巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます。漸くまとまった感じで、クラスメイトサイドを書き上げる事が出来ました。ハジメが堕ちず、晴香が堕ちたことにより分岐してしまった本来の歴史をどの様にして変えて行こうかと散々迷いましたが、どうにか出来ました。
もし、この先大きな矛盾や不都合が発生してしまいましたら、再度書き直す事となるかもしれませんので、その時はご了承ください・・・


クラスメイトサイド 1

時間は少し遡る。

 

ハイリヒ王国王宮内、召喚者達に与えられた部屋の一室で白崎香織と八重樫雫は、沈んだ表情でこれからどうなってしまうのかと不安な表情を浮かべた。

 

あの日、迷宮で第20階層で、この世界に来てから新しく友達になった綾瀬晴香が【()()()()】になった日から既に五日が過ぎている。

 

あの後、宿場町ホルアドで一泊し、早朝には高速馬車に乗って一行は王国へと戻った。休憩として離れた仲間が、血まみれの服や飛び散った血痕、戦闘痕を残したまま生死不明の行方不明なってしまったので、今までゲーム感覚で迷宮に挑んでいた生徒たちが【死はとても身近に存在する】と気付いてから、とても迷宮内で実戦訓練を続行できる雰囲気には成らなかった。勇者の同胞が死んだかもしれない以上、国王にも教会にも報告は必要だった。

 

それに、厳しくはあるが、こんな所で折れてしまっては困るのだ。致命的な障害が発生する前に、勇者一行のケアが必要だという判断もあった。

 

雫は、王国に帰って来てからのことを思い出した。

 

帰還を果たして晴香の生死不明の行方不明が伝えられた時、王国側の人間は誰も彼もが愕然とした。非戦闘職とはいえ勇者と同等の魔力を有し、【魔法適性】に【弓術】といった戦闘職さながらな技能を有していた、戦闘も生産もこなせる人材が死亡したかもしれないからだ。

 

強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならないこと。迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならない。

 

なのに死んだかもしれない。これは非常に由々しき事態であり、即座にホルアドで勇者一行と接触していた関係者たちには箝口令が敷かれ、情報統制がなされる。この聖教教会にとって非常にデリケートな問題に緊張状態が奔る中、晴香が恐れていた自体が発生する。それは、

 

【何故、無能のハジメでは無く有能な晴香なのか】。

 

同じ天職だが、晴香と比べると天と地ほどの差がある無能のハジメが死んだのであれば、ほっと安堵の吐息を漏らせたのに。そう思う者達が現れ始め、中には悪し様にハジメを罵る者までいたのだ。

 

もちろん、公の場で発言したのではなく、物陰でこそこそと貴族同士の世間話という感じではあるが。何故無能が死ななかった、神の使徒でありながら役立たずな者が盾となって死ねば良かったものを・・・それはもう好き放題に貶していた。それも本人たるハジメがいる状況で言われていたもので、雫は憤激に駆られて何度も手が出そうになった。

 

実際、正義感の強い光輝が真っ先に怒らなければ飛びかかっていてもおかしくなかった。光輝が激しく抗議したことで国王や教会も悪い印象を持たれてはマズイと判断したのか、ハジメを罵った人物達は処分を受けたようなのだが・・・・・・

 

逆に、光輝は無能にも心を砕く優しい勇者であると噂が広まり、結局、光輝の株が上がっただけで、ハジメは勇者の手を煩わせるだけの無能であるという評価は覆らなかった。

 

それどころではない。イシュタルやハイリヒ国王は無論、教会関係者や貴族、武文官、ハジメを良く思わない子悪党組を筆頭とした勇者一行に至るまでがハジメを恰も【神敵】の様に扱い始め、ハジメに対する風当たりは非常に強大な暴風の様になった。陰口だけでなく、当たり前の様に暴力を振るう様に成り、それを見て見ぬふりなら優しい方で、良いぞもっとやれ!とイジメる側に声援が送られる事もしばしば。

 

ハジメはどれだけイジメられたとしても、この世界から家に帰る為に歯を食いしばって耐えて来た。しかし、見るからに満身創痍な有様になり、勇者が止め、香織が治癒に入るが、これが返って状況を悪化させるだけだと気付いている雫と、気付いたメルド団長が、この状況をどうにか打開すべく結託。

 

だが打開策は見つからない。なので、状況の打開では無く、問題点を消す事にした。

 

「坊主・・・このままではお前は壊れるか、殺される。だが、俺にはこの状況を打開する事は出来ない。だから、お前は【ウルの町】に向かえ。そこで俺の知り合いの錬成師の弟子として雇わせる。」

「いえ。僕はこのままで大丈夫です・・・ここで耐えなければ、僕は帰れないかもしれないですから」

 

愁嘆の表情で苦笑いしながら、ハジメはそう言い切った。だが、結局は【ウルの町】に行く事となる。180度方向転換を図った理由は、

 

「南雲。確かにお前が不甲斐ないばかりにこんな事になっているが、彼等はやり過ぎだ。此処に居ると迷宮より危険かもしれない。だから、ほとぼりが冷めるまではメルドさんの言う錬成師の所でお世話になるんだ。そして、そこで皆をあっと言わせるくらい錬成の腕を磨くんだ。」

