巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
晴香はずっと二尾狼の肉を食べて来たが、既に食した魔物肉で上昇するステータスの値は微々たるもの。しかし、ここで蹴りウサギ肉を食したことにより、大幅なステータス上昇を引き起こした。そして、新たな魔物である為に固有魔法【天歩[+空力][+縮地]】を習得した。なので、早速実践してみる。しかし、ここの空間での実践は狭すぎて危険な為、地下室へと移動する。
地下室と言っても、たんに地下空間を錬成で作っただけのだだっ広い広場。普段は銃の射撃訓練や試射を行う場所である。
「まずは縮地を試してみようかな!」
縮地。それは一瞬で移動できる移動歩法であり、主にハイorローファンタジー系アニメでよく見かける瞬間移動のような技術。しかしこの世界では技能もしくは固有魔法として存在し、先天的に有している者もおり、雫が良い例えだ。晴香の場合は魔物を喰らう事で固有魔法として簒奪し、後天的に技能と習得したが、それはさておき。
実践開始だ。縮地を使うイメージは、足元が爆発する勢いで一気に踏み込む、である。しかし、このイメージで実践したハジメさんは見事に顔面ダイブという、発動はしたけど失敗するという結果を残した。晴香的にもその様な失敗はしたくないので、イメージはそのままで、勢いは低出力で発動を試し見る。体内の魔力が足元に集まり、踏み込んだ足元がギリッと音を立てて前に移動した。
「おっとぉおお!?」
低出力なのにも関わらず、この加速。刹那の間での発動で、晴香は実に10mほど移動していた。初めての感覚に移動後、バランスを崩しそうになったが、ハジメの様に無残は晒すことなく、ぎりぎり踏ん張る事に成功。ホっと一息ついて、もう一度発動。次も10m程の移動だったが、初めよりましになった。
魔物を喰らい人間の殻を破った影響で、身体能力が大幅に強化されており、それは動体視力や反射神経も当てはまる。元々ステータスを取得した時から超人レベルであったが、魔物肉を取り込んで覚醒した今の状態は、人外や化け物といったレベルで発達している。なので、数回試してみればすぐに慣れてくる。晴香が人為的に生み出した勇者を超えるチート身体だ。代償に耐えがたい激痛が付いてこなければ、皆挙って魔物肉に喰らい付くことだろう。
次に【空力】を試す。空力は、空中に足場を作り、そこを踏んで移動できる派生技能である。
イメージは空中に透明なシールド状の足場。ハジメさんは前に飛んで顔面ダイブを決めていたが、晴香は力加減しながら鉛直に飛ぶ。加減せずに飛べば頭部を天井に強打するレベルで脚力が発達してしまったためだ。事実、外で全力で上へと飛べば10m近くある天井に余裕で手が届く。その勢いで頭部をぶつけるとなると、その後どうなってしまうかはご想像通り、天井に彼岸花が一輪咲くこととなるだろう。
空中で晴香は、着地地点の上空30cm程の所で【空力】を使用。すると、自由落下していた晴香が空中に着地した。
手品の様だ。と、そのような感想を抱きながら、この固有魔法の熟達の為の特訓を開始する。
* * * * *
迷宮内を、常人の目では影すら捉えられないであろう驚異的な速度を持って、刹那の内に移動する人影がある。
晴香である。【天歩[+空力][+縮地]】を完全に使いこなす事が出来るようになった晴香は、複雑怪奇にうねりくねる洞窟内を、パルクールのプロもびっくり仰天しそうな勢いで縦横無尽に跳ね回る。では何故この様な事をしているかというと、単に散歩でも鍛錬でもない。爪熊の捜索だ。
かれこれ第一階層で生きて来たが、未だに爪熊肉を食べてない。なら、狩りに行こう!となり、拠点を飛び出した次第である。着々と晴香が野生児化してきており、魔物肉を食べ過ぎたせいか、魔物肉でも美味しく感じられるように舌が可笑しくなっている。
末期である。
「グルゥア!」
途中、二尾狼の群れと遭遇し、一頭が飛びかかってくる。
空力で反転し、更に足場を形成して縮地で二尾狼へと急接近。飛び掛かったはずが、飛び掛かられるという状況に一瞬、硬直してしまったのが運の尽きだった。ホルスターから06を抜き放ち、照準を定め―――ずに、グリップエンドを叩きつけた。ゴキンッ!っと、首辺りから鳴っちゃいけない音が響く。多少乱暴に扱っても壊れないと自負しているので、この扱いようである。
「死ね!」
ドパンっ!
