鹿目まどか編
魔女から魔法少女に戻すことができたまどか達、その後銀八とほむらはそのまま現地解散となった。
残りの四人は、マミのマンションに泊まることになった。
***
「ごめんなさい、サイズは合わないかもしれないけど寝間着は渡しておくわね」
マミは三人に寝室にしまってある寝間着を渡した。
「ありがとうございます。マミさん」
まどかはマミに礼を言って寝間着を受け取った。
「ごめんなさい、マミさん。 あたしを助けてくれた上に、部屋に泊めてもらっちゃって」
「いいのよ、美樹さんが助かったのは私達には嬉しいことなの」
「しっかし、この部屋に入るのはあたしがへましてマミに助けられて以来かな」
さやかとマミが会話している間に、杏子はそうつぶやいた。
マミの部屋に入るのは冬の季節に魔女と戦いボロボロに倒れて、マミに拾ってもらって以来だった。
さやかは、杏子のつぶやきを耳にしてあることを思い出していた。
「そっか、杏子はマミさんの弟子だったんだっけ・・・・・・」
「元な・・・・・・」
さやかの言葉に杏子はそう答えた。
「そういえば、杏子ちゃんは何時からマミさんと組んでたの?」
まどかは杏子とマミが組んでた時期を聞いていた。
「あぁ、そっかアンタには話してなかったな。 アンタたちと出会う前にマミと組んでたことと、別れたことを・・・・・・」
杏子はまどかに自分とマミの間にあったことを話していなかったことを思い出していた。
「そうだな、アンタにも話しておくか・・・・・・あたしがキュゥべえに契約したこととコンビを解消しちまった経緯も・・・・・・」
杏子は目を伏せながら、話す決心をした。
「杏子っ、いいの? その話をしても・・・・・・」
さやかは杏子にそう聞いた。
杏子の契約の経緯とその契約によってもたらされた結果を知ってたため、さやかは心配した。
「いいさ、あんたのほかにマミも知ってるから」
「え?」
杏子の言葉に驚き、さやかはマミの顔を見た。
マミは、さやかの顔を見て頷いた。
「えぇ、というよりニュースで知ったの・・・・・・佐倉さんのご家族の・・・・・・」
それ以上マミは言えなかった。
その様子を見て、まどかは後悔した。
「ごめん杏子ちゃん、私・・・・・・」
まどかは杏子の心に踏み入ったことに謝った。
「いいさ、この話は坂田銀八も知ってるから」
「「「坂田先生も?」」」
杏子の言葉に三人は驚いていた。
「その話をする前に、まどかにあたしのことを話させてくれない? その後に銀八の話をするから」
そう言ってさやかとマミを宥め、杏子は自分の過去をまどかに話した。
魔法少女に成った経緯とマミとの関わり、そして
「ごめん杏子ちゃん、私・・・・・・」
「いいさ、それに今は不思議と心持が軽いんだ。 さやかを助けることができたからかな? 今は前を向いて歩けてるような気がするんだ」
まどかの謝罪に杏子は落ち着きのある声で話した。
「ちなみに、銀八があたしの過去を知ってるのはさやかに聞かせた廃教会の外で立ち聞きしちまった流れで・・・・・・」
「ちょっと待って、何で坂田先生は立ち聞きしたの?」
杏子の会話の流れでさやかが待ったをかけた。
さやかは何故銀八が立ち聞きした流れになったのか分からなかった。
しかし、疑問を口にしたことで思い当たることを思い出したかのようにさやかは頭を抱えた。
「あたしが、休んだ時か・・・・・・」
さやかは廃教会での杏子の過去を聞いた流れで、思い当たることはさやかが魔法少女の秘密の一つを知った時以降だったこと、そして杏子が様子を見に来た時の流れで銀八はそれを目撃して後を追ったのだと悟った。
「あたしは気にしちゃいないよ、むしろある親子の話を聴いたんだ。 その後で考えたよ、本当にあたしは、親父・・・・・・父さんを見ていたのかなって・・・・・・」
「ある親子?」
さやかは杏子の話の流れで出てきた『ある親子の話』に食いついていた。
「あたしは
そう言いながら杏子は銀八から聞かされた話を三人に語った。
***
「そっか、坂田先生がそんなことを・・・・・・」
杏子から聞かされた『ある親子の話』を聞き終えたさやかは感慨深くつぶやいた。
「血がつながっていても殺しあう親子がいるってどういうことなんだろう?」
まどかは話の中に出てきた『血がつながっていても殺しあう親子』に困惑していた。
