巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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ごめんよ、約束まもれなかった・・・(何がとは言わない)


20話 五十階層

晴香の迷宮攻略は続く。

 

鮫型の階層から更に五十階層は進んだ。スマホがあるので日数を図ることが出来たが、二週間ほどが経過する頃にはそもそも見てても意味が無いとして、記録を止めている。それでも、驚異的な速度で進んできたのは間違いない。

 

その間にも理不尽としか言いようがない強力な魔物と何度も死闘を演じてきた。

 

例えば、迷宮全体が薄い毒霧で覆われた階層では、毒の痰を吐き出す二メートルのカエル(虹色だった)や、麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾(見た目モ○ラだった)に襲われた。常に神水を服用してその恩恵に預からなければ、ただ探索しているだけで死んでいたはず。なにせ、地上の布素材に水晶材、奈落産鉱物で製作した試作したガスマスクが役に立たなかったからだ。

 

毒の痰を吐き出す蛙の毒は、神経毒であり、サリンが近いかもしれない。その痰攻撃を喰らった史実ハジメは初めて魔物を食した時に近い激痛に襲われたらしく、幸い奥歯に仕込んでいた噛み砕ける程度に薄くした石で出来た小さな容器に入った神水で事なきを得た。

 

晴香も真似して奥歯に・・・抜神(神経を抜いた歯)を少々削ってシュタル鉱石でメッキを施して製作した窪みに設置している。しかし、どんな毒で有るかを事前に知っていれば態々攻撃を受けるヘマなど犯さない。痰毒蛙を殺し、その死体を持って拠点に帰り、肉を食う前に安全(比較的)な拠点内で毒を自身に投与した。

 

そのサリンを直接吸う様な阿呆丸出しな行為で、晴香は絶叫は上げなかったが転げまわった。久々の超激痛に息絶え絶えとなり、死体の様に拠点内部で伸びる。これから先、どんなにある程度先の事が分かっていても、更に強烈な痛みに襲われる時が必ず有るだろう。体半身焼傷とか、神水をもってしても中々癒えない毒とか。そう考えると、先に痛みに対する耐性を付けておいた方が良い、そう考えた晴香は、この様な誰も巻き込まない自殺テロ行為に走ったのだ。

 

自身に鞭打つ処か包丁で滅多刺しする様な行いを何度も繰り返せば、だんだんと慣れて来るものである。痛みが消えたら投与を繰り返す事50を超える頃には超痛い!で済む程度に激痛耐性(技能では無い)を得た晴香は、そのまま痰毒蛙に戦闘を挑み、敢えて痰毒を喰らいながらの戦闘を行った。慣れて来たとは言え激痛には変わりないので、戦闘中に何度もミスを犯したが、その分経験値はたまる。この経験を今後に生かす。

 

因みに後遺症などが残らない様に神水を使った。なので晴香はピンピンしている。

 

余談だが、蛙肉は旨かった。史実ハジメは喰らい付くのに躊躇していたが、様々な魔物の生肉を喰らう為に迷宮を進んでいたようなモノの晴香は全く躊躇わずに喰らい付いた。女子としての矜持を亡くした(捨てた?)晴香は、完全な野生児と化した。原作に記載されていた様に、蛙肉は今まで食べて来た魔物肉に比べれば断然美味であった。

 

ハジメからしたら『ちょっと美味かった』と表現されていたが、鶏もも肉の様な淡白な味わいを久しぶりに味わえた晴香からすれば十分美味しかった。

 

勿論、生肉であり調味料は無し。晴香は野生に適応した。

 

また、地下迷宮なのに密林の階層に出た時の事であるが、物凄く蒸し暑く鬱蒼としていて今までで一番不快な場所だった。なんせ蒸れる。女の敵だな階層だ。この階層の魔物は巨大なムカデと樹。樹とはRPG風に言えば所謂トレントの様な魔物である。

 

密林を歩いていると、突然、巨大なムカデが木の上から降ってきたときは、

 

【流石のハジメも全身に鳥肌が立った。余りにも気持ち悪かったのである。】

 

とあったが、晴香には食料にしか見えなかった。

 

相当末期である。

 

このムカデは、体の節ごとに分離して襲ってくる特異種。一匹いれば三十匹はいると思えという黒い台所のGのような魔物である。晴香は、ここで史実ハジメが直面する問題である【ドンナーのリロード(弾丸の再装填の事)に戸惑る】を解消しており、一撃で殺傷する射撃を六発放つと、新しく習得していた【異界収納[+遠隔召喚][+遠隔収納]】にて、手で触れずとも収納した対象を指定位置に召喚できる新たな派生技能である。

 

これを用いて、リロードの際には空薬莢(弾を放った後の残り)六発分を、一発ずつ0.05秒間隔で収納し、同じく0.05秒間隔でシリンダー(6発の弾丸を収納できるリボルバー特有の回転弾倉)へと再召喚でセットしリロードを完了させるという、史実ハジメが【宝物庫】と呼ばれる異界収納似のアイテムボックスの様なアーティファクトで行う高速リロードを再現した形で有る。

 

集中力を削られるので戦闘中は使用できないが、シリンダーを開放(スイングアウト又は振出と呼ばれ、弾丸交換時にシリンダーを横にスライドさせる形で銃本体から回転弾倉を飛び出させること)せずに直接、シリンダー内部で空薬莢を遠隔収納。更に開いた弾倉に直接遠隔召喚で弾丸をセットすることで、事実上の無限弾倉を再現できたのだ。