可愛らしい声とは裏腹に、掛け声の暴言。そして、放たれるは音速の弾丸。
向けられた銃口から最短距離を超高速で飛翔する晴香特製の弾丸は、固有魔法を放とうとしていた二尾狼の頭部を爆散させる。仲間の死を物ともせず、勇蛮に接近してくる二尾狼に再度発砲し仕留めると、最後の個体には足裏を向けた。そして、
「縮地!」
本来、縮地とは最速で移動する歩法技能。その発動は、体内の魔力が一瞬で足元に集まり踏み込んだ瞬間、爆発する様な勢いで飛び出す。これが通常の使用方法だが、晴香は応用としてコレを攻撃方法に使った。移動するには必ずしも地面とは限らない、と言う事で、踏み込められる地面の役割を二尾狼に強制させたのだ。
そしてその結果。
ドゴンッ!と、大きな音を立てた二尾狼がくの字に折れ曲がり、有り得ない速度で壁に激突した。敵を足場に移動&攻撃もしくは、敵を足場に離脱&攻撃という、縮地に新たな可能性を生み出した。これが何れ役に立つ時が来るかはさて置き。
しばらくそうやって出会う蹴りウサギや二尾狼を殺し食料として確保していると、ようやく爪熊の姿を発見した。爪熊は現在食事中のようだ。蹴りウサギと思しき魔物を咀嚼している。その姿を確認すると、晴香はあるものを【異界収納】から取り出した。
それは細長い外見をした銃。超長距離の射撃に特化したタイプのこの銃は、俗に狙撃銃やらスナイパーライフルと呼ばれている。晴香が制作したのは30mmと超大口径の狙撃銃で有り、それ相応の炸薬量や弾頭重量から繰り出される威力は折り紙つき。更に、ゴリ押しとしてレールガンとして放つ事も可能だが、速度が速すぎる事で魔物の身体を一瞬で抜けてしまい、内部をかき乱しダメージを与えるには不向きな貫通力特化としての利用に限る。
名は【31式30mm狙撃銃】とした。
遂にステータス値が1000に届こうとしている晴香だから撃てるのであって、常人が撃てば肩が弾けることとなるだろう。もし、30mmを討つ場合は繊細な注意を払って扱っていただきたい。
チャンバーを開き、弾頭が異様に長めな弾をセットする。今回はレールガンとして使わないが、代わりに特別な弾頭を用意した。
スコープは無い。代わりにリアサイトとフロントサイトが装着されている。半魔物化した晴香の身体能力は人間を逸脱するほどに上昇しており、それには当然視力も含まれている。洞窟内部でのスコープの使用は使いずらい。だが、視力で確認できるなら態々スコープを取り付ける意味も無い。と言う事で、見かけはボルトアクションライフル、でも中身は狙撃銃という武器が誕生したのだ。
ちなみに20mmマウントレールを装着できる。
「さぁ~て、熊さんはどんな味かな!」
晴香は引き金を絞った。
* * * * *
爪熊はこの階層における最強種であり、主と言ってもいい。二尾狼と蹴りウサギは数多く生息するも爪熊だけはこの一頭しかいない。故に、爪熊はこの階層では最強であり無敵。それを理解している他の魔物は、爪熊と遭遇しないよう細心の注意を払うし、遭遇したら一目散に逃走を選び、抵抗する素振りも見せない。まして、自ら向かって行くなどあり得ないことだ。
しかし、現在。そのあり得ないことが身に起こった。
―――ドバァアアンッ!!!
左肩から先を全損するという形で。
「グルゥアアアアア!!!」
その生涯でただの一度も感じたことのない激烈な痛みに、凄まじい悲鳴を上げる爪熊。その肩からはおびただしい量の血が噴水のように噴き出している。
晴香が放ったその特殊弾とは、対象の内部に弾頭が到達すると、内部に圧縮されていた燃焼石が爆破。躰の内部より破壊する30mm榴弾である。
爪熊は、その鋭い眼光を怒りに染め上げ周囲を隈なく探索する。今の攻撃はなんだ?何処からの攻撃だ?かつて遭遇したことのない事態に、一階層最強たる爪熊も困惑する。本来であれば頭部、又は腹部を狙って放たれた攻撃であったが、一瞬だけ感じた殺気に、咄嗟に反応したために狙いがそれて左肩を破壊することとなる。100m以上も離れた所からの攻撃を、ほんの少しの殺気を感じただけで回避行動をとれるのは流石、最強格と言えよう。
しかし、相手が悪かった
「こんにちは、森・・・じゃなかった。洞窟の熊さん?その肉・・・オイテケ!」
だ~んだ~ん野生児になる~
自ら望んだ行動による結果とは言え、一ヶ月近くも洞窟内で生存サバイバルを行って居れば、作者の私も野生化するかもしれません。銃もって野生動物追いかけ回して・・・