「光輝の言う通りだぜ南雲。俺らみたいにステータスが高くなかっただけで、お前は不運だな・・・あっちで頑張って来い」

「龍太郎君もうちょっとオブラートに包もうよ、もう!・・・えっとね、南雲君。貴方が訓練と称して半数近くのクラスメイトから集団暴行を受けてるのを見るのは、私はとても辛いの。割り込んで助けるけど、助けても助けてもこの状況が変わらないし、良くならないから・・・あの時、守るって言ったのに、約束が守れなくてごめんね・・・本当なら、私も付いていきたいんだけど、迷宮に行かなくちゃいけないから」

「私は、いえ。私達は何時も南雲君の隣で守ってあげられる訳ではないわ。だから、光輝の言ったように事のほとぼりが冷めるまでは、ウルの町で鍛錬してちょうだい。」

 

そして、

 

「大丈夫だよ南雲君。帰る時が来たら私が迎えに行くから!」

 

と、香織たち勇者一行にも説得されたためである。

 

ハジメ的には、勇者の説得があったとしても本当に一緒に帰れるのか不安しかなかった。何せ勇者の仲間一行はハジメを目の敵にするわ、宗教関係者も良い顔をしない。もしかしたら、宗教関係者を通じてエヒトが帰してくれるかも、それは神様次第。正直、帰れるのか先が見えない状態である。

 

そんな時に自分だけ【ウルの町】にいて、置いて行かれるのではないか?そう思わずにはいられなかった。

 

だが、此処に居たら何れ殺されるのではないか、といった不安がある。戦争勃発前に殺されてしまえば、帰れない。9割近くの人間が敵な環境で、何時殺されるか分からない王宮に居座るより、比較的安全な【ウルの町】で鍛錬した方が良いのは理解できる。

 

それに、何時も天災の様な彼女だが、一度も約束を違えたことのない人だ。その言葉を信じる事にしたのだ。

 

因みに、ハジメをウルに向かわせる為に根回しは、主にメルド団長が行った。

 

そしてハジメがここ王都を発ったのが昨日である。ハジメ自身は【ウルの町】に向かう事になったが、一部の生徒(主にハジメをイジメていた者達)には【経済都市フューレン】に向かったと告げられる。甚振るのに丁度良いおもちゃが無くなった事に怒りを顕わにしたが、既に発ってしまったので何もできない。

 

「晴香は、生きてるかしら・・・」

 

ハジメが王都を発つ寸前まで、一緒に行きたいという気持ちを抑え込んでいた香織から、ハジメの事を逸らす為に雫が話を振った。

 

「雫ちゃん。多分だけど、晴香ちゃんは生きてるよ」

「それは、どうして?」

「えっとね、迷宮の中で何回か休憩時間があったでしょう?その時に晴香ちゃんが私に『これから迷惑をかけるけど、ごめんね。もっと迷惑をかける人が居るかもしれないけど、その人にもごめんねって伝えて欲しいの。それと【降霊術師】と【軽戦士】に気を付けて』って一方的に言われたんだよね。」

 

どういう事?って聞こうとしたけど、直ぐに攻略が始まっちゃって結局聞けなかったけど、あの時は、迷宮攻略で天職が生産職だから徐々に足を引っ張るかもしれないからって意味かなって思ってた、と続ける。

 

「・・・でも、そう聞くと、まるでこの【生死不明の行方不明】は晴香が仕組んだものに聞こえるわね。最後の【降霊術師】と【軽戦士】のくだりは判らないけれど・・・」

 

雫は目を細めた。香織が言っていることが事実であれば、この行方不明が最初っから後になって判明する計画されていた出来事にしか聞こえない。しかし一体何のために重傷を負ってまで行方不明もしくは死亡しないといけないのか分からないので、結局は暗礁に乗り上げる。

 

もしかしたら―――なんて想像して、それを否定してと繰り返せばドツボに嵌まりそうな気がして、雫は思考を中断した。

 

「【降霊術師】と【軽戦士】は、恵里と檜山君よね?何を気を付けるの?」

「恵里ちゃんは判らないけど、檜山君は・・・ハジメ君をイジメた主犯格だからかな?」

 

結局此方も分からずじまいであり、思考を切るしかない。しかし【行方不明の晴香は生きている可能性が大】【晴香からの謎の忠告である降霊術師の恵里ちゃんはまだしも、軽戦士の檜山には一応警戒して置こう】という思いが雫と香織に芽生えた。晴香が知っている、将来起こりうる謀反に対するこの布石が、一体どのような結果をもたらすかは、神も知らない。

 

 




最近というかほぼずっと晴香とユエの会話しか書いて居なかったので、その他の子の話は結構苦労しました。本格的に別路線を歩み始めてしまったので、原作文章を改ざんして書くとするチート戦法が使えなくなってしまう事に悲しみと焦りを胸に抱く作者ですw・・・

あと、本来ならこの時に発生する香織ちゃんと雫ちゃんの無意識百合百合ですが、不都合が生じそうという理由で書きませんでした。もしその百合が見たい方は【ありふれた職業で世界最強(原作)】を読んでみて下さい!
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