巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
アルラウネの出番無く焼き殺した日から随分経った。その後もユエと共に迷宮攻略に勤しんでいた。
そして遂に、次の階層で【100階層】のところまで来た。その一歩手前の階層で晴香は装備の確認と最終調整にあたっていた。相変わらずユエは飽きもせずに晴香の作業を見つめている。というよりも、どちらかというと作業をする晴香を見るのが好きなようだ。今も、晴香のすぐ隣で手元と晴香を交互に見ながらまったりとしている。
つい集中力を解いてしまえば、たちまち見惚れてしまうような、ふんわりと緩んだ愛らしい表情である。
ユエと出会えてから約100日以上経ったからか、お互いに配慮しながら関係を築いてきたからかわからないが、最近、ユエはよくこういうまったり顔というか安らぎ顔を見せる。露骨に甘えてくるようにもなった。
特に拠点で休んでいる時には必ず密着している。横になれば添い寝の如く腕に抱きつくし、座っていれば背中から抱きつく。吸血させるときは正面から抱き合う形になるのだが、終わった後も中々離れようとしない。晴香の胸元に顔をグリグリと擦りつけ満足げな表情でくつろぐのだ。
小動物にマーキングされてるようで、嫌な気はしない。と言うかウェルカム。
しかし、ユエの外見が十二、三歳なので微笑ましさが先行し簡単に欲情したりはしないが、実際は遥に年上。その片鱗を時々見せると随分と妖艶になるのは困ったものである。未だに迷宮内なために四六時中イチャコラしてはいない。が、気を抜くと拠点内で数日出ないでこもりっきりでナニかをしてしまうかもしれない。
そうならない為にも理性の管理は徹底しているが、緩むときは緩むのでベットインする時がある。
幼い容姿なのに大人な魅力全開で迫ってくるユエに、晴香は耐えられた事が一度もない。ベットの上の主導権は必ずと言って良い程ユエが握り、その知識はあっても未経験に等しい晴香は翻弄され続けるばかりであり―――
・・・この話は此処で止めて置こう。ドツボに嵌まる。
「晴香・・・いつもより慎重?」
「うん。次で100階層だからね。オルク大迷宮は100階層まであって、次が最後の階だと思う。だから、一応念の為ね・・・」
銃技、体術、固有魔法、兵器、そして錬成。いずれも相当磨きをかけたという自負が晴香にはあった。そうそう、簡単にやられはしないだろう。しかし、そのような実力とは関係なくあっさり致命傷を与えてくるのが迷宮の怖いところである。特にヒュドラ。奴は神代魔法の使い手である解放者たちの合作であり、強さはこれまで経験してきた激戦を超える、激闘となるであろう。
故に、出来る時に出来る限りの準備をしておく。ちなみに今の晴香のステータスはこう。
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綾瀬晴香 17歳 女 レベル:63
天職:錬成師
筋力:2630
体力:2800
耐性:2580
敏捷:2720
魔力:3210
魔耐:3210
技能:錬成
[+鉱物系鑑定][+鉱物系探査][+イメージ補強力上昇]
[+鉱物分離][+鉱物融合][+精密錬成][+複製錬成]
[+圧縮錬成]
・弓術
[+命中率補正]
・火属性適性
[+効果上昇][+魔力消費削減]
・土属性適性
[+効果上昇][+魔力消費削減][+持続時間上昇]
・全属性耐性
・魔力操作
[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]
・魔力感知
・胃酸強化
・纏雷
・天歩
[+空力][+縮地][+豪脚]
・風爪
・夜目
・遠見
・気配感知
・気配遮断
・熱源感知
・熱源遮断
・毒耐性
・麻痺耐性
・石化耐性
・金剛
・威圧
・念話
・言語理解
・異界収納
[+重量無制限][+内部時間停止][+遠隔収納]
[+遠隔召喚]
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ステータスは、初めての魔物を喰えば上昇し続けているが、固有魔法はそれほど増えなくなった。主級の魔物なら取得することもあるが、その階層の通常の魔物ではもう増えないようだ。魔物同士が喰い合っても相手の固有魔法を簒奪しないのと同様に、ステータスが上がって肉体の変質が進むごとに習得し難くなっているのかもしれない。
ステータスが上昇するのは嬉しいが、固有魔法が習得できなくなってゆくのは残念だ。
しばらくして、全ての最終調整を終えた晴香とユエは、階下へと続く階段へと向かった。
その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間。柱の一本一本が直径5mはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは30mはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。
晴香は「アニメよりリアルだ」なんて思いながら。ユエはしばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。ハッと我を取り戻し警戒するユエ。柱は晴香達を起点に奥の方へ順次輝いていく。
晴香は奥200mほど進まない限り何も起こらないという原作知識がある為、念のためユエを庇いながら、感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。200m進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。それは、巨大な扉。全長10mはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた文様が印象的である。
