなった。
だが、少なくともその力強い言葉からさやかの決意を感じ取れる。
「上等じゃねーか・・・・・・俺もテメーの魂に賭けるぜ」
次の瞬間、銀八は木刀を片手に魔女へと飛び掛かり、光のごとき一閃を魔女の顔面に食らわせた。
かつてない断末魔を上げながら魔女は倒れこんだ。
それと同時に周りを構成する結界も崩壊し始める。
「結界が消えてるということは・・・・・・魔女は・・・・・・!」
ほむらは結界の崩壊を確認したと魔女の死体に目を向けた。
「さ、さやかちゃんは・・・・・・さやかちゃんはどうなったの!?」
「わからねぇ・・・・・・けど、今の私たちには信じることしか出来ないだろ」
「美樹さん・・・・・・!」
まどかはうろたえながら心配し、杏子とマミは祈るしかなかった。
「・・・・・・」
銀八は魔女の死体を見ながら消滅を見守っていた。
すると、魔女の体からグリーフシードが放出される、結界が完全に消え去ったのはそれと同時だ。
「グリーフ・・・・・・シード・・・・・・!」
ほむらはグリーフシードを見て言葉が出なかった。
期待していた、心を取り戻したさやかの魂が再びソウルジェムとなって現れるのではないかと。
だが、現実に現れたのは何の変哲もない・・・・・・ただ一つのグリーフシード。
「嘘だろ・・・・・・こんなのって・・・・・・!」
すべての望みが絶たれる・・・・・・まさに絶望の空気が辺りに満ちた瞬間ーー魔女が落としたグリーフシードが青く輝いた。
「!?」
「こ、これは・・・・・・!」
グリーフシードが光を放つなど、数多くの経験がある彼女たちでも初めて見る光景だった。
徐々に強さを増していく光、目もあけていられないほどの閃光が走り全員が一瞬目をそらす。
再び開けたその時、グリーフシードは、粉々に砕け散ったはずのソウルジェムへと変化していた。
ほむらはすぐさまソウルジェムを拾い上げて確かめた。
「オイ、どうなんだ!? それは・・・・・・さやかの・・・・・・」
「ええ、間違いなく、美樹さやかのソウルジェムよ」
杏子の問いにほむらは頷き肯定した。
ほむらはさやかのソウルジェムをすぐにまどかに手渡した。
まどかはさやかの体の前に近づき傍までしゃがみ込んだ。
「ソウルジェムを持たせれば・・・・・・いいんだよね、ほむらちゃん」
まどかはほむらにそう聞いた。
「通常ならね・・・・・・でも今回ばかりは分からないわ」
ほむらは頷きながらも、困惑していた。
「な、なんでだよ・・・・・・鉄橋の時はちゃんと意識を取り戻したじゃないか!」
杏子は跨道橋でさやかと二度目の戦いの時、ソウルジェムの真実の際、さやかがソウルジェム喪失の際ほむらが回収してさやかの手に触れさせ、息を吹き返したのを思い出していたがーー。
「あれは肉体的に彼女が死んでまもなかったから・・・・・・でも今回は少し時間がたっているでしょう?」
ほむらが言ったようにさやかが息を吹き返したのは戻ってこれる距離だったことと、全走力で戻ってこれたことだった。
「・・・・・・」
「さやかちゃん・・・・・・!」
マミは祈るように見つめた。
目を覚ましてと願いを込めて、まどかはソウルジェムをさやかの手を握らせた。
「・・・・・・・・・・・・んっ」
ピクリと指が動き、閉じられていた瞼が徐々にあけられていく。
「あ・・・・・・あ・・・・・!」
まどかは息を吹き返したさやかを見て涙を流してた。
「・・・・・・まどか」
「さやかちゃん!!」
まどかはさやかに抱き着いた。
それは短いようで、果てしなく長い道のりだった、少女たちの再会。
「今の今まで眠りこけやがったのかオイ、どんだけ爆睡してんだテメーは」
「・・・・・・先生」
あきれ気味な声ながら笑った顔で迎えた銀八、さやかは銀八の顔を見た後ーー。
「よう、無事で何よりじゃないか」
杏子の勝気さとうれしさが混ざった笑みがーー。
「美樹さん・・・・・・あなたが無事で・・・・・・本当に良かった!」
