巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます。
コロナに気負付けて!


14話 覚醒

「あが、ぐぅう、うぇっ・・・おぇっ」

 

酷い匂いと味に何度も吐き戻すけれども、神水と一緒に無理矢理胃へと押し込む。気分が最悪に悪い。余りの気持ち悪さに思わず涙があふれて来るけど、その食事を止めることはしない。今は無心で食べ続けるのみ。

 

どれくらいそうやって喰らっていたのか、神水を飲料代わりにするという聖教教会の関係者が知ったら卒倒するような贅沢をしながら、用意した魔物肉を全て食べきると、晴香の体に異変が起こり始めた。

 

「アガッ・・・き、来たァッ!?」

 

突如全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。魔物肉が、晴香の体内の細胞を猛烈な勢い破壊しているのだ。耐え難い痛み。自分を内部より破壊されていく。くぼ地に溜まった神水に顔を突っ込み、無我夢中でそのまま飲みこむ。

 

直ちに神水が効果を発揮し痛みが引いていくが、しばらくすると再び激痛が襲う。

 

「うグゥウウウッ―――あがぁぁあああぁアああッ!?」

 

女の子が決して上げてはならない絶叫が、ここ拠点内部に反響する。

 

晴香の体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクンッ、ドクンッと体全体が脈打つ。至る所からミシッ、メキッという破壊音さえ聞こえてきた。しかし次の瞬間には、体内の神水が効果をあらわし体の異常を修復していく。修復が終わると再び激痛。そして修復。何度も意識が飛びそうになったが、神水の効果で気絶もできず、名状しがたい痛みにひたすら耐える。

 

すると、晴香の体に変化が現れ始めた。

 

まず髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みのせいか、それとも別の原因か、日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。

 

次いで、筋肉や骨格が徐々に太くなり、体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。超回復という現象がある。筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象で、骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増すらしい。

 

今、晴香の体に起こっている異常事態も同じである。

 

何度も叫び、藻掻き、のた打ち回る。どれだけ身体の破壊が進んでも、神水により破壊された場所から片っ端に修復されてゆく。その結果、肉体が凄まじい速度で強靭になっていく。

 

壊して、治して、壊して、治す。常人であれば既に死んでいるかもしれない、この痛みを、晴香は耐え続けた。それは単に、ユエに会いたいという唯一つの願いの為に。

 

脈打ちながら肉体が変化していく。

 

やがて、激痛を伴う脈動が収まり晴香はぐったりと倒れ込んだ。その頭髪は真っ白に染まっており、服の下には今は見えないが赤黒い線が数本ほど走っている。まるで蹴りウサギや二尾狼、そして爪熊のよう。晴香の右手がピクリと動いた。閉じられていた目がうっすらと開けられる。焦点の定まらない瞳がボーと自分の右手を見る。やがて地面を掻くようにギャリギャリと音を立てながら拳が握られた。

 

晴香は、何度か握ったり開いたりしながら自分が生きていること、きちんと自分の意思で手が動くことを確かめると脱力した。

 

「かひゅ・・・かひゅ・・・・・・けほっけほっ・・・うぁぅ・・・やったよ、私・・・」

 

疲れ果てた表情だが、その目は柔らかい。

 

しばらくそのまま休むと、立ち上がった。視界には黒から白色へと変色してしまった髪が映る。【異界収納】から手鏡を取り出せば、其処に移るのは白髪紅眼の美少女。以前であれば、10人中3人は『まぁ可愛いんじゃない?』という平均的?な顔面偏差値であったが・・・今は10中9人は確実に『可愛いっ!』と太鼓判を押す容姿となっている。如何やら顔の骨格も変わってしまった様だ。

 

そして身体の変化だが、体が軽く、力が全身に漲っている気がする。途方もない痛みに精神は疲れているもののベストコンディションといってもいいのではないだろうか。腕やお腹を見ると明らかに筋肉が発達している。しかし、ガチガチの痩せマッチョレベルではなく、スラっとしていて女の子らしい丸みがある事には変わりなかった。ボディービルダーの様なガチムチに成らなくて心の底から安堵の溜息を吐いた。

 

身長も伸びている。以前の晴香の身長は158cmだったのだが、現在は167cmと、実に10cm近く高くなっている。

 

ステータスプレートを確認しよう。

 

===========================

綾瀬春香  17歳 女 レベル:7

 

天職:錬成師

 

筋力:320

体力:350

耐性:300

敏捷:290

魔力:860

魔耐:860

 

