巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます!


28話 休憩

「・・・変わってない」

 

ユエが、過去を思い出すような、そんな視線をテーブルに置かれた果物の数々に向ける。ミカン擬き、リンゴ擬き、ブドウ擬き・・・紡がれた言葉の意味は、封印前に見たこと、食したことのある果物があったかもしれない。

 

この果物お食事会を開いた晴香が、各種果物をナイフで皮をむいて数等分に切り分け、水晶で作られた透明な皿に盛りつける。全て一口サイズなのは味気無いので、リンゴ擬きでうさぎさんを作るなどして飾る。

 

料理経験がある晴香はテキパキ準備すると、最後に紅茶を淹れた。これに用いる茶葉も無論、地上産である。王宮では本場の紅茶を飲んで来たであろうユエからしたら、庶民な晴香が淹れた紅茶が果たして美味しいのか、と心配している晴香だったが、まさかここで紅茶まで飲めるなんて!と無表情ながら目を輝かせるユエを見ると、問題無さそうだと思った。

 

「どうぞ、ゆっくり食べてね」

「んっ!」

 

渡したフォークで盛り付けられた果物の一つを刺し、元女王らしく上品に小さな口へと誘う。

 

「はむっ」

 

一口、二口、と咀嚼を繰り返すと、徐々に徐々にユエの表情が変わっていく。口角がほんのちょっとだけしか上がっていないが、見るからに分かる満面の笑み。そして、目の端には光る雫があり、飲み込むときに零れた露は頬を伝って下に落ちた。

 

約300年ぶりの甘味とは、一体どんな味がしたのか。それは、晴香には判らない。しかし、晴香も数か月ぶりの甘味に目頭が熱くなる気がした。なら、きっとこの感情の何百倍も強い衝撃を受けているのだろうと容易に想像が付いた。

 

「~~♪」

 

至高!圧倒的、至高!!

 

ナレーションが付くのでは?と思えるほどにルンルン♪なユエは、口直しに紅茶を口にし、こくりっと小さな喉を鳴らした。そして、ふぅ~と温かい吐息を吐きながらソーサーにカップを置く。柔らかい表情だ。やはり甘いものは女の子の味方である。しかし食べ過ぎには注意。

 

一つ一つ口に運ぶ都度、一喜するユエを見ていると、ふと晴香にある考えが浮かんだので、それを実行してみる。

 

自身の皿に用意した一口サイズの果物リンゴ擬きをフォークで刺すと、自分の口に持ってゆくのではなく、ユエの口に運んだ。

 

「はい、ユエ。あ~ん」

「あ~ん♪」

 

小鳥のごとく、ぱくりっと口にしたユエ。

 

もきゅもきゅと咀嚼するその姿に、晴香は母性本能が刺激された気がした。ひな鳥に餌を与える親鳥は、きっとこの様な感覚を抱くのだろうか。

 

「美味しい?」

「美味ひぃ♡」

 

可憐な微笑みを向けるユエを見ていると、凄く幸せな気分になる(小並感)

 

抜かれたフォークにはユエの唾液が付着しており、それで自分も食べるという、間接キスに頬を赤く染める。本当のキスだって何度も経験したが、好きな女の子と間接キス、何て妄想を繰り広げれば、これはこれで背徳感がある。なので晴香は、敢えてフォーク単体を口に含んでユエの唾液を楽しんだ。

 

果物の甘さと、微かに感じるユエの味。キスだけの時とはまた違ったハーモニー。

 

めっちゃぞくぞくした。

 

「ハルカも、あ~ん♪」

 

ユエの琴線に触れたのか、晴香と同じ様に果物の刺さったフォークを運んだ。なんともこそばゆい感覚におちいりながら、差し出された果物を食べる。何でか分からないが、今まで食べて来たどんなに甘く美味しい果物よりも、美味しく感じられた。これが俗に言う幸せの味という奴だろうか、頬が緩むのを抑えられない。

 

「おいしぃ?」

「美味しい♡」

 

何とも甘い、甘すぎる。

 