マミの今にも泣きそうな、喜びが満ちた笑みがーー。
「ええ、私も二人と同じ気持ちよ」
一見無表情に感じる顔のほむらの声は少し温かみのある声でさやかを迎えた。
「・・・・・・」
さやかはなんと言えば良いか分からなかった、自分のせいであれだけ迷惑をかけ続けたのだ。
命の恩人と叫んでも差し支えない、それだけ大きな貸しを作ってしまった。
「・・・・・・・・・・・・みんな、その・・・・・ごめ・・・・・・」
――・・・・・・とりあえず謝ろう。
そう思い、謝罪の言葉を口にしようとした瞬間ーー。
「さーて、さやかの奴が休んでた理由も分かったことだし・・・・・・帰ーるぞ、お前ら」
「!」
さやかは困惑した、さやかの顔を見た銀八はあっけらかんとした顔で事もなく告げた。
「何言ってんだ、テメーは少し疲れてたせいで今の今まで寝込んでいた・・・・・・それを俺たち全員でたたき起こしに来た、ただそんだけだろうが」
さやかは驚いた顔で銀八を見ていた。
銀八の言葉を聞いたほむらは銀八の意図に気付いた。
「・・・・・・そうね、ただそれだけのこと・・・・・・迷惑なんてかけられてないわ」
「フフ・・・・・・そうですね」
「でも良かった、これでさやかちゃんも明日から学校に来れるね!」
ほむらに続いてマミとまどかは優しく告げた。
さやかはなにも言うことができなかった。
――この仲間たちは私を助けるために必死で戦っただけじゃなく私を助けた後でさえ気を使ってくれている。
今感じている感謝の意を伝えるにふさわしい日本語をさやかは知らなかった。
「・・・・・・・・・・・・」
「?」
気が付けば、杏子はすぐそばに立っていた、何か自分に言い含めるつもりだろうか?
さやかはそんな想像をしていたのだが、杏子の口から出た言葉はーー
「そういえば・・・・・・私、アンタにちゃんと自己紹介ってしてなかったよな?」
そういいながら、杏子は麩菓子をポケットから取り出し、さやかに差し出した。
「私は佐倉杏子、よろしくね」
さやかは差し出された麩菓子に驚いていた、杏子は次のことを告げた。
「ちなみに菓子はあの白髪から受け取った金で買ったやつだよ、万引きで手に入れた奴じゃないからな」
さやかにそう補足説明した杏子。
その杏子の様子を見たさやかは嬉し涙を流しながらーー。
「私は・・・・・・み・・・・・・美樹さやか!」
今までは一人で笑いながら照れ臭そうに、もう一人は泣きながら感謝の意を込めてーー。
さやかは杏子に差し出された麩菓子を受け取った。
「・・・・・・ひとまずは、めでたしめでたしってか・・・・・・」
その様子を見ると
その時、だった。
「おいアンタ」
杏子に呼び止められた。
銀八は後ろに振り返らず、足を止めた。
「アンタのおかげで、さやかを助け出せた、ありがとな」
杏子は照れ臭そうにそう言った。
銀八は振り返らずに右手を後ろに捻りながら手を振って後にした。
杏子は銀八の背中を見て本当に伝えたかったことを心の中に告げた。
(坂田銀八、アンタのおかげで、かつて失った大切なもの、拾えたよ)
杏子たちに続いてさやかとまどか、マミも銀八の背中を見送った。
「私は坂田先生に付き添って行くわ、彼一番重傷だから」
そう言って、ほむらは銀八の後を追った。
残った四人は話し合った末マミのマンションに泊まることにした。
夜遅くに帰ってきたまどかとさやかの家族に心配をかけないためと、余計な詮索を避けるための手段だった。
まどかとさやかはスマホで連絡した後、それぞれの家族から雷が落ちたのは言うまでもなかった。
取り合えず、さやかを救いだせました。
ほとんど原作元のエレファント速報をベースにオリジナルをちょくちょく入れました。
出来る限り辻褄合わせが出来たか不安ですが、ラストまで書かせてもらいました。
次に掲載は何故さやかを助け出せたのかを説明掲載を書く予定です。
ご意見ご感想、お待ちしています。