巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
「・・・確か、綾瀬さんだったかな?・・・何で俺の攻撃を止めたんだ?」
不満そうな表情で、私を尋問してくる勇者(笑)さんにご都合解釈されない説明は難しいけど、そんな時は周りの生徒―――特に大切にされている香織ちゃん達を巻き込むのが吉。
「天之河さんはさっき【天翔閃】を使おうとしたよね?そんな高威力の大技を、この狭い洞窟の中で使ったらどうなる?きちんと連帯すれば倒せる相手に明らかなオーバーキル・・・しかも、その余波は洞窟に直撃する。それでもし崩落なんて起きちゃったらどう責任取るの?最悪、巻き込まれて此処に居る全員死亡だよ?しかも、人間族を救うはずの君による考え無しの攻撃に巻き込まれる形の。」
「そ、それは・・・」
自身の攻撃により味方も巻き込んで殺してしまうと想像したのか、顔が青くなった。それは、この場に居た生徒たちも同様であり、生気が無くなっていく。皆想像したのだろう。自身が降り注ぐ大岩に潰され、地面に赤い花を咲かす事になるところを。そして、その想像が、あと一歩の所まで迫っていた事を。
私が止めなくても崩落なんて発生しないが、
「天之河さんは勇者として、私達はその一行として人間族を救うんでしょう?ここで私達が全員生き埋めになったら、地上の人々が悪しき魔人族に虐殺されちゃうよ?」
「・・・」
何かを言いかける勇者を先制して黙らせる。
「アヤセの言う通りだ。こんな狭い所で使う技じゃあない。直前にアヤセが止めてくれたおかげで崩落の危機は去ったから、まぁ今回は不問としよう。お前さんの気持ちも分からんでもないがな・・・次回からは状況を把握し、考えてから行動するようにな。」
「はい・・・」
メル団のお叱りに若干沈んだ声で、返事を返す光輝。香織ちゃん達が寄って来て苦笑いしながら慰めに入った。
その時、
「俺の浅はかな行動が君たちの命を危険に晒してしまった・・・皆、ごめん!綾瀬さんも、止めてくれてありがとう!これからはきちんと状況を見極めながら行動する!」
光輝が頭を下げた。
私が【天翔閃】を止めたことにより、史実とは異なった展開を迎える事となる・・・
* * * * *
ロックマウントとの戦闘も無事に終わり、一行は二十一階層へと至る階段を発見した。これで、今日の迷宮攻略は終わりであり、これから地上へと帰還する事となる。初めての迷宮攻略の目標地点に到着したことにより、生徒たちが安堵の溜息を吐く中、その緩みだした気にメル団が喝を入る。
「こら、お前たち!気を抜くのはまだ早いぞ!まだ迷宮攻略は終わってない、きちんと地上に帰還するまでが迷宮攻略だ!」
小学生の遠足のようだ・・・なんて感想を抱いていると、直ぐに引き返す事となる。【天翔閃】未遂付近の場所を過ぎる際、私はある技能を発動し―――見つけた。そこを記憶すると、何事も無かったかのようにみんなと一緒に歩く。そこから数百メートル離れた地点に存在した広場で小休憩が取られた。これを利用する手はない。
「団長・・・」
「ん、アヤセか。どうした?」
「その・・・お、御花を摘みに行きたいのですが・・・」
本当は尿意なんて無いけど、若干内股気味になってソレっぽく演出。ここで深く追求して来れば女子の好感度はダダ下がりだ。メル団には空気を読んで貰おう。
「お、おう、そうか・・・あまり離れるなよ?彼女たちに護衛を頼むか?」
「流石に同性でも恥ずかしいので、要らないです。一応、魔力感知で周囲警戒を行いますから・・・」
許可を貰い、私は二十一階層階段の方へと引き返した。
* * * * *
途中から走り、記憶した所まで戻ってくると、すかさず技能―――錬成[+鉱物系探査]を発動する。記憶通りの場所に存在するのを確認すると、【錬成】を発動してソレの周りの岩を退けた。下から覗き込まないと見えない位置にあるソレ―――転移トラップ・グランツ鉱石が確認できる。触れないと発動しない為に何も起こらないが、時限爆弾を解除しているようで緊張した。
「さて、着替えますか」
私は、この時の為に用意した装備を次々取り出し、身に着けて行く。ウォルペンさんが調達してくれた貴重な鉱石もふんだんにあしらった実用性超重視な一品ばかり。これから、ちょっとしたミスが死につながる世界に飛び込もうとしてるのに、オシャレなんかに気を使うなんて、そんな事出来ない。全ては生き残る為の合理性と実用性だ。
