巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
4月3日
一部、文章を追加しました。
「ガァアア!!」
貴様がやったのかッ!?と怒りを顕わにした爪熊が、咆哮を上げながら物凄い速度で突進する。2mを優に超す巨躯と、広げた太く長い豪腕が地響きを立てながら迫る姿は途轍もない迫力。更に凄まじいプレッシャーを与えて来る。
しかし、晴香は怯まない。
何故なら、晴香のステータスは爪熊と同程度。強さが同じ位の者同士によるプレッシャーなど、今の晴香には大して障害にもなり得ない微風に等しい物であるから。
「生きのいい新鮮な熊さんだ、ねっ!」
ドパンッ!
突進と風の三爪の攻撃を縮地で躱し、空力で作った足場から06を抜き撃ち。銃の扱いに慣れてきたとはいえ、まだまだ鍛錬が足らず、怒りに狂っている爪熊でも回避されてしまう。殺気を向けず、攻撃してくると分からせないように自然に銃口を向ける事は出来ず、これが今後の課題となるだろう。
2mを超える巨体にはあるまじきスピードで迫る爪熊が、鋭い三本の爪が生え揃う右腕うを振りかぶる。爪熊の固有魔法は【風爪】と言い、その三本の爪から長さ30cm程の風の刃を形成し、物理的に接触せずとも対象を切り裂ける技能であり、その攻撃力は皮膚が異常に硬いはずの魔物ですら、スッパリと両断してしまう鋭さ。この攻撃を一度でも喰らってしまえば大ダメージであり、足などに当たれば機動力損失=死となってしまう為、最大の注意を払わねばならない。
縮地で後ろに飛び、空力で形成した足場を使って更に縮地。二回ほどの連続発動で爪熊の背後を取ると、縮地を用いて急接近した。本来であればこのような行動は敵の間合いに侵入してしまうのでやらない方が良いが、爪熊は左腕を損失している為に攻撃に死角が生じている。
これを利用しない手はない。そう考えた晴香は、一瞬だけ晴香を見失った爪熊の背からレールガンを撃ち放つ。
「ガァッ!?」
「っ!」
やはり殺気が隠せてないのだろう。爪熊は咄嗟に回避した。しかも、回避しながらの風爪横薙ぎ払い。豪風と共に爪が通り過ぎ、触れてもいないのに地面に三本の爪痕が深々と刻まれた。咄嗟に回避したが晴香の服の一部が掠め、その部分だけが切り裂かれている。もしそのまま切り裂かれて居たら、と晴香が冷や汗を流す。このままでは埒が明かない。
(やっぱり、そう簡単には行かないよね・・・なら)
晴香は【異界収納】よりある物を取り出し、それを思いっ切り爪熊目掛けて投げつけ、後退を開始した。
自身を傷つけた敵が背を向けて逃げ出すだと?絶対に逃がさん、此処で食い殺す!とでも言う様に殺気と威圧感が増した爪熊が晴香を追う。その時、目の前に飛んで来た金属製の球体を、邪魔だと自慢の爪で両断し―――
―――バシュゥゥゥウウウっ!
爪が球体を両断した際。ソレが爆ぜ、オレンジ色の煙が舞った。
「ギャぁァああぁアああアアッ!?!?」
何が何だか分からない爪熊は、その煙を諸に吸い込み、目に直撃し、左肩が吹き飛ぶ時と同様の絶叫を上げ、のた打ち回り出した。晴香の投げた金属球の中に詰められていた物。それは、彼の【ユンケル商会】にて購入した、この世界でトップクラスの辛さを誇るラゼート(この世界の唐辛子)【ミネルボラゼート】と言う名の激辛香辛料。スコヴィル値(唐辛子の辛さの単位)でいうと地球産のキャロライナ・リーパーに匹敵する激辛香辛料であり、アンカジ産だとか。それを乾燥しそして粉末状にしたものが、爪熊が諸浴びした煙の正体である。
そんな物が目・鼻・口・左肩の傷に直撃。敵(晴香)が目の前なのにもかかわらず、余程痛いのだろう、ゴロゴロしてる。ハジメさんは目つぶしとして閃光手榴弾を用いたが、あれは視力を一時的に奪うのみ。それを参考にして制作してみた催涙手榴弾だが・・・効果は覿面であった。
今の内に離れた晴香は【31式30mm狙撃銃】を再装填し、爪熊に向けて引き金を絞った。
―――ダガンッ!!