 

更に、史実ハジメの十八番、クイックドロウ(神速撃ち。連続の射撃を繰り出す銃技。 射撃速度が速いために6発分が1発分の音しか聞こえない。)は、晴香には三発が限界だが、射撃間隔を遅くしたフルオート射撃(連続射撃)では戦闘中でない限り100発以上を連続で繰り出せる。もっとも、実証試験で50発までしか撃たなかったので、これから先はもっと高速に再装填と射撃を繰り出せるように要練習である。

 

しかし、まだ【錬成[+高速錬成]】や【錬成[+複製錬成]】を習得していない為に弾丸一発の製作時間が20分強掛かるので、錬成の鍛錬に更に力を入れなくてはならないのが今後の課題だ。

 

話が反れたので戻そう。

 

味も不味く、これが漢方薬となるのかと言うレベルで変な味であったムカデは良いとして、次は樹の魔物トレントだ。トレントは、木の根を地中に潜らせ突いてきたり、ツルを鞭のようにしならせて襲って攻撃を仕掛けて来る。

 

しかし、このトレントモドキの最大の特徴はそんな些細な攻撃ではない。この魔物、ピンチなると頭部をわっさわっさと振り赤い果物を投げつけてくるのだ。この赤い果実には毒が無く、代わりに凄く美味しいスイカの様な果実であり、決してリンゴでは無い。

 

兎に角、史実ハジメさんをしても一時思考を止めてしまう程の美味しさ(いつも新鮮な魔物肉しか食べてなかったので、これ以上に無い極上の果物だったから)らしいのだが、晴香は口を付けなかった。それにはやはり、ここを潜る際に心に誓った宣言(マニュフェスト)を破る訳にはいかないとして、我慢した。

 

「ユエちゃんと一緒に食べた方が100倍美味しいはず!」

 

と、若干後ろ髪を引かれる思いで、そしてトレントを殲滅する勢いで果実狩りに勤しんだ。

 

そんな感じで階層を突き進み、気がつけば目的の五十層。漸くここまで来たか・・・何て感慨深い念が晴香の胸の内を支配する。此処までの道のりで晴香の心身(主に心の方)は疲弊していた。完全に自業自得であるが、耐えがたい激痛、薄暗い迷宮内を常に一人、自身以外は全て敵、ちょっとの油断で死に至る為に擦り減らされる精神、劣悪な環境下でのサバイバル生活・・・

 

覚醒し、ちょっと狂人の道のりへと足を突っ込んだ晴香といえども、精神的にはやはり未熟であった。だがしかし、疲弊してでも頑張った甲斐はあった。それは、50階層到達時点での、晴香のステータスである。

 

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綾瀬晴香  17歳 女 レベル:22

 

天職:錬成師

 

筋力:1480

体力:1600

耐性:1430

敏捷:1820

魔力:1560

魔耐:1560

 

技能:錬成

   [+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+イメージ補強力上昇]

   [+鉱物分離][+鉱物融合][+精密錬成][+複製錬成]

  ・弓術

   [+命中率補正]

  ・火属性適性

   [+効果上昇]

  ・土属性適性

   [+効果上昇][+魔力消費削減]

  ・全属性耐性

  ・魔力操作

  ・魔力感知

  ・胃酸強化

  ・纏雷

  ・天歩

   [+空力][+縮地][+豪脚]

  ・風爪

  ・夜目

  ・遠見

  ・気配感知

  ・気配遮断

  ・毒耐性

  ・麻痺耐性

  ・石化耐性

  ・言語理解

  ・異界収納

   [+重量無制限][+内部時間停止][+遠隔収納]

   [+遠隔召喚]

===========================

 

晴香は、ここ五十階層にて製作した拠点で錬成の鍛錬の後。魔物との戦闘では銃着や足技など、多種多様な戦闘方法の模索、編成、昇華を行いながら探索する。記憶によれば、そこはなんとも不気味な空間らしく、明らかに異質な場所であり・・・

 

「ここ、が・・・」

 

脇道の突き当りにある空けた場所には、高さ3メートルほどの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していた。

 

この扉の奥に、封印されたユエがいる。

 

そう思うと居ても立っても居られず、すぐさま準備を始める。自身の今持てる武技と武器、そして技能。それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。全ての準備を整え、晴香はホルスターより06式を抜く。開いた左手には【異界収納】より取り出した奈落産魔石。それを、思いっきり扉に向かってぶん投げた。

 

音速に迫る速度の投擲により飛翔した魔石は、その扉に激突するその瞬間、

 

―――バチィイ!

 

扉から赤い放電が走り、魔石を弾き飛ばした。高電圧を掛けられた魔石が粉々に砕かれ地面に散る直後。

 

――オォォオオオオオオ!!

 

突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡る。

 

雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出す。

 

「ふふふ・・・金剛取得の食料が動き出したよ・・・」

 

おどろおどろしい笑顔舌なめずりする晴香の前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。

 

一つ目巨人の容貌は、ファンタジー作品には8割がた登場する魔物サイクロプス。手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようと晴香の方に視線を向けた。

 

その瞬間。

 

ドパァンッ!

 

間延びした銃声が響いた。

 




19話の後書きに登場すると書いたが・・・あれは嘘だ!
ごめんなさい単純に4000文字程度では収まらないのです。明日はきっと・・・っ!
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