巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。   作:背の高い吸血鬼

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おはようございます


33話 解放者の住処

晴香は、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と懐かしい感触だ。これは、そうベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、晴香のまどろむ意識は、目覚めるという行動を否定する。

 

(毛皮で作った即席のベットでは考えられない、この柔らかさ。至高ですわぁ・・・)

 

むにゃむにゃ。と、寝返りを打とうとしたが、なにやらベッドとは違う柔らかな感触に右腕が包まれて動けない。手の平も温かで柔らかな何かに挟まれているようだ。

 

(ましゅまろ・・・?)

 

ボーとしながら、晴香は手をムニムニと動かす。手を挟み込んでいる弾力があるスベスベの何かは晴香の手の動きに合わせてぷにぷにとした感触を伝えてくる。シリコンの様に柔らかいソレの、とてもクセになりそうな感触につい夢中で触っていると・・・

 

「・・・ぁん・・・」

(ふぇ・・・?)

 

何やら艶かしい喘ぎ声が聞こえた。そう言えば、とまどろんだ意識の中で思い出す。

 

このすべすべでむにむにな感触は、ユエの体の一部である、と。

 

(・・・そうだ。一緒にベッドで寝たんだった。)

 

晴香は思い出す。ヒュドラを殺した後、死体を回収してユエと共に反逆者―――解放者の住処にお邪魔した。激戦後の心労により疲弊していた私達の目の前に純白のシーツに豪奢な天蓋付きの高級感溢れるベッドがあったので、軽く体を拭いて綺麗にしてから二人してベットインしたのだ。

 

気候も安定していて寒くなく、そして熱くもない丁度良い温度に耐えられなくなった私達は、着替えも忘れて眠ってしまった。

 

なので、晴香が触っているのはユエの身体の一部である。

 

「んぅ―――っ!」

 

右腕をちょっとだけずらして起き上がり、伸びをする。ここ数か月間、毛皮製ベットで就寝していたが、柔らかいとはいえ寝心地は遺憾ともし難いものであった。起きて伸びをすれば、必ずと言って良い程骨がバキバキなるレベルである。しかし、このベットは柔らかく、寝心地が限界突破していて伸びが気持ちいい。

 

「・・・」

 

晴香が起き上がった拍子に、捲れてしまったシーツ。隣には一糸纏わないユエが晴香の右手をギュっと握りながら眠っていた。人に慣れた小動物が、ご主人とは離れたくありません!とでもいう様な感じで、にぎにぎと握ってらっしゃる。

 

可愛い。ずっと見ていたい。

 

ユエを起こそうと思っていたが、起こす気力が霧散してしまった。

 

ちょっぴりお腹が空いており、ユエを起こして朝食と洒落こもう、なんて考えていたが、気持ちよさそうに眠るユエを見ると、何だか眠くなってきた。と言う事で、もう一度横になってユエを抱き締める。欲しいなと思っていた12000円の抱き枕カバーなんて比にもならない本物のユエの感触に、頬が緩まずにはいられない。

 

抱き締めた事によって、晴香の眼前にユエの頭部がある。ゆるふわな金髪に埋もれるつむじ。

 

欲望に抗う事無く、ユエの髪に顔を埋めて匂いを堪能する。すぅっと吸えば、ふわりと甘い女の子の香りと、微かに感じる汗の香りに頬が緩まz(ry

 

「ユエ、起きて・・・」

 

暫く堪能して満足すると、そろそろ起きようとの事で、ユエを起こす事にする。

 

「んぅ~・・・」

 

声をかけるが愚図るようにイヤイヤをしながら丸くなるユエ。丸くなる都度、ユエが晴香の胸に顔を埋める。裸なので髪の擦れる感触や、ユエの吐息がダイレクトに伝わって非常にくすぐったくあり、そして気持ち良かった。このままでは、眠る子猫ちゃんを襲ってしまいそうだ。

 

揺すってみたりしたが、艶めかしい吐息を吐いて小さく身動ぎするだけ。

 

「ユエ・・・そろそろ起きないと、いたずらしちゃうよ~・・・」

 

最初は遠慮気味に脇を擽ったりと小規模ないたずらだったが、小さく喘ぎ声をあげるだけのユエだったので、其処から徐々にエスカレート。耳を舐めてみたり、手で何処がとは言わないけど揉んでみたり、擦ってみたり。顔が紅色に染まり、少し荒くなった息遣いのユエに、ムラっと来てしまった晴香は、最後通牒を突きつける。