迷宮内に銃声が木霊する。
およそ人間が手で持ち放つ銃の音とは思えないほどの発射音を響かせた31式から飛び出した30mmタウル鉱石製フルメタルジャケット弾は、激辛香辛料に苦しみ藻掻く爪熊を完全に捉えた。今回は外すことなど無いように電磁加速されている。回避行動も満足に取れない・・・というよりも、そもそも激痛の所為で晴香から意識を逸らせてしまったが為に、回避に遅れた爪熊の胸を突き抜けた。
藻掻きのた打ち回っていた爪熊がビクっと一瞬震える。すると、そのまま脱力したかの様に地面を転がった。
念の為、06式を放つ。が、反応は無い。
「遣ったか・・・」
別に甘く見ていた訳では無い。しかし、あと一歩・・・否、半歩遅れていれば身体が四分割され、ユエに出会う前に彼の世逝きになっていたかもしれない出来事を経験した今、晴香は言いようの知れず、言葉に出来ない変な感覚が心に宿ったのを感じた。爪熊を倒せた感激ではない。生死を分かつ局地を生き延びた喜びでも、増してや命が危険に晒された事に対する快感でもない。
(・・・あぁ、そうか)
この感覚は、一時的な安堵感。全く、迷惑な感情だ。爪熊を倒せたとはいえ、まだ迷宮内であり此処は拠点内部では無い。この場で安堵して警戒でも怠れば即ち、それが死につながるというのに。だが、この感情は消えなかった。以前、晴香は奈落に堕ちる際、死を覚悟したが、なんとなくパラシュートはちゃんと開くだろうという根拠がない自信に囚われていたので溜息一つで済んだ。
しかし、今回は死を覚悟では無く、認識した。後ちょっとズレていたら本当に死んでいた、という背筋の震える思い―――死の恐怖を心の底から感じた。
その恐怖を与えて来た対象を殺害し、死が遠退いた事に対する安堵。それが、心の中に渦巻いている。
このままの状態では危険だ。と判断した晴香は、爪熊の死体を【異界収納】へと仕舞い込むと、縮地に空力を駆使して拠点へと帰還した。
* * * * *
去る晴香の背を、陰から眺める存在がいた。
「・・・キュっ!」
何やら覚悟を決めた表情で、晴香を見つめている。
殺気を向けられている訳でも無いので、晴香は気付かなかった・・・
* * * * *
「ふぅ・・・ただいま~」
ここが家と言う訳では無いけど、一ヶ月以上も出入りして生活している空間なので、なんとなく帰ってきたら『ただいま』と自然に口から零れてしまう。晴香は椅子に腰かけると、テーブルに突っ伏した。あの戦闘の後から、手が若干震えている。
(今日感じた事は一生、忘れられないね・・・いや、忘れさせない。死の恐怖を忘れてしまったら、それは唯の狂人の仲間入りだ)
そのまま深く深呼吸。気持ちを整え整理すると、いつの間にか手の震えは収まった。
「よし、熊食うぞ!」
食事場に向かうと【異界収納】から爪熊の死体を取り出す。吹き飛ばした左肩からシュタルナイフで皮を剝ぎ、ミネルボラゼート粉末が付着していない内部の肉を切り取った。魔物肉は兎に角固く、そして筋が異常に多い。これは魔力が浸透することにより強化された副産物である。晴香は半魔物化したことにより顎筋が強化されたとはいえ、食べにくいし噛みにくいことには変わらず。なので、刻む。
刻み終えると、そのまま生で食べる。
焼く事はしない。史実ハジメさんは纏雷で丸焼きにして喰らい付いていたが、唯でさえ食べにくい魔物肉を焼くことで、筋肉が収縮し余計に食べずらくなる。強く噛むのも面倒と言う事で、晴香はずっと生肉で食べて来た。
お腹を壊す?寄生虫が心配?【胃酸強化】がきちんと仕事をするので問題無い!という謎理論である。
「うぐっ、来た・・・」
初めて魔物の肉を喰らった時のように、激しい痛みと脈動が始まった。用意して置いた神水を服用する。あの時ほど激烈な痛みではないが、激痛には変わりなく、痛みに顔を歪める。爪熊は二尾狼や蹴りウサギとは別格であるため、取り込む力が大きく痛みが発生する。しかし、この痛みを乗り越えて次のステップに進んだ先には、さらに強くなった私が待っている!と、自身を鼓舞しながら激痛に耐える。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・」
激痛と脈動が収まり、流れ出た汗を強引に拭う。この階層では最強の座を成すがままにして来た爪熊は、正に別格。二尾狼や蹴りウサギ肉では感じなかった激痛に襲われた。しかし、その分だけ身体が強靭になりステータスも上昇する。我慢する甲斐があった。
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綾瀬春香 17歳 女 レベル:15
天職:錬成師
筋力:630
体力:630
耐性:550
敏捷:590
魔力:1100
魔耐:1100
技能:錬成
[+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+イメージ補強力上昇]
[+鉱物分離][+鉱物融合][+精密錬成]
弓術
[+命中率補正]
火属性適性
[+効果上昇]
土属性適性
[+効果上昇]
全属性耐性
魔力操作
魔力感知
胃酸強化
纏雷
天歩
[+空力][+縮地]
風爪
言語理解
異界収納
[+重量無制限][+内部時間停止]
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史実シュラークって何口径なんでしょうね?
進化すればAA(88mm)になるらしいですけど『口径を大きく・・・』との表現しかなかったので、取り敢えず30mmにしました。大丈夫、晴香なら立ったままでも撃てます。