巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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遅くなりました、申し訳ありません・・・


24話 決着

「貴方を一目見た時から、此処から解放してあげたいって思っていたからよ。だから、私はユエを置いて逃げるなんて事はしない。見放すなんてもってのほか。それに、ユエの願いでせっかく封印を解いてあげたんだよ?だったら、此処から二人で生き延びて外に出たいじゃない!」

 

無表情なのに変わりはないが、ユエは目は見開いた。そして、何かを納得したように頷き、いきなり抱きついた。

 

何となくこの後の展開に察しがついている晴香は、さりげなくユエの腰に手を回して抱き締めた。抱き締める為に06式を【異界収納】に仕舞ってしまったため、丸腰状態ではあるが【気配感知】等の技能によりサソリモドキの挙動を逐次監視しているので、行動を開始した時には即座に動けるようにスタンバイしている。

 

戦闘中にいきなり抱きつかれても動揺せず、何故か抱き締められてる事に対しての疑問にも気付かず、ユエは春香の首に手を回した。

 

「ハルカ・・・信じて」

 

そう言ってユエは、晴香の首筋にキスをした。

 

「っ!」

 

否、キスではない。噛み付いたのだ。

 

晴香は、首筋にチクリと痛みを感じた。そして、体から力が抜き取られているような違和感を覚えた。吸血されているのだと理解する。【信じて】――――その言葉は、きっと吸血鬼に血を吸われるという行為に恐怖、嫌悪しても逃げないで欲しいということだろう。

 

逃げる訳がない。晴香的にはむしろバッチ来い!である。

 

好きな女の子に噛まれて血を吸われて嬉しくない女はいない。これだけ抜粋すると唯の変態だが、相手が吸血鬼なので何ら問題無い。ユエは血液の補給行動だからだ。晴香が感じるのは背徳感、夢にまで見たユエによる吸血行為の達成感。ユエの唇が首筋を擽り、尖った八重歯が自身を抉る感覚、血を吸う為に蠢く舌、こくりっと喉を通して飲み込まれて行く自身の血液。文字通り、晴香の血がユエの血肉になる・・・

 

こうして吸血されるだけでも凄い快感と、そんな妄想をすれば酷い興奮がおしよせる。

 

この感覚は病みつきになる、と晴香は苦笑いしながら、しがみつくユエの体をより一層優しく抱き締めて支える。一瞬、ピクンと震えるユエだが、更にギュッと抱きつき首筋に顔を埋める。どことなく嬉しそうなのは気のせいだろうか。

 

気のせいでないで欲しい(切実)

 

「キィシャァアアアっ!!」

 

サソリモドキの咆哮が轟く。漸く閃光手榴弾のショックから回復したらしい。こちらの位置は把握しているようで、再び地面が波打つ。サソリモドキ地形操作による固有魔法だが、晴香は地面に右手を置きを行った。周囲三メートル以内が波打つのを止め、代わりに石の壁が晴香とユエを囲むように形成される。

 

周囲から円錐の刺が飛び出し晴香達を襲うが、その尽くを晴香の防壁が防ぐ。一撃当たるごとに崩されるが直ぐさま新しい壁を構築し寄せ付けない。

 

地形を操る規模や強度、攻撃性はサソリモドキが断然上だが、錬成速度は春香の方が上だ。錬成範囲は三メートルから増えていないので頭打ちっぽい上に、刺は作り出せても威力はなく飛ばしたりもできないが、守りには晴香の錬成の方が向いている。

 

因みに、晴香には土属性適性が存在するので、サソリモドキと同じ様な攻撃を行う事が出来る。魔物肉を喰らったために陣無しでの発動も可能だが、ユエの技能【想像構成】を有していないので陣は必要なくとも詠唱が必要である。なので即座に展開は出来ないので防護壁を錬成により制作しているのだ。

 

晴香が九割の意識を防御に専念し、残り一割をユエに当てていると、ユエが口を離した。

 

とても名残惜しく感じるが、どこか熱に浮かされたような表情でペロリと唇を舐める、その仕草と相まって、幼い容姿なのにどこか妖艶さを感じさせる、その姿を見れば、そんな思いは吹き飛んだ。吸血行動により、先程までのやつれた感じは微塵もなくツヤツヤと張りのある白磁のような白い肌が戻っている。頬は夢見るようなバラ色だ。紅の瞳は暖かな光を薄らと放っていて、その細く小さな手は、そっと撫でるように晴香の頬に置かれている。

 

素晴らしい。

 

「・・・ごちそうさま」

「お粗末様です!」

 

嬉しさの余りにそう言うと、ユエは、おもむろに立ち上がりサソリモドキに向けて片手を掲げた。同時に、その華奢な身からは想像もできない莫大な魔力が噴き上がり、彼女の魔力光―――黄金色が暗闇を薙ぎ払った。

 

神秘に彩られたユエは、魔力色と同じ黄金の髪をゆらりゆらゆらと靡かせながら、一言呟いた。

 

「【蒼天】」

 

その瞬間、サソリモドキの頭上に直径六、七メートルはありそうな青白い炎の球体が出来上がる。

 

直撃したわけでもないのに余程熱いのか悲鳴を上げて離脱しようとするサソリモドキ。

 

