巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
誤文字報告、ありがとうございますm(__)m
ザムと呼ばれた伝令が走る事により、幾分か空気が和らいだが包囲はそのまま。絶対強者である晴香が付いているとはいえ一族郎共どうなるか分からない様なこの状況が、漸く一段落着いたと分かり、カム達からホッと安堵の吐息が漏れた。だが、彼等に向けられる視線は厳しいものがあり居心地は相当悪そうである。
対して晴香たちに向けられる視線は同情であった。一体何を理由に重罪人側につかなければならなかったのかは知らないが、庇い命を賭けるほどの重大な理由があるのだろう。
しばらく、重苦しい雰囲気が周囲を満たしていたが、そんな雰囲気に飽きたユエが晴香に構って欲しいと言わんばかりにちょっかいを出し始めた。それを見たシアが場を和ませるためか、単に雰囲気に耐えられなくなったのか「私も~」と参戦し、苦笑いしながら相手をする晴香に、少しずつ空気が弛緩していく。敵地のど真ん中で、いきなりじゃれあい始めた(亜人達にはそう見えた)晴香に呆れの視線が突き刺さる。
ハウリアを守んなくて良いのかよ、と・・・
時間にして一時間と言ったところか。調子に乗ったシアが、ユエに関節を極められて「ギブッ! ギブッですぅ!」と必死にタップし、それを周囲の亜人達が呆れを半分含ませた生暖かな視線で見つめていると、急速に近づいてくる気配を感じた。
場に再び緊張が走る。シアの関節には痛みが走る。
霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。何より特徴的なのが、その尖った長耳。
彼こそが、亜人族の長老方の一人。アルフレリック・ハイピストその人である。
アルフレリックは場に立ち止まると、晴香たちに視線を注ぎながら、一言。亜人族にとっては驚愕する事実であり、シアたちにとっては絶望を与える言葉を放った。
「ふむ・・・そこの
「に、人間ッ!?」
長老の言葉に動揺しながらも瞬時に周囲警戒に当たる虎人族であったが、周辺には人間らしき気配も無ければ、魔物の気配すらつかめない。では、ハウリアたちの中に人間が紛れているのか!?と激しい殺気をハウリアに当てる。本当はいないのに向けられる側からしたら堪ったものではないと顔を青く染めながら震える事しか出来ない。
意とも容易く見抜かれた事に若干傷つきながらも、流石は長老かと思いながら「ふぅ・・・」と溜息を吐いた晴香は、苦笑いと共に猫耳カチューシャを外した。
「「「「「―――ッ!?!?」」」」」
自身の猫耳を、亜人族にとって種族の象徴たる耳を引き千切った事に対しての一驚。そして、それは本物の耳では無く飾りであったことに対しての驚愕。猫獣人だと思って居た女二人が実は人間だったと言う事に対しての吃驚。完全に意表を突かれた形で有り、ハウリア一同とアルフレリック以外は完全に茫然としてしまった。
「晴香。綾瀬晴香です。こんにちは、長老殿」
「・・・ユエ」
ハジメ達の言葉に、ハッと意識を取り戻した周囲の亜人達が瞬時に厳戒態勢に入り、晴香たちにハウリアに向けるものとはまた違った高密度の殺気を叩きつけつつ、長老の前に躍り出て守ろうとする・・・が、それを片手で制した長老も名乗り返した。
「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さん。【解放者】とは何処で知った?」
「オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの住処です」
テンプレ的な回答をした晴香。一方、アルフレリックは表情には出さないものの内心は驚愕していた。なぜなら、解放者という単語と、その一人が【オスカー・オルクス】という名であることは、長老達と極僅かな側近しか知らない事だからだ。報告を聞いた時は一体どこで漏れたのかと思ったが、報告を聞く限り重罪人としてフェアベルゲンは愚かハルツィナ樹海も追放されたハウリアを庇いながら
「ふむ、奈落の底か・・・聞いたことがないがな・・・証明できるか?」
あるいは、本当に亜人族の上層に情報を漏らしている者がいる可能性を考えて晴香に尋ねるアルフレリック。対し晴香は、事前に用意していた物を取り出した。
地上の魔物では有り得ないほどの質を誇る魔石をいくつか取り出し、アルフレリックに渡す。
「こ、これは・・・こんな純度の魔石、見たことがないぞ・・・」
アルフレリックも内心驚いていてたが、隣の虎の亜人が驚愕の面持ちで思わず声を上げた。
「後は、これ。一応、オスカーさんが付けていた指輪です」
そう言って、見せたのはオルクスの指輪だ。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て、今度こそ内心の驚愕を隠しきれずに目を見開いた。そして、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。