技能:錬成

   [+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+イメージ補強力上昇]

   弓術

   [+命中率補正]

   火属性適性

   [+効果上昇]

   土属性適性

   [+効果上昇]

   全属性耐性

   魔力操作

   魔力感知

   胃酸強化

   纏雷

   言語理解

   異界収納

   [+重量無制限][+内部時間停止]

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「おぉ~・・・」

 

ステータスが軒並み異常に上昇している。既にハジメさんを二倍近く超えており、きちんと技能も三つ増えている。以前は17レベルであった晴香であったが、レベルが7に低下した。レベルはその人の到達度を表しているので、晴香の成長限界も上がったようだ。

 

体内に感じる違和感は、魔力の事だろう。この違和感を動かそうと集中してみれば、その違和感の正体が手元に集まり、錬成の手袋の魔法陣に宿る。そのまま錬成を発動すれば、あっさりと地面が盛り上がった。晴香は魔物の特性である”魔力の直接操作”技能名で【魔力操作】を取得していた。何とも奇妙な感覚だ。しかし、とても便利である。今までは必ず【錬成】と詠唱していた為、その面倒な行程を必要としない。

 

ハジメさんは魔法適性が0だったために錬成や技能以外には使ってなかったが、晴香には魔法適性が存在するので、詠唱や魔法陣無しでの発動も可能となった。陣や詠唱なしでの魔法行使はユエと同じである。一緒だ。一方的な思いだが、好意を向けている相手と同じ【魔力操作】を得られたのは嬉しい。

 

晴香は次に【纏雷】を試す。

 

魔物の使う固有魔法はどれもイメージが大切らしく、漠然としたイメージでは発動しない。魔法陣に式を刻み発動する事の出来ない魔物ならではの技だろう。その分、人間は明確なイメージは兎も角魔法陣の式を大量に書き、それに必要な魔力さえあればある意味思い通りの魔法を発動できる。逆説的に言えばイメージさえ出来れば即座に発動できるはずの魔法を人間は使えない残念な種族となる。

 

話が反れたが、纏雷だ。ハジメさんはバチバチ弾ける静電気をイメージしたようなので、私もそのイメージに沿ってやってみよう

 

「ん~・・・こう?・・・お、出来た」

 

すると指先から紅い電気がバチッと弾けた。紅の電気である。

 

その後もバチバチと放電を繰り返す。しかし、やはりと言っては何だが二尾狼のように飛ばすことはできなかった。纏雷・・・纏う雷とある様に、体の周囲に纏うか伝わらせる程度にしかできないのだろう。電流量や電圧量の調整は要練習だ。

 

因みに、電圧とは【電気を送り出すためにかける力の量】であり、電流とは【実際に流れている電気の量】である。

 

感電により死に至る可能性が出てくる電流値の危険なラインは、0.05Aと言われているので、それ以上の出力を当ててやれば魔物もそれなりのダメージを負わす事が出来るだろう。事実、ハジメさんは蹴りウサギを感電させてから止めを刺して捕食したので、電撃トラップとして使用可能にするには練習が必要。嬉しい事に、ここ大迷宮内部では鍛錬の時間が豊富にある。

 

最後に【胃酸強化】だが、文字通り。魔物肉を食べても凄惨な激痛に悩まされなくなる技能である。例外は自身よりも強いステータスを有する魔物肉を喰らった時だけその痛みがやって来ることだろう。史実100階層の魔物、ヒュドラ肉を食したハジメさんだが、何度食べても激痛が収まらない事に悩まされる事となっていた。

 

「さて・・・残りを食べられるだけ食べますか・・・」

 

これからは魔物肉のみのとても偏った食生活を送る事となる。なので、あの酷い味を慣らすための訓練も兼ねている。更には蟲系の魔物も食さなければならないので、早めに慣れないといけないのだ。

 

ここオルクス大迷宮に落ちる前。晴香は【ユンケル商会】にて食材は勿論、様々な種類の香辛料を購入していたが、今は手を付けずにただ焼くだけの食事を続けると言う決意がある。何故かと言うと、その理由にはユエの存在があった。ユエは、ここ300年近く何も食べられずに封印されている。そして、その封印を晴香が解き放った時に美味しい料理を食べさせてあげたいとの思いで購入したのだ。

 

まだ解放されず、空腹感に苦しめられているユエちゃんを前にして美味しい物を食すなど言語道断!これ、自訓。

 




美味しいけど満腹感しか得られない料理。

死に掛けるし糞不味いけど特殊能力を得られる料理(?)。

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