巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます。学校はお休みになりましたが、出された課題の量に眩暈を起こしました、作者です・・・


25話 語らい

サソリモドキを倒した晴香は、緊張の解けた柔らかい表情で、ユエの方へと歩く。

 

その時、あっと思い出したことがあって、晴香は顔を赤くした。その訳はサソリモドキが出現するちょっと前に遡る(22話を参照)。サソリモドキの反応が頭上より出現する前に、晴香はユエにと衣服を渡そうとしていた。しかし、サソリモドキが現れると、とても服を渡している場合ではなかったので、そのままユエを抱えて縮地。そのまま戦闘に発展・・・

 

その間。ユエは一糸纏わぬ裸体であり、隠すべき場所が丸見えである。戦闘の際に意識していなかったが戦闘が終わった今、抱き抱えた時に不可抗力とはいえ、触れたお尻の柔らかさとか、背中から押し付けられた慎ましやかな胸のとても柔らかな感触が、ふと忘れていたことを思い出すかの様に蘇る。

 

今現在も丸見えなのは極力意識しないようにしつつ、ユエの場所に返って来た。

 

「・・・はい、これ」

 

首を傾げたユエに【異界収納】より取り出した服を渡す。以前、奈落に落ちる前に購入していたユエに合うサイズの下着と上下の服である。何故サイズを知って居たかと言うと、特に説明するまでも無かろうが身長140cm前後、スレンダーな体形、で大体の大きさは推測できる。

 

流石に微調整は出来ないので、そこは我慢してもらうしかない。

 

「・・・・・・」

 

そう言われて差し出された服を反射的に受け取りながら自分を見下ろすユエ。確かに、裸だった。大事な所とか丸見えである。面と向かってそんな事を言われたユエは一瞬で真っ赤になると、晴香から受け取った服一式をギュッと抱き寄せ上目遣いでポツリと呟いた。

 

「あ、ありがとう・・・」

 

『ハルカのエッチ』と呼ばれるのを若干期待していたが、やはり同性だからか、その御言葉が頂けなかった事に内心残念に思う晴香であったが、ちょっぴり涙目+上目遣いにキュン死しかけた。

 

ユエはいそいそと服を着だす。ユエの身長は140cm位しかないが、晴香が推測した大きさの服であり問題無く着る事が出来た。一生懸命裾服を着る姿が微笑ましい。凄く着せて挙げたい欲求に駆られたが、晴香は我慢した。何時か着せたいという夢を抱いて。

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

倒したサソリモドキと、扉の前に放置していたことを思い出したサイクロプスの死体を【異界収納】へと仕舞い、晴香が制作していた拠点にユエをお持ちか・・・一緒に帰還する。

 

ちなみに、そのまま封印の部屋を使うという手もあったのだが、ユエが断固拒否したためその案は没となった。

 

無理もない。何年も閉じ込められていた場所など見たくもないのが普通だ。消耗品の補充のためしばらく身動きが取れないことを考えても、精神衛生上、封印の部屋はさっさと出た方がいいだろう。なにより、ユエが嫌がる所に居るのは春香も嫌だ。

 

そんな訳で、現在晴香達は、消耗品を補充しながらお互いのことを話し合っていた。

 

「ユエって吸血鬼だから・・・300歳以上なんだよね」

「・・・マナー違反」

 

素晴らしいジト目と、その言葉を待ってました。ありがとうございます!

 

っとそれはさて置き。三百年前の大規模な戦争の時、ユエを隠された事に癇癪起こしたエヒトちゃん(笑)が周辺の国を巻き込んで吸血鬼族を滅ぼしたのだ。実際、ユエも長年、物音一つしない暗闇に居たため時間の感覚はほとんどないそうだが、それくらい経っていてもおかしくないと思える程には長い間封印されていたという。二十歳の時、封印されたというから三百歳ちょいということだ。

 

正確には323歳なのだが、これは言わなくても良い情報だろう。

 

「やっぱり、その【自動再生】の能力?」

「・・・そう」

 

12歳の時、魔力の直接操作や【自動再生】の固有魔法に目覚めてから歳をとっていないらしい。普通の吸血鬼族も血を吸うことで他の種族より長く生きるらしいが、それでも200年くらいが限度なのだ。

 

ちなみに、人間族の平均寿命は70歳、魔人族は120歳、亜人族は種族によるらしい。エルフの中には何百年も生きている者がいるとか。

 

ユエは先祖返りで力に目覚めてから僅か数年で当時最強の一角に数えられていたそうで、十七歳の時に吸血鬼族の王位に就いたという。あのサソリモドキの外殻を融解させた魔法を、ほぼノータイムで撃てるのだ。しかも、ほぼ不死身の肉体。行き着く先は【神】か【化け物】か、ということだろう。ユエは後者だったということだ。

 

・・・表向きは。

 

欲に目が眩んだ叔父が、ユエを化け物として周囲に浸透させ、大義名分のもと殺そうとしたが【自動再生】により殺しきれず、やむを得ずあの地下に封印した・・・と言うのがユエからの情報だが、実際にはディンリードの封印による、ユエをエヒトから誤魔化す苦肉の策であり、現在に至る約300年の間、ディンリードの封印はきちんとエヒトを欺いた。

 

本当の事情を知らないユエは、当時は突然の裏切りにショックを受けて、碌に反撃もせず混乱したままなんらかの封印術を掛けられ、気がつけば、あの封印部屋にいたらしいと語った。その為、あのサソリモドキや封印の方法、どうやって奈落に連れられたのか分からないそうだ。