「なるほど・・・確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ・・・それで、お前さん達は大迷宮を目当てに此処へとやって来たのかな?―――ウーア・アルト、か・・・ふむ。・・・他にも色々気になるところはあるが・・・まぁよかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」
アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。それも当然だろう。かつて、フェアベルゲンに人間族が招かれたことなど無かったのだから。
「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」
アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥め、話を付ける。その様子を尻目に、晴香とユエは取り外した猫耳カチューシャを装着しなおした。
「これは返そう」
「あ、魔石はいいですよ。私とユエからの友好の証としてどうぞ」
「んっ」
オルクス大迷宮の攻略の際に得た指輪と共に、掲示した魔石を返されたが、晴香は受け取りを拒否した。確かに高純度の魔石は錬成の利用にも使われるので貴重ではあるが、それよりも高純度で含有魔力が豊富な魔石を数千は所持している晴香である。たかが5階層程度の魔石なんて興味も無く、これを友好関係の礎の一つとして利用できるならそれはそれで晴香たちにとって得である。
人間から亜人族に対しての【友好】と言う言葉に他の亜人族は無論、長老アルフレリックをしても呆気にとられた。初対面ではあるが、晴香たちが他の人間族とは違った存在であることは薄々分かっていた。なにせ、侮蔑する様な視線を向けられてくることはなく、耳や尻尾に興味の視線を向ける程度で有り、少なくとも敵対的ではない。
寧ろ友好的と言ってもいいだろう。本来であれば敵同士であり、その敵に包囲されている状態であるにも関わらず必要最低限の警戒しかしていないのだから。
「なにが友好の証だ、人間ッ!!貴様等に一体、どれだけの同胞が捕まり奴隷とされているか、まさか知らぬとは言わせないぞ!」
しかし、その事に反発する者がいた。晴香をてっきり猫人族だと決めつけていた第二警備隊隊長の虎獣人、ギルである。
「いや、知ってるけど私がやってるわけじゃないですし。そもそも、ソレはこの世界の人間族がやらかしてる事であって、他世界から拉致・・・連れ去られた私には無関係なことです」
「なにを戯けたこt―――「よしなさい、ギル。」・・・失礼しました」
アルフレリックに諌められ、晴香たちを睨みつけながらも渋々引き下がった。亜人に対する仕打ちはこの世界の人間がやらかしている事であり、本当に別世界出身の晴香に怒りを当てるのはお門違いである。しかし、それを知らない、又は戯けた事と切り捨てたギルには同じ人間としての増悪があった。
向けられる晴香とユエは肩をすくめるだけで別に気にすることなく自然体であるが、それが帰って癇癪を買っているとは気付かずに・・・
* * * * *
濃霧の中を虎の亜人ギルの先導で進む。
行き先はフェアベルゲンだ。晴香とユエ、ハウリア族、そしてアルフレリックを中心に周囲を亜人達で固めて既に一時間ほど歩いている。晴香とユエはその間、ずっと手を握ったまま散歩気分で樹海を歩いており、晴香とユエの空間だけはほのぼのとした雰囲気が漂っている。
なんならオルクスに落ちる前に購入していた紅茶を、魔法瓶よりカップに注いで飲んでたりする。
更に言えば、アルフレリックも飲んでいる(晴香が渡した)
そして、私も混ぜて!とやって来たウサギをユエが蹴り飛ばしていたりする。
一応危険地帯なのだが・・・という呆れの視線を頂戴するのだが、一行を襲撃しようと接近する魔物は、警備隊よりも先に察知し、亜人達が理解できない頂上の力(06式)を持って殲滅している為、何も言う事が出来ない。そんな晴香に愕然としているのは、人間族だからと突っかかったギルだ。
本来であれば長老や一応客人たる晴香たちを守る任務を仰せつかっているはずの第二警備隊が魔物を受け止めるのだが、その役割を全て晴香に奪われているので面子が丸潰れで有り、なにより自身が攻撃行動を察知した瞬間に死んでしまうようなアーティファクトを自在に操る晴香の武力に、自身を比較してしまい気落ちしているのである。
そもそも迷宮攻略者と高が一警備隊隊長で比較すること自体が間違っているのだが。
その様にしてしばらく歩いていると、突如、霧が晴れた場所に出る。フェアドレン水晶により一定範囲内の霧や魔物の侵入を防ぐ特殊な役割を持つ水晶である。この水晶のお陰で樹海の中であっても街の中は霧がないようだ。十日は樹海の中にいなければならなかったので、ユエにとって朗報である。霧が鬱陶しそうだったので、どことなく嬉しそうだ。
霧の一本道を進むと、眼前に巨大な門が見えてきた。太い樹と樹が絡み合ってアーチを作っており、其処に木製の10mはある両開きの扉が鎮座していた。天然の樹で作られた防壁は高さが最低でも30mはありそう。亜人の【国】というに相応しい威容を感じる。
題名が思いつかなくて、43話と同じ様な名前になってしまったw