だが、奈落の底の吸血姫がそれを許さない。ピンっと伸ばされた綺麗な指がタクトのように優雅に振られる。青白い炎の球体は指揮者の指示を忠実に実行し、逃げるサソリモドキを追いかけ・・・直撃した。

 

「グゥギィヤァァァアアアッ!?!?」

 

サソリモドキがかつてない絶叫を上げる。明らかに苦悶の悲鳴だ。着弾と同時に青白い閃光が辺りを満たし何も見えなくなる。晴香は、その壮絶な魔法と神秘に彩られたユエを眺めた。【蒼天】に関しては毎度の如く知識として知っていたため、驚きは少ない(アニメよりも何百倍も眩しかったのでそれには驚いた)が、そんな絶大な破壊力を秘めた魔法を行使するユエに見惚れた。

 

やがて、魔法の効果時間が終わり青白い炎が消滅する。跡には、背中の外殻を赤熱化させ、表面をドロリと融解させて悶え苦しむサソリモドキの姿があった。

 

あの摂氏3000℃の【焼夷手榴弾】でも溶けず、狙撃砲を省いた06式レールガンを撃ち込まれてもビクともしなかったシュタル鉱石製外殻の防御を僅かにでも破ったユエの魔法を称賛すべき!

 

ふらりっとユエが揺れると、肩で息をしながら座り込もうとするので、後ろから支えた。どうやら魔力が枯渇したようだ。

 

「お疲れ様」

「ん・・・最上級・・・疲れる」

 

【異界収納[+遠隔召喚]】によりクッションを取り出して下に置くと、其処の上にユエを座らせる。動ける状態にないユエへと近づけさせるつもりは無いが、万が一の事があってはならない為、神水試験管を取り出し、これ飲んでねっと、頭を一撫でしながら渡した。

 

「ありがとう。助かったよ。後は私が殺るから、休憩してて!」

「ん、頑張って・・・」

 

防護壁を更に追加し、魔法攻撃により活路を見出してくれたユエに感謝しながら、サソリモドキを仕留めるべく縮地にで一気に飛び出した。サソリモドキは外殻を融解させる超高温に晒されても尚健在であり、作られて生涯一度も経験したことが無い超激痛を齎した晴香たちに嘗てない程の激しい怒りに満ちており、散弾針を打ち込んで来た。

 

晴香は【異界収納[+遠隔召喚]】により閃光手榴弾をサソリモドキの視線上に放り出し、06式を抜き、撃ち抜いた。電磁加速させていない弾丸が閃光手榴弾を貫くと【蒼天】にて白一色の世界になった時と同じように、この封印の間を白く塗りつぶす。

 

流石に慣れたのか、サソリモドキは鬱陶しそうにしているものの動揺はしておらず、光に塗りつぶされた空間で晴香の気配を探しているようだった。

 

しかし、いくら探しても晴香の気配はなかった。サソリモドキが晴香の気配をロストし戸惑っている間に、晴香はサソリモドキの下に出現する。そして、気付かれない様に重厚な外殻に触れる。

 

「―――錬成!」

「キシュアッ!?!?」

 

声を上げて驚愕するサソリモドキ。それはそうだろう、探していた気配が己の感知の網をすり抜けられ、更には巨躯を支える足や巨大なハサミを持つ四本の腕、そして遠距離攻撃に用いられる尻尾の関節が突如として固まってしまったのだから。

 

サソリモドキの外殻はシュタル鉱石で出来ているので錬成により関節を潰したのだ。節足動物・・・節足魔物?たるサソリモドキは、関節に何らかの不具合が生じた際には機動力が著しく低下する。なら、全部潰せば身動き取れないよね!という考えの元、錬成範囲内に存在する可動部全てを錬成にて接合したのだ。

 

「キシャァァアアアア??」

 

ハサミの開閉は出来る。しかし、足は尻尾を動かすことが出来ず困惑するサソリモドキ。

 

それはそうだろう。人間でいえば、指は動くけど手足は動かないという状況である。

 

「ふぅ・・・漸く殺せるよ・・・」

 

サソリモドキが動けないことを良い事に、晴香は強固な外殻に錬成で穴を空けて行く。身動きが取れず、無防備な状態を晒すしかないサソリモドキが怨嗟の咆哮を上げるがお構いなしに外殻を突破すると、丸出しの肉目掛けて06式の引き金を引いた。

 

ドパンッドパンッドパンッ!

 

放たれた通常速度の弾丸は、サソリモドキの体内に侵入すると、内部の硬い外殻により跳弾と化した弾丸により内部をズタズタにかき乱す。何処に重要部位が存在するか不明なので、適当に間隔を空けて数発放っていると、サソリモドキがビクンと震える。

 

動きの止まったサソリモドキ。辺りを静寂が包む。

 

ドパンッ!

 

数秒後、死体に鞭打つようにして再度、剥き出しの体内に向かって06を放つが、サソリモドキは依然動作を停止したまま。

 

「よし!」

 

サソリモドキの死を確認した晴香は、06式をホルスターに仕舞う。

 

振り返ると、無表情ながら、どことなく嬉しそうな眼差しで女の子座りしながら晴香を見つめているユエがいた。自ら望んで奈落に堕ちた先で、晴香の推しであり、これからを共に歩むこととなる頼もしい相棒ができたようだ。

 

その事に嬉しく思いながら、晴香はゆっくりと彼女のもとへ歩き出した。

 




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