手作り感満載のハーネスを着こみ、大き目のバッグを背負うと、準備完了。後は・・・
「ごめんね、皆・・・」
先程来ていた服をナイフで刻み、引き千切ってボロボロにすると、異界収納から赤い液体の入った瓶を取り出す。適当にボロ着を捨てると、その上から赤い液体―――この日の為に用意して置いた私の血を振りまいた。ぱっと見、魔物に殺されたか食われたか、はたまた重傷を負いながらも逃げ出したかのように、二十一階層の方へとポタリポタリ、血を垂らして工作。支給されたナイフを折り、刃先を壁に突き刺してグリップを適当に転がしておく。あと、弓矢も3本ほど、適当な場所に突き刺しておいた。
晴香の先程の謝罪は、ハジメが奈落に落ちて死んだ事を、自分で再現する為におこなう工作の事と、ここで私が死んだと勘違いさせてクラスメイト達の動揺を誘う行為の事、ここに来て親しくなった香織ちゃん達を心配させてしまう事、多大なる迷惑をかけてしまう事に対してだ。
しかし、私がハジメさんの代わりに死ぬこととなっても、檜山が次に起こす行動が分からない。恵里の計画だって、初めはハジメさんを誘おうとしていたらしい。全ては、私が【天翔閃】を止めた時から狂い始めている。もう、この歯車を止める事は出来ない。
「すぅ~・・・はぁ~・・・」
工作も終わり、一度深呼吸して気持ちを入れ替える。
「よし・・・行こう」
手を伸ばした先は、例のグランツ鉱石。ひんやりとしたグランツ鉱石に触れた瞬間。魔法陣が出現し、瞬く間に部屋全体へと広がり輝きを増した。その魔法陣は、放課後の教室で見た召喚の魔法陣そっくりであり―――部屋の中に光が満ち、私の視界を白一色に染める。と同時に、一瞬の浮遊感が襲った・・・
* * * * *
私は空気が変わったのを感じた。次いで、地面にドスンと言う音と共に叩きつけられる。音は大きくとも、上昇したステータスにより痛みはほとんど感じられず、即座に立ち上がって周囲を警戒。見た感じ、柵や縁石の無い巨大な石造りの橋の上であり、此処がハジメさん達が意図せずやって来た、奈落に繋がる65階層・・・
思わず見入りそうになったが、直ぐに魔物が湧くと思い出したので、今身に着けている全装備の目視点検を開始。すると、橋の両サイドから赤黒い魔力の奔流と共に魔法陣が出現したのは同時だった。
赤黒い、血色にも見える不気味な魔法陣は、一度ドクンっと脈打つと、一拍。大量の魔物を放出し出した。階段側の小さな魔法陣からは骨格だけの身体に剣を携えた魔物であるトラウムソルジャーが溢れる様に湧く。その数は、ほんの数十秒で百体を優に超えた。
反対の通路側に出現した10m級の魔法陣からは、他の魔物とは明らかに一線を画す、トリケラトプス似の魔物。嘗て、最強とまで謳われた冒険者でも歯が立たなかった伝説の魔物であり、化け物。ベヒモスである。
圧倒的な威圧感がひしひしと伝わり、寒くも無いのにぷつぷつと鳥肌が立つ。冷や汗も出てくる中、漸く最終点検が終わった。
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!?」
徐に大きく息を吸うと、それが開戦の合図だと言うかの様に凄まじい咆哮を上げた。今の私では手も足もでない強大な敵から向けられる高圧的な殺気に、思わず震えそうになるのを如何にか堪えると、死の恐怖に打ち勝てるように大きく息を吸って、走り出した。
そして、
「アディオス、ベヒモスッ!!!」
叫び、飛んだ。
勿論、橋の下―――奈落目掛けて。
侵入者である対象(晴香)が、自ら死にに行った(と感じた彼等)は、お互いに硬直した。そして、
「グ、グルゥ???」
「コツ、コツ??」
※訳
俺達、登場しちゃったけど、この後どうすんの?
さ、さぁ?
見たいな会話(?)をして立ち尽くすしか無かった。
この後、彼等がどうなったかは、知る者はいない・・・
工作とか必要ないんじゃね?と思う人も居るかもしれませんが、ハジメさんに代わる主要人物たちと数週間ですが関わった”友達の死”として、勇者一行の歩む歴史を、ハジメさんの死(死んで無いけど)によるショックを与え、史実と同じに近い道で歩ませるためです。
晴香が自分を殺したことにして香織ちゃん達を傷つけるとか、狂ってる・・・と思うかもしれませんが、晴香自身の目的の為に仕方なくですからね。半分は狂ってると見て良いでしょう。
それと、アンケートの結果ですが、【どちらでもいい】の圧倒的な投票数で霞みましたが、必要の方に多く意見が寄せられていた為、注意書きを行う事にします。