もしこの場に第三者が居れば、無意識のうちに形成されている桃色空間に非常に居た堪れなくなり、吐血ではなく吐糖しているだろう。それはもう盛大にぶちまけ、辺り一面が白砂糖一色の白銀世界になってしまうくらい。しかし残念ながら、周りが雪の様に白くなっただけではユエ達のイチャつきを引き立たせるだけ。

 

岩肌剥き出しの洞窟内に白い砂糖の砂。抽出させる為に設置された神結晶の淡い輝きに照らされた、何処かの国に隠れスポットとして存在しそうなこの場所で、美少女二人による百合百合しい神秘的な光景。ただの吐糖は、より二人を盛り上げる為のエキストラの一部として終わろう。

 

「ふふ、いっぱい食べたね」

「ん・・・また、食べよ?」

「ええ」

 

好きな人とイチャイチャするのがこんなにも幸せな事だとは、知りもしなかった。

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

「うっわ、また来たよ―――」

 

流石に鬱陶しくてげんなりしていた晴香だったが、

 

「・・・ハルカ、ファイト」

「―――やる気出て来たぁっ!!」

 

ユエの声援一つで気分爆上げ。ユエの応援があれば神殺しも成し得るッ!(凄くちょろくなった。)

 

現在、ハルカはユエを背負いながら猛然と草むらの中を逃走していた。周りは百六十センチメートル以上ある雑草が生い茂り、170±2cmほどのハルカは、頭部がギリギリ見えるくらいで殆どを隠してしまっている。ユエなら完全に姿が見えなくなっているだろう。

 

そんな生い茂る雑草を鬱陶しそうに払い除けながら、ハルカが逃走している理由は、

 

「「「「「「「「「「「「シャァアアッ!!」」」」」」」」」」」」

 

二百体近い魔物に追われているからである。

 

ハルカ達がフルーツに盛り上がったその後、準備を終えて迷宮攻略に動き出したあと、十階層ほどは順調よく降りることが出来た。晴香の新装備や技量が充実し、かつ熟練してきたからというのもあるが、ユエの魔法が凄まじい活躍を見せたというのも大きな要因である。全属性の魔法攻撃をなんでもござれとノータイム発動で、晴香を的確に援護していたからだ。回復魔法や結界魔法は苦手なのは変わりない。

 

そんな二人が降り立ったのが現在の階層だ。まず見えたのは樹海だった。十メートルを超える木々が鬱蒼うっそうと茂っており、空気はどこか湿っぽい。しかし、以前通った熱帯林の階層と違ってそれほど暑くはないのが救いだろう。

 

晴香とユエが階下への階段を探して探索していると、突然、ズズンッという地響きが響き渡った。何事かと身構える二人の前に現れたのは、巨大な、見た目は完全にティラノサウルスの()()魔物である。

 

そう、頭に一輪の可憐な花を生やしていたあれだ。寄生階層である。

 

鋭い牙と迸る殺気が議論の余地なくこの魔物の強力さを示していた。のだが、ついっと視線を上に向けると向日葵に似た花がふりふりと動く。知っていてもかつてないシュールさだった。

 

ティラノサウルスが咆哮を上げ晴香達に向かって突進してくる。晴香は慌てず06式を抜こうとして・・・それを制するように前に出たユエがスッと手を掲げた。

 

「【緋槍】」

 

ユエの手元に現れた炎は渦を巻いて円錐状の槍の形をとり、一直線にティラノの口内目掛けて飛翔し、あっさり突き刺さって、そのまま貫通。周囲の肉を容赦なく溶かして一瞬で絶命させた。地響きを立てながら横倒しになるティラノ。そして、頭の花がポトリと地面に落ちた。

 

「おみごと」

「ふふんっ」

 

どや顔で胸を張るユエに苦笑い。

 

今までは晴香が銃による攻撃で終わらせていたが『パートナーだから』という理由でユエも参戦するようになる。何時までも晴香に守ってもらうばかりではダメ、らしい。しかし、ユエの頑張り・・・と言うか貢献度は絶大であり、最近は頑張りすぎな気がしてならない。何かご褒美でもあげようか。

