巻き込まれたので、ハジメさんの立場(原作の)を簒奪する事にしました。 作:背の高い吸血鬼
ギルが門番と思しき亜人に合図を送ると、ゴゴゴと重そうな音を立てて門が僅かに開いた。周囲の樹の上から晴香たちに注目が集まっているのが良く解る。この後、族長会議で結局は人間とバレてしまうので、フェアベルゲンの民たちに私達にたいする免疫を付けさせようと、カチューシャを外しているのだ。
なので、どの亜人達も人間が招かれているという事実に動揺を隠せないようだ。アルフレリックがいなければ、ギルがいても一悶着あったことだろう。
門をくぐると、そこは摩天r・・・ではなく、別世界だった。
直径数10m級の巨大な樹が乱立しており、その樹の中に住居があるようで、ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と思しき場所から溢れている。人が優に数十人規模で渡れるであろう極太の樹の枝が絡み合い空中回廊を形成しており、樹の蔓と重なり、滑車を利用したエレベーターのような物や、樹と樹の間を縫う様に設置された木製の巨大な空中水路。樹の高さはどれも二十階くらいありそうであり、自然と融合したちょっとした高層ビルのようだ。
地球でいえば、シンガポールの巨大な木をモチーフにした、空中回廊も存在する観光名所が一番似ているかもしれない。しかし、似ているだけであって、雰囲気や澄んだ空気の美味しさは、どんな現代技術を用いても再現できないだろう。
大体どのような光景か知っている晴香は「おぉ~・・・」と旅行気分。対し、初見のユエはポカンと口を開け、その美しい街並みに見蕩れている。可愛かったのでナデナデ。途端に始まった百合百合しぃ雰囲気は―――コホンッという咳払いと共に霧散した。どうやら、直ぐにイチャつく晴香たちをアルフレリックが正気に戻してくれたようだ。
道中、晴香とユエのイチャつきぶりと言ったら、高価な砂糖を直接口内に放り込まれている様な、そんな飽きる甘さで溢れており、アルフレリックを始めとしたハウリア一族以外の獣人族達は、顔には出さなかったがかなり滅入っていた。
しかし―――
「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」
アルフレリックの表情が嬉しげに緩んでいる。周囲の亜人達やハウリア族の者達も、どこか得意げな表情だ。何処でもイチャつく盛り者達であっても、それが人間であっても、故郷を、祖国を木に言って貰えるのは嬉しかったのだ。
晴香は、そんな彼等の様子を見つつ、素直に称賛した。
「・・・こんな綺麗な街を見たのは初めてです。空気も美味い。自然と調和した見事な街ですね」
暮らす住民が獣人たちなので、溢れるシルバニア感。とても懐かしい思いが晴香の胸の内に広がる。
と言うのは冗談で、実際に此処まで綺麗な街は見たことが無い。地球にも秘境などと言われる場所が存在し、確かに綺麗だがどれもこれも写真や動画でしか見たことがなかったので、とても新鮮な気持ちで感想を口にした。
「ん・・・綺麗」
ユエも無表情ながら、キラキラと瞳を輝かせている。
掛け値なしのストレートな称賛に、流石に、そこまで褒められるとは思っていなかったのか少し驚いた様子の亜人達。だが、やはり故郷を褒められたのが嬉しいのか、皆、ふんっとそっぽを向きながらもケモミミや尻尾を勢いよくふりふりしている。素直じゃない。ツンデレか。可愛いじゃないか。
でも・・・オッサンのツンデレなんて誰得?