 

「ユエ・・・私、手を出しちゃうけど、起きないんだから別に良いよね?」

「・・・」

 

顎クイッでユエの顔を起こしながらそう言うと、今、ぴくりっとユエの眉毛が揺れた。反応からして起きてるのでは?という疑問が確信に変わった瞬間である。そして、起きているにも関わらず否定しない、ということは。

 

「・・・沈黙は肯定と受け取ります・・・それじゃぁ、いただきます―――」

 

吹き抜けのテラスのような場所で、一段高い石畳の上にあるベットの上で、爽やかな風が天蓋と晴香たちの頬を撫でる。周りは太い柱と薄いカーテンに囲まれており、まるでパルテノン神殿の中にいるよう。そんな厳かで神秘的な空間に、まだ歳半ばな少女の嬌声が響いた―――

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

もしこの場にご近所さんがいれば『あらあらまあまあ~』との小声が聞こえてきそうなほど、朝っぱらからおっ始めてしまった晴香たちだったが、ユエが目を覚ました(意味深)ことでお開きとなった。眠るあどけない少女を襲うという背徳感満載のシチュエーションに盛り上がってしまったので、身だしなみを整えると、眠る事で忘れてしまった反逆者の住処を探索することにした。

 

因みに服に関してだが、晴香が【異界収納】より取り出したストックがあるので、カッターシャツ一枚のユエを見る事は無かった。

 

これはこれで残念なので、夜にユエに来てもらおうと思ってます(晴香談)

 

神殿紛いのベッドルームから出た晴香は、知識で知っていても、屋外のこの光景には瞠目する。

 

複数の神代魔法により作られた人工太陽。ここは地下迷宮であり本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じるうえ、蛍光灯のような無機質さを感じないため、人工の太陽だ。

 

「夜には月になるのかな?」

「・・・かも」

 

言っててとても白々しい。

 

 

       *   *   *   *   *

 

 

石造りの住居は全体的に白く石灰のような手触りだ。全体的に清潔感があり、エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいた晴香達には少し眩しいくらいだ。三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。

 

原作を知っていても何処にどの部屋があるか等の詳細の間取り図は知らないので、取り敢えず一階から見て回る。暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレを発見した。どれも長年放置されていたような気配はない。自立ゴーレムが掃除をしてくれているお陰だ。

 

晴香(は一応)とユエは、警戒しながら進む。更に奥へ行くと再び外に出た。そこには大きな円状の穴があり、その淵にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。彫刻の隣には魔法陣が刻まれている。試しに魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。

 

「温泉・・・久しぶり~」

 

思わず頬を緩める。水は地下水をくみ上げる以外にも魔法具で補っていたので、晴香の魔力もあり十分に確保できていた。なので、拠点にはお風呂を完備していた為、晴香もユエも一緒に入っていたりしたが、やはりお風呂より温泉。薄暗い洞窟内ではなく、このように風情の良い所で入るこそ温泉。

 

晴香は日本人だ。例に漏れず風呂は無論温泉も大好き人間である。全設備の探索が終わったら堪能しようと頬を緩めてしまうのは仕方ないことだろう。

 

そんな晴香を見てユエが一言、

 

「・・・入る? 一緒に・・・」

「洗いっこする?」

「んっ♡」

 

素足でパシャパシャと温水を蹴るユエの姿に、一緒に入ったら気持ちよさそうだな・・・と純粋に想像を膨らませる晴香に、ユエは嬉しそうに微笑んだ。

 

それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、オスカーの指輪が無い限り、書棚も工房の中の扉も封印が解除されないので開ける事は出来ない。

 

二人は三階の奥の部屋に向う。神代魔法を授ける魔法陣が存在する、あの部屋だ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

 

神代魔法の一つ【生成魔法】を取得できる特殊な魔法陣である。

 

その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。人影は骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。

 

「・・・怪しい・・・どうする?」

「少なくとも感知系には何も引っかからないから、慎重にいこう」

 

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。

 

晴香はそう言うと、二人で魔法陣へ向けて踏み出した。そして、二人が魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。まぶしさに目を閉じる晴香とユエ。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのこと、封印された時のことが駆け巡った。

 

やがて光が収まり、目を開けた晴香の目の前には、黒衣の青年が立っていた。

 

反逆者であり解放者。稀代の錬成師、オスカー・オルクスその人

 

 

 

・・・の、立体映像である。

 

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