 

「・・・ねぇ、ユエ。貴方の戦闘スタイル上、接近戦闘が苦手なんだし、魔法攻撃は強力なんだから後衛として援護してよ。前衛は私が勤めた方が、ユエを援護しやすいから、ね?」

「むぅ・・・分かった」

「ふふ、適材適所だよ」

 

ちょっぴり不満気なユエ。

 

一緒に帰るとなってからか、晴香の役に立つことにこだわり過ぎる嫌いのあるユエに苦笑いしながら、彼女の柔らかな髪を撫でる。それだけで、ユエはほっこりした表情になって機嫌が戻る。小動物の様でとってもかわいい。

 

もう、どんどん依存して欲しいと思っている晴香は、ユエを甘やかす事に躊躇う気が無い。しかし、度を越えるような甘やかしはかえってユエの為に成らないので、所々自重して・・・と思いつつ、ついいっぱい甘やかしてしまう。

 

その様にして、二人がイチャついていると晴香の【気配感知】に続々と魔物が集まってくる気配が捉えられた。十体ほどの魔物が取り囲むように晴香達の方へ向かってくる。統率の取れた動きに、とうとう来たか・・・と、思いながらユエを促して現場を離脱する。数が多いので少しでも有利な場所に移動するためだ。

 

円状に包囲しようとする魔物に対し、晴香は、その内の一体目掛けて自ら突進していった。

 

そうして、生い茂った木の枝を払い除け飛び出した先には、体長二メートル強の爬虫類、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物がいた。

 

頭からチューリップのような花をひらひらと咲かせて。

 

「・・・かわいい」

「寄生、されてる?」

 

ユエが思わずほっこりしながら呟けば、晴香は、ユエが知らない原作知識の情報を推測として口に出す。

 

ラプトルは、ティラノと同じく、「花なんて知らんわ!」というかのように殺気を撒き散らしながら低く唸っている。臨戦態勢だ。花はゆらゆら、ふりふり。

 

取り敢えずドパンっ!する。飛び出した音速の弾丸が、チューリップの花を四散させた。

 

ラプトルは一瞬ビクンと痙攣したかと思うと、そのまま動かなくなった。シーンと静寂が辺りを包む。ユエもラプトルと四散して地面に散らばるチューリップの花びらを交互に見やった。

 

「・・・死んだ?」

「生きてるよ」

 

晴香の見立て通り、ピクピクと痙攣した後、ラプトルは覚醒すると辺りを見渡し始めた。そして、地面に落ちているチューリップを見つけるとノッシノッシと歩み寄り親の敵と言わんばかりに踏みつけ始めた。

 

「・・・イタズラ、されたの?」

「やっぱり寄生されたんじゃない?」

 

プトルは一通り踏みつけて満足したのか、如何にも「ふぅ~、いい仕事したぜ!」と言わんばかりに天を仰ぎ「キュルルル~!」と鳴き声を上げた。そして、ふと気がついたように晴香達の方へ顔を向けビクッとする。

 

「・・・」

「・・・やっぱりイジメ?」

 

ユエが同情したような眼差しでラプトルを見る。ラプトルは暫く硬直したものの、直ぐに姿勢を低くし牙をむき出しにして唸り一気に飛びかかってきた。なので晴香はスっと06式を掲げ大きく開けられたラプトルの口に照準し、電磁加速されたタウル鉱石の弾丸を撃ち放った。

 

一筋の閃光となって狙い違わずラプトルの口内を蹂躙し後頭部を粉砕して飛び出た弾丸は、背後の樹も貫通して樹海の奥へと消えていった。

 

跳躍の勢いそのままにズザーと滑っていく絶命したラプトル。晴香もユエも何とも言えない顔でラプトルの死体を見やった。

 

「・・・イジメられて、撃たれて・・・・・・哀れ」

「イジメから離れなよ。絶対違うと思うよ?」

 

取り敢えず、晴香はユエ用のヘルメットの制作をしなければと考えながら、包囲網がかなり狭まってきていたので急いで移動する。

 

 




勢いでやってしまった・・・
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