何て思いながら、晴香達はフェアベルゲンの住人に好奇と忌避、あるいは困惑と憎悪といった様々な視線を向けられながら、アルフレリックが用意した場所に向かった。
* * * * *
オスカー・オルクスに聞いた【解放者】のことや神代魔法のこと、自分が異世界の人間であるなどと、晴香達の話を聞いたアルフレリックは、史実同様のフェアベルゲンの長老の座に就いた者に伝えられる掟を話した。そして、これからの事について話が行われ始めた所で、
『・・・そろそろ、かな?』
と、晴香が予測したように、何やら階下が騒がしくなった。
晴香達のいる場所は最上階にあたり、階下にはシア達ハウリア族が待機している。そこで亜人族最強の戦闘力を誇る熊人族がハウリアと史実同様の諍いを繰り広げているようだ。内容は判らないと言う体を取りながら、晴香とアルフレリックは顔を見合わせ、同時に立ち上がった。
階下では、大柄な熊の亜人族や虎の亜人族、狐の亜人族、背中から羽を生やした亜人族、ドワーフらしき亜人族が剣呑な眼差しで、ハウリア族を睨みつけていた。部屋の隅で縮こまり、カムが必死にシアを庇っている。シアもカムも頬が腫れている事から既に殴られた後のようだ。
晴香とユエが階段から降りてくると、彼等は一斉に鋭い視線を送った。熊の亜人が剣呑さを声に乗せて発言する。
「アルフレリック・・・貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた?こいつら兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど・・・返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ」
必死に激情を抑えている為、拳を握りわなわなと震えている。亜人族にとって人間族は不倶戴天の敵。しかも、忌み子と彼女を匿った罪があるハウリア族まで招き入れた。熊の亜人だけでなく他の亜人達もアルフレリックを睨んでいる。
しかし、アルフレリックはどこ吹く風といった様子だ。
「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ・・・事情は理解できるはずだが?」
「何が口伝だ!そんなもの眉唾物ではないか!!フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」
「だから、今回が最初になるのだろう・・・それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする?」
「なら、こんな人間族の小娘が資格者だとでも言うのか!?敵対してはならない強者だとッ!」
「そうだ」
淡々と返すアルフレリック。熊の亜人(名をジンという)は信じられないという表情でアルフレリックを、そして晴香を睨む。
フェアベルゲンには、種族的に能力の高い幾つかの各種族を代表する者が長老となり、長老会議という合議制の集会で国の方針などを決めるらしい。裁判的な判断も長老衆が行う。今、この場に集まっている亜人達が当代の長老達である。掟に従うのが長老たちではあるが・・・口伝に対する認識には差があるようだ。
これも史実と変わらない。
アルフレリックは、口伝を含む掟を重要視するタイプだが、他の長老達は少し違う。アルフレリックが他の亜人種よりも二倍の寿命を持つ事や、その他諸々の事情が改まって、その分、価値観の差が出ているのだ。
というわけで、アルフレリック以外の長老衆は、この場に人間族や罪人がいることに我慢ならないようだ。
「・・・ならば、今、この場で試してやろう!」
いきり立った熊獣人のジンが突如、晴香に向かって突進した。あまりに突然のことでユエ以外の周囲は反応できていない。アルフレリックも、まさかいきなり襲いかかるとは思っていなかったのか、驚愕に目を見開いている。そして想像してしまう。道中に見せた晴香の頂上的な力を持ってジンが木端微塵に吹き飛んでしまう、その姿を。
ユエは反応出来たが、魔力も持たず、奈落処かライセン大渓谷の魔物にも劣る唯の亜人一人に対して、晴香が後れを取るなどとは微塵も思っておらず、故に静観することにした。
そんなユエに対して、史実同様の事が起こると予測していた晴香は、特に動揺する事なく行動を起こすことにする。
一瞬で間合いを詰め、身長2m半はある脂肪と筋肉の塊の様な男、ジンの豪腕が、晴香に向かって振り下ろされる。亜人の中でも、熊人族は特に耐久力と腕力に優れた種族である。その豪腕は、一撃で野太い樹をへし折る程で、種族代表ともなれば他と一線を画す破壊力を持っている。シア達ハウリア族とユエ以外の亜人達は、皆一様に、肉塊となった晴香を幻視した。
しかし、次の瞬間には、有り得ない光景に凍りついた。
―――ズドンッ!
