巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようーございます!
そして、祝い!10話~(*´Д`)


10話 阻止

現在の迷宮最高到達階層は六十五階層であるが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだ。私達は戦闘経験こそ少ないものの、全員がチート持ちなので割かしあっさりと二十階層へと降りることができた。

 

もっとも、迷宮で一番恐いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多くあるのだ。

 

この点、トラップ対策として【フェアスコープ】というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上は【フェアスコープ】で発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要。

 

従って、私達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからだと言える。メル団からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

もっとも、ソレを用いた所で檜山がやらかすのだが・・・いや、用いる前にやらかすんだった。

 

「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」

 

メル団のかけ声がよく響く。

 

ここまで、ハジメさんは特に何もしていない。一応、騎士団員が相手をして弱った魔物を相手に訓練したり、地面を錬成して落とし穴にはめて串刺しにしたりして、一匹だけ犬のような魔物を倒したが、それだけだ。基本的には、どのパーティーにも入れてもらえず、騎士団員に守られながら後方で待機していただけである。同じ生産職である私は弓矢で魔物をしとめるものだから羨ましい・・・という視線を頂戴し、居心地が悪い。

 

それでも、私の魔力感知の反応がほんのちょっとずつ増えてる事から、実戦での度重なる錬成の多用で魔力が上がっている様である。

 

私も錬成で足止めとか落とし穴を多用したいが、ここでハジメさんの面子を潰すのはどうかと思うので、目立ったことはしていない。だが、今回の為に用意した錬成の魔法陣を刻んだシュタル鉱石製の鉄板を仕込んだ特殊な靴で、地中深い場所に錬成を掛けて空洞を作ったりして鍛錬している。以前、ハジメさんは錬成に役立つアーティファクトは無いと言われて、錬成の魔法陣を刻んだ手袋を渡されていた。それの靴版であり、わざわざ地面に手を触れずとも錬成が可能なのである。これと似た様な事を魔王版ハジメさんがやっていたのを参考にした形だ。

 

傍目には唯矢を射っているだけにしか見えないが、私もバレない様にハジメさんと似た様な事をやっているのだ。

 

小休止に入りると香織ちゃんがハジメさんの方を見て微笑んでいる。

 

昨夜に言われたであろう”守る”という宣言通りに見守られているように感じたのか、気恥ずかしくなり目を逸らすハジメさん。若干、香織が拗ねたような表情になる。それを横目で見ていた雫が苦笑いし、小声で話しかけた。

 

「香織、なに南雲君と見つめ合っているのよ? 迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

 

からかうような口調に思わず顔を赤らめる香織。怒ったように雫に反論する。

 

「もう、雫ちゃん! 変なこと言わないで! 私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」

 

「それがラブコメしてるって事でしょ?」と、雫は思ったが、これ以上言うと本格的に拗ねそうなので口を閉じる。だが、目が笑っていることは隠せず、それを見た香織が「もうっ」と呟いてやはり拗ねてしまった。

 

その時。不意にハジメさんが背筋を伸ばす。檜山を見ると、凄い表情でハジメさんを睨んでいた。ハジメさんが視線の主を探そうと視線を巡らせると、途端に元の顔に戻る。でも、その瞳の奥に潜む闇は霧散しない。

 

深々と溜息を吐くハジメ。香織ちゃんの言っていた嫌な予感というものを、ハジメさんは感じ始めていた。

 

一行は二十階層を探索する。

 

迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通らしい。現在は四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もない。二十階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。

 

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

すると、先頭を行く光輝達やメル団が立ち止まった。

 

とうとう、例のイベントが始まる。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メル団の忠告が飛ぶ。

 

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

メル団の声が響く。史実同様に光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。来る!

 

直後、

 

「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」

 

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法“威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 

ロックマウントはその隙に突撃するかと思えばサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで!咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。香織ちゃん達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。

 

しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 

なんと、投げられた岩もロックマウントだったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織ちゃん達が「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。

 

「こらこら、戦闘中に何やってる!」

 

慌ててメル団がダイブ中のロックマウントを切り捨てる。

 

香織達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ、顔が青褪めていた。

 

そんな様子を見てキレる若者が一人。正義感と思い込みの塊、我らが勇者(笑)天之河光輝である。

 

「貴様・・・よくも香織達を・・・許さない!」

 

気持ち悪さで青褪めているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて!と、なんとも微妙な点で怒りをあらわにする光輝。それに呼応してか、彼の聖剣が輝き出す。【天翔閃】の発動予兆!それを放つと知っていた私は、

 

「万翔羽ばたき、天へt―――待って天之河さん!【箭炎】!・・・へっ?」

 

(笑)を止めた。

 

そして、叫ぶと同時に、事前詠唱していたオリジナル魔法(と言っても、矢に炎を纏わせただけの実際には火力の高い唯の【火矢】)を放った。私の貰った弓のアーティファクトは放った矢を誘導できる。なので、放たれた魔法(+矢)を勇者の攻撃を注視していたロックマウントの死角から突撃させた。首を狙ったが直前に気付かれ、咄嗟に躱そうとしたロックマウントの肩に命中。突き刺さった箇所から炎が噴き出た。

 

炎に気を取られたロックマウントの隙を、逸早く復活した雫ちゃんが縮地で接近し、抜刀。首が宙を舞った。

 

その間、勇者(笑)はポケっと間抜け面を晒していた。




さぁ・・・史実と異なって来ましたねぇ・・・
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