「まぁ、最期に坂田先生が言ってた『どんな場所だろうと、どんな境遇だろうと、
マミは杏子に言った言葉に共感していた。
残酷な真実を知り、乗り越えたマミにしか言えない言葉だった。
「そうですね」
まどかもマミの話には賛成していた。
さやかも杏子も静かに頷いた。
そんな時だった。
「入っていいかい? 話があるんだ」
聞き覚えのある声に四人は振り返った。
ハッキリ言ってもいいくらいに顔も合わせたくもない存在がーー。
部屋の窓の外にキュゥべえがいた。
「キュゥべえ・・・・・・」
四人は顔を合わせながらキュゥべえを入れるべきか入れないべきかを話し合っていた中で結局入れることにした。
たとえ追い出したとしても、また話しかけてくると踏んでいたからだ。
「ほむらちゃんが言っていたこと本当なの?」
まどかはキュゥべえにそう尋ねた。
「訂正するほど間違ってはいないね」
「じゃああなたは、みんなを魔女にするために魔法少女に?」
まどかの問いかけにほかの三人は緊張が走った。
「勘違いしないでほしいんだが、僕らは何も人類に対して悪意を持っているわけじゃない、すべてはこの宇宙の寿命を延ばすためなんだ」
「宇宙の寿命?」
マミは困惑しながらキュゥべえの話を聴いていた。
「君たちはエントロピーという言葉をしってるかい?」
「エントロピー?」
さやかがキュゥべえの言葉を復唱するようにつぶやいた。
何を言っているのか分からないようだった。
その様子にかまわずキュゥべえは話を続けた。
「簡単にたとえると焚き火で得られる熱エネルギーは木を育てる労力と釣り合わないってことさ、エネルギーは形を交換するごとにロスが生じる。 宇宙全体のエネルギーは目減りしていく一方なんだ」
いきなり宇宙全体と言われて四人は話が追い付かなくなっていた。
それでも、キュゥべえはかまわずに話を続けた。
「だから僕たちは、熱力学の法則に縛られないエネルギーを探し求めてきた、そうして見つけたのが魔法少女の魔力だよ」
「テメェはいったい・・・・・・」
杏子が怒りを込めてそうつぶやいた。
「僕たちの文明は知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した。 ところがあいにく当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった」
キュゥべえは自分たちの星の技術を説明した。
まるで、自分たちの発明が宇宙に貢献していると云わんばかりにーー。
「そこでこの宇宙の様々な異種族を調査し君たち人類を見出したんだ。 人類の個体数と繁殖力を鑑みればーー一人の人間が生み出す感情エネルギーはその個体が誕生し成長するまでに要したエネルギーを凌駕する、君たちの魂はエントロピーを凌駕するエネルギー源たり得るんだよ」
四人は黙ってキュゥべえの話を聴いていた。
いや、理解できない上にしたくもなかった。
それでもキュゥべえの話は終わらなかった。
「とりわけ最も効率がいいのは第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移だ、ソウルジェムになった君たちの魂は燃え尽きてグリーフシードへと変わるその瞬間に膨大なエネルギーを発生させる、それを回収するのが僕たちインキュベーターの役割だ」
そう話し終えたキュゥべえ。
今の話において、宇宙規模の話の流れで追いついていなかったが、分かっていることがあった。
「・・・・・・私たち消耗品なの? あなたたちのために死ねっていうの?」
まどかは今までの経緯で魔法少女の戦い、その過程での秘密を知っていき、その末路も目の当たりにした。
そして、まどかの中に怒りの炎が燃え上がっていた。
その怒りはーー。
「この宇宙にどれだけに文明がひしめき合い、どれほどのエネルギーを消耗しているか分かるかい? 君たち人類だっていずれはこの星を離れて僕たちの仲間入りをするだろう、その時になって枯れ果てた宇宙を引き渡されても困るよね? 長い目で見ればこれは君たちにとっても得になる取引のはずだよ」
キュゥべえの発言によって爆発した。