衝撃音と共に振り下ろされた拳は・・・晴香の左手の人差し指一本で受け止められてしまったのだ。
「「「「「!?!?」」」」」
正に有り得ない光景に、この場の亜人達が唖然とする。自慢の一撃が小娘の、力を籠めれば簡単に折れ曲がってしまいそうなほど細い人差し指に受け止められてしまったのだ。肉体的なダメージは一切無かったが、多大な精神的ダメージを被ったのはジンであった。
「―――温い・・・温すぎる。これが、亜人最強種の一撃・・・ハっ、笑止ッ!!『・・・決まった!(ニヤリ)』」
この場の雰囲気に流され、思わず片手で顔を覆いながら儚げに視線を天へと向ける痛めな晴香さんの小さな、それでいて耳に残る声が響き渡る。ユエからは見える。手で覆い隠した晴香の、そのだらしなく緩んだ表情が!
年頃の男の娘を見ている様で、ユエはとても優しい気持ちになった。
「・・・かわいい」
思わずポツリとこぼしてしまったその言葉が、晴香に聞こえる事は無かった。
「さて・・・自称最強種殿。殺意を持って
「ッ!」
※唐突の【のじゃ口調】は仕様です。
調子に乗ってる晴香からは、殺気などが一切感じない。しかし、今この場で引かなければ自身が死ぬ―――という得体の知れない奇妙な感覚にとらわれたジンは、その巨体からしては実現できなそうなほど機敏な動きで斜め横後方に飛び下がろう・・・とした所で、ハッと、気付く。
一切、瞬きもせず、視線を逸らしていなかったのに、小娘が視界から消えている事に。
「―――何処へ行こうというのかね?」
「ッ!?」
※この時の気分は某大佐さんです。
そして、気付けば耳元で言葉を掛けられているこの状況に思考が止まり掛ける。何時の間に移動した?そもそも、気配すらつかめなかったのは何故だ?どうやって、俺の視界から消えた?!―――瞬時に湧き上がってくる疑問が、ジンの脳内を埋め尽くす。
しかし、答えを導き出す時間は無かった。何故なら、晴香がグッとジンの腕を逆関節したからだ。
ゴキンッ!―――と耳にすればとても嫌な、骨の折れる音が部屋に響き渡る。ちょっと手加減をミスってしまったからではない。断じて。
だが、悲鳴の一つもあげる事無く我慢できたのは流石最強種を自称するだけの事はあるのかもしれないが、まだこの戦闘は終わっていない。晴香は逆関節した腕を後方に引っ張り、自身の肩に回して一気に振り絞った。
「【
「ッゥカハっ!?」
巨体が宙を廻り、地面にたたきつけられる。綺麗に決まった一本背負い。晴香はご丁寧に、受け身も満足に取れてないジンの背中を、叩きつけるのと同時に空いた片手で押さえつけて肺の空気を強制的に排出させた。本当は、本来の技同様に肘で決めたかったが、今の自分がやると貫きそうだったので自重した。
暫くは行動できないかな?と言った程度のダメージを負わせた、と判断した晴香は、一応最低限の警戒をしながら腕を離す。そして、埃を払うかのようにパンパンッと手を叩くと、かいてもいない汗をぬぐう動作をし、ジンの髪を掴んで強引に持ち上げ、視線を合わせた。
ジンは何も言えず、ただ茫然と見つめ返していると、晴香がおもむろににっこりと微笑んだ。
そして。
「で?」
「―――ッ」
無邪気に見えるその笑顔の瞳は雄弁に語っていた。
【何もできなかったね?族長さん♪(笑)】
と。
ネタ
1【温い・・・温すぎる!】
A:美味い、美味すg(ry
2【のじゃ口調】
A:何と無くやって見たかった。
3【何処へ行こうというのかね?】
A:某大佐といえば、分かるでしょう?
4【刳〇祓】
A:六花の主人公の技。確か二巻
晴香
「ジャンルがバラバラ・・・もっとまとめた感じにすればよかったかな?」
ユエ
「・・・そこじゃないと思う」
『・・・でも、可愛かった///』
作者
「こんにちは。次回の更新ですが、一週間以内には出したいと思います(課題多すぎて死にそうなんです・・・はぁ・・・神水が何処かで湧き出てませんかね?オーバーラップのありふれイベントで、神水と銘打たれたペットボトルのミネラルウォーターが売ってましたが・・・本物より効果が感じられませんでした。薄めたちゃったの?原液でのませてぇ・・・( ;∀;))」