これは第七迷宮の紋章であり、十字の【オルクス大迷宮】。楕円を貫く一本の杭の【ライセン大迷宮】。サークル内にランタンを掲げる女性の【グリューエン大火山】。五芒星に一条、中央に三日月の【メルジーネ海底遺跡】。指輪の【神山】。導越の羅針盤【ハルツィナ大迷宮】を表す。
似た様な物が、ハルツィナ大樹海の深部の大樹【ウーア・アルト】の麓に石板として設置されて存在している。
「これがもしかすると?」
「反逆者の住処?」
「かもね」
いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応がなくとも晴香の本能が警鐘を鳴らしていた。この先はマズイと。それは、ユエも感じているのか、うっすらと額に汗をかいている。
「此処が最下層。最後の関門。ユエ、覚悟は出来た?」
晴香は冷や汗を流しながらも不敵な笑みを浮かべてユエを見る。
「・・・んっ!」
ユエも覚悟を決めた表情で頷き返し、扉を睨みつける。
そして、二人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。
その瞬間、扉と晴香達の間30m程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。晴香はこの魔法陣に見覚えがあった。あの日、橋から飛び降りる時に不可抗力で召喚されてしまったベヒモス達の、あの魔法陣とほぼ同じ奴であると。しかし、ベヒモスの魔法陣が約10mなのに対し、此方は眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。
「これは、凄まじいね・・・」
「・・・大丈夫・・・私達、負けない・・・」
晴香が知っていても流石に引きつった笑みを浮かべるが、ユエは決然とした表情を崩さず晴香の腕をギュッと掴んだ。
ユエの言葉に「そうだね!」と頷き、和らいだ表情を浮かべながら晴香も魔法陣を睨みつける。
魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにする晴香とユエ。光が収まった時、そこに現れたのは、体長30m以上。六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラである。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光が晴香達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が晴香達に叩きつけられた。
同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。
晴香とユエは同時にその場を左右に飛び退き反撃を開始する。晴香の【06式】が火を吹き電磁加速された弾丸が超速で赤頭を狙い撃つ。弾丸は狙い違わず赤頭を吹き飛ばしたが、間髪を入れずに新たに取り出した【44式】でフルバースト射撃。
白い文様の入った頭が回復薬だと知っているので狙い撃つ。首から上部が完全消滅する形で、白頭はこの世から姿を消した。
晴香に少し遅れてユエの氷弾が緑の文様がある頭を吹き飛ばした。
油断している訳ではないが、これはイケる!と踏んだ晴香は【念話】でユエに伝える。
『ユエ!黒頭を狙って!』
『んっ!』
青い文様の頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出し、それを回避したユエが黒頭目掛けて【緋槍】を放つ。燃え盛る槍が黒頭に迫る。しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。そして淡く黄色に輝き、ユエの【緋槍】を受け止めてしまった。爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいて晴香達を睥睨している。
急がねばバットステータス攻撃をされてしまう!と、急ぎ44式の再装填を済ませて、照準を定め―――
「いやぁああああ!!!」
「ユエ!?」
(間に合わなかったかッ!!)
【異界収納】に44式を放り込む。先に回復薬を潰した為か史実とは違った展開を見せている中で、このような事を起こさせないように先制する・・・はずが自身の行動が遅い所為でユエに辛い思いをさせてしまった事に対して激しい怒りが晴香を満たした。
咄嗟にユエに駆け寄ろう・・・とするフェイントで、それを邪魔するように赤頭と緑頭が炎弾と風刃を無数に放ってくるのを交わすながら、僅かに開いた射線で射撃。発砲音と共に、ユエをジッと見ていた黒頭が吹き飛ぶ。同時に、ユエがくたりと倒れ込んだ。その顔は遠目に青ざめているのがわかる。そのユエを喰らおうというのか青頭が大口を開けながら長い首を伸ばしユエに迫っていく。
「【重剣嶽】ッ!!」
晴香オリジナルの土属性最上級魔法。通常の剣山を大量に、そして異常に大型化させることが出来る広範囲殲滅魔法だが、範囲や剣山を拡大するには膨大な量の魔力を消費する。今回はユエを守る事が優先なので、攻撃もそこそこに剣山自体を、ユエを守る即席の壁にした。
青頭の顎がユエを捉える―――その瞬間。極太の杭が下から突き出て串刺しにした。突き抜けた剣山は、そのまま勢いよく天井に突き刺さり、上からの侵入が出来ない、正に鉄壁の名が相応しい防護壁となる。さらに、有効範囲を拡大しており、ヒュドラを一定以上の範囲で囲むことで、此方に対しての攻撃が出来ない様にした。
しかし、これもちょっとした時間稼ぎにしかならない。更なる手を打ちながら、晴香はユエの元へと駆け寄った。
晴香はノータイムで最上級魔法を行使することは普通は出来ません。今回出来たのは、有効範囲も適当、貫く剣山の太さや高さはランダム、おまけに大量に保有する魔力のゴリ押しの三拍子が揃ったためです。
(と言う設定)