「バカ言わないで・・・・・・そんな訳の分からない理由で、マミさんやさやかちゃん、杏子ちゃんがあんな目にあって・・・・・・坂田先生が居なかったら死んでたかもしれないのに、あんまりだよ、酷すぎるよ」
まどかは静かな声で怒りをあらわにした。
「僕たちはあくまで君たちの合意を前提で契約してるんだよ、それだけでも十分に良心的なはずなんだが・・・・・・」
「みんな騙されただけじゃない!」
まどかの怒号で三人はソウルジェムを取り出しーー
マミはハンドガン型のマスケット銃、さやかは短刀型のサーベル、杏子は小型の短槍に変形させキュゥべえに突き出した。
「あなたは私たちの命を何だと思ってるの」
マミはそうキュゥべえに問い詰めた。
「騙す、という行為自体僕たちには理解できない、認識の相違から生じた判断ミスを後悔するとき、なぜか人間は他者を憎悪するんだよね」
「確かに取り返しのつかない判断ミスなのは認めるさ、でも少なくともテメーの行為は結果的にだましてるのと同じなんだよ!」
「そのうえまどかに契約を持ち込み続けるなんて、これ以上まどかに近づけさせるわけにはいかないよ」
「・・・・・・あなたの言ってることついていけない、全然納得できない」
さやかとまどかはそれぞれの心情を口にした。
しかし、キュゥべえはーー。
「君たち人類の価値基準こそ僕らは理解に苦しむなぁ、今現在で69億人、しかも4秒に10人ずつ増え続けてる君たちが、どうして単一個体の生き死ににそこまで大騒ぎするんだい?」
とまどか達に告げていった。
まどか達はこうまで来ると、人類と相容れない存在だと悟った。
「そんな風に思ってるならやっぱりあなた、私たちの敵なんだね」
まどかはキュゥべえの言葉を受け入れないと云わんばかりにそう告げた。
「これでも弁解に来たつもりだったんだよ、君たちの犠牲がどれだけ素晴らしいものをもたらすのか理解してもらいたかったんだが・・・・・・どうやら無理みたいだね」
「・・・・・・当たり前でしょ」
まどかはキュゥべえの言葉に関心示さず拒絶した。
キュゥべえは切り替えるようにあることを告げた。
「まどか、いつか君は最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう、そのとき僕らはかつてないほど大量のエネルギーを手に入れるはずだーー」
キュゥべえはいったん区切りもう一つの要件を告げた。
「美樹さやかが、魔女から魔法少女に戻ったこと自体は本来不可能なはずだけど坂田銀八の存在は興味深い、それについても僕らにとっても有益だ」
「!?」
「何、だと!」
さやかは驚愕し、杏子も同じ心情のためそうつぶやいた。
「この宇宙のために死んでくれる気になったら、いつでも声をかけて、待ってるからね」
そう言ってキュゥべえはマミの部屋から去っていった。
「ふっざけんな!! あたしらをこんな目にしたのにも飽き足らず、まどかを魔法少女にすることを諦めてねーなんてタチ悪すぎだろ!!」
杏子はキュゥべえの話を統合して、怒りが込みあがっていた。
その時さやかはあることに気付いていた。
「もしかして、私の契約をきっかけにまどかの契約を誘発させるつもりだったんじゃ・・・・・・!」
さやかの推測を聞いたとたん、まどかはキュゥべえの行動を振り返っていた。
マミとお菓子の魔女の戦い、さやかと杏子の殺し合い、そしてさやかを元に戻そうとした時にさえキュゥべえは言葉巧みに契約を迫っていた。
「でも、今回は鹿目さんを契約するだけではなさそうね、さっき言った美樹さんを元に戻せたことはキュゥべえにはありえなかったことだって」
マミは今までの話と今回のさやかの魔法少女に戻せる事は本来ありえないことだと言っていた、つまりーー。
「坂田先生を・・・・・・利用しようとしてる?」
まどかはふとそうつぶやいた。
「明日転校生に、いや・・・・・・ほむらに今回あったことを話そう」
さやかは今回来たキュゥべえの話を明日の学校でほむらに話すことを三人に提案した。
その提案に全員が頷いた。
今回の話は最終決戦前の話をまどか視点から始まりました。
フィルムブックとザ・ディファレントストーリーを総動員して書かせてもらいます。
次は暁美ほむら編が味まります。
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