 

その他にも、全属性適性があるなどと自身の能力について教えてくれた。勿論、反逆者のくだりもあったが、大七迷宮が反逆者と呼ばれてしまった解放者たちが作ったモノであり、神代魔法を取得する為の試練であると知って居るので割愛する。

 

サソリモドキとの戦いで攻撃力不足を痛感したことから新兵器の開発に乗り出しているため、作業しながらじっくり話を聞いていた。

 

因みに現在制作している兵器は【25式84mm無反動砲】に用いる新弾頭。【モンロー/ノイマン効果】という火薬の爆発に関する現象を利用した新弾頭で有り、薄い金属の内張り(ライナー)を付けてスリバチ状(凹型の円錐状空洞)に成形した炸薬を爆発させると、爆発の衝撃波が円錐中心軸に向かって集中し、中心軸に沿って方向を変え、スリバチの上方に向かって超高速の金属の噴流が作られる現象である。

 

この現象を利用した弾頭は俗に【HEAT弾】又は【成形炸薬弾】と呼ばれる。

 

成形炸薬弾は中心軸に高温高圧の金属噴流(メタルジェット)を発生させることにより相手の装甲を瞬時に穿つことを目的としており、 化学エネルギー弾に属するが、最終的にはこのメタルジェットの運動エネルギーによる装甲破壊である。このモンロー/ノイマン効果を最大限に発揮できる金属ランナーの角度は約80度とされており、素材は薄い銅板を用いている。

 

地上産の銅を利用しているので、サソリモドキの様な重戦車以上の装甲を持つ奈落産魔物にどれ程効果的かは試してみないと分からない。メタルジェットもどれ程の効果が認めるか不明。残してあるサソリモドキで完成後発射試験が待っているが果たして。

 

何て思いながらの作業を、ユエがジーと見ている。

 

「・・・・・・そんなに面白いかな?」

 

口には出さずコクコクと頷くユエ。大迷宮で使う事を想定した飾り気の無いThe村人Aな服を着て、袖先からちょこんと小さな指を覗かせ膝を抱える姿はなんとも愛嬌があり、その途轍もなく整った容姿も相まって思わず抱き締めたくなる可愛らしさだ。

 

歳を言うのは指摘された通りマナー違反だが、本当に300歳とはとても思えない可愛さだ。

 

「ハルカ?」

「いやぁユエって可愛いなぁ~と。」

 

一旦作業を止め、手が汚れてないかを確かめて問題ないと分かると、その手でユエの頭を撫でた。封印されている状態ではキューティクルが機能していないのではと思えるほどにボサボサであったが、晴香の吸血後にはそんな面影などまるでない。とてもサラサラしていてずっと撫でたいという依存性の高い魔性の髪と化してた。

 

「・・・んぅ」

 

成すがままに撫でられているが、とてもご満悦な様子で有り、大変可愛らしい。

 

暫くそうされていると、ユエが晴香に質問する。

 

「・・・・・・ハルカ、どうしてここにいる?」

 

当然の疑問だろう。ここは奈落の底。正真正銘の魔境。魔物以外の生き物がいていい場所ではない。

 

ユエには他にも沢山聞きたいことがあった。なぜ、魔力を直接操れるのか。なぜ、固有魔法らしき魔法を複数扱えるのか。なぜ、魔物の肉を食って平気なのか。そもそも晴香は人間なのか。晴香が使っている武器は一体なんなのか。

 

ポツリポツリと、しかし途切れることなく続く質問に律儀に答えていく晴香。

 

「私が此処に居るのはね、一つの本との出会いが理由なの。」

 

地上の本(ただしこの世界でない)に、此処オルクス大迷宮の底の底に、一人のお姫様が囚われている。そのお姫様を、地上より奈落に落ちてしまっいた主人公が生き永らえる為に魔物肉を食べながら地下を目指しているうちに発見、救出し、一緒に更に底を目指すという物語を読んだ事。魔物肉を食べられるのは神水と一緒に食べて死に掛けて、半人半魔な肉体になったから。半人半魔になった事により魔物の能力である魔力の直接操作が可能となった事。別種の魔物を喰らう事により固有魔法を簒奪できる事。故郷の兵器にヒントを得て現代兵器モドキの開発を思いついたことをツラツラ語る。

 

「それと、その本には囚われた吸血鬼のお姫様の似顔絵が記載されてて、それが―――」

「私?」

 

そうだよと頷く。

 

「もし本当にお姫様が封印されてるなら・・・救ってあげたいじゃない?」

 

動機は不純だったが、救いたい気持ちは紛れも無い本心である。

 

優しい表情で語り掛けた晴香に、ユエは言葉を失った。本当にお姫様が存在するか分からない底の更に底。しかも、一歩と言うか半歩間違えただけで即死につながる途轍もない魔境。もしその物語が唯のフィクションであったら・・・なんて想像してしまうが、あの場所から救い出してくれたという嬉しさが嵩み、気が付けば涙がこぼれた。

 

ハラハラと涙をこぼしているユエに晴香は手を伸ばし、流れ落ちるユエの涙を拭いた。

 

「・・・・・・あり、がと・・・」

「・・・どういたしまして」

 

消えそうな程に小さな感謝。ちょっぴり貰い泣きした晴香は、そっとユエを抱き締めた。

 




今回も間が開いて申し訳ありません。今後も間が開く日々が続きますがご了承ください。
あぁ・・・連日投